山田杏奈『ミスミソウ』インタビュー 17歳の目力(めぢから)女優が目指した“エンタテインメントな残酷さ”と中高生ならではの感情

動画
インタビュー
アニメ/ゲーム
映画
2018.4.3
山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

画像を全て表示(15件)

4月7日(土)公開の映画『ミスミソウ』は『ハイスコアガール』『でろでろ』などで知られる押切蓮介氏の作品のなかでも、「精神破壊(メンチサイド)ホラー」をキャッチコピーとした過激な作品を実写映画化するプロジェクトだ。同級生から壮絶ないじめを受け、家族を殺害された少女・春花(山田杏奈)が復讐を行う物語を映像化したのは、『先生を流産させる会』『ライチ☆光クラブ』など、残酷かつ耽美的な演出で知られる内藤瑛亮監督。原作の激しいバイオレンス描写をそのまま映像化した同映画は、15才未満鑑賞不可のR-15指定で公開される。

本作で主人公の春花を演じた山田杏奈は、実写映画『咲-Saki-』の染谷まこ役や、ドラマ『セトウツミ』で余命宣告を受けた車椅子の少女役など、クセの強い役柄を多数演じて注目された女優。『ミスミソウ』キャスティングが決まる前から、原作コミックに読み親しんでいたという。これまで以上にインパクトの強い作品に映画初主演作にして挑んだ17歳の女優は、何を思うのか。インタビューで語った。

 

“エンタテイメントなグロテスク”さと普通の学生にも共通する感情

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

――映画初主演作がインパクトの強い作品になりましたね。出演が決まる前から原作をお読みになられていたそうですが、どういうきっかけで手に取られたのでしょう?

わりとバッドエンドだったり、後味の悪い作品が好きなんです。それを知っている友達から薦められて読みました。

――その頃は、まさか自分が主演で実写化されるとは思わなかったでしょう。

そうですね(笑)。最初にお話を頂いたときには、「『ミスミソウ』を実写化しちゃうんだ……」と思ったんですけど、自分がやらせていただけるというのはすごく嬉しいことですし、好きな作品であるぶん緊張もしました。

――何を意識して、主人公・野咲春花を演じられたのでしょう?

春花は、復讐を始める前は寡黙で、静かで、優しくて、という子なんです。家族を殺されることによって豹変する役なので、そのコントラストがあったほうが面白いと思いながら演じました。家族を殺される前の春花は、“優しさ”を常に意識するようにして、復讐モードのときには、憎しみとかの感情もあるんですけど、それはあまり表に出さないで演じています。

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

――そのあたりは原作どおりですね。原作の春花は、一線を越える場面でとてつもなく恐ろしい表情を見せますよね。セリフの少ない役なので、映画では表情で演技する必要もあったのでは?

押切(蓮介)先生の原作漫画を読んだときには、すごく表情が印象的な作品だと思っていました。それは画ならではの表現でもあるんですけど、そこから逆に感情を読み取っていった部分はあります。(一線を越えるシーンでは)実際の人間の顔は、動かせる範囲が限られてますが、出来る限りは近づけようそうとはしました(笑)。わたしは、「すごく目力が強いね」と言っていただくことが多いんですが、そこを春花の“秘めた暴力性”とまでは言わないですが、表現に繋げられるのかな、と思っていたので。わたしがやらせていただくからには、その部分は表現したいな、と。

――やりすぎると変顔になりかねない表情ですよね。

確かにそうですね(笑)。春花は落ち着いたキャラクターなので、あまりに表情の変化を見せてしまうと、すべてを見せてしまうことになるのかな、とは自分でも思っていて。だから、春花はまだどこか、全部は見せ切っていないんだろうな、というところも表現するように演じました。

(C)押切蓮介/双葉社

(C)押切蓮介/双葉社

――春花の演技については、原作をかなり参考にされたのでしょうか?

そうですね。原作はテンポ感がすごくあるな、と思っています。それは暴力シーンについてなんですけど、アクションもスピードとかを重視していて。映画も、バイオレンスなんだけど、それだけじゃなくてテンポがいいというか、楽しめるグロテスクさというか……。

――エンタテインメントなグロテスクさですかね(笑)。

そうです(笑)。エンタテインメントなグロテスクさを監督は意識されていたのかな、と思いました。すごく悲惨な運命を、逆にそうやって描くことで表現できているので、劇場で観てあらためて面白いな、と思いました。

――ということは、むしろ暴力シーンの撮影のほうが楽しかったのでは?

楽しかったですね。すでに作品を知っていたので、撮影しているときはあまり悲惨さとかは感じなくて、楽しんで演じさせていただきました。

(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

――本作では登場人物たちの劣等感や嫉妬、友情といった心情も生々しく描かれています。山田さんとも年代が近いので、中学生たちの心情に共感できるところも多かったのでは?

