H ZETTRIO万感の人見記念講堂ファン感謝ワンマン 満員の2000人超が酔いしれた唯一無二のステージとは
H ZETTRIO
H ZETTRIO IN TOKYO ~秋の大感謝祭~ 2017/10/14(Sat) 昭和女子大学人見記念講堂
H ZETTRIOが、10月14日(土)に昭和女子大学人見記念講堂にて、2017年の集大成ともいえるホールライブをいよいよ開催した。この公演は、約3ヶ月半に及ぶ全35公演のロングツアーに参加した方、もしくはが取れなかった為に参加できなかったファンへのサプライズとして、このライブの開催を決めたという。それは正に集大成と呼ぶにふさわしい、彼らの魅力がたっぷりつまったライブとなった。
彼らは今年、本当に様々な会場にてライブを行ってきた。ライブハウスから、フジロックのような野外ステージまでバラエティに富んだ場所にて、圧倒的パフォーマンスを繰り広げてきたが、今回のこの2000人クラスのホールでのアクトというのは、それのどれとも趣が違うものに感じた。それと同時に彼らは、大小、屋内外を問わず、その環境ごとに音楽とパフォーマンスが同化し、その場所の魅力と自身の音楽を最大限引き出すことができる、稀有な存在なんだということに気づかされる。
H ZETT M
このライブの頭を飾るのは、昨年のチャリティーイベント『マカロンデー』とコラボレートした「夢と希望のパレード」。1曲目から早くも、楽しくてどこかファンタジックな異世界を演出し、観客を虜にしていく。この時点で大量のお菓子を前にした子供のような気持ちに戻らされ、ワクワクが止まらなくなる。「Next step」から挨拶MCを挟み「HAVE A NICE DAY!」、「Happy Saturday Night」、「Wow Wow Wow」と実にハッピーなナンバーが前半を彩っていく。
中には得意の篠笛で有名映画のテーマ曲をオマージュしたりなど、茶目っ気や道化的なアプローチも忘れない。
H ZETT NIRE
今回特に感じたのは、実に出てくる音が良いということ。チープな表現に聞こえるかもしれないが、ライブハウスなどで聴くのとはまた一味違ったホールならではの音の良さで、耳触りがとても心地いいのだ。またライブとしての流れも、フェスなどで短いセットリストで一体感を生み出していくような、ライブというよりも、しっかりとした流れやじっくり魅せるという演出がなされた「ショー」であると感じる。
MCでは、メンバー3者が相変わらず自由に喋り笑いを誘っていた。そして「今年を振り返る」というH ZETT Mの言葉から、MV「Fiesta」や5月5日のイベントなどでもコラボレーションをした、パフォーマンス・ユニット「ポイラボ」を呼び込み、今年彼らが行った「面白い取り組み」の一つである、6か月連続配信シングルリリースという企画にて公開された楽曲を、メドレーで演奏するという豪華なコーナーへと突入していった。
H ZETTRIO × ポイラボ
前半の山場ともいうべきこのセクションは、視覚的にも聴覚的にもお客さんにとってはたまらない時間だった。「NEWS」、「Fiesta」ではポイラボが、「ポイ」といわれる光る棒をつかったパフォーマンスでステージを縦横無尽に駆け回り、時には文字を、時にはロウソクを表現するなど、光の帯を観客の目に焼き付けていく。いまや水曜日のカンパネラや、各種テレビでの様々なコラボで有名な彼らだが、やはりこうしたライブとのコラボは音楽の効果を増幅させてシナジーを生みだしていく。その後も曲ごとに様々な演出が飛び出していく。特にジャグリングなどは、H ZETTRIOの雰囲気、H ZETT Mの少し道化がかったパフォーマンスと実にマッチするし、「MESHI KUTTE YEAH!」ではパルーンアートで巨大なおにぎりを作るなどエンタメ性の高い見せ方も忘れない。
そして改めて思うのは、H ZETTRIOにはこういうコラボが実に似合うし、映えるなということ。というのも、勿論彼らのステージとしてのライブ、音だけでも十二分に満足できるのにもかかわらず、こうしたパフォーマンスと合わさると、一変して極上のBGMにも成れてしまう。しっかりとパフォーマンス側を主役にも仕立てあげることができるのだ。全て相手の技を受けきった上で、相手の良さを全部引き出してから、自分の必殺技もしっかりだしていく一流のプロレスラーのようだ。こうした、状況に合わせた千変万化的な見え方、聞かせ方ができるのが彼らの強みであり、魅力である。
H ZETT M
続くMCでは「曲もたまってきたので、来年ニューアルバムがあるかも…」とこれからの彼らに、大いに期待がもてそうな一言をはさみ、ここからライブはしっとりゾーンへ。一本のライブで、こうした映画をみているような、様々なテンションで楽しめるのも、ホールワンマンの魅力かもしれない。
やさしくもノスタルジックな旋律を奏でる「Memory」から、どこかオリエンタルな雰囲気とジブリの世界のような幻想感で、切なくも優しい気持ちになれる「Den-en」。更にJ-POPとJAZZの良い所取り的おしゃれナンバー「YOU」と続き、しっとりゾーンと括られていながらも、様々なシチュエーションを想起させてくれる楽曲達が綴られていく。しかも普段よりも抑揚が丁寧に織り込まれた印象で、聴かすように、届けるように3人が音にのせているのがわかる。
