愛知「豊田市美術館」が1年ぶりに再オープン

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お洒落かつ親しみやすくなって、より何度も足を運びたい美術館に

1995年の開館以来、その洗練された建物や空間デザインが高く評価され、国内外の近・現代美術を独自の切り口で意欲的に紹介する展覧会も注目を集めてきた「豊田市美術館」。開館20周年を迎えるにあたり、バリアフリー化を含むリニューアル工事のため昨秋から1年に渡って休館していたが、10月10日(土)、装い新たにオープンした。

高低差のある地形を巧みに生かした地上3階、地下2階から成る「豊田市美術館」の設計は、「東京国立博物館法隆寺宝物館」(1999年)や「ニューヨーク近代美術館」増改築(2004年)など数々の美術館を手がけ、今や“世界で最も美しい美術館をつくる建築家”と称される谷口吉生によるもの。鑑賞者の芸術体験を重視し、展示空間と動線が絶妙に構成された意匠は開館当時のままに、今回のリニューアルではエレベーターやスロープを新設、ワークショップルームがこれまでの約2倍の大きさとなった。そして当館最大の特色といえる、乳白色のガラスとモス・グリーンのスレートによる直方体で構成されたガラス壁も、経年による黄ばみや汚れが一掃され開館当初のような美しさを取り戻したのだ。

やわらかく外光を採りこむ一面のガラス壁がより美しく。左壁面のジョセフ・コスース《分類学(応用)No.3』と中央のジェニー・ホルツァー《豊田市美術館のためのインスタレーション》は、開館当初からの常設作品

やわらかく外光を採りこむ一面のガラス壁がより美しく。左壁面のジョセフ・コスース《分類学(応用)No.3』と中央のジェニー・ホルツァー《豊田市美術館のためのインスタレーション》は、開館当初からの常設作品

10日に行われた開会式で村田眞宏館長は、
「「お洒落でかっこいい美術館」とよく言われますが、そこに「親切で親しみやすい美術館」という要素が加わるよう運営面でもバリアフリーを心がけ、これからは出会いの場や憩いの場としても皆さまに利用していただければと思います。展覧会だけでなく、庭園やレストラン、茶室なども楽しみながら、半日でも一日でも過ごしてほしいと思います」と挨拶した。

「愛知県美術館」館長を経て、今年4月に就任した村田眞宏館長

「愛知県美術館」館長を経て、今年4月に就任した村田眞宏館長

リニューアル・オープンを記念した多彩なイベントも開催され、10日(土)~12日(月・祝)には、美術館の前庭にマルシェが登場! クラフト&フードの多彩な店が出店し、いつもの美術館とは違った賑わいを見せた。リニューアルを機に庭での飲食が可能となったため、今後はお弁当を持参して野外作品を眺めながらランチ…といった楽しみ方ができるのも嬉しい。また、10日の昼には山下洋輔のジャズコンサート、11日の夜には美術館の外壁を使ったプロジェクション・マッピングを実施。不可思議でユニークな映像の連続に子ども達が大はしゃぎするなど、誰もが楽しめる華やかな催しでオープニングを飾った。尚、講演会やワークショップ、野外群読劇など今後も12月初めまで各種イベントが予定されているので、詳細はHPで確認を。

多くの人で賑わったマルシェの様子。中には行列ができる店も

多くの人で賑わったマルシェの様子。中には行列ができる店も

美術作家・金氏徹平、舞台映像デザイナー・山下晋平、女優・青柳いづみのコラボレーションによるプロジェクション・マッピング「holes and buildings」

美術作家・金氏徹平、舞台映像デザイナー・山下晋平、女優・青柳いづみのコラボレーションによるプロジェクション・マッピング「holes and buildings」

そしてリニューアル第1弾の企画展として、『ソフィ・カルー最後のとき/最初のとき』が開幕した。内容ついては既に当サイトで紹介しているので、<関連記事>のご参照を。ちなみにこのソフィ・カル、10年前の開館10周年を記念した『VISION Ⅱ 展』で行われた展示作品人気投票で《盲目の人》が1位を獲得しており、再オープンを飾るにふさわしい展覧会となった。また、コレクション展第1弾として『わたしたちのすがた、いのちのゆくえーこの街の100年と、美術館の20年』も同時開催。第一部では19世紀末から1990年代までの所蔵作品とともに、当地で撮影された写真を展観。豊田市の100年の歴史を重ねて紹介している。そして第二部は、開館した1995年以降の作品とともに、美術館が歩んできた20年の歴史を振り返るというものだ。

『わたしたちのすがた、いのちのゆくえーこの街の100年と、美術館の20年』の展示風景

『わたしたちのすがた、いのちのゆくえーこの街の100年と、美術館の20年』の展示風景

丘の上に建つ当館は眺望も見どころのひとつで、ダニエル・ビュレンの立体作品が配された2階のテラスやガラス張りのレストラン、展示室をつなぐ3階の長い廊下からは豊田市街を一望でき、清々しい気分を味わえる。また2階テラスに面した大池や建物を囲む庭は、米国のランドスケープデザイナー、ピーター・ウォーカーのデザインによるもので、四季折々の植物や点在する野外作品を眺めながら散策を楽しむのがおすすめ。この庭の一角には新たに青木野枝の作品も登場し、11月3日(火・祝)~7日(土)の10:00~16:00には制作風景を間近で見られる公開作品設置も予定されている。美術鑑賞や散策に疲れたら、立礼茶席で気軽に一服できる茶室「童子苑」へ。こちらも谷口による建築で、水琴窟もある美しい庭ではこの時季、見事な紅葉も鑑賞できる。

どこを切り取っても絵になる美しい景観が楽しめ、美術ファンはもとより建築好きにも一度は訪れてみてほしい場所

どこを切り取っても絵になる美しい景観が楽しめ、美術ファンはもとより建築好きにも一度は訪れてみてほしい場所

来春には『デトロイト美術館展』の開催が予定されているなど、今後も注目の展覧会が目白押しの「豊田市美術館」。あらゆるタイミングで、館長の言葉どおり休日の一日をゆっくりと過ごしに訪れてみては?

 

イベント情報
ソフィ・カルー最後のとき/最初のとき
開館20周年記念 コレクション展 Ⅰ
わたしたちのすがた、いのちのゆくえこの街の100年と、美術館の20年

■会期:2015年10月10日(土)~12月6日(日)
会場:豊田市美術館(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)
開館時間:10:00~17:30(入場は17:00まで)
観覧料:『ソフィ・カルー最後のとき/最初のとき』一般800円、高・大生500円  『わたしたちのすがた、いのちのゆくえ』一般300円、高・大生200円  ※いずれも中学生以下無料、開館20周年を記念し11/14(土)・15(日)は全館観覧無料
アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「伏見」駅下車、地下鉄鶴舞線豊田市行きに乗り換え、名鉄豊田線乗り入れ「豊田市」駅下車、徒歩15分
公式サイト:http://www.museum.toyota.aichi.jp
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