及川光博出演で話題の『プラド美術館展』PR動画 脚本・とに〜が制作秘話を存分に語る! 【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.22 とに~(アートテラー)
及川光博
美術家やアーティスト、ライターなど、様々な視点からアートを切り取っていくSPICEコラム連載「アートぐらし」。毎回、“アートがすこし身近になる”ようなエッセイや豆知識などをお届けしていきます。
今回は、アートテラーのとに〜さんが、ご自身が脚本を担当された、俳優・及川光博さん出演の『プラド美術館展』PR動画の制作秘話について語ってくださっています。
現在、上野の国立西洋美術館で開催中の『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』が大きな話題となっています。そして、ミッチーこと及川光博さんが、その『プラド美術館展』の見どころを語るPR動画もネット上で話題となっているようです。
そこで今回は、そんなPR動画の脚本を担当したアートテラー・とに~自らが、動画の見どころを語ります。いうなれば、PR動画のPR。前代未聞のコラムです(笑)
ミッチーさん出演の『プラド美術館展』PR動画の脚本というオファーが舞い込んだのは、昨年のこと。任された以上は、「これまでにないPR動画を!」と、いつになく気合が入りました。動画は全7本。2018年の年明けから公開がスタートし、毎週金曜に1本ずつアップされるとのこと。「それならば、毎週欠かさず見たくなるように、ドラマ仕立てで、なおかつ時系列があるものはどうだろう?」と考えました。
ただ、僕が知る限り、ドラマ仕立ての展覧会PR動画なんてありません。一蹴されるのを承知で、ドラマ仕立てというアイディアを主催者に提案してみたところ、一つ返事でオーケーが出ました。「えっ、いいんですか!?」思わず聞き返してしまいました。
メインとなるターゲット層は、女性とのこと。そこで閃いたのが、ミッチーさんが画面越しに語りかけてくれる動画というものでした。主役は、動画を観ている人。OLも主婦も学生もすべてひっくるめて「お嬢様」が主役です。ミッチーはそんなお嬢様に仕える執事(最終的には、コンシェルジュに)。お嬢様のことを第一に考えながら、時に優しく、時にちょっぴりSっ気を醸し出しながら、『プラド美術館展』について熱く語るという設定が思い浮かびました。お嬢様のとある普通の一日を7つの場面に分け、全7話の設定が完成。早速、脚本に取り掛かりました。
とは言え、この設定は、あくまで僕の勝手な思い付き。ドラマ仕立てというだけでもかなりの無茶を言っていますが、その上、執事という設定って! どこで撮影できるんだよ! と、自分自身が一番思いながら脚本を送りました(笑)。すると、数週間後、「清泉女子大学構内にある旧島津公爵邸でのロケが決定しました!」との一報が。「えっ、いいんですか!?」(←2回目)。主催の本気ぶりに、ただただ驚かされました。
ではでは、そんな本気がつまったPR動画全7話の見どころや秘話を一つひとつご紹介いたしましょう。
プラド美術館展PR動画 第1話「プラド美術館とは~お目覚め編~」
「この動画、なんか面白そう!」と思ってもらえるためには、第一声が重要です。
そのセリフで、どれだけインパクトを与えることが出来るか。
その結果、テンション高めのスペイン語のセリフから始まることになりました(笑)
プラド美術館展PR動画 第2話「ベラスケス作品が7点も!~朝食編~」
今回の『プラド美術館展』最大の見どころは、ベラスケス作品が7点も来日していること。
それがどれほどスゴいことなのかを、朝食の食卓に例えながら、ミッチーさんに熱く語って頂きました。
個人的には、最後のメガネをクイッとする仕草がお気に入りです。
プラド美術館展PR動画 第3話「ベラスケスってどんな画家?~お見送り編~」
及川光博さんと言えば、2代目の『相棒』。あのドラマの大ファンということもあり、脚本の中にこっそり、“あのセリフ”をしのばせました(←全然、こっそりじゃない!)。ついつい小ネタを入れたくなるのが、僕の悪いクセ。
ちなみに、ネット上では、「お嬢様なのにバス(通勤or通学)なの!?」という声がいっぱい上がっているようです。脚本時の想定では、“普通”のお嬢様を想定していましたもので。
プラド美術館展PR動画 第4話「フェリペ4世とは~ランチタイム編~」
原案では、コンシェルジュの意外な才能を発揮させようと、フェリペ4世のキャラ弁が登場する予定でした。
しかし、それはさすがに難しすぎるとのことで、あえなく却下(笑)
ただ、完成の動画を見るに、こちらのランチバスケットの案でも十分に面白かったです。
プラド美術館展PR動画 第5話「スペイン絵画以外も充実!~お出迎え編~」
お出迎えの定番フレーズといえば、「お帰りなさいませ。お食事にしますか? それとも、お風呂?」。
このコンシェルジュver.は、どうなるのだろう……という妄想をめいっぱい膨らませてみました。
オチ(?)のセリフの前の間が最高! お嬢様の姿が見えました。
プラド美術館展PR動画 第6話「ボデゴン~ディナー編~」
動画に登場する鶏肉のチリンドロンソース煮込みは、実際にプロの方に作っていただいたものです。
「チリンドロンソース」の響きがいいというだけの理由で脚本に取り入れただなんて。
現場ではとても言い出せる空気ではありませんでした(笑)
プラド美術館展PR動画 第7話「バルタサール・カルロス~おやすみ編~」
「前売券の中に、リヤドロ アロマキャンドル付きセット券があったから」。
そんな単純な理由で脚本にキャンドルのくだりを入れてみましたが、結果としてはキャンドルに照らされたコンシェルジュの姿が素敵な動画となりました。
ラストのシーンに関しては、あの現場にいた全員がキュンとしていました(男女問わず!)。
さてさて、ミッチーさん出演の『プラド美術館展』PR動画。おかげさまで大好評につき、追加3話の公開が決まりました!
追加3話は、『プラド美術館展』の展覧会会場でのオールロケ。お嬢様に仕えるコンシェルジュという設定はそのままに、これまでの7話とは少し毛色の違った動画となっています。3月16日から毎週金曜10時に1話ずつの公開となりますが、今回は特別に先行して見どころをちょっとだけご紹介いたしましょう。
まず第8話。コンシェルジュが憧れる意外な人物が登場。お二人の掛け合いにご注目くださいませ。
第9話は、映画のCMにありがちな設定を展覧会ver.で。全10話の中で一番振り切っている動画かもしれません。ちなみに、僕もカメオ出演させて頂きました。ミッチーさんの演技の邪魔にならない程度に小芝居しています(笑)。
第10話は、コンシェルジュのお嬢様への愛が全面に押し出されている回。脚本を書いているときになかなか最後のセリフが決まらなかったのですが、数日後、ふっとフレーズが降りてきました。個人的には、ストンと落ちるセリフになったなぁと思っております。
それらも含めて、どうぞお楽しみに。
……って、結局最後の最後まで、展覧会のPRはしませんでしたね。
でも、きっとPR動画をご覧頂ければ、『プラド美術館展』に行きたくなるはずです。
イベント情報
会場:国立西洋美術館
開館時間:9:30~17:30
※金曜、土曜は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※3月26日と4月30日は開館
観覧料:一般1,600円(1,400円)、大学生1,200円(1,000円)、高校生800円(600円)
※( )内は20名以上の団体料金