町田慎吾インタビュー 歴史の狭間でもがく人間たちの生きざまを熱く演じる『戦国御伽絵巻『ヒデヨシ』』

インタビュー
舞台
2017.7.1
町田慎吾

町田慎吾

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昨年2016年から始まった、オリジナル書き下ろし脚本作品『戦国御伽絵巻』シリーズ。このシリーズでは、殺戮と戦争によって時代を変えた「表」の歴史ではなく、その歴史の「裏」に確かに生きた市井の、生身の人間の話を描くことを目的に始まりまった。時代劇でありながら、殺陣中心ではなく物語中心の本作は、2.5次元殺陣ものエンタメ時代劇作品が世間を横行する中、あえて「オリジナル書き下ろし脚本」「殺陣ではなく心情・ドラマ」にこだわり、キャスト・スタッフ共に演劇のプロを集めての真摯なものづくりにこだわっている。

シリーズは、2016年の第1作目『戦国御伽絵巻『ソロリ』」~妖刀村正の巻~』に続き、2017年8月に第2弾『戦国御伽絵巻『ヒデヨシ』』が上演される。第1弾舞台から本シリーズに出演し、この第2弾で演劇の殿堂と言われる紀伊國屋ホール初主演を飾る町田慎吾に話を聞いた。

 

「御伽絵巻」だからこそ描ける物語を、秀吉という人間をつくっていけたら

――最初にこの戦国御伽絵巻シリーズに出演依頼されたとき、どんなお気持ちでしたか?

「オリジナル書き下ろし脚本で、戦国の作品を創りたい」という主催者側の姿勢、熱い思いに感動しました。「殺陣もの中心じゃなく、登場人物の心情やドラマ中心でいきたい、ぜひ町田さんと一緒に作品を創りたい」とおっしゃっていただき、自分を必要としてくださり、とても嬉しかったのを覚えています。お客様に喜んでいただけるような素敵な作品を、この方達と創りたいと強く思いました。

――その第1作目にも登場した秀吉が今回の「ヒデヨシ」の主役で、また町田さんが演じることについてはどのように思われましたか?

「町田さんが演じた秀吉がとても魅力的で面白かったので、今度はその秀吉を主役に作品をつくりたい」とプロデューサーさんに言っていただいた時は本当に嬉しかったです。また一緒に仕事をしたいと思ってもらえるような表現者になりたいと思っているので、なによりも嬉しいお言葉でした。この魅力的な秀吉という人物をまた演じられる事、今からワクワクしています。

このシリーズに出てくる秀吉は人を殺すことを拒否します。「戦国御伽絵巻」は、「暴力ではなく知恵で戦った時代を生き抜いた男たちの生きざまを描きたい。いま、こんな時代だからこそ人を殺さない、戦わない物語をつくりたい」と思って立ち上げたと聞きました。その象徴のような秀吉という人物を演じることで、僕自身いろいろなことを考えました。知恵とホラ、人たらしのコミュニケーション能力の高さで戦乱の世を生き延びてきた秀吉。新しい時代を自分の手でつくるという夢を抱き、「人が人を殺さない時代」をつくるために天下を統一しようとする若き頃の秀吉がここでは描かれています。それが本当のことかどうかはわからないのですが、「御伽絵巻」という「物語だからこそ描けるもの」をつくっていきたいです。

――『戦国御伽絵巻『ヒデヨシ』』とはどういう物語ですか?

この物語は「人と人が出会い、変わっていく」ということの真実を描いています。人は人でしか変わりません。この物語は人と人が出会う物語であり、人と出会って変化し、その後の道を選んでいく物語です。どの道を行くのか、最後に決めるのは自分自身です。成功した人、失脚した人、自滅した人、様々な道行がありますが、どの道が本当に幸せなのかは誰にも分りません。だから人は物語に惹かれるのだと思います。歴史上では悪者扱いされている人たちにも希望に溢れた若き頃があり、よりよく時代を変えようと夢を描いた時代がありました。その人たちがいかに戦い、いかに挫折し、いかに生きたのか。そこも見ていただければと思います。


座長として全てを自分が背負う

――いままで様々な演劇人が目指し憧れた、演劇の殿堂である紀伊國屋ホールで「初主演」されることについてはどのように感じられていますか?

初めて聞いたとき、率直に「頑張らねば」と思いました(笑)。いままでいろいろな作品をやらせてもらってきましたが、紀伊國屋ホールで主演というこの作品で成功したら、またなにかひとつ自分の中で大きくなれるのではないか?と思っています。

――いままで何度も主演や座長を務められていると思いますが、座長を務めるときの特別な心構えはありますか?

