バレエ『ロミオとジュリエット』芸術監督・指揮の西本智実にインタビュー「命の煌めきや燃焼を伝えたい」

インタビュー
クラシック
舞台
2017.8.30
西本智実

西本智実


マエストロ西本智実が芸術監督を務めるイルミナートフィル&イルミナートバレエによる全幕バレエ上演のプロジェクトが今年も開催される(9月9日&10日、新国立劇場オペラパレスにて)。これまで好評を博してきたチャイコフスキー作曲の『白鳥の湖』(2014年初演)、『くるみ割り人形』(2016年初演)に続いて今回挑むのは、プロコフィエフ作曲『ロミオとジュリエット』だ。テレビCMなどでもよく使われる「騎士たちの踊り」を聴けば、誰もが「ああ!あの曲」と頷く有名曲である。

今回の公演では、「音楽・バレエ・言語」の融合という試みを実現したコンサート形式の『ロメオとジュリエッタ』(2010年初演)をベースに、新たな演出と振付を加え全2幕の字幕付きグランドバレエとして、より深く、より華麗に進化させるという。このバレエ『ロミオとジュリエット』について、西本智実本人から話を聞くことができた。

稽古風景

稽古風景

-- 今回の全幕バレエ上演プロジェクトにおいて、プロコフィエフ作曲の『ロミオとジュリエット』を演目として選んだ理由は何ですか。

2008年にスイスのダボス会議に招待されて参加した際、会議を通じて、150年前と今とに共通する“地図”のようなものを感じました。それ以降、私が制作するオペラやバレエでは常に、“今は何をすべきか”という問いかけを入れています。ですから『ロミオとジュリエット』では、平和を持続させることの難しさが重要なテーマの一つ。なぜこの悲劇が生まれたのか、悲劇を未然に防ぐことはできたのではないかといったことを、遠い国の昔の話ではなくリアルな世界として感じていただける舞台にしたいと考えています。

-- バレエ音楽を多数作曲しているセルゲイ・プロコフィエフですが、指揮者としての観点から、プロコフィエフはどのような特質を有する作曲家と考えていますか。

音楽院図書館には学生時代のプロコフィエフの写真が掲げられていて、とても美しい顔立ちなのですよ。彼は『ロミオとジュリエット』の中で、出会った若者2人の若者の性急でピュアな愛を、どこまでも上昇飛躍するかのように巧みに転調しながら描き、また、2人の命をこと切る「運命の女神」などは素晴らしい不協和音で表現しています。音域も音響的な振り幅がとても広く、弱音から突然の強音、めまぐるしい転調に、演奏者である私の感覚も揺さぶられながら指揮しています。

-- 今回の『ロミオとジュリエット』では、「音楽・バレエ・言語」の三位一体の総合芸術を目指されるとのことですが、そのコンセプトについて、より詳しく教えてください。

私が演出するバレエでは、音楽とバレエを有機的に融合させるため、アナリーゼした音楽からまず台本を作り直し、それを元に振付けしていきます。この舞台では、さらに必要最小限で言葉を字幕に表示します。

-- 今回、宣伝媒体に「演出」のクレジットが見当たらないのですが、これまで引き続き西本智実さんが演出もされるという認識でよろしいですか?

はい! 演出しています! イルミナートでの芸術監督は演出も含めています。

-- 最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

ロミオと出会ったジュリエットは間もなく14歳という年頃。彼らの恋が、愛となり、そして死を迎えるまで、たった5日間の出来事ですがジュリエットはまるで人生の全てを集約した象徴として演出しています。舞台には虚構もありますが、映画ではなく全て生で表現しています。よりリアリティを追求したいと思っています。

命の煌めきや燃焼を作品を通じて出演者総力をあげて舞台を作っており、2日間しか上演しない舞台です。ぜひご一緒に感んじあいましょう。

稽古風景

稽古風景

文=安藤光夫

公演情報
積水ハウス presents 芸術監督・指揮 西本智実
プロコフィエフ作曲 バレエ「ロミオとジュリエット」全二幕<字幕付き>

■会場:新国立劇場オペラパレス (東京都)
■日時:
2017年9月09日(土)16:30
2017年9月10日(日)14:00
■芸術監督・指揮:西本智実 
■管弦楽:イルミナートフィルハーモニーオーケストラ 
■バレエ:イルミナートバレエ
■振付:玄玲奈
■公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/nishimoto_romeo_and_juliet/

 
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