110年の伝統と信頼に出会う 『2017 東美アートフェア』開幕レポート

レポート
アート
2017.10.15

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10月13日より15日まで、新橋・東美ミュージアムにて『2017 東美アートフェア』が開催されている。今年のテーマは「110年の伝統と信頼」。110年の歴史をもつ東京美術倶楽部とその組合員による全102軒のブースで、一流の美術商により厳選された一級の美術品が来場者を迎える。

前坂晴天堂 色絵梅竹虎文十角皿 柿右衛門

前坂晴天堂 色絵梅竹虎文十角皿 柿右衛門


松本美術 伊勢 奥西希生

松本美術 伊勢 奥西希生

110年の伝統×102の一流

展示会場は1、3、4階にわたり、その内容は近現代の絵画から古書、古美術、茶道具など幅広い。

永善堂画廊は『山口華楊・竹内浩一展』と題し、京都を代表する日本画家である山口華楊と竹内浩一の作品を展示。この二人は師弟関係にあり、動物画家としても知られている。ギャラリストの方は「当初、竹内先生は『山口先生と2人展をすること自体恐れ多い』とさえおっしゃっていましたが、今回の東美アートフェアを機にご一緒されることになりました」と初の二人会に至った経緯を紹介した。

「永善堂画廊」より

「永善堂画廊」より


『渡辺貞一生誕100周年記念展』と題したブースを構えるのは至峰堂画廊だ。日本の近代洋画家である渡辺貞一を紹介する。明るく華やかな作風ではないが、「暗いだけでなく、人間を温かい目で見て描かれている。ナイーブで繊細な作風は今の時代にも受け入れられやすいのでは。人気が出はじめたころに他界してしまったため、知る人ぞ知る作家です」とギャラリストは魅力を語る。

「至峰堂画廊」より

「至峰堂画廊」より

万葉洞のブースでは、与謝蕪村『山水図』に加えて、平安時代の古筆も目を引く。細く滑らかな連綿(※続け字をする書法のこと)が“こより”のようであることから「紙捻切(こよりぎれ)」と呼ばれている。繊細な筆運びと文字そのものの美しさは、ぜひ本物でたしかめてほしい。他にも、応挙の美人画や、池大雅の風景画等が出品されている。

万葉洞 山水図 与謝蕪村

万葉洞 山水図 与謝蕪村

ギャラリストの方は桃山時代の平鉢を手に「お好きな方は、こういう焼き目をご覧になって本当に喜んでくださるんです」と笑顔をみせる。勢いのある筆運びで描かれた大根の絵や、表面にくっきりと残るロクロで廻した跡からも、生き生きとした魅力を感じられた。


小西大閑堂が出品する仏器には、東美アートフェアのラインナップの幅広さを感じさせられた。弘法大師が中国より日本に持ってきたものをベースに、鎌倉時代の日本で独自にアレンジを加え作られたものなのだそう。須弥壇(しゅみだん)で護摩をたく時などに使われるような、音を出す道具だ。実際に鳴らしてくれた音は、柔らかく澄んで聞こえた。かつては「平安時代以前のものでないと仏教美術ではない」という見方があったが、近年では鎌倉時代のものも仏教美術として認められるようになってきているという。

「小西大閑堂」より

「小西大閑堂」より

現代の感覚にフィットする伝統技法

ギャラリー長谷川 伝説の湖 鳥羽 美花

ギャラリー長谷川 伝説の湖 鳥羽 美花

現代美術を出品するブースには、しばしば作家本人も姿をみせていた。洗練された華やかさの中にある生命力にひきつけられ、思わず足がとまったのはギャラリー長谷川のブース。鳥羽美花による日本独自の染色技法「型染め」を用いた作品が紹介されていた。繊細で複雑な作業は18工程にも及ぶが、鳥羽はそれをたったひとりで手掛け表情豊かな絵画世界を創り出している。今後はベトナム・ダナン市におけるAPECサミット記念展覧会『鳥羽美花 ベトナム・ミクロコスモスの世界』も予定されており、ますます目が離せないアーティストだ。

「ギャラリー長谷川」より、鳥羽美花氏(染色画家)

「ギャラリー長谷川」より、鳥羽美花氏(染色画家)


「ギャラリー長谷川」より

「ギャラリー長谷川」より

増保美術の『東園基昭 日本画展 ―心珠のuniverse―』では、パンダや苺、ハリネズミ等、現代の感覚でも親しみやすいモチーフの日本画が展示されている。しかし歩み寄るほどに見えてくるのは、本来の意味を失うことなく描きこまれた伝統的な文様だ。たとえば苺の絵の中には、桜の林と春霞が「ほとんど面相筆しか使わない」というのも納得の緻密さで描かれている。小ぶりでありながら、その中に広がる深い世界に吸い込まれそうな心地がした。

「増保美術」より

「増保美術」より


「増保美術」より、東園基昭氏(日本画家)

「増保美術」より、東園基昭氏(日本画家)

アートフェア巡りの合間に

2階の茶室「済美庵」では、表千家、裏千家、官休庵(武者小路千家)の先生方が亭主となり、呈茶席と呼ばれる略式の茶席を用意してくれる(500円税込)。窓の外にはビルの中とは思えない日本庭園が広がる。

東京美術倶楽部 茶室「済美庵」からの眺め

東京美術倶楽部 茶室「済美庵」からの眺め

所属するのにも厳しい審査のある東京美術倶楽部。そこに所属する美術商約500軒の中から厳選された102軒の美術商による、一級の美術品に出会える『2017東美アートフェア』は、10月15日までの開催。

「もろはし美術店」より

「もろはし美術店」より

 

イベント情報
2017 東美アートフェア

会期:2017年10月13日(金)~15日(日)
会場:東京美術倶楽部 東美ミュージアム
東京美術倶楽部公式サイト:http://www.toobi.co.jp/artfair/​

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