『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』上演関係者一同、城田優、戸田恵子、神田沙也加、原田諒、甲斐正人が喜びの声を語る! 第43回菊田一夫演劇賞授賞式レポート
第43回菊田一夫演劇賞を受賞した甲斐正人、原田諒、神田沙也加、戸田恵子、城田優、堀義貴、堀威夫(左から)
第43回菊田一夫演劇賞授賞式が4月26日、東京都千代田区の如水会館で行われた。「大賞」に選ばれた『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』上演関係者一同のほか、「演劇賞」に選ばれた城田優、戸田恵子、神田沙也加、原田諒、「特別賞」に選ばれた甲斐正人が喜びを語った。
菊田一夫演劇賞とは、東宝演劇部に所属した劇作家菊田一夫の功績を記念し、演劇界の発展のため、東宝が1975年に創設した日本の演劇賞。2008年からは映画演劇文化協会が主催を行っている。今回は2017年4月1日から2018年3月31日まで上演された演劇作品から、「菊田一夫演劇賞選考委員会」により選考が行われた。今回の選考委員会は、松岡功(委員長)、水落潔、天野道映、矢野誠一、近藤瑞男、萩尾瞳、一般社団法人映画演劇文化協会によって構成されている。
大賞:『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』上演関係者一同
第43回菊田一夫演劇大賞を受賞した『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』上演関係者一同を代表して、株式会社ホリプロの堀威夫・ファウンダー最高顧問(右)と堀義貴・代表取締役社長
『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』の高い舞台成果に対して、同作品の上演関係者一同が大賞を受賞。会場にはビリー役を務めた5人をはじめ出演者らも集結していた。代表して、株式会社ホリプロの堀威夫・ファウンダー最高顧問が挨拶した。
「『ビリー・エリオット』について、私の立ち位置はどちらかというとスタッフというよりは観客の一人という感じでありました。リハーサルの時から見ていたかもしれませんが、一つの演目でトータル7回も同じ演目を見たのは後にも先にも初めての経験でありました。どの回を見ても、情があるせいかもしれませんが、毎回感動しておりました。恵まれたスタッフや皆さんのおかげで、歴史のある菊田一夫演劇賞大賞を受賞したことは、はなはだ恐縮です」
演劇賞:『ブロードウェイと銃弾』チーチ役・城田優
第43回菊田一夫演劇賞を受賞した城田優
『ブロードウェイと銃弾』でチーチ役を演じた城田優は演劇賞を受賞。
城田は「栄誉ある賞をいただけたことを心から感謝するとともに、誇りに思います。チーチという役は共演者、スタッフ、関わったすべての人たちが作ってくれたものだと思っています。お客様とステージに立っているキャストの皆さん、スタッフの皆さんと一緒に作ったチーチなので、この喜びをこの作品に関わったすべての皆さんと共有できたらいいなと思います」と挨拶。
その上で、「ミュージカル、そして演劇というものには順番や順位が付けられないんですね。今回僕はタップダンスというものに初めて挑戦したんですけれど、本当に難しくて、心が何度も折れそうになっていく中で、“とにかくいいものを皆さんにお見せしたい” “自分の限界を超えたい”という思いがありました。アスリートにも近いようなところを感じていますが、我々はオリンピックに出るような選手とは違い、順位をつけてもらうこともないですし、競い合うよりは支え合ってともに乗り越えていくというのが演劇・ミュージカルのスタイルだと思っております。そんな中で、こうした賞をいただるのは、順位をつけていただけたというか、それもちょっと違うんですけど、一段階上がるというか、これから臨んでいく作品に対して身の引き締まる思いを感じております」と思いを語る。
最後には「今回はコメディーミュージカルでお客様にたくさんの笑顔を届けられたことを誇りに思いますし、今後もぜひエンターテインメントを通して、ミュージカル、特に歌の力を通して、エンターテインメントの力を信じる皆さんに、笑顔を、元気を、勇気を、やる気を届けられたらと思います」と話した。
演劇賞:『Sing a Song』三上あい子役・戸田恵子
第43回菊田一夫演劇賞を受賞した戸田恵子
『Sing a Song』で三上あい子役を演じた戸田恵子も演劇賞を受賞。
戸田は始めに関係者への感謝の気持ちを述べた上で、「私が演じました舞台『Sing a Song』における三上あい子という役は、歌手の淡谷のり子さんが戦時中に皇軍慰問をされていた数年間のお話をモチーフにしたものでした。彼女はお国のために戦う兵隊さんのために、生きることの歓びを与える歌を歌いたいと願い、ゆえに軍歌を歌うことを拒み続けました。舞台上での華美な衣装も禁じられていたにもかかわらず、美しいドレスやつけまつげ、真っ赤なルージュは自分の戦闘服なんだと言い続けて、強い命がけのプロ根性を見せました」と自らの役どころについて振り返る。
