クリスマスの名曲をEテレ『ららら♪クラシック』で。歴史的知識もグンとアップ
花井(左)の指揮で、グレゴリオ聖歌を歌う
12月22日(金)のEテレ『ららら♪クラシック』は、クリスマス音楽をタイムトラベルしながら楽しめる。千年以上前から歌われているグレゴリオ聖歌や、誰もが口ずさめる『きよしこの夜』などの史実が、映像や専門家の解説を交えて紹介されるのも面白い。埼玉県上尾市文化センターでの公開収録。
オープニングは、ビング・クロスビーの大ヒット曲『ホワイトクリスマス』。室内合唱団のハルモニア・アンサンブル(以下、ハルモニア)の澄んだ歌声で、会場は一気にクリスマスモードに。古楽オーケストラのラ・ムジカ・コッラーナ(以下、ムジカ)は、ここでは5人編成で演奏。
ハルモニア・アンサンブルの美しいコーラスが会場を包み込んだ『ホワイトクリスマス』
司会の高橋克典は「両親ともにクリスチャンだったので、クリスマスは教会に行って静かに過ごしていました」などと、子供の頃のクリスマスの思い出を語る。やがて、ホリゾントにタイムスリップ映像が流れ、中世ヨーロッパへ…。
修道士に扮した男性5人がステージに登場し、グレゴリオ聖歌の『きょうキリストがお生まれになった』を厳かに歌う。ハルモニアのテノールとバスによる男声アンサンブルに、古楽演奏家の花井哲郎が加わって指揮も。心洗われるハーモニーに、高橋も感動の様子だった。
宗教音楽や古楽に詳しい音楽学者・金澤正剛による、グレゴリオ聖歌の解説が始まる。カトリック教会のローマ典礼聖歌で、拍子はなく、ラテン語の歌詞に抑揚をつけて、単旋律をユニゾンで歌っていたことや、市井でも歌われ、例えばイギリス民謡の『グリーンスリーブス』のように、世俗のさまざまな音楽に姿を変えて広まったりしたなど、興味深い話が続いた。ひとつのメロディーにいろいろな歌詞をつけて歌う「替え歌」を昔の人も楽しみ、今日まで歌い継がれている曲があるとは感慨深い。客席では、うなずいたりしながら聞き入る姿がみられた。
次いで、約300年前のバロック時代にタイムトラベルし、イタリアの作曲家・コレッリの『クリスマス協奏曲』から『パストラーレ』をムジカが10人編成で演奏。また『グリーンスリーブス』に変化したといわれる『このみどりごはだれ?』をハルモニアとともに披露した。
日本でも愛唱されている『きよしこの夜』は、200年前にオーストリアの小さな村で生まれ、欧米へ広まり、明治の初めに日本に伝わったといわれる。その経緯には興味深い事実が多数あるので、これはぜひ放送で楽しんでいただきたい。
フィナーレで『きよしこの夜』を指揮する宮川彬良
ゲストで作曲家の宮川彬良がハルモニアのコーラスに感動し、「それぞれのメロディーを唱えて、しかもキレイにハモっている状態は人と人が交わる理想形。美しい和声は社会の理想形……」などと、持論を熱く語る場面も印象に残った。
最後に、宮川の指揮で、ステージと客席が一緒になって『きよしこの夜』を歌い、収録を和やかに締めくくった。
文=原納暢子
■会場:上尾市文化センター大ホールで収録
■出演:司会 高橋克典(俳優)、牛田茉友(NHKアナウンサー)
(古楽オーケストラ)ラ・ムジカ・コッラーナ
(合唱)ハルモニア・アンサンブル、花井哲郎
【ゲスト】金澤正剛(音楽学者・国際基督教大学名誉教授)、宮川彬良(作曲家)
■曲目:
「ホワイトクリスマス」 アーヴィング・バーリン:作詞・作曲 ニウ ナオミ:編曲
ハルモニア・アンサンブル、ラ・ムジカ・コッラーナ(クィンテット)
花井哲郎とハルモニア・アンサンブル(男声コーラス)
ラ・ムジカ・コッラーナ
ハルモニア・アンサンブル、ラ・ムジカ・コッラーナ
ハルモニア・アンサンブル、ラ・ムジカ・コッラーナ