“観る音楽”O.F.C.の合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』5年ぶりの上演は必見・必聴!

コラム
クラシック
舞台
2018.6.4
O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス


オルフの生んだ大傑作を本格的な舞台上演で堪能できる極めつけの名舞台!

カール・オルフ(1895年~1982年)が作曲した『カルミナ・ブラーナ』(1937年)は、19世紀初頭、南ドイツの修道院で発見された中世の修道僧らの詩歌集に基づき、若者たちの喜怒哀楽を劇的に描く。冒頭と最後の合唱「おお、運命の女神よ」が有名なこの名作は演奏会でも取り上げられるけれど、オルフは舞踊を伴う形式での上演を意図していた。今までに数々の有名振付家が挑んできたが、我が国では “独唱・合唱と管弦楽とバレエによる世俗カンタータ”として本格的な舞台形式で上演されるO.F.C. の合唱舞踊劇が極めつけの名舞台である。1995年以来8度の上演実績があり、前回2013年の上演時には平成25年度文化庁芸術祭大賞(舞踊部門)を受賞した。来たる2018年6月16日(土)に行う5年ぶりの上演は必見・必聴だ。

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

創作歴60年を超える巨匠・佐多達枝の渾身の演出・振付に心震える!

O.F.C.の活動は1995年のオルフ生誕100年を迎え柴大元らがバレエを伴った舞台形式での『カルミナ・ブラーナ』上演を企画して始まった。そこに芸術監督として佐多達枝を招き、同年の合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』の演出・振付を委ねる。佐多は御年86歳。1950年代から創作バレエを世に問い、旭日小綬章、紫綬褒章、芸術選奨文部大臣賞などを受賞した巨匠で、音楽と一体となった緻密な振付と深遠に広がる独自の世界観が創作の特徴である。佐多は『カルミナ・ブラーナ』全曲を振付するに際し、ダンサーのみならず合唱団も舞台に上げて振りを付けた。彼らは歌うだけでなくダンサーの側で動き、ギリシア悲劇におけるコロスの役割を担い、壮大なスケールの舞台に一層のダイナミズムを生み出す。音楽と舞踊を融合させるというオルフの意図を十全に汲み、かつ斬新なアイディアを加えたのである。

佐多達枝

佐多達枝

酒井はな、浅田良和、三木雄馬ら超強力なダンサー陣が集結!

佐多作品には日本を代表する名ダンサーたちが出演してきたが、5年ぶりの『カルミナ・ブラーナ』のメンバーも凄い。新国立劇場開場以来のプリマバレリーナとして活躍し現在はフリーの立場でコンテンポラリーダンスにも果敢に挑戦する酒井はな、「神が与えし」と形容したい美しき脚先に恵まれ、しなやかな踊りで魅了する浅田良和、名門・谷桃子バレエ団のプリンシパルとして華と実力を兼ね備える三木雄馬をはじめとする売れっ子を中心に逸材が集い、佐多の振付を血肉化し、舞台狭しと躍動する。岡博美(東京シティ・バレエ団)や池田武志(スターダンサーズ・バレエ団)といったバレエ・フリークが熱い視線を送る気鋭も抜擢されており、佐多の若い才能を見抜いて受け入れる感度の良さに感じ入るばかりだ。

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

脚光を浴びる新星・坂入健司郎のタクトに注目せよ!

音楽面の充実も見逃せない。指揮は1988年生れで30歳を迎えたばかりの新星・坂入健司郎。イェルク・デームスや舘野泉、小山裕幾と共演し、数多くの日本初演・世界初演の指揮を手がけ注目を浴びているホープである。歌手も実力派揃いで、澤江衣里(ソプラノ)、中嶋克彦(テノール)、加耒徹(バリトン)が見事に歌い上げるだろう。管弦楽は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。合唱・コロスはもちろんオルフ祝祭合唱団で、23年にわたって『カルミナ・ブラーナ』を歌い続けてきた底力を思う存分発揮するに違いない。児童合唱(すみだ少年少女合唱団)も入り、聴きごたえ満点である。

坂入健司郎

坂入健司郎

高度な芸術性と豊かなエンターテインメント性が驚異的なまでに結合!

チラシには「“観る音楽”合唱舞踊劇、それは歌とダンスと楽器を結び付けた新しいエンターテインメント」というキャッチコピーが記されているが惹句に偽りはない。音楽と舞踊の絶妙な融合として舞台芸術の可能性を高めた金字塔であると共に、たとえ前知識がなくとも目と耳で豊かに感じて親しめる舞台に仕上がっている。初演以来毎回大きな話題となり、2011年3月29日、東日本大震災発生から18日後に上演された時には当日券を求める長い列ができるほどの反響があり、まれに見る感動的な舞台となった。歌とダンスと生演奏が生み出すあふれんばかりの生命力を体感できることこそがO.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』の最大の魅力である。5年ぶりに強力な出演者で贈る一夕限りの饗宴をゆめゆめお見逃がしないように。

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』 撮影:スタッフ・テス

文:高橋森彦

公演情報

O.F.C.合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』

■日時:2018年6月16日(土)16:00開演
■会場:東京文化会館 大ホール
■作曲:カール・オルフ
■演出・振付:佐多達枝
■指揮:坂入健司郎
■独唱:
 澤江衣里(ソプラノ)
 中嶋克彦(テノール)
 加耒 徹(バリトン)
■ダンサー:
 酒井はな 浅田良和 三木雄馬
 宇山たわ 浦山英恵 岡 博美 斎藤隆子 坂田めぐみ 清水あゆみ
 関口淳子 高木奈津子 樋田佳美 土肥靖子 贄田麗帆 三浦志乃 森田真希
 荒井成也 池田武志 中弥智博 牧村直紀 安村圭太
■管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
■児童合唱:すみだ少年少女合唱団
■合唱・コロス:オルフ祝祭合唱団

■O.F.C.公式ホームページ  https://www.choraldancetheatre-ofc.com/
■お問い合わせ:O.F.C.事務局 03-3367-2451
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