絆ありすぎる落語会~柳亭小痴楽×瀧川鯉八×神田松之丞にインタビュー『明治座らくご祭 2017』
(左から)瀧川鯉八、柳亭小痴楽、神田松之丞
2017年11月29日より5日間、東京・明治座にて『明治座らくご祭2017~わっと笑って年越そう~』が開催される。期間中は毎日4席×5日間、あわせて19名の落語家が登場する。5日間連続の落語会は、歴史ある明治座にとっても初めての試みだ。落語ファンの方々だけでなく、普段お芝居で明治座にお越しの明治座ファンの方々にとっても気になるイベントではないだろうか。
落語家の柳亭小痴楽(りゅうていこちらく)、瀧川鯉八(たきがわこいはち)、講談師の神田松之丞(かんだまつのじょう)へのインタビューで、全5日間の見どころ、打ち上げの楽しみ方、そして3人の関係について伺った。
わっと笑って年越そう
――『明治座らくご祭 2017』が迫ってまいりました。会場は、明治座5階『菊の間』です。
神田松之丞(以下、松之丞) 歴史ある明治座さんに呼んでいただけるなんてうれしいですよね。150名というキャパシティは、落語にも講談にも向いています。
柳亭小痴楽(以下、小痴楽) 最近は大きな劇場が、落語会を企画してくださる機会も増えています。会場は大舞台の一歩手前にある食堂とかロビーなんですが(笑)、色んなお客さんに観ていただくきっかけになり楽しみです。キャパシティもだけれど、名前もいいよね。
――名前ですか?
小痴楽 「きくの間」でしょ?
瀧川鯉八(以下、鯉八) 兄(あに)さん、草かんむりの「菊」ですよ?
小痴楽 ああ、そっちか。
松之丞 「聴くの間」はないでしょう(笑)
――フライヤーにも「流派を超えて、次世代エースが大集合」とあるとおり、賑やかな顔ぶれです。初日(三遊亭萬橘、立川こはる、桂宮治、春風亭昇也)から、見どころをご紹介いただけますか?
小痴楽 5日間とも真打1人と若手3人、あわせて4人が出演します。初日はまず昇也さん。この人はオールラウンダーです。高座に上がる順番に関わらず、とても器用にこなせます。宮治さんはウワッと盛り上げるダイナミックな落語。こはるさんはとてもきれいな芸をみせてくれます。二ツ目3人の後、トリが萬橘兄さん。お客さんをゲラゲラゲラ!って笑わせる、真打の落語を聞かせてくださると思います!
※真打・二ツ目:東京の落語家には、前座・二ツ目・真打と階級があります。
――つづいて2日目(古今亭文菊、小痴楽、春風亭昇々、柳亭市弥)。小痴楽さんが出演なさる日ですね。
小痴楽 文菊兄さんとは協会は違うのですが、前座時代からお世話になっています。昇々、市弥、僕の若手3人は、普段から仲の良いメンバー。市弥さんはパァッと明るい芸風。昇々さんは新作落語と古典落語、どちらの可能性もありますが頭がちょっとね。あれな方ですからね(笑)。どういうことになるか楽しみにしててください。そして僕は古典落語。元気いっぱいの3人の後に、トリは真打の文菊兄さん。お芝居のようにきれいな古典落語で「先ほど若手が色々やっていましたが、本当は落語ってこうですよ」と締める。そんな日です。
松之丞 こう言われるのは嫌かもしれないけれど、きれいな日だね。
鯉 八 イケメンぞろい。
小痴楽 いやいやいや。
松之丞 女性のお客さんも多そう。いやらしい回だな。
鯉 八 作為を感じますね。
――3日目(三遊亭兼好、鯉八、春風亭正太郎、春風亭一蔵)は、鯉八さんが出演されます。
鯉 八 真打の兼好師匠が大爆笑の芸をみせてくださると思います。若手は正太郎兄さんは端正な落語を、一蔵さんは爆笑の落語を。この中ですと、僕は少しおとなしい、落ち着いた感じです。新作をやるのもおそらく僕だけですから、この日の目玉は僕ですね。
――(笑)。4日目(桂文治、笑福亭鉄瓶、入船亭小辰、昇也)はいかがですか?
小痴楽 笑福亭鶴瓶一門の鉄瓶兄さん。マクラからパパパパッと本当に面白い!小辰さんは今活躍する二ツ目の中でも、特にきれいな落語を聞かせてくれる人です。
松之丞 鉄瓶兄さんの上方落語と小辰さんの江戸前落語、対比が面白そうですね。
小痴楽 そしてトリの真打が文治師匠。間違いないです!
鯉 八 落語芸術協会の大スター。大看板!
