「ペタペタ」の魅力を教えて! EARTH+GALLERY 青山健一展 スペシャルインタビュー
美術家・青山健一の個展が、2017年7月8日から7月23日まで木場のEARTH+GALLERYにて開催された。
青山健一は、フリージャズオーケストラ「渋さ知らズ」のメンバーとして舞台美術を担当しているほか、近藤良平(コンドルズ)やスズキ拓朗(CHAiroiPLIN)らの舞台美術、BEAMS T、GEEWHIZといったアパレルへのイラスト提供、書籍装画、絵本制作など幅広い活動で注目を集めている。本展は2011年、2013年に続きアートプロデューサー住吉智恵氏(TRAUMARIS)の企画による3回目の個展となる。
レセプションの様子
カフェを併設したスタイリッシュなギャラリーは、天井が高く自由で開放的な空間。中央には《「flashback」シリーズ》がリズミカルに並ぶ。カラフルな色彩に誘われるように会場に入った。
あふれる「ペタペタ」‼︎
ペンキやアクリル絵具で「ペタペタ」と描き、ガイコツのステッカーを「ペタペタ」と貼った作品は奔放でポップな気分だが、その自由な表現には真っすぐに心を覗き込まれるよう。そんな作品の魅力に迫るべく青山さんにお話を伺った。
作品に貼られているステッカー。もっと多くの種類があると思いきや、この数パターンの組み合わせで制作しているそう。 (この後、もしこのステッカーがあったなら、いろんなモノにペタペタ貼りたくなる衝動に駆られた)
《flashback》シリーズ (部分)
全く意図していなくても記憶が関係している
「ノープランで幾何学的なパターンを描こうと思って描き始めたら個室みたいに見えてきた」という作品《記憶団地》。白地に赤い壁、カラフルな色のパターンが並ぶ。ところが、完成してからあることに気づいた。それは東日本大震災の被災地の写真を見たときのこと。津波で外壁が剥がされて断面が露わになった廃墟ビルと、本作が酷似していることに気がつき驚いたという。
青山健一(以下、青山):完成してからそっくりだなと思って。なんで俺はこういうふうにしたんだろうって思って、この(震災の)イメージもあったのかも。描き上がった段階で全く意図してなかったけれど記憶が関係しているなと思いましたね。
《記憶団地》2017
ガイコツ好きは子供の頃から
ーーそもそもなぜガイコツなんでしょうか?
青山:昔のアニメーションに出てきたドクロ、みんなのうたやタイムボカンシリーズのドクロベエさまとか知ってます? あれが好きで。小さい頃からガイコツを描くのがすごい好きだった。だから、死とか暗いイメージではなくキャラクターとしてのドクロが好きで。
ーーアニメからなんですね。青山さんのドクロはなんだか妖精みたいですよね。恐いとか暗い印象ではないです。
青山:そういう感覚に近いかもしれない。でも絵のテーマによっては怖いイメージが出ちゃうけれど、それは全然否定してないです。
《untitled》(部分)
ーーガイコツモチーフを絵ではなくステッカーにしたのはなぜでしょうか?
青山:3~4年前までは手描きで描いていたんですけど自分の意思みたいなものが入っちゃうので、ポーズを取らせるとモチーフとして「悲しい」ガイコツになっちゃって。それがちょっと嫌になっている時期があって、じゃあステッカーにしたらいいかな、と。
《untitled》 1995〜2017
映像のレイヤーによってハプニング的に起こる面白さ
ギャラリー奥では壁一面に映像作品が投映されてる。完成した絵を背景にしガイコツが登場する映像と、一筆ごとに描く過程を撮影したストップモーションアニメーションだ。後者は作品をを2種類重ねて時間軸をバラバラにして組み合わせたことにより、アニメーションとは全く違う効果が生まれたという。色や時間が重なって思わぬ効果がハプニング的に起こる面白さについてお話いただいた。
青山:ランダムに音楽をかけて制作していました。曲が突然シンクロしたりする、そういう偶然が面白かったです。
Redioheadや坂本慎太郎(ゆらゆら帝国)などを聴いていたそう。
ーー色のイメージやアイデアはどこから湧いてくるのでしょうか?
青山:何かを意図して描くことは少ないですね。何かを描こう思って描くとそれになっちゃうので、極力そうしないようにしてます。
ーーそのように描いて行き詰まることはないのでしょうか?
青山:あります。行き詰まるっていうよりは、つまんなくなる。「つまんないな」と思ったら描くのをやめます。だから描くのに夢中になってて(映像用の)シャッターを押し忘れてるときの方がいいっていうのもありますね(笑)。
《ペタペタ》映像作品 2017 完成した絵を背景にしガイコツが登場する映像(上)と、一筆ごとに描く過程を撮影したストップモーションアニメーション(下)
ーーいつもは青山さんの映像作品の前で、誰かが歌ったりパフォーマンスしたりしているので(舞台美術なので当然なのですが)、今日はこの大きな壁いちめんで作品をじっくり見れるのが新鮮ですね。絵を映像にしてみるというのは、客観的にご覧になってどう感じますか?
青山:いちいち手を止めてシャッターを押すことが、客観視できている理由かもしれないですね。一個一個は面白さが自分では分からないないんですけど、レイヤーになっていたり(二つの作品を重ねている)、時間軸をグチャグチャにしているんです。そうするとびっくりする効果がでる瞬間がある。それは本当におもしろいなあと。映像のレイヤーでしかできない効果がハプング的に起きるので非常におもしろかった。
会期中には、不破大輔(渋さ知らズ)、辰巳光英(渋さ知らズ)、jimanicaと青山のビデオドローイングによるパフォーマンスや、元舞踏家のフードアーティスト・山フーズと共に料理のワークショップも行われる。こちらもぜひチェックを!(※終了)
凝り固まった考え方は捨ててみよう、青山さんのお話を聞いてそう感じた。もっと右脳を開放して素直に感じてみれば、彼の作品はますます楽しめるはずだ。
文=五十嵐 絵里子
写真=丸山 順一郎
会場 EARTH+ GALLERY
会期 7月8日(土)~7月23日(日) ※終了
休館・休廊日 月曜日
開館時間 11:00〜19:00(イベント時は22:00まで)
住所 〒135-0042江東区木場3-18-17
アクセス 東西線木場駅より徒歩7分、半蔵門線・大江戸線清澄白河駅より徒歩15分
TEL 03-3630-1655
URL http://earth-plus.net/
Kenichi Aoyama / Artist
1995年、美術家としての活動をはじめる。既存のギャラリーはもとより、廃ビル、ライブハウス、劇場、屋外公共スペースなど様々な空間と対峙しながら絵画、映像、インスタレーションなどの作品制作を行う。
1997年「渋さ知らズ」に美術、映像メンバーとして参加。以降、国内ライブや大型音楽フェス、海外ツアーまで全舞台美術制作を担当。 即興性を重視した独自の映像パフォーマンスで様々な表現者とのコラボレーションライブを多数発表。
BEAMS T、geewhiz などのアパレルへのイラスト提供、書籍装画、絵本、オリジナルアニメーションや近藤良平やスズキ拓朗をはじめとするパフォーマーの舞台美術、映像など様々な活動を展開している。