春風亭ぴっかり☆に聞いた『ぴっかり☆春一番!2018』若手女流勢ぞろいの落語会を開く理由

インタビュー
舞台
2018.1.9

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春風亭小朝に入門後、寄席の高座から舞台作品まで幅広い活躍をみせる落語家の春風亭ぴっかり☆(以下、ぴっかり☆)。落語界ではまだまだ若手の二ツ目でありながら、10日間連続公演を開催し成功させた。そんなぴっかり☆が2018年春、若手女流だけが登場する4時間半の公演『ぴっかり☆春一番!2018』を開催するという。

今や「女流だから」「かわいいから」というだけでは説明のつかない注目度のぴっかり☆に、2017年のこと、2018年の意気込み、そして女流落語家としての思いを聞いた。

2017年を振り返って

――2017年も積極的に自主公演を開かれていましたね。記憶に新しいのが『ぴっかり☆十番勝負!』です。

10日間連続公演は、4年ぶり2度目の開催でした。前回は師匠がたのゲスト出演はありませんでしたが、今回は芸歴10年の節目を締めくくる、お祭りのような会にしたいと考えて師匠がたにご出演いただきました。

 
ご参考
日替りゲスト:林家三平、桂文治 、橘家圓太郎、五明樓玉の輔、三遊亭萬橘、立川談笑、桃月庵白酒、柳家喬太郎、桂春蝶、春風亭一之輔、笑福亭鶴瓶 、林家しん平、三遊亭歌武蔵、柳家三三、春風亭昇太。※出演順、敬称略
 

――二ツ目であるぴっかり☆さんの会に、人気の真打15名が日替わりで登場され話題となりました。どのようにオファーされたのでしょうか?

お一人お一人の現場へ直接お願いにあがりました。入門のお願いに行くときのように楽屋口でお待ちしていて「なんだ、お前か!」と驚かれたりもしました(笑)。

春と夏に特別な落語会、隔月のネタおろしの会「落語Labo」、土曜朝のおさらい会「めざP」など、積極的に公演を企画している。

春と夏に特別な落語会、隔月のネタおろしの会「落語Labo」、土曜朝のおさらい会「めざP」など、積極的に公演を企画している。

ご褒美のような舞台、帰る場所は落語

――2017年は明治座で上演された音楽劇『ふるあめりかに袖はぬらさじ』にも出演されました。小朝師匠に入門される前は、ミュージカルの学校に通われていたそうですね。

幼稚園の時に移動ミュージカルを観て以来、ミュージカルスターになるために生きていました(笑)。オーディションもたくさん受けました。AKB48さんの一期生募集や大人AKBも挑戦しました。全部受けてびっくりするほど全部落ちて、そのおかげで今ここにいます(笑)。ミュージカルの勉強の一環で落語に出会ったのですが、その時、子供の頃にミュージカルで「これだ!」と感じたのと同じ衝撃を受けたんです。

――そして落語の道に入り10年が過ぎ、明治座で約1カ月、40数公演の音楽劇を経験する機会に恵まれたのですね。

主演の大地真央さんをはじめ、憧れの元タカラジェンヌの方々と同じ舞台に立たせていただきました。「好きだ!」「これだ!」と感じたものを、執着と言えるくらいに思い続け、追いかけて突き進んできたので、そのご褒美をいただいたような気持ちです。

落語は、一人ですべてを語る話芸。舞台は、皆でひとつの世界を創るもの。ふたつは性質の異なるものです。でも舞台での経験はすべてがプラスになっていると感じますし、公演期間中は「楽しい!ありがたい!」という毎日でした。そして終わった後は「本当に幸せだった!さあ落語に帰ろう!」と思えました。これからも機会をいただけるならば色々なことに挑戦したいです。でも、自分が帰る場所は落語だとも改めて感じています。

「誕生日にはミュージカルや宝塚に連れていって」と親にせがむような子だったそう。

「誕生日にはミュージカルや宝塚に連れていって」と親にせがむような子だったそう。

だからこそ、自分がやる意味を探すように

――今、東西をあわせておよそ800人の落語家がいると聞きます。その中で女性の数はどのくらいでしょうか。

私が所属する落語協会には、女流の先輩が8名いらっしゃいます。後輩や他の協会の方をあわせると江戸落語で30人くらいでしょうか。あと上方(関西)に20人くらいかなと思います。全体としての数は今も少ないのですが、ここ数年で入門してくる女流は大変増えました。私が入門したときは全体でも10人ほどだったのに、たった10年で後輩が20人近くもできたんですよ!びっくりです。

――「女の落語は認めない」という声は聞こえますか?

私の師匠、春風亭小朝が「落語は基本的に女の人には向いていない」という考え方なんです。師匠がよく口にするのは、男と女の持つものの違いです。「男には、銭湯の壁をよじのぼって血だらけになってでも女湯をのぞく間抜けさがある。女の人にはそういう抜けた部分がない。だから、間抜けな主人公を女の人が演じると、笑いにつなげるのが難しいんだよね」と。

落語は、男性の目線で創られた世界です。登場する女の人も男目線で描かれていて、女性か ら見たら「そんな女いないし!」と言いたくなるようなこともあります 。そこで女流がやるための様々なアプローチが必要になるのですが、正解はまだみえていません。師匠からも「だからこそ、自分がやる意味を探すように」と言われています。

――「女流がやる意味」を超えて、「ぴっかり☆さんがやる意味」なのですね。

落語家として上手くなりたいとは思いますが、「上手いかどうか」と、「なんか好き」「応援したい!」は別だと思うんです。結局、最後は好みだと思うので「女流は嫌」という方がいらっしゃるのは当然だと受け止めています。

私が女であることは変えられないので、「女流は認めない」という方のために落語はできないかもしれません。「女でどこまでできるのかみてみよう」「女だからみてみよう」という方も含めて私の会にお越しくださるお客様のために、自分にできる精一杯のことをやる。それだけです。

若手女流が勢ぞろいする2日間

――「ぴっかり☆春一番!2018」の女流のみというスタイルは、昨年に続く2回目です。フライヤーからして華やかな雰囲気ですが、今回の見どころは?

