栗山千明と溝端淳平が結婚式の前日に最悪な状況に追い込まれるカップルに! ラブコメディ『ミッドナイト・イン・バリ』インタビュー
溝端淳平、栗山千明『ミッドナイト・イン・バリ』 撮影=髙村直希
現在放送中のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』も大好評の人気脚本家、岡田惠和が書き下ろし、同じく現在公開中の映画『いつまた、君と~何日君再来~』で高い評価を得ている映画監督・深川栄洋が演出する四人芝居『ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~』。バリでの結婚式を翌日に控えたとあるカップルと、それぞれの親とで繰り広げる濃密な会話劇、“ハイスピード毒舌ラブコメディ”となる。翌日には結婚するはずの幸子と治を演じるのは、これが7年ぶりの共演となる栗山千明と溝端淳平。そんな二人が宿泊しているコテージを訪れる、幸子の母・敏子と治の父・久男には浅田美代子と中村雅俊が扮する。この登場人物四人は、とにかく強烈な個性の持ち主ばかり。そのやりとり、意外な展開にさんざん笑わされたのち、“結婚”とは? “家族”とは?と改めて考えさせられる作品になりそうだ。6月末、この作品の製作発表記者会見が都内で行われ、キャスト四人は華やかなバリ風の衣裳で登場。まずは“こじらせ系”の幸子役の栗山と、“鈍感”な治役の溝端に意気込みなどを語ってもらった。
撮影=髙村直希
――栗山さんは久しぶりの舞台出演ですね。
栗山:はい、そうなんです。こうして取材があると、いよいよ近づいて来た!っていう気持ちになってきて。舞台をやらせていただくのは5年ぶりになんですが、それを聞いた時に自分でも「これは絶対緊張するな!」と覚悟はしていたんですけどね。やっぱり、今日になってまたどんどん緊張してきちゃいました。
――これまでやられてきた舞台(『道元の冒険』(2008年)、『コースト・オブ・ユートピア』(2009年))とはまた全然違う雰囲気の舞台になりそうですよね。
栗山:今までやらせていただいた舞台では、お坊さんの話だったりロシア人の話だったりして、今の自分とはまったくかけ離れた世界を演じていたので、そういう意味では今回は真逆ですね。お客様がある家族の裏側を垣間見るみたいな、リアリティのあるお話ですから。
――今日の会見の雰囲気だと、既に四人とも仲が良さそうだったので稽古場がとても楽しそうですよね。
栗山:いや~、確かに楽しそうなんですけど!(笑)
溝端:ハハハ、栗山さん、“稽古”って言葉が出るだけでピリッとなるの、ちょっとやめてもらっていいですか(笑)。
栗山:アハハハ! だって演出の深川さんが、稽古では歌とか踊りとか、日々いろいろな課題を放り投げていきますからっておっしゃっていたので、それに自分ががむしゃらに食いついていけるかどうかが心配で。
溝端:アッ!と一瞬ひるんだりしたら、「ビビってるな!」と敏感にかぎつけられて、さらに狙われそうな気がしますよね。
栗山:怖い~(笑)。私、今まで蜷川(幸雄)さんの演出しか受けたことがないんですけれども、たぶん私が恐がっているのが伝わって、あまり強く言われたりしなかったんですが、今回は逃げられないかもしれない。
栗山千明 撮影=髙村直希
――では、ここ数年コンスタントに舞台に立たれている経験豊富な溝端さんからアドバイスを。
溝端:いやいや、全然豊富じゃないですよ!(笑) 確かに今回の出演者のみなさんに比べたら“久しぶりの舞台”ではないですけど。ここのところ僕もシェイクスピア、寺山修司、アーサー・ミラーという作品が続いていて、今回のように現代を生きる男女の結婚について、しかもコメディでというのに参加するのは久しぶりなのでかなりドキドキしているんです。今を生きる青年役なんてできるのかな、って思っていて。
栗山:実際、今を生きているじゃないですか(笑)。
溝端:でも、自分自身、考え方があまり今っぽくない人間なんですよね。
栗山:ああ、それはなんとなく、今回取材を何度か一緒に受けたりしていて少し感じました。
――そうなんですか? 今の若者というよりは?
