“Crossover Music Creators”を標榜する要注目の4ピース・uchuu, 80KIDZを迎えた主催2マンを観た
uchuu, 撮影=伊東 祐太
uchuu,Presents ‘CosmiCspaCe’ 2018.2.4 CIRCUS Tokyo
ロックとダンスミュージック、クラブとライブハウスの差異がなくなり、あらゆる時代、あらゆるジャンルの楽曲を瞬時に手に入れることができる環境が整って、早や数年。リスナーの自由度は加速度的に進んでいるが、日本の音楽シーンを見渡したとき、この状況に対応したアーティストはまだまだ少ないのが現実だ。幅広い音楽ファクターを内包しつつ、他にはない独創性を備えたアーティストの登場が待ち望まれるなか、徐々に注目度を高めているのがuchuu,。“Crossover Music Creators”を掲げる4ピースバンドだ。2017年9月に1st E.P.“KEEP ON”、12月に2nd E.P.“WHITE”をリリース。エレクトロからドラムンベース、トラップミュージックなどを取り入れたトラックを軸に、ギターロック、R&B、ヒップホップといった音楽性を備えた2作は、早耳の音楽ファンから好評価を獲得。12月には代官山UNITでワンマンを成功させるなど、ライブの規模も確実に上がっている。そしてuchuu,は2018年、新たなイベント『‘CosmiCspaCe’』を立ち上げた。渋谷CIRCUS Tokyoで行われた第1回目は、メンバーがリスペクトしている80KIDZとの2マンライブ。07年の結成以来、ロックとクラブミュージックを自在に行き来してきた80KIDZとの対バンは、このイベントのテーマと完璧にシンクロしていた。
uchuu, 撮影=伊東 祐太
最初に登場したのは80KIDZ。ド迫力の重低音、刺激的なエレクトロ・トラック、鋭利なフレーズを放ちまくるギターを融合させたダンスチューンを連発し、フロアの熱気を徐々に上げていく。2017年5月に新アルバム『80:XX - 05060708』をリリース。髭の対バンツアーに参加(2017年11月)、中田ヤスタカの主催イベント『OTONOKO』に出演(2017年12月)するなど幅広い活動を続けている80KIDZのダンスミュージックは、活動スタートから10年目を迎えた現在、さらなる進化の時期を迎えているようだ。ライブ後半ではJUN、ALI&が揃ってギターを弾くシーンも多く見られるなど、この日の彼らはロックモード。特に「WEEKEND WARRIOR」「RED STAR」における高揚感はまさに圧倒的だった。ラストはドラマティックなシンセメロを軸にした「Face」。美しいホワイトノイズ、神秘性をまとったトラックがフロア全体を包み込み、オーディエンスの心と身体をしっかりと揺らしまくった。
uchuu, 撮影=伊東 祐太
続いてはuchuu,。スクリーンにバンドのロゴと“Crossover Music Creators”が映し出されるなかK(Vo,Gt,Pf)、Sujin(Ba,Synth)、Airi(Dr)、Hiroshi(Seq,Per)がステージに登場し、オルタナR&Bのテイストを含んだ「secretspace」でライブをスタートさせた。ディスコティックなビートが渦巻く「My Name is Answer」ではKがハンドマイクでフロアを煽り、抑制の効いたエレクトロ・トラックを軸にした「over myself」ではSujinがシンセベースを演奏。さらにファンクのエッセンスを取り入れた「Freedom」では、KのシャープなギターカッティングとAiriの骨太なグルーヴが絡み合う。ロック、ディスコ、エレクトロ、R&B、ファンクなどを自由に取り込みながら、楽曲ごとにスタイルを変化させるステージはオーディエンスの聴覚と視覚を同時に刺激し、音楽とエンターテインメントがダイレクトに結びつくような気持ち良さに溢れていた。その最大の特徴は、カラフルな音楽的要素を“踊れる”というもっとも根源的なテーマに集約した楽曲、そして、メンバー4人が(複数の楽器を演奏しながら)生み出す有機的なアンサンブル。以前のインタビューでKは「uchuu,の音楽的ビジョンは?」という筆者の質問に対し「踊れる音楽をやりたいというのはあります。曲を聴いて自然に体が動くっていうのがいちばんいいと思うので。あと、いちばん大事なのは“この4人でやる”ということなんです。4人でやるんだったら何でもいいというか」と答えていたが、その方向性はステージの上でも明確に体現されていた。
uchuu, 撮影=伊東 祐太
また「TimeLINE」では、Kが放つ歌詞の強さが心に残った。常に期待と不安がせめぎ合う人生だけど、音楽で踊ることを介してつながっていたい――そんな切実な思いがまっすぐに伝わってきたのだ。フロアに向かって手を伸ばし、一つ一つのフレーズを手渡そうとするKのボーカルもuchuu,の大きな魅力。昨年リリースされた2作のE.P.で日本語詞を増やし、歌の存在感をアピールしていたが、その変化は彼らのライブにも大きな影響を与えていたと思う。
uchuu, 撮影=伊東 祐太
「最後の1音まで踊って、歌おう。今日を後悔しないように、一緒に遊びましょう!」
というKのコールによって、ライブは後半へ。タイトル通り“音楽の魔法”をテーマにした「Mmagic」、バウンシーなビートとともに観客が飛び跳ねた「HELLO」を挟み、「overflow」「Keep on living in my music,」「LET IT DIE」とロック濃度高めのナンバーを次々と叩き込む。オルタナティブ経由の歪んだギターサウンドを軸にした楽曲であっても、彼らのベースにある“踊れる”という感覚が失われることはなく、心地よい高揚感につながる。それはまさに“Crossover Music”そのものだった。
uchuu, 撮影=伊東 祐太
本編ラストは「最後に大事な曲をやります」(K)とコールされた「Yellow」。浮遊感のあるトラックとロマンティックなメロディ、<両手あげよう 想いを叫ぼう/時間なんてさ 超えろ>というラインによってライブはクライマックスを迎えた。鳴り止まないコールに応えて再びステージに上がった4人は極上のパーティチューン「HAPPY」を披露。拍手と歓声のなか新イベント『‘CosmiCspaCe’』の第1回は終了した。
uchuu, 撮影=伊東 祐太
4月25日(水)に2ndフルアルバムのリリースも決定。(MCのなかでKは堂々と「素晴らしい作品になります」と宣言していた)2017年にリリースした2枚のE.P.を経て制作された本作で、4人がどんな音楽世界を見せてくれるのか? 4人が提示する最新型の“Crossover Music”を心待ちにしていたいと思う。
取材・文=森朋之 撮影=伊東 祐太
uchuu, 撮影=伊東 祐太
日程 : 3/7 (Wed)
会場 : 東京 @ LIVE HOUSE FEVER
開場/開演 : 18:30/19:00
出演 : uchuu, / 緑黄色社会 / マカロニえんぴつ
: ¥2,800円 + Drink
<プレイガイド>
先行:2/8(木)12:00~2/9(金)18:00 ※2/11 11時より一般発売開始