「人間の一生なんて儚いもの」――岸惠子スペシャルトークショー『夢のあとさき』レポート
岸惠子 オフィシャル撮影
女優・作家として活動をする岸惠子によるトークショー『夢のあとさき』が8月9日、なかのZEROホールで開催された。岸自身の半生を振り返りながら、映画の撮影秘話や海外で遭遇した出来事などを語る約90分。ユーモラスでエスプリがきいたトークショーは11月まで全国で行われる。
岸惠子 オフィシャル撮影
アラン・ドロンや小津安二郎など、著名人の写真が次々とスクリーンに映し出される。岸が各界の「大物」たちと親交があったことを改めて知るところから、トークショーは始まった。この日、岸が最初に着ていたのは、50年前に作ったという金色のドレス。まもなく85歳(8月11日で85歳)になるとは思えない姿勢の良さとスタイルで、そのドレスを完璧に着こなしていた。
岸惠子 オフィシャル撮影
子供時代のエピソードとして印象的だったのは、1945年5月の横浜大空襲で被災体験の話だ。防空壕に入れという大人の指示を無視した結果、爆撃を運良く逃れた話を披露し、「今日で子供をやめた。自分の思う通りに生きようと思った」と語り、「戦争ってひどいものだと思いました」と総括した。
トークショーの中で長い時間をかけて語られたのは、銀幕スターになるまでと、スターになってからの秘話だった。小牧バレエ団に通い、有楽町で見た『美女と野獣』に魅せられて映画界に興味を持ったという話は比較的有名な話だが、『雪国』(1957年)と『おとうと』(1960年)の映像を交えながらの市川崑監督や俳優・池部良との撮影秘話や、ハリウッドでゲーリー・クーパーだと思ったらケーリー・グラントだったという赤面エピソードなどを岸自身が赤裸々に語るのは貴重だろう。「次は何のお話だっけ……」と時折手元のメモに目をやるのもご愛嬌で、会場は温かい雰囲気に包まれていた。
岸惠子 オフィシャル撮影
この日はトークショー初日ということもあり、岸の孫でフランス人の男性2人も観覧に来ていた。パリでの自身の生活については多くは語らなかったが、岸が翻訳した『パリのおばあさんの物語』(千倉書房)という絵本の映像を挟むなどして工夫を凝らしていた。岸は「人間の一生なんて儚いもので、私にはわずかな時間しか残っていない。初心に戻って書いていこうと思う」と作家活動により意欲を見せて、終わらせた。
岸惠子 オフィシャル撮影
レポート・文=五月女菜穂
8月26日(土)14:00川口総合文化センター リリア メインホール
8月31日(木)14:00刈谷市総合文化センター大ホール
9月4日(月)14:00わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
9月9日(土)14:00金沢歌劇座
9月12日(火)14:00新潟県民会館 大ホール
9月14日(木)14:00相模女子大学グリーンホール 大ホール
9月19日(火)14:00練馬文化センター 大ホール
9月22日(金)14:00静岡市民文化会館 大ホール
9月28日(木)14:00東京エレクトロンホール宮城 大ホール
10月1日(日)14:00広島国際会議場・フェニックスホール
10月5日(木)14:00川崎市スポーツ・文化総合センター ホール
10月9日(月祝)14:00オリンパスホール八王子
10月11日(水)14:00フェスティバルホール(大阪)
10月14日(土)14:00市川市文化会館 大ホール
10月19日(木)14:00岡山市民会館 大ホール
10月25日(水)14:00新宿文化センター 大ホール
11月6日(月)14:00松山市民会館 大ホール
11月9日(木)14:00神戸国際会館 こくさいホール
出演者:岸惠子