溝端:ちょっと、オジサンに近いんですよ。
栗山:熱量があるところもそうですし、とてもまっすぐですしね。今の若い人がそうじゃないというわけではないですけど、昔の良き男性像に近いんじゃないかなって私も思いますね。
溝端:たぶん、考え方が昭和っぽいんです。
――じゃ、今回の役柄は今っぽい男の子なので、ギャップがありそうですか。
溝端:僕が演じる治って、“爆弾処理班”みたいなところがあるんですよ。目の前に爆弾があったら、それが絶対に起爆しないように、静かに丁寧に扱うんです。でも栗山さん演じる幸子と、そのお母さんはあえてそれを起爆させるタイプなので、結局それに巻き込まれるみたいな感じなんですよね。だけどそうやって健気に一生懸命、平和を願って優しくしているという治の性格には、あまり僕自身は近くなくて。
栗山:そうやって自分が演じる役、私だったら幸子という役を、自分と重ね合わせて考えてみたりもするじゃないですか。でもそうした時に、溝端くん、浅田さん、中村さんはそれぞれのキャラクターを演じてみたらきっと可愛い面も出るんだろうなあって思えるんですけど、自分が幸子を演じた時、この役をちゃんと可愛くやれるのかな?っていうことにとても不安があるんです。
溝端:なるほど、そうなんだ。
栗山:脚本にはそう書かれているので、本来ならできるはずなんですけどね。今まで私が演じてきた役って、威圧感がある怖い役とか、きちっとした役が多くて、「可愛い」って思われるようなキャラクターはあまりやったことがないんです。だけど今回は私を通して、幸子がチャーミングに見えるように演じなければならない。その点は、しっかりやらないとなって思っています。
溝端:僕が、栗山さんに一回も会ったことがない状態でこの台本を読んでいたら、確かにちょっと想像しにくかった気はしますね。だけど、以前映画(『NECK』(2010年))で共演させていただいた時に、本当は女性っぽくて可愛らしくてチャーミングな部分がたくさんある方だと思っていたので、そのイメージでスラスラ読めましたよ。だって栗山さん、会った途端に「よっこらせっ」とか言っていたじゃないですか。
栗山:アハハハ、そうかも!
――そんな感じなんですか(笑)。
溝端:当時、僕も栗山さんって「きっと強くて、クールなんだろうな」ってイメージを持っていたのに、メイクルームに戻ってきた時に「ホェ~」って言ったんですよ。それで俺、「マンガのセリフでしか『ホェ~』なんて聞いたことないよ、なんて可愛いんだこの人!」って思ってたんです(笑)。
栗山:私、アニメやマンガが大好きなので、ふだんはそういう言葉がつい出ちゃうんです。
溝端:それ以来、「ホェ~」がこんなに似合う人もいないなって思うようになりました(笑)。
栗山:あ、でも私も溝端くんと共演した時、イメージとちょっと違いましたよ。自分よりも年齢的にお若いのに、すごくしっかりしていて。その時演じられていた姿とは全然違ったので、驚いた記憶がありますね。
撮影=髙村直希
――では、これから行われる稽古、本番に向けて楽しみなこと、準備しておきたいことはなんですか。
栗山:そうですね、物語の順とは関係なく撮影していく映像のお仕事とはまた違って、舞台の場合はストーリーに合わせて感情を動かしながら演じられる面白さがあるので。こうして緊張して不安な分、よけいに、みなさまにお見せできる形になった時のゴールの達成感、喜びはすごいだろうなっていうのはありますね。……でもやっぱりまだ怖い!(笑)
溝端:ハハハ。いや僕も、稽古が近づくと怖い怖いって思っちゃうタイプではあるんですよ。ただ栗山さんと違うのは、ギリギリにならないとお尻に火がつかないんです。火がついてから、やっとアセるタイプなので。
――じゃ、今日の時点ではまだ大丈夫だと。
溝端:もうすぐ稽古が始まるとはいえ、まだ大丈夫ってどこかで思っちゃっているのかも。だけどやはり、ひとつの作品を同じ役で1カ月間みっちり稽古ができるというのは、役者としてはとてもありがたいことなんです。しかも今回はそれが四人芝居だから、おそらくとても濃密な稽古になりそうですしね。それもこんな素敵な先輩方とご一緒できるんですから。やはりそれが今回は一番の楽しみです。
栗山:事前に準備できることって、なんでしょうね。
溝端:そうだなあ。じゃ、バリに行ってみるとか?
