細貝圭、加藤虎ノ介がマキノノゾミ(上演台本、演出)と語る、濃密な三人芝居『オーファンズ』の魅力
(左から)細貝圭、加藤虎之介、マキノノゾミ
1983年にロサンゼルスで初演されて以降、世界各国で上演され、1987年には映画化もされた『オーファンズ』。日本でも1986年に劇団四季が市村正親主演で上演、2000年には栗田芳宏演出版(椎名桔平、伊藤高史、根津甚八が出演)、2010年に小川絵梨子演出版(吉原光夫らが出演)、2016年に宮田慶子演出版(柳下大、平埜生成、高橋和也が出演)などがあり、時代ごとに気鋭の俳優、手練れの演出家が挑んできた、濃密な三人芝居だ。
舞台となるのは、フィラデルフィアの廃屋。そこで二人きりで暮らしていた、凶暴な性格の兄トリートと臆病で部屋にこもりきりの弟フィリップ。ある日から、そこにやくざ者のハロルドが加わることになり、三人ともが孤児(オーファン)だったことから彼らはまるで疑似家族のような関係になっていく。しかし二人にとってハロルドの存在が大きくなるにつれ、だんだんとそのバランスが崩れていき……。
今回、トリートには細貝圭、フィリップには佐藤祐基、ハロルドには加藤虎ノ介が扮することになった。それぞれ映像に舞台にと活躍の場を広げているこの三人の精鋭たちの顔合わせで、どのような人間ドラマが描かれていくのか興味深いところだ。細貝、加藤と、今回上演台本と演出を手がけるマキノノゾミに、『オーファンズ』というこの作品への想いや魅力について、語ってもらった。
――細貝さん、加藤さんは今回の舞台に出演することになって、まずどう思われましたか。
細貝 『オーファンズ』というと、僕は観に行けていないのですが、去年柳下大くんが出ていたバージョンがあったから、タイトルに聞き覚えがあって。その舞台にまさか自分が出ることになるとはと、まずビックリしました。だけど、翻訳劇だからということで最初は構えていたのですが、台本がすらすらと読みやすくて、とても感情移入もしやすかったです。そんな第一印象でした。
細貝圭
加藤 僕はたまたま、その去年の『オーファンズ』を拝見していたんです。だから、お話をいただいた時は「えっ、今年もやるの?」とそれにまずビックリした(笑)。自分に、この役をいただけたということで、とてもうれしい気持ちになりました。
――もうひとりのキャストの佐藤祐基さんと、お二人は共演されたことはあるんですか。
細貝 僕は二度ほど共演したことがあるんですが、気さくないい人です。一見、コワモテですけど(笑)、お茶目なところもあるし。
加藤 僕は今回、細貝さんとも佐藤さんともまったく初めてなんです。
加藤虎之介
――マキノさんは、この三人にどんなことを期待されていますか。
マキノ ふふ。「ちゃんとやれ」ってことかな。
細貝・加藤 ハハハハ!
マキノ 僕も、今回は全員と初顔合わせなので、まだどんな声で、どんな風に出てくるのかもわからない段階なんですよね。だから逆にそこに期待しているというか、それぞれの役をそれぞれがどんな風にアプローチしてくるかとか、その人の身体を通して出てきたものを最初に聞く瞬間が今からすごく楽しみです。とにかく絶対にいいものにしようと思っているので。あとは、柔軟でいてくださいってことかな。三人しかいないんで不安だと思えば不安だろうけど、逆に三人だからこそ気持ちをひとつにしやすいとも思う。そういう意味での機動力は高いんじゃないかな。
マキノノゾミ
――意思の疎通がとりやすいし。
マキノ ディスカッションもしやすいだろうね。この本がまさにそういう素材ですから。ここがわからないと思えばすぐ「わかんないよねー」って話をしやすいというか(笑)。
細貝 確かにそうですね。
マキノ そういう意味ではすごくやりがいがありそう。あまり理屈でどうこうという本じゃないですから。
加藤 そう思います。
マキノ どっちかというと、人物たちがむきだしになっている本だから。だから稽古していても、きっと楽しいんじゃないかな。ある日突然、「違った! 今まで言っていたことは全部嘘だ、間違ってたわ、俺!」なんてことになるかもわからないけど。俺の場合、時々あるからね、そういうこと(笑)。その場合は正直に「すまん!」って言うので、それにも柔軟に対応してもらえたら(笑)。でもこの三人だったら、なんとかなるんじゃないか。ここに女の子がいると大変かもしれないけどね。
細貝 ハハハハ。
――男ばかりの稽古場のほうが、気楽なものですか?