H ZETTRIO
そして、ここからは後半の山場。「ちょっと立ってみますか」のMCを合図にお客さんはここからスタンディングスタイルとなり、早速の手拍子とコールアンドレスポンスから「Neo Japanesque」へ。一気に前半のホール仕様から、演者もお客さんもライブモードへシフトする。入場時に配られた赤・青・銀(白)のメンバーのパーソナルカラーを配した、サイリウムが横に揺れる揺れる。ライブ行ってみたいけど、ピアノトリオってちょっとノリかたがわかんないから……なんて方はご安心めされよ。どんなライブにも負けないノリで皆が音にノっているし、どんな人でもここに参加すれば一発で楽しめるだろうという空間が広がっていた。また、ノリノリにさせておいて、途中お祭りの音頭的なブレイクで笑いを誘うことも忘れないのが心憎い。
「LOVE AND PEACE AND SWEETS」ではH ZETT Mが、ギターヒーローさながらのとんでもないスキルでショルダーキーボードをかき鳴らす。本当にこの人は鍵盤モンスターだ。少し難しい変拍子のノリにもお客さんが合わせているのも印象的で、当たり前のようにこんな超絶変態スキルの演奏を見続けているもんだから、ファンの皆さんにも超絶視聴スキルが身についているんじゃないかと感じる。
H ZETTRIO
H ZETT M
しかしH ZETTRIOの3人は、SPICEでもかなり長い間ライブも追わせていただいているのだが、去年から比べてもこの一年でぐっとグルーヴが練れており、より強固になっていることを、次曲の「パノラマビュー」を聴いてあらためて認識した。縦の揃い、ノリの走り方が明確に気持ちよくなっている。本編ラストの「Beautiful Flight」まで最高の一体感で駆け抜け、落ちサビでのバックライトがあたったシルエットの3人の姿には、こみ上げるものを止められなかった。
鳴り止まないアンコールの中、一度降りた緞帳が、ストリングスによる「Wonderful Flight」の音色であがっていく。この日一番の歓声とともに文字通り幕を開けると、玉響(たまゆら)ストリングスのカルテットが美しい旋律で同曲のメロディを奏でている。そしてその音色の中、メンバーがシルエットともに登場し、正調の「Wonderful Flight」へと流れ込む。これが実に壮大で、正に目の前に大空が広がるような高揚感で会場を包んでいった。
H ZETTRIO×玉響ストリングス
ここで一つ特筆すべきは、メンバー3人の衣装。このアンコールになって初めてフォーマルなスーツ姿にて登場したのだ。実際の本編はTシャツスタイルで、アンコールでフォーマルという、ステレオタイプ的感覚でいうならば、本来は逆のように思えるこの衣装チェンジ。だがシニカルな仕掛けを好む彼らならば、納得の演出に思えてしまう所が実に心憎くもあり愛らしくもある。
MCにて「クリスマスアルバム」のリリースがアナウンスされ、玉響ストリングスとのコラボレーションにて同アルバムに収録される「光のヒンメリ、輝く街」へ。去年に引き続き、阪急百貨店うめだとのコラボレーション楽曲だが、これは正に直球のクリスマスソングという様相。昔から語り継がれていた名曲としてのクリスマスソング、と言われても遜色がないくらい、一気に会場が12月色に染められ、何とも言えない多幸感と感動が広がる。
H ZETTRIO×玉響ストリングス
そしてグランドフィナーレは彼らを、「色々な意味」で代表するといっても過言ではない「Dancing in the mood」で完璧な締めくくりを行った。
2017年の集大成であると共に、演奏、パフォーマンス、何より会場に詰めかけた満員のお客さんの充足感が、彼らのこれから歩いていく道が明るいことを示していた。ファン感謝と銘打った公演だけに、このショーを目にした誰もが改めて彼らを好きになり、またもっと好きになりたいと願い、いくらでもこの空間に身を投じていたいと思ったのではないか。そんな「想い」が寄り集まった、ハッピーでピースで、おもちゃ箱をひっくり返したような、笑顔の絶えない夜だった。
ひとまずはこのH ZETTRIOという"おもちゃ"を一度片づけなければいけない寂寥感を感じつつも、これからまたどんな時間が共有できるんだろう、という期待感をも感じさせてくれた彼らの、残りの2017年と2018年以降にも大いに期待したい。
H ZETTRIO×玉響ストリングス×ポイラボ
取材・文=秤谷 建一郎 撮影=西岡 浩記
12/9(土) 福岡 BEAT STATION
12/19(火) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
12/20(水) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
12/24(日) 北海道 中標津町総合文化会館 しるべっとホール
12/28(木) 東京 LIQUID ROOM
光のヒンメリ、輝く街
H ZETTRIOのChristmas Songs