わたしは今もすごく負けず嫌いなので、嫉妬することとか、自分が出来なくて悔しい思いをすることがよくあります。大人から見たら子どもなのかもしれないですが、本人からすれば大人として見てもらいたい、というのは、大人と子どもの狭間にいる成長期ならではですよね。しかも、学校という色んなタイプの人がいる環境にある中高生には、つきものな感情なんじゃないかな、と思います。『ミスミソウ』は、現実的に考えてここまでのことにはならないだろう、という話ではあるんですけど、(感情は)わたしたちや、普通の学生さんにも共通するものなんじゃないかと。そういうところから、入り込んでいってもらえればいいな、と思います。

――物語はいじめから始まりますが、いじめ自体をメインにした作品ではないですよね。

青春映画なんですよね。切り取り方は普通とは違うんですけど、やっぱり根底にあるのは友情とか憎しみだったりするので。そういう意味では、違う切り取り方をした青春映画だと思います。

――特に、女性同士の感情がよく描かれているのではないか、と思いました。女性である山田さんから見て、いかがでしたか?

たぶん、男の子からすると、女の子同士の仲の良さには、わからない部分もあるんじゃないかな、と思います。それくらい、あの歳の女の子たちってべったり仲がいいじゃないですか。そういう関係の中での、依存だったり、「失いがたい」という感情だったりは、わたし自身も完成したものを観ていて感じました。終盤の妙ちゃん(大谷凜香演じる大黒妙子)とのシーンは、“そういうこと”がきっかけになることもあるんだな、と納得できる表現だと思いました。

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

――春花と妙子がお互いにどんな感情を持っているか?という話は、監督から説明があったのでしょうか。

監督は、春花と妙ちゃんの友情なり愛情を、二人の関係の根底にあるものとしてすごく大事にされていました。それを最初にうかがっていたので、わたし自身も大切にして演じようと思いました。例えば、妙ちゃんが春花に抱いていた感情は、世間ではまだ少数派=マイノリティと思われていることじゃないですか。そういう思いを普通に口に出すことが難しい世の中だから、惨劇に結びついてしまったのかな、とわたしなりに解釈したので。だから、そこは大切にしたいな、と思いました。

 

完全にその人物になる演技は「すごく怖い」

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

――初主演は、いままでの現場と違いましたか?

わたしも主演ということで、すごく身構えていて、プレッシャーも感じていたんですが……いざ現場に入ってみると、「主演だからできることは何だろう?」と考えても、わたしには全然足りないことだらけだったので。だから、結果的には、春花として役を全うするしかないなだろう、と思いました。主演はお芝居以外の部分でもまとめ役になったりする、というようなことも聞いたこともあるので……。

――座長としての役割みたいなことですね。

そういうことを色々と考えてみたんですが、そんなに上手くもいかないし(笑)。逆に、清水(尋也)さんは周りのことがよく見えている方でした。清水さんはじめ、みなさんで作り上げた空気感の中でやっていけたんです。主演だからといって、わたしが出来たことはあまりなかったんですけど、みなさんと一緒に作った環境の中でお話を作り上げられたのは、すごくありがたかったというか。逆に言えば、もっと出来たことはあったのかな、とも思いますけど。だから、名ばかりの座長でした(笑)。

――清水さんのどういったところに感心されたのでしょう?

劇中で、わたしが17か18テイクくらい撮り直しすることになったシーンがあるんです。その時に相場くん(清水のこと)も一緒にいました。わたしとしては、「周りの人に迷惑をかけているし、どうしよう」と思っていて、すごくつらくて。それ以上に、悔しさが一番にあったんですけど。何回もやらせていただけるのは、すごくありがたいと思ってもいたんです。そのシーンを撮り終わったときに、清水さんは「こういうことがあるから、芝居はやめられないよね」と言ってくださって、とても救われました。

清水尋也 (C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

清水尋也 (C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

――19歳とは思えない器の大きさですね。

「おお……!」と思いました(笑)。その場でそういうことを言ってくださるのは、わたしのことを気遣ってくださった部分もあったのかな、と思います。すごく周りのことが見えている方だと思って、逆に突き放されたというか、違いを見せられたというか……それは、悔しくもあったんです。お芝居に対して真摯に向き合われていて、すごいと思いました。

――ちなみに、撮り直したのはどういうシーンだったのでしょう?

復讐している間はあまり感情を出さない春花が、相場くんと二人になって、憎しみとか罪悪感とか、自分の感情を吐露する場面です。唇をかみしめて、血が出る場面なんですが、復讐シーンが淡々としているぶん、ああいうところで気持ちを出さないと。春花がつらい、本当の感情が見えるところなので、大事なシーンだと思って演じました。

――本作だけでなく、ドラマ『セトウツミ』の余命宣告を受けた車いすの少女役など、クセの強いキャラクターを演じられることが多いように思います。そういう役柄がお好きなのでしょうか?