――初日にお名前のあった昇也さんが、再度登場されます。
小痴楽 昇也さんは、オールラウンダーなので(笑)。
鯉 八 兄さんさっきからオールラウンダー、オールラウンダーって。それ、他に何もない時に使うやつじゃないですか!
松之丞 じゃあ何ができるんですか?って話ですよ。
小痴楽 昇也さんはオールラウンダーですから(笑)
――最終日(三遊亭遊雀、笑福亭べ瓶、三遊亭好の助、松之丞)は、5日間で唯一の講談師、松之丞さんがお出になる日です。
松之丞 落語家の皆さんの中に、混ぜて呼んでいただき光栄です。最終日は5日間の中でも特に幅広いジャンルをお楽しみいただけるのではないでしょうか。真打の遊雀師匠、上方落語のべ瓶兄さん、そして二ツ目の好の助兄さんに講談の僕。遊雀師匠は、先に高座に上がった出演者たちの噺からネタを拾い、ご自分の落語の中に織り込んで聞かせるという名人芸をお持ちです。その日その場だけの特別なものを創ってくださるスペシャルな真打、三遊亭遊雀師匠の即興ぶりを体験いただければと思います。……って、俺、大御所みたいなコメントしてるな。
一同 (笑)
打ち上げ懇親会では気軽に話しかけて
――初めて『明治座らくご祭』の情報を拝見した時、実は「落語会としては少し高いな(6500円税込)」と感じました。後で気づいたのですが、これは終演後の打ち上げを含む料金なのですね。
鯉 八 打ち上げには僕らも参加させていただくんですよね。
小痴楽 うん。
松之丞 僕も普段はあまり参加しない方なのですが、今回は明治座さんということで!この日の夜に独演会があってお酒はいただけないのですが、お客さまとお話しすると結構気づくことも多いので楽しみです。
鯉 八 小痴楽兄さんの日は、打ち上げも女性がたくさんいそうだな。イケメンの日ですから。
小痴楽 うるせえなあ(笑) 30日は文菊兄さんがいるから二次会があるかもな。「もう一軒いこうよぉ♪」って。
――打ち上げでは写真撮影がOK。フィンガーフードをおつまみに、日本名門酒会さん提供する日本酒7種が飲み放題となるそうです。
小痴楽 飲み放題か!開始10分でブラック文菊が出ちゃう気がする!
一同 (笑)
※文菊師匠はお酒がお好きなようです(ご参考:公式PV)
明治座の2階には劇場の歴史を振り返るパネルが展示されています。
鯉 八 3日目の打ち上げでは兼好師匠と僕が、小粋なジョークでおもてなしします。一蔵さんや宮治さんはお客さんを盛り上げてくれそうですね。それにひきかえ小痴楽兄さん、そういうのが苦手なんですよね。
小痴楽 苦手。ほとんど自分の席から動かない。「話があるならお前がこい」って言っちゃうよ。
鯉 八 そのせいで自分の落語会の打ち上げなのに、ぽつんと一人で飲んでる瞬間がありますもんね。
小痴楽 あるね。そのタイミングでお客さんが話しかけてくれたら、俺泣きながら「ウン、ウン」ってなるかもしれない(笑)
――小痴楽さんファンの方は、そこが狙い目ですね(笑)。他に打ち上げを楽しむためのアドバイスはありますか?
小痴楽 芸の話以外でお願いします(笑)
松之丞 大人数の打ち上げですから、初めての方も参加しやすいパーティのような雰囲気でしょうか。ぜひ気軽に話しかけていただきたいです。
鯉 八 「おもしろかったよ」なんて一言いただけたらうれしいですね。
――皆さんはプライベートでも仲が良いのですか?それぞれにご活躍の場を持ちながら、一緒に全国各地を巡る『旅成金』という落語会を続けていらっしゃいますね。
小痴楽 しょっちゅう一緒に遊んでいますね。
鯉 八 一番先輩である小痴楽兄さんの、懐が大きいんです。おかげで楽しくやれています。
松之丞 良いことか悪いことかは分かりませんが、本当に気をつかわずにやらせていただいています。それを許してくれることが、ありがたいですね。
小痴楽 マツ(松之丞)なんか、声をかけても返事してくれない時があるからね。こっちが淋しそうな顔してるのをチラっとみて、鼻でフッて笑って結局シカト。
鯉 八 それ、気をつかう以前のレベルじゃないですか!
松之丞 逆に僕が淋しいなと思っている時は、だいたい兄さんの方から話しかけてくれます。いいバランスですよ(笑)
――バランスの良さは、高座にも良い影響を与えますか?