作品に対する意気込みはどのポジションでも変わりません。「自分にできる事を一生懸命やる」ということを常に思っています。とにかく「良い作品をつくる」ということに集中し、それしか考えていません。自分が主演や座長をやらせていただくときは、全てを自分が背負う覚悟でいます。引っ張っていくタイプの座長ではないのですが、自分に出来ることを最大限やります。昔からそういう方たちの背中をずっと見てきたので、こういう考え方なのだと思います。

――作品を「背負う」ということはとても重くて大変なことですよね? そのプレッシャーとストレスはどうやって解消しているのですか?

もちろんプレッシャーはありますが、主演や座長を自分に任せていただける事への感謝の方が大きいです。「お客様に喜んでいただくこと」を一番に考えているので、観劇されたお客様が楽しんでくれたら、「嬉しいな、良かったな」と思います。それが僕の幸せです。経験を重ねて視野は広くなりましたが、仕事に対するこの考え方は昔から変わっていません。

僕には必ず叶えたい夢があって、そこに向かって走っているので頑張れるんです。明確なものがあり、それを目指しているから。時々へこたれそうになりますけど(笑)。でも、応援してくださる方達がいるからまた頑張れるんです。大きな夢に向かって。

――町田さんと仕事を一緒にした人たちからよく「町田さん自身が自分に厳しく、他のことに意識を散らさず、作品作りに集中している姿にとても感動する。町田さんがいるだけでカンパニーが引き締まる」と聞きます。なぜそんなにストイックに努力し続けられるんですか?

有難いお言葉です。恐縮です。でも、全くストイックという自覚はありません(笑)。すぐ疲れちゃいますし(笑)。

「お客様に喜んでいただけるようなものを作りたい」というのがあるだけで、「良い評価をもらうために」とか「自分を良く見せるために」とか、そこはないんです。「作品の中で自分になにができるか」という事を考え切磋琢磨していれば、自然に他のものがついてくるんじゃないかと思っています。

――秀吉と町田さんの共通点は、「信念」の強さだと思うのですが……。

ブレない芯があるところは似ていると思います。自分の中でこだわりのある事に関しては、かなり頑固です(笑)。

――まもなく「ヒデヨシ」の稽古が始まります。稽古などで楽しみにしていることはありますか?

はじめましての方も多いのですが、ほぼ同世代の30代の役者が多く揃った現場なので、とても楽しみです。さまざまな現場でキャリアや経験を積んできたベテランばかりだし、本当に芝居の好きな人ばかりだと思うので、作品や役に対する深い話し合いや洞察ができるんじゃないかな? いまこのとき、このタイミングで出会うのって、なんか縁があるんだろうなと思います。人との出会いやタイミングには縁があると思うタイプなので。

――最後にお客様にメッセージをお願いいたします。

「町田くん頑張ってるんだな、紀伊國屋ホール初主演、見届けてあげるわ」と、劇場に足を運んでくださったら嬉しいです。8月の公演で、夏休みの期間という事もあり、きっと遠方から駆けつけてくださる方も多いのではと思います。駆けつけて良かったと思ってもらえる作品に必ずします。

自分は舞台観劇をした際、心を揺さぶられる作品にとても惹かれます。この『戦国御伽絵巻 ヒデヨシ』は、皆さんの心を絶対に揺らす事のできる作品になると思っています。今の自分だからこそできる「秀吉」、このカンパニーだからこそできる『戦国御伽絵巻 ヒデヨシ』を、楽しみにしていてください。お客様に喜んでいただけるよう、全力を尽くします。劇場でお待ちしています。
 

インタビュー・文=及川樹

公演情報
戦国御伽絵巻『ヒデヨシ』
 

■スケジュール・会場
2017年8月5日(土)~13日(日) @新宿 紀伊國屋ホール 

<出演>
町田慎吾 平野良 佐藤永典 藤原祐規 鍛治本大樹(演劇集団キャラメルボックス)
月岡弘一 大岩主弥 福島悠介 及川崇治 大力 根本大介 / 三上市朗  他
  
料金(全席指定・税込)
プレミアムシート 8,800円 
※前方席(A列~I列)、非売品特典付き
指定席 7,000円

■Official HP:http://otogiemaki.com
■Official Twitter @otogiemaki
 
主催・企画・製作:キティエンターテインメント      
公演に関するお問い合わせ:東京音協 03-5774-3030(平日11:00~17:00)

 

 

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