マキノ そりゃあ、気楽です。ん? そうでもないのかな?(笑) 実は僕自身は、男ばかりの芝居ってあまり経験がないんですよ。二人は、経験あるでしょ。
加藤 僕は結構、ありますね。なので逆に、女優さんに対する気の遣い方を知りません(笑)。だから別に気が楽、というわけではないですけど、まあ、思いっきりぶつかっていけるのかなとは思いますね。
細貝 僕は少人数で男だけというのは初めての経験なので、本当に楽しみなんです。男だからこそ腹を割って話し合えることもあるだろうし。
細貝圭
――三人芝居ということに関してはいかがですか。
細貝 僕は一度だけしか経験がないんですよ、三人芝居は。その時は翻訳劇だったんですけど。でもその時も少人数だったので、演出家さんと、こうじゃないか、ああじゃないかと話し合う時間があって。そうやってひとつの答えにみんなでたどりつくような作業はとても好きな時間だったので、今回もまたそういう風にできたらいいなと思います。
加藤 僕は何度か少人数の芝居の経験はありますけど、ディスカッションするかどうかというのも座組によったりしますよね。今回はじっくり、話し合える座組になればいいなと思っていますけど。
マキノ そうだね、あまり話してる場合じゃねえなってこともありますけどね。でも今までの僕の経験から言っても、三人くらいの稽古場ってちょうどいい人数だと思いますよ。出番がなかなか来ないということもないし、じゃ、あの場面やりましょうかと言えばパッとやれるし。大人数だと今日はあの人が来ていないからその場面はできないなんてこともあるけど、三人だとそういうこともないだろうし。ひとりが風邪をひいたら、いっそ稽古休んじゃうか!ってなるからね(笑)。
細貝・加藤 ハハハハ。
――お二人としては、ファンの方々にはどんなところを見てほしいですか。
細貝 きっと今回は、今まで何度も上演されてきた『オーファンズ』と、まったく違うものになると思うんですよね。僕自身も、男だけの三人芝居でがっつりっていうのは初めての経験で、そこはまた新たな挑戦だったりもしますし。ぜひ、いろいろな化学反応をみなさんに見ていただけたらと思います。
加藤 ……言おうとしていたことを、全部言われてしまった(笑)。
加藤虎之介
マキノ・細貝 ハハハハハ。
加藤 でも本当に、今までの『オーファンズ』とは全然違う形になると思うんですよね。そこをぜひ、楽しみにしていただきたいです。
細貝 本当に脚本自体が面白かったので、自分がこの世界観を表現する側として出られることがすごく光栄です。そして虎ノ介さんともマキノさんとも、初めましてなんですが、一緒にこの作品に携われるということが本当に楽しみ。もう、早く稽古したいですよ(笑)。
加藤 そうですね。僕も稽古が今から楽しみです。俳優として濃密な時間を過ごしていけたらなと思いつつ、気づいたらもう本番だ!なんてことにもなりそうで。
マキノ 本番が始まったら、きっとあっという間だろうね。ま、がんばりましょう(笑)。
マキノノゾミ
――では最後に、みなさんからお客様にメッセージをいただけますか。
細貝 翻訳劇だから敷居が高いんじゃないかと思われている方もいるかもしれませんが、絶対に分かりやすい作品だと思いますので。
マキノ このお芝居って、女子ならみんなキュンとくる物語らしいから(笑)。
細貝 そうなんですか? 僕は男女問わずだと思いました!
マキノ そういや、どこかに書いてあったよな?
加藤 あ、チラシに書いてありますよ。「男女を問わず幅広い年齢層の観客に訴求し、心を打つ必見作!」って。
マキノ ほらほら。
加藤 と、いうことです(笑)。
マキノ どうする、俺らがやって「女子的にはイマイチ」なんて言われたら。
加藤 「なんか違う~」って。
細貝 ちょっといやだな、そう言われたら(笑)。
加藤 キュンキュンさしたろ!(笑)
マキノ ハハハ。だけど本当に、この芝居の根底には、人間の愛おしさとか可愛らしさみたいなものがあるんですよね。きっと、そういうものを感じられる作品になると思いますよ。
加藤 そういう舞台になるよう、僕らも努力します!(笑) みなさん、ぜひ劇場にお越しください!!
取材・文=田中里津子 写真撮影=荒川潤
■翻訳:小田島恒志
■上演台本・演出:マキノノゾミ
■出演:細貝圭 佐藤祐基 加藤虎ノ介
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県)
■日程:2017/10/14(土)~2017/10/15(日)
■会場:草月ホール (東京都)
■日程:2017/10/18(水)~2017/10/22(日)