松之丞 チームワークを作りやすいですね。
小痴楽 自分の前にあまり知らない方が出ていると、何のネタをやって客席がどんな空気になって自分の出番が回ってくるのか、結構気になります。このメンバーならその心配がありません。客層をみれば「今日はハチ(鯉八)はあのネタをやるだろうな」とだいたい分かるので、「じゃあ自分はあれをやろう」とイメージしやすくなります。それと同じことが『明治座らくご祭』でも言える気がします。
松之丞 出演者19名が、全員お互いをよく知る同士なんですよね。
小痴楽 今回僕ら3人の出演日は別々ですが、5日間のどの日でもお客さんだけでなく芸人も絶対楽しい1日になるよね。
――古典落語(小痴楽)、新作落語(鯉八)、講談(松之丞)と、皆さんジャンルは異なりますがお互いの芸を意識したり、嫉妬することはありますか?
小痴楽・鯉八・松之丞 そりゃあ、あります!
松之丞 それでもお互いに、めちゃくちゃウケた時、めちゃくちゃウケなかった時、両方を知る仲ですからね。両方を知っているからこその情とか信頼もあります。後輩から言うことではありませんが、この人の実力を知っているからこその敬意もある気がするんです。
鯉 八 それ……、絆、じゃないですか?
一同 おおー。
松之丞 少し脱線しますが、兄さんが伊豆の会でやっていた『干物箱(ひものばこ)』めちゃくちゃ良かったです。舞台袖でみていて、やっている途中から分かるんですよ。「これはめちゃくちゃいい芸をしているな」って。「やっている兄さんもそう思っているだろうな」「最後までうまくいくといいな」「最後までうまくいった」「オチもあってるあってる!」「兄さん笑顔で帰ってくる!」「めちゃくちゃ良かったですね!」と。
小痴楽 その時のこと、俺も覚えてる。
松之丞 同じ『干物箱』でも、その日のお客さんにあわせて「こうやりたい」と目指す形は変わります。その日、まさに理想の形になっていて、お客さんとこの人に一体感が生まれている。その瞬間を素晴らしいと共感できるのは、これが理想とする落語を知っているからなんです。そういう間柄ではお互いへ嫉妬するよりも、それぞれが理想とする形でウケるといいなと思えるようになるんです。
小痴楽 言ってることはすごくいい事なんだけどさ、今、先輩のことを「この人」って言ったよね。
鯉 八 「これ」も言いました。
松之丞 そこは僕もさ……、絆、ありすぎるから(笑)。
――読者の方へお誘いのメッセージをお願いします。
鯉 八 長い歴史のある明治座さんに、新作落語の僕を呼んでいただけたことをうれしく思います。僕は12月1日金曜日に出演します。週末の夜、明治座と鯉八の融合をご覧ください。皆様のご来場を厚くお待ちしております。
小痴楽 30日は落ち着いた会になると思います。
鯉 八 あえて言っちゃいましょうよ、イケメンの日って。
松之丞 嫌かもしれませんが、仕事ですから。
鯉 八 本当にイケメンかどうか確かめに来てくださいって。
小痴楽 絶対嫌だよ!(笑) 若手3人が元気な落語を文菊兄さんにぶつけ、兄さんがそれを“いなす”回です。打ち上げではみんなで楽しくお酒を飲みましょう!
鯉八・松之丞 いいですねー。
――最後に松之丞さんお願いします。
松之丞 私、神田松之丞は『明治座らくご祭 2017』千穐楽に出させていただきます。大トリの遊雀師匠がどんなネタをかけてくれるかを楽しみに足をお運びください。講談は僕ひとりですから「落語もいいけど講談もいいね」と思っていただけるよう頑張ります。冬は、落語にも講談にも名作が多くございます。バリエーションに富んだ12月3日、千穐楽にふさわしいメンバーでお待ちしております!
(よどみないコメントに)
一同 おおー!
『明治座らくご祭 2017』は、11月29日(水)から12月3日(日)までの開催。
取材・文・撮影=塚田史香
■会場: 明治座5階「菊の間」
■出演:
11月29日(水)18:30 開演 ( 18:00 開場 ) 三遊亭萬橘、立川こはる、桂宮治、春風亭昇也
11月30日(木)18:30 開演 ( 18:00 開場 ) 古今亭文菊、柳亭小痴楽、春風亭昇々、柳亭市弥
12月01日(金)18:30 開演 ( 18:00 開場 ) 三遊亭兼好、瀧川鯉八、春風亭正太郎、春風亭一蔵
12月02日(土)14:00 開演 ( 13:30 開場 ) 桂文治、笑福亭鉄瓶、入船亭小辰、春風亭昇也
12月03日(日)14:00 開演 ( 13:30 開場 ) 三遊亭遊雀、笑福亭べ瓶、三遊亭好の助、神田松之丞
■公式サイト:http://www.meijiza.co.jp/lineup/2017_11_02/