想像は生きる糧 ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』開幕初日レポート

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レポート
2017.9.9
『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)


 ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』は個人的に今年、最も楽しみにしてきた来日ミュージカルだ。実はブロードウェイでのプレビュー初日(2015年3月15日)に観劇してワンワン泣いた気恥ずかしい思い出がある。そのくらい、直球で感情を刺激してくる作品なのだ。東京公演初日(2017年9月8日)も、その刺激の強さは変わらず。特に後半は、鼻をすすりっぱなしでごめんなさい。でも、やはり良かった! 心から、多くの方に観て欲しい作品です。

動画 『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコール「Stronger」「Believe」


 冒頭はケンジントン公園での愉快なシーン。劇作家J.M.バリが戯曲を書いたお芝居が開幕したが、作品の評判は散々。プロデューサーからは次を書けとお尻を叩かれているが、焼き直しのようなアイディアしか浮かばない。そんなバリは公園で4人兄弟と美しい母で未亡人のシルヴィアからなるデイビス一家に出会う。

 ごっこ遊びに夢中なジョージ、ジャック、マイケルと、一人斜に構えているピーター。屈託のない母シルヴィアは眼帯をして、無邪気に子供達と海賊ごっこを楽しんでいる。のびのびとした一家と一緒に遊ぶうちに、バリの想像力が花開き、戯曲のアイディアを次々と思いつく。『ピーターパン』の物語が徐々に形作られてゆくのだ。

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

 叙情的で力強い音楽(作詞・作曲=ゲイリー・バーロウ、エリオット・ケネディ)、独創的でダイナミックな振付(振付=ミア・マイケルズ)、美しい美術(舞台美術=スコット・パスク)や映像・イリュージョンなど、どのシーンも見所満載で、目がいくつあっても足りない。公園や夕食会で、現実から想像の世界に飛躍するシーンはマジカルだ。ミュージカル『ピーターパン』を見たことがある人なら、作品中あちこちにリンクする場面を見つけるはずだ。ワニやフック船長のカギ爪、指ぬき、ティンカーベル、時計音は、こうして着想されたのか!へえ!と、まるで自分が新発見をしたかのようにワクワクしてしまう。

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

 素晴らしいのは、“想像力”の描き方が、アナログだということ。映像を背景として使いながらも、子供達はリフトによって空を飛び、影がバリとシルヴィアの心の内側を垣間見せる。生身の表現を信じているから、この描き方なのだろう。それがまた、なんとも豊かで琴線に響く。これぞ演劇の力!と実感できるのだ。

 なんでも演出家のダイアン・パウルスは、この作品を“演劇へのラブレター”として作ったという。創造とは可能とされることを超えること、同時に、いかにアイディアを具現化するかの戦いなのだと。またダイアンは、批評家がどう思うかより、アーティストとして人々の心を動かすものを作ろうと心がけたとか。確かに作家としてのバリの葛藤は、作り手なら誰もが感じるところだろう。世間の声や規則に惑わされず、内なるインスピレーションを信じることが、新たな創造へとつながる。バリは妻に去られ、シルヴィアと会うことも禁じられ、絶望の淵に立った時、フック船長が現れる。それは内なるバリ自身。そのフック船長が書きたいものを書けと鼓舞する。1幕ラストの「Stronger」では、公園のベンチがみるみる間に海賊船となり、勇ましいリズムが帆を揺らす。バリが創造への新たな力を得る、迫力たっぷりの名シーンだ。

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

 また、新作の稽古で、今までにないタイプの芝居でどう演じたらいいのか、困り果てる役者達が面白い。役を難しく解釈しようとしたり、大仰な芝居しか知らない役者が「演じるな」と言われたり。演技論やメソッドへの風刺なのだろう。そんな彼らが、子供時代を振り返り、芝居=遊びと思い出すナンバー「Play」は、愉快ながらヒリッとするところも。

 もう一つ、強く感じたのは母性だ。ダイアンはこれまで売れっ子演出家として『ヘアー』『ポーギーとベス』『ピピン』『ウエイトレス』を手がけてきた。その傍ら、母親でもあり、2人の娘を育てている。以前、ダイアンにお会いする機会があったが、化粧っ気のない顔にストレートのロングヘア、眼鏡をかけて笑顔で現れた彼女に、こんなナチュラルな雰囲気の女性が演出しているのか!と驚いたものだ。母としての経験が作品に強い影響を与え、『ピピン』では子供の成長にフォーカス、この『ファインディング・ネバーランド』に至っては、母から子供達への無上の愛を感じさせる。

 シルヴィアは一見、無邪気で、想像力のたくましい、夢見がちな女性に見える。あれほど子供達にごっこ遊びを推奨する母親は、当時とても珍しかっただろう。そこは、バリと似た性質の持ち主だから……と思っていたが、後半、シルヴィアの置かれたシビアな状況がわかると、ああ、彼女は子供達に幸せであってほしかったのだ、現実を見せたくなかったのだと、胸が締め付けられる思いがした。そして、厳格な人物で、想像の世界から一番かけ離れていたはずのシルヴィアの母モーリエ夫人がラスト、「Neverland」のリプライズを歌う。ここでモーリエ夫人が歌う意味の大きさたるや、ダイアンの緻密さに感服した。バリの愛する人であり、愛する子供達の母親でもあるシルヴィアをどう旅立たせるか……。光に満ちたクライマックスの美しさは圧巻で、目に焼き付いて離れない。

 遊び心を持ち、想像する権利は、子供だけのものじゃない。大人にだって平等にある。そして想像することで、誰もが自由になれて、時には私たちが厳しい現実を生き抜く際の助けになる。地面に足がつかない時は、痛みなんて感じない。“ネバーランド”は誰もの中に存在すると、この作品は教えてくれる。

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

『ファインディング・ネバーランド』2017/9/7プレスコールより(撮影:五月女菜穂)

文=三浦真紀

公演情報
ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』

■日程:2017年9月8日(金)~24日(日)
■会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ 11階)※生演奏、 英語上演、 日本語字幕あり

■作詞・作曲:ゲイリー・バーロウ/エリオット・ケネディ
■脚本:ジェームズ・グラハム
■演出:ダイアン・パウルス
■振付:ミア・マイケルズ

■チケット料金:
S席 ¥13,000 A席¥11,000 B席9,000  U-25チケット¥6,500
プレミアム席 ¥15,000
(プログラム付/1F席の1列目~13列目、 2F席の前方席、 バルコニー席一部含む)

■主催:フジテレビジョン/キョードー東京/ホリプロ
■チケット問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799
■日本公演公式ホームページ:  http://findingneverland.jp 

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