かわせみ座人形師・山本由也とミュージシャン31人が連日コラボする「SESSION」今年も開催
山本由也とプラテーロ
「String Spirit of Japan 人形師 山本由也の世界」ロングバージョン(映像ディレクター:竹藤佳世)
読者の皆さんはさほど気がついていないだろうが(当たり前か)、僕は人形劇が大好きだ。こちらのサイトでもよく取り上げさせていただいているのはそのためである。もの言わぬはずの人形が、照明やBGMで彩られた空間で、力ある人形師の手にかかったときに言葉以上に雄弁な表情を見せることがある。その瞬間のカタルシスに、僕はぞぞぞっと背筋に走るものを感じキュンとしてしまうのだ。じゃあ、そういう人形師がたくさんいるのかといえば、もちろんそういうわけではない。その一人が「かわせみ座」の山本由也だ。山本は、自分自身がどういう物語のために、どういう人形を作るかを考え、その理想的な動きのために構造や素材、動かし方にいたるまで微に入り細に入り何度も何度も試行錯誤する求道者的なところがある。オリジナリティは世界でも類を見ないと思っている。山本いわく「私はせりふで説明しない人形自体の表現、表現力のある構造を追求しています。舞台で息づく表現者、役者として存在できる魅力ある人形こそが私の“人形”に対する理念なんです」と語る。舞台に立たせるまでに自身と人形の一体化を図る作業はまるで、人形を育てているかのうようでもあり、だからこそ生き生きと、リアリティーをもって動き出すのかもしれない。
人形とミュージシャンが心を通わせる瞬間がここにある
2016年の様子より
2016年の様子より
2016年の様子より
5年目を迎える「劇人形作品展」の会期中、今年も、さまざまなジャンルのミュージシャンを招いて人形とのコラボライブを行う。人形たちがミュージシャンのアプローチによって触発され、変幻自在な世界を紡ぎ出す、贅沢で稀有なセッション。全17ステージ、総勢31人のミュージシャンと日替わりで、その日にしか見られない競演のひと時が生み出される。
日本フリージャズ界の先駆者であるサックス&クラリネット奏者の梅津和夫、総勢23名の打楽器を中心とした「仙波清彦とカルガモーズ」や破壊派BAND「疑惑のイージーリスニング」を率いるパーカッショニストの仙波清彦、ゴッド・マウンテンというインディーズ・レーベルを主催するピアノ&電子楽器&メロトロン奏者のホッピー神山、古民具市で朽ちかけていた泰琴と出会ったことから日本唯一の泰琴奏者となった深草アキ、父親である詩人・谷川俊太郎とのデュオで活躍するピアニストの谷川賢作、「ピタゴラスイッチ」「やる気のないダースベーダーのテーマ」などでおなじみ栗コーダーカルテットのサックス&ハーモニカ奏者の川口義之、バンド「たま」の元メンバーでランニングシャツ姿が懐かしいパーカッション&ギター弾き語りの石川浩司といったそうそうたるビッグネーム、実力派若手陣が顔をそろえている。それにしても、これだけのメンバーをどうやって集めたのだろうか。山本に聞いてみた。
「皆さん、私が交渉しました。私が興味を抱いた方にfacebookで友達申請をしたり、ライブを聴きに行ってあいさつをしたり、音楽友達が紹介してくれたりいろいろな形で出会いをしてきました。NHK-BSの『公園通りで会いましょう』という1週間番組を仙波清彦さんが持っていて、プロデューサーの知人がかわせみ座をゲストに呼んでくださって仙波さんとセッションをしたことも一つのきっかけでした。その時、事前リハーサルをやったところで仙波さんが“梅津君も呼ぼうか…”とおっしゃったんですよ。本番は、仙波さんと梅津和時さんとコラボしました。またホッピー神山さんが音楽プロデューサーをされていた巫女さんのようなパフォーマーの方をお呼びしたライブでは、大勢の音楽家の方たちの中で人形を遣いました。そんなもろもろがきっかけになって、ミュージシャンの皆さんに気に入っていただいたのがご縁です。皆さん、人形とのコラボに興味を持ってくださって参加してくださっています。このシリーズではミュージシャンは人形を見て、僕は音楽を聞いて、お互いインスパイアされながらセッションしています。だからそれができる方に参加していただいている。最近では、どこかでチラシを見かけたというミュージシャンの方や、ミュージシャン同士のつながりで面白そうだからやってみたい声をかけてくださる方も増えてきました」
日本の音楽界の大御所がコラボを楽しみ絶賛する山本のユニークな人形パフォーマンスは、いわゆる人形劇とは一線を画す、まさにアートと言えるだろう。つまり山本と人形たちが、その瞬間その瞬間を本当に命を宿したかのように、自由自在に、しなやかに舞台上を生きていることが何よりも特質すべきポイントだと思う。だって、普通の人形劇の人形たちは物語を背負っているし、キャラクターという枠から飛び出すことが難しいから。かわせみ座の人形たちだって、物語もキャラクターも持ってはいるが、『ことばのないおもちゃ箱』『silent poems』という、その人形そのものの魅力を膨らませたイメージ豊かなオムニバス作品で鍛えられているのだ。