昨年は東京で1日だけの開催でした。今回は東京で12人と、大阪で11人。2日間で私を含め22名が出演します。4時間半という長丁場の公演なので、寄席のようにゆったりとお付き合いいただければ嬉しいです。

――どのような思いを込めて、女流が集まる会を企画されたのですか?

“おばあちゃんの落語家”って、まだいないんですよね。少し年上の先輩はいても、おばあちゃんはいない。「何十年後にはあの師匠のように」というモデルがない中で、どう年を重ね、噺をしていくのかを模索していかなければなりません。その意味で私は、今の世代の女流全員を同志だと思っています。

「ぴっかり☆春一番!2018」に出演してくれるメンバーをはじめ、女流にも色々な個性があります。それぞれの芸や個性をお互いに知る機会になればと思いますし、お客様にもそれを楽しんでいただきたいです。女の子がこれだけ集まる機会は滅多にありませんので。

「ぴっかり☆春一番!」4時間半のうち、ぴっかり☆さんの持ち時間はたっぷり1時間。

「ぴっかり☆春一番!」4時間半のうち、ぴっかり☆さんの持ち時間はたっぷり1時間。

――お話を伺う中で、見た目は女性らしいぴっかり☆さんに、しばしば漢気(おとこぎ)を感じました。ふだん周りの方からは、どんな人だと見られていますか?

「おっさん」と言われます(笑)。

―― (笑)。なぜでしょうか?

性格だと思います。たとえばメイクは、お仕事なのでちゃんとします。でも本当はすごく面倒。前座はお化粧をしないものなので、私も当時は毎日“どすっぴん”でした。周りの方は「大人だしメイクできないのは辛いね」と言ってくださるので、「はい、でも修行中なので」と答えていましたが、内心は「超ラク~!」と喜んでいました(笑)。買い物の仕方も女子っぽくないと言われますね。時間をかけないし、ひとつ気に入ったら色違いをまとめて買う。今思えば、学生の頃から昔からガールズトークみたいなのも苦手でした。

――「おっさん」というか、男前ですね。

(春風亭)昇太師匠は女流落語家全員を指して「けもの」と言います(笑)。女流の落語家にはみんな「おっさん」や「けもの」な部分があるのかもしれませんね。(写真をみながら)パッと見、かわいらしい子もいますよね。でも、落語という男社会に飛び込んで5年の前座修行もしてやろうという精神の持ち主たちですよ?覚悟もあるし、ガッツもあります。タイプは違いますがみんな変人・変態。そして、それぞれにリスペクトするところがあります。

――『ぴっかり☆春一番!』が、ますます楽しみになってきました!あえて、ぴっかり☆さんの女子な部分も伺えますか?

中身がおっさんなので口にするのも恥ずかしいのですが、かわいいものが大好きです。

――まさかマカロンとか?

好き好き好き。かわいいスイーツも好きでQ-pоt(クッキーやカップケーキなどのスイーツをモチーフにしたアクセサリーブランド)の小物を集めたりもしています。女の子っぽいもの、いわゆるインスタ映えするものが大好物!…って、インスタやってないんですけどね。

―― (笑)

お財布が板チョコ!可愛いものの話をするときは、女子でした。

お財布が板チョコ!可愛いものの話をするときは、女子でした。

――最後に2018年の抱負をお聞かせください。

入門から10年を越え、少しずつ真打がみえてくる芸歴となりました。今までは何でもワーッ!と挑戦してきましたが、これからは一つ一つの噺と向き合いながら完成度を上げていくことも大事だと考えています。私も近い将来真打に昇進できるときがくるとしたら、そこへ向けて、まずは完成度を上げる最初の一年にしたいです。大切なことをしっかり見極めて掘り下げていく、そんな一年にしていきます!

春風亭ぴっかり☆春の落語会『ぴっかり☆春一番!2018~ぴっかり☆とゆかいな仲間たち~』は、4月7日に大阪・トリイホール、同月8日に東京・日比谷コンベンションホールにて開催される。

取材・文・撮影=塚田史香

公演情報
春風亭ぴっかり☆春の落語会
『ぴっかり☆春一番!2018 ~ぴっかり☆とゆかいな仲間たち~』


【東京公演】
■日時:2018年4月8日(日)
会場: 日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール
出演:春風亭ぴっかり☆
 ゲスト:立川こはる、三遊亭美るく、林家扇、柳家花ごめ、林家なな子、三遊亭遊かり、林家あんこ、春風亭一花、鏡味味千代、金原亭乃ゝ香、桂しん乃

【大阪公演】
■日時:2018年4月7日(土)
■会場: トリイホール
■出演:春風亭ぴっかり☆ 
■ゲスト:桂ぽんぽ娘、露の眞、露の紫、月亭天使、桂鞠輔、桂二葉、露の瑞、笑福亭縁、月亭八織、露の陽照

■公式サイト:http://pikkari.club/​

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