栗山:ええ? あ、でもいいですね、それを理由にバリに行く。
溝端:どうしてバリの結婚式場を選んだんですか?とか、バリで結婚式を挙げるカップルに取材してみたり。結婚を決める相手と出会うということは、どういうことなのかというのも教えてもらいたいな。
栗山:うーん。治は特にそうですよね。
溝端:治はなぜ、幸子と結婚しようと思ったのかなって思いますよね。
栗山:幸子のほうはなんとなく、こんな想いで結婚前夜を迎えたのかなというのは、セリフからある程度想像できるんですけど。でも、やっぱり優しいですよねえ。。
溝端:治が?
栗山:だって、幸子って相当な毒舌じゃないですか。
溝端:うん。でもその奥にある幸子の可愛らしさを知っていて、そこが好きなのかもしれない。なんでもかんでもすぐに口にしちゃうし、目の前に爆弾があればそれを爆破させちゃうけど、治はその奥に女性らしさとか可愛らしさを見出しているのかなと思っています。
栗山:やっぱり私はそこを可愛らしく見せられるように、がんばらなくちゃいけないってことですね(笑)。だけど爆弾をうっかり踏んじゃう、というのとも違うんですよ。自ら「エイ!」って突入していく感じだからなあ。
溝端:ハハハ、確かに。
溝端淳平 撮影=髙村直希
――では、そんなところも可愛らしく見せることが。
栗山:はい。私の今回の目標です。
溝端:治の場合、小説家志望だからというのもあるのかもしれないですね。芸人さんとか、作家さんの奥さんって面白い人が多いような気がするんですよ。これだけ非日常なことをする、自分と真逆な人がそばにいたら、いろいろアイデアをもらえるんじゃないか、とか。特に脚本に書かれているわけではないんですが、そんな風に思ったりもします。
栗山:確かに。自分自身が、ではなくて身近にそういう人がいるからこそ、客観視できる部分もありそうですものね。
――では最後にお客様に向けて、おふたりからお誘いメッセージをいただけますか。
栗山:堅苦しい舞台ではないのでとても観やすいですし、普段あまり舞台に足を運ばない方でも素直に楽しんでいただけるお話になるのではないかと思います。その上で、改めて家族愛を感じたり、笑ったりできて、驚くような出来事も起きますし。きっと、さまざまな感情を動かしてもらえるはずなので、ぜひともナマで体感していただきたいですね。
溝端:確かに、これは初めて舞台を観る方でも入り込みやすい作品だと思います。この四人がめちゃくちゃに散らかしたものを、きちんと回収していき、最終的には四人が幸せに向かって一歩前に出るというところではきっととても快感が得られるのではないでしょうか。ぜひ、気楽に楽しんで観ていただければと思います。
『ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~』 撮影=髙村直希
インタビュー・文=田中里津子 撮影=髙村直希
ピアノ=荻野清子 ギター=阿部寛 パーカッション=藤井珠緒
■脚本:岡田惠和
■演出:深川栄洋
■音楽・演奏:荻野清子
09月15日(金)~09月29日(日)東京 シアタークリエ (問合わせ)03-3201-7777
10月03日(火)静岡 富士市文化会館 ロゼシアター (問合わせ)0545-60-2500
10月05日(木)愛知 愛知県芸術劇場 (問合わせ)052-972-7466
10月07日(土)~08日(日)大阪 サンケイホールブリーゼ (問合わせ)06-6341-8888
10月10日(火)福岡 久留米シティプラザ (問合わせ)050-3539-8330
10月12日(木)鹿児島 鹿児島市民文化ホール第2 (問合わせ)050-3539-8330
10月14日(土)山口 ルネッサながと (問合わせ)0837-26-6001
10月17日(火)岡山 岡山市民会館 (問合わせ)086-223-2165
10月19日(木)愛知 豊川市文化会館 (問合わせ)0533-89-7082
10月22日(日)新潟 りゅーとぴあ (問合わせ)025-224-5521
10月24日(火)岩手 岩手県民会館 (問合わせ)019-624-1173
10月29日(日)千葉 印西市文化ホール (問合わせ)0476-42-8811
10月31日(火)~11月01日(水)石川 北國新聞赤羽ホール(問合わせ)076-260-3555