2016年の様子より
この記事のトップに掲載したのは、2016 年の公演の様子を収めた映像(YouTubeにて公開中)。「String Spirit of Japan」と銘打たれたこの映像のディレクションは、映画「あがた森魚ややデラックス」の監督でもある竹藤佳世が手がけた。
おっと、忘れてはいけない。そもそもは「山本由也 劇人形作品展」なのだ。海外でも定評のある劇人形を間近で見ることができる貴重な機会でもある。人はもちろん動物、植物、虫、精霊、妖精、紳獣、もののけ、無機物、架空の生き物などなどが皆さんを迎えてくれる。見て、感じて、彼らのトリコになってほしい。
《山本由也》1975年に糸あやつりの「竹田人形座(東京都無形文化財)」に入団。人形製作を竹田喜之助氏、操演を竹田扇之助氏に師事。1982年「かわせみ座」創立。現在は個人でも活動中。演出・操演・舞台美術、そして、人形の美術デザイン、設計、製作を手がける。世界で山本だけの独自の構造・操作方法・表現力をもつユニークな人形が魅力。木彫が得意、ビジュアルや構造力学にそって、木・皮・布・プラスチック・金属など、素材を使い分け、融合させてイメージする人形を創作し続けている。
【主な受賞歴】
1996年 ハンガリーBEKESCSABA 国際人形劇フェスティバル最優秀賞受賞
2012年 第21回ウニマ世界人形劇フェスティバル・優秀作品賞受賞
【海外公演】
2002年 モロッコ・チュニジア・イスラエル(日本大使館・国際交流基金主催公演)
2003年 韓国ソウル・チョンドン・シアター公演
2005年 イタリア(ラヴェンナ、カンピリアマリッティマ)・スコットランド(エディンバラ公演)
2007年 香港・アジア人形劇シリーズ公
2008年 メキシコ、セルヴァンティーノ国際芸術祭(グアナファト、レオン、メキシコシィ)
2012年 ウニマ世界人形劇フェスティバル招待(今回の開催国・中国…成都市、南充市)
2013年 アメリカ・ナッシュビル国際人形劇フェスティバル招待
2015年 リトアニア・エストニアのフェスティバルに招待
2016年 アメリカ・ナッシュビル国際人形劇フェスティバル招待
2013年~ 毎年秋に 2~3 週間の個展&コラボライブを東中野ポレポレ坐で開催
2017年 10/3~10/22 日替りゲストとコラボを 17st 予定
文=いまいこういち
■日程:2017年10月3日(火)~10月22日(日)
■会場:space・cafe ポレポレ坐
【人形展】
■開演時間:営業時間:10:00~18:00 ※10月16日(月)休
■料金:入場無料 ※ライブの1時間前より、ライブ中は作品展観覧のみの入場不可
【COLLABORATION LIVE】
10/ 4(水)藤野由佳(アコーディオン)&三浦咲(マリンバ)
10/ 5(木)深草アキ(秦琴)
10/ 6(金)Miya(フルート)&平山織絵(チェロ)&荒井靖水(薩摩琵琶)
10/ 7(土)三輪福(舞い、水晶ボール)& Hibiki Kanna(ゆう琴、篠笛)
10/ 8(日)夏秋文彦(鍵盤ハーモニカ、ピアノ、コンツェフカ)&Misao(ヴァイオリン)
10/ 9(月)谷川賢作(ピアノ、弾き語り)
10/10(火)梅津和時(サックス、クラリネット)&Samm Bennett(パーカッション)
10/11(水)川口義之(栗コーダーカルテット・リコーダー、サックス)&
関島岳郞(栗コーダーカルテット・リコーダー、チューバ)
10/12(木)仙波清彦(パーカッション)& 高橋香織(ヴァイオリン、ヴィオラ)
10/13(金)海沼正利(パーカッション)&上野山英里(ピアノ、キーボード)
10/14(土)ホッピー神山(ピアノ、電子楽器、メロトロン)
10/15(日)中田真由美(シンガーソングライター、ギター) &村木充(コントラバス)
10/17(火)Hackai(シャルキイロマ、ウード) &石川浩司(元たま・パーカッション)
10/18(水)立岩潤三(パーカッション) &蔡怜雄(トンバク、ダフ、サントゥール)
10/19(木)小栗久美子(トルン奏者) &森川拓哉(ヴァイオリン、ピアノ)
10/20(金)塚本功(ギター、ヴォーカル)
10/21(土)星 衛(チェロ、和笛) &小川紀美代(バンドネオン)
■開演時間:19:00(要予約) ※10月3日はオープニングパーティのみ
■料金:各公演3,000円/全ライブフリーパス13,000円
■問合せ:ポレポレタイムス社 Tel.03-3227-1405 / event@polepoletimes.jp
space・cafe ポレポレ坐 http://za.polepoletimes.jp/