「タフな三上あい子の役は怒鳴っては歌い、わめいては歌い、時に泣いては歌いで、大変私にとってもハードな役でした。そして戦争というものにも真っ向からむかう役は私自身初めての役回りでした。ミュージカルとはまたちがう難しさを感じながら、地方公演を含めて2ヶ月という長丁場の公演を若干ナーバスに過ごしました。そんな私をスタッフ・キャストの皆さんが本当に温かく支えてくださって、風邪ひとつひくことなく、無事に千秋楽を迎えられましたことを本当に誇りに思っております。穏やかな東京の良き日に、素晴らしい賞を受けたことは皆さんのおかげです。私から生意気ですが、おめでとうございますと伝えたい気持ちでいっぱいです。この賞に恥じないようにこれからも地道に精進してまいりたいと思います」と結んだ。
演劇賞:『キューティ・ブロンド』エル・ウッズ役・神田沙也加
第43回菊田一夫演劇賞を受賞した神田沙也加
『キューティ・ブロンド』でエル・ウッズ役を演じた神田沙也加は演劇賞を受賞。
神田は時折涙ぐみながら、「このような素晴らしい賞をいただきまして、本当に本当にありがとうございます。初舞台から作品ごとに演出や指導をしてくださる先生方の仰ることに必死で食らい続けていたら、いつの間にか10年が経っていました。本当に尊敬する先輩方から見たらひよっこですけれども、いつも藁をもつかむ思いで食らいついてきました。その間、菊田一夫演劇賞を受賞する同世代を見ては本当に羨ましく思ってきました。ですからこの賞は私にとって本当に一つの大きな目標でした。誰から決められたわけでもない自分で選んだ大好きな道に少しだけ自信を持てるような気がしています。少しだけ誇るようなことができるような気がしています」と挨拶。
「自力では絶対にできないことだったので、改めて見に来てくださったお客様方、審査員の皆様に感謝を申し上げたいと思っています。そして日本初演だった『キューティ・ブロンド』に惜しみない愛情と情熱と才能を注いでくださったキャスト・スタッフの皆様……その他この10年間を導いてくださった皆様のおかげで今があり、その感謝をこの場では到底表しきれません。なので、これから携わる作品により誠心誠意向き合うことで恩返しをしていきたいと思っています。そしてまた10年経ちましたとお話しできるように、長く役者でいられたらと願わずにはいられません。改めて精進したいと思います」とスピーチした。
演劇賞:『ベルリン、わが愛』『ドクトル・ジバゴ』脚本・演出・原田諒
第43回菊田一夫演劇賞を受賞した原田諒
『ベルリン、わが愛』『ドクトル・ジバゴ』の脚本・演出を担当した原田諒は演劇賞を受賞。
原田は「身に余るような賞をいただき、ありがとうございました。初め聞いた時は本当に驚きまして、言葉が出ませんでした。今回の対象作となりました『ベルリン、わが愛』の方は20世紀の半ば、ナチスが映画をプロパガンダとして利用しようとするドイツのベルリンの映画館を舞台に、映画人の尊厳、人間の尊厳、誇りを持って戦った人々の姿を描いた作品です。『ドクトル・ジバコ』の方はロシア革命を舞台に、社会主義に変わっていくロシアで一人の人間の姿、愛を求める男の姿を描いた作品です」と作品について紹介。
「両方とも、宝塚の世界とは相容れないものかも分かりませんが、そういうようなことが挑戦できたのはやはり宝塚の104年の歴史や土壌があったからだと思います。100年近く前に宝塚をつくられた小林先生は新しいことへのチャレンジを決して忘れられない方でもありました。また、菊田先生も宝塚に多くの作品を残された方です。宝塚という女性ばかりの劇団に人間のドラマと言うものを持ち込まれたのは菊田先生です。そう言ったお二人の血脈みたいなものが、自分の中に流れているとして、今回の作品に書くことにつながったとしたら、すごく幸せに思います」
「そして何より素晴らしい仲間、キャスト、スタッフの皆さんのおかげであります。本当に宝塚ジェンヌの皆さんは、ひたむきに努力をすることを惜しまない人たちです。本当に世界一だと思います。彼女たちの汗と涙とそしていつも未熟な私を支えてくださいますスタッフの先生方、時に共に戦い励まし頑張ってくださる裏方の皆さん、本当に皆さんのおかげです。選考委員の皆さま、舞台に劇場に足を運んでくださまった皆様のおかげです。これからもこの思いを忘れることなく、伝統とチャレンジをすることを忘れずに、ショービジネスに生きる人間としてひたむきに努力してまいりたいと思います」と語った。
特別賞:甲斐正人(永年の作曲及び音楽活動の功績に対して)
第43回菊田一夫演劇賞特別賞を受賞した甲斐正人
永年の作曲と音楽活動の功績を称えて、特別賞を受賞した甲斐正人は「思えば学生時代に、日本の演劇世界に生き生きとした豊かな音楽を提供できたら、この演劇の世界はもっともっと大発展するんじゃないかという志を持ちまして、作曲活動を始めました。その帰結がミュージカル音楽ということになったわけですけれども、以来、四十数年、私たちを取り巻く音楽環境は目覚ましく劇的に変化しました」と話す。
「共に一つの作品を作り上げていくために献身的に努力をしてくださっているピアニストの皆様、一人一人の歌手の技術的向上、精神的ケアをしてくださっている歌唱指導の皆様、一回一回の公演を最上の音楽を持って提供しようと日夜奮闘してくださっているオーケストラの皆様、そしてこれらの音楽を細心の注意を払ってお客様に届けています音響スタッフの皆様、すべての音楽の仲間と共に今回の賞をいただきたいと思っております。今後はさらに新しい音楽づくりに挑戦しつつ、後輩を育成していくことにも力を注いでいきたいと思います」と話した。
取材・文・撮影=五月女菜穂