超ド級の日本画家、川端龍子って?
2017年6月24日(土)~8月20日(日)にかけて、山種美術館では特別展『没後50年記念 川端龍子―超ド級の日本画―』が開催されました。
川端龍子ってどんな画家?
皆さんは “川端龍子”(かわばたりゅうし)という画家をご存知でしょうか?
大正から昭和にかけて活躍した川端龍子(1885-1966)。本展で私たちは“日本画”の想像を遥かに上回る作品を目撃することになります。その作品の数々と特徴をご紹介していきましょう。
稀にみる作品の多様さ!
まず、展示室に入り右手にあるこの大きな作品に圧倒されます。
川端龍子≪火生≫1921(大正10)年 絹本・彩色 大田区立龍子記念館
これが日本画なのか、と思わず疑いたくなるほどの迫力。龍子が高野山明王院で拝観した≪不動明王二童子象≫(赤不動)と≪北野天神縁起≫の地獄の場面に刺激され、火を描きたい衝動に駆られて誕生した作品。火というと赤やオレンジを用いて表現しそうなところを、惜しげもなく金泥で表現しています。
一方で、こんな作品も。
川端龍子≪狗子≫19世紀(明治時代)紙本・墨画 大田区立龍子記念館
川端龍子≪奈良にて≫1915(大正4)年 多色刷木版 大田区立郷土博物館
≪火生≫とはうってかわってイラストのような可愛らしい作品です。
川端龍子≪慈悲光礼讃(朝・夕)≫1918(大正7)年 絹本・彩色 東京国立近代美術館
そうかと思えば、写実的で儚げな作品も。儚げであったり、イラスト調であったり、漫画調であったり、ダイナミックであったり……。作品にここまでの幅を持つ日本画家が実在したのですね。日本画というと、淡く、繊細な自然や動物を描いたものを想像する人がほとんどではないでしょうか。その常識を覆される―まさに超ド級の日本画です。
さて、今回の出展作品には何度も驚かされましたが、どうしてもご紹介したい作品がこちら。
川端龍子≪草の実≫1931(昭和6)年 絹本・彩色 大田区立龍子記念館
本展のメインビジュアルに起用されている作品。印刷で観るものと、生で作品を観るのとは訳が違います。シンプルに金色と黒だけで描かれている平面的な作品かと思いきや、奥行きがあり、風のなびくさままで感じさせます。
日本画とジャーナリズム
さらに龍子は、当時大々的に報道されたニュースを題材にすることもありました。
川端龍子≪爆弾散華≫1945(昭和20)年 紙本・彩色 大田区立龍子記念館
川端龍子≪金閣炎上≫1950(昭和25)年 紙本・彩色 東京国立近代美術館[後期展示 7/25~8/20]
自宅が終戦3日前の空襲に直撃弾を受けた場面や、1950年に放火で焼失した金閣。これらを龍子はいち早く描きました。ジャーナリスティックな作品と日本画。全く予想しない2つを交差させた川端龍子、ただものじゃありません。
山種美術館といえば♪
さて、山種美術館といえば、展覧会ごとに変わる和菓子を楽しむことができる併設のカフェもおすすめです。展示を見た後に、お気に入りの作品を模したスイーツを味わってみてはいかがでしょうか。特別な休日になること、間違いなしです。
川端龍子≪松竹梅のうち「竹(物語)」≫1957(昭和32)年 絹本・彩色 山種美術館
最後に
今の時代でこそ、日本画で「今」を描く作家はいますが、横山大観らが活躍した時代に川端龍子のような度肝を抜く日本画家が存在したことに驚いた展覧会でした。気持ち良く期待を裏切ってくれた、まさに“超ド級”の日本画、川端龍子。ぜひまた出会いたい画家のおひとりです。
文・写真=Karin Sato
*会期中、一部展示替えあり(前期: 6/24~7/23、後期: 7/25-8/20)
会場:山種美術館
主催:山種美術館、日本経済新聞社
協力:大田区立龍子記念館
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
入館料:一般1200円(1000円)・大高生900円(800円)・中学生以下無料
※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
きもの・ゆかた割引:会期中、きもの・ゆかたでご来館のお客様は、団体割引料金となります。
リピーター割引:使用済み入場券(有料)のご提出で会期中の入館料が団体割引料金となります(1名様1枚につき1回限り有効)。
※リピーター割引は、同一の展覧会を2回目以降にご覧いただく場合に有効。
他の展覧会の入場券はご使用いただけません。
※ 複数の割引の併用はできません。