オーディションに呼んでいただける役が、そういうものが多いというのはあるかもしれないです。「目力がある」と言っていただけることが多いので、自然と闇を抱えている子とか、大変な目に遭ったり、キツイ性格だったり、親と仲がこじれていたりする役が多かったりするのかもしれないです(笑)。

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

――同年代の女優さんたちには、キラキラした恋愛映画に出ている方が多いと思うのですが。以前は、少女漫画原作の恋愛映画に出たい、ともおっしゃっていました。

わたし自身、主演はもっと先になると思っていたんです。なので、もし主演の機会があるなら、それはキラキラした作品になるのかな、と思っていたんですが……こういう作品でした(笑)。でも、ある意味わたしらしい作品なのかな、と思います。

――ちなみに山田さんは、役そのものになりきって演じるタイプなのでしょうか? それとも、作品の中の立ち位置を意識しながら、プランを立てて演じられるタイプなのでしょうか?

わたしは、プランを立てて演じるタイプですね。完全にその人物になる演技って、すごく怖いな、と思っていて。いくらお芝居をしていても、どうしても気にしないといけないことはあると思うんです。例えば、「ここに立たないと顔が見えない」とか、そういうことはどうしても頭に入れながらやらなきゃいけないので。わたしの場合は、思い切り役にのめり込むとそこが飛んでしまうのかな、と思うんです。今は、そのコントラストというか……立ち位置を考える何割かの感覚をなるべく減らして、お芝居を考えるようにしつつ、その人物の感情も意識してやれればいいな、と。最近はその感覚が一番しっくりきています。なので、撮影の前から「どうしてこういう行動をとるのか」ということをしっかり細かく考えるようにしています。それが全部出ないにしても、最初に考えてから演じるようにはしています。

――『咲-Saki-』の染谷まこもプランを考えながら演じられたのでしょうか? メガネっ子で広島弁を話す、落ちついた性格の高校生という特殊なキャラクターでしたが。

『咲-Saki-』のときは、監督に「加齢臭を出して。加齢臭を出して」と言われていたので、「そんなのわかんないよ……」ってすごく思っていました(笑)。あの役は、自分とすごく離れたキャラクターだったので、大変だったんです。ただ、そういう役がこれからも来ることはあると思うし、自分でもやっていきたいと思ってます。自分とかけ離れた役も自然に演じられるようになる、というのは目標でもありますし。これからもっと、自分と違う役をどうやったら演じられるのかを研究していきたいです。

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

山田杏奈 撮影=岩間辰徳

映画『ミスミソウ』は2018年4月7日 (土)より 新宿バルト9ほか全国公開。

インタビュー・文=藤本洋輔 撮影=岩間辰徳 ヘアメイク=横山雷志郎 スタイリスト=杉浦 優 衣装:スカート2万9,000円(税抜)  アツシナカシマ(問シアンPR /TEL︎03-6662-5525)、そのほかスタイリスト私物

作品情報

映画『ミスミソウ』

(2017年/日本/カラー/シネスコ/5.1ch/114分)
山田杏奈 清水尋也
大谷凜香 /大塚れな 中田青渚 紺野彩夏 櫻愛里紗 遠藤健慎 大友一生 遠藤真人
 森田亜紀 / 戸田昌宏 片岡礼子 / 寺田 農
監督:内藤瑛亮
原作:押切蓮介 『ミスミソウ 完全版』 (双葉社刊)
脚本:唯野未歩子
主題歌:タテタカコ「道程」(バップ)
制作プロダクション:レスパスフィルム
配給:ティ・ジョイ
レーティング:R-15 

公式サイト :http://misumisou-movie.com/
(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会

プレゼント情報

山田杏奈サイン入り色紙 1名様に

【応募方法】
※Twitterでご応募ください。
STEP1:お持ちのTwitterアカウントにログイン
STEP2:SPICEアカウント<@spice_topics>をフォロー(当選案内DM用に必要です)
STEP3:あとは該当ツイートをリツイート(RT)するだけ!

応募用ツイートは【コチラ】
 
【応募期間】
2018年4月17日(火)11:00まで
※当選者には、ツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)でご連絡いたします。
 
【応募条件】
・日本に居住されている方(賞品配送先が日本国内の方)。
・応募に関する注意事項に同意いただける方。
 
【注意事項】
※本キャンペーンに関して、弊社が不適切な行為がされていると判断いたしましたアカウントは、キャンペーン対象外とさせていただきます。
※弊社は、応募いただいた方のツイート内容には一切の責任を負いません。
※当選発表は、当選者様への当選のご連絡をもってかえさせていただきますので、ご了承ください。
※当選通知後、2日間ご連絡がない場合は、当選を無効とさせていただきます。 
※当選結果に関するお問い合せは受け付けておりませんので、ご了承ください。
※当キャンペーンの掲載内容や条件は、予告なく変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。
※当選の権利の譲渡はできません。
※キャンペーン参加にあたっては、必ず弊社個人情報保護方針「プライバシーポリシー」をお読みください。
※当選時にご連絡いただく住所、氏名、電話番号は、その確認などの関連情報のご案内のみに使用し、キャンペーン終了後は弊社の定める方法に基づき消去いたします。
※インターネット通信料・接続料およびツイートに関しての全ての費用はお客様のご負担になります。
※次の場合はいずれのご応募も無効となりますのでご注意ください。
・応募時の内容に記載不備がある場合。
・お客さまのご住所が不明、または連絡不能などの場合。
シェア / 保存先を選択