良知真次×藤岡正明インタビュー「新しいメンバーと共に新しいBOYSを作りたい」舞台『宝塚BOYS』

2018.6.28
インタビュー
舞台

良知真次、藤岡正明

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2007年に初演され、その秘められた史実と共に大きな感動を呼び話題となった舞台『宝塚BOYS』が2018年夏、5度目の上演となる。“女性だけのレビュー劇団”として、世界でも知られる存在となった宝塚歌劇団の100年を超える華やかな歴史の中で、かつて「男子部」が特設されたという事実に焦点を当てた舞台だ。

東京芸術劇場 プレイハウス他にて上演される今回、「team SEA」「team SKY」という2チーム制で上演される。前回のインタビューに続き、今回は同じ「team SEA」から良知真次藤岡正明が登場。ヴィジュアル撮影現場にて、BOYS経験者の二人だからこそわかる作品の魅力、深さを語ってもらった。

ーー藤岡さんは2010年、良知さんは2013年に『宝塚BOYS』に出演されました。本作に対する思いや、ご自身が出演された時の心に残る思い出を教えてください。

 

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藤岡正明

藤岡:この作品には思い出があり過ぎて……本当にいろいろな事がありました。体力的にもタフな作品でね。これ、上演するのが夏なんですよ。僕らは暑さで疲弊していきました。でもそれも含めて『宝塚BOYS』。青春の一ページ。まるで部活のようでした。当時、役なのか自分なのか分からないくらいBOYSと離れたくなかったんです。神戸公演の移動中、新幹線の車内では皆集まって座り、まるで修学旅行のようでした。僕らは馬鹿なので(笑)、名古屋で停車した時にジャンケンで負けた人がホームの売店で名古屋らしいものを買ってくるというゲームをしていたんです。で、負けた僕はダッシュで買ってきたんだけど何故か八つ橋を買っていて「名古屋じゃなーい!」……すべてが修学旅行のようで、その時から今も仲良い状態か続いています。尊い思い出です。

良知真次

良知:『宝塚BOYS』は夏にやる意味がある作品。僕らがもう忘れてきた青春を新たに舞台の上で作れるなんてそうそうない事だと思うんです。今回、歳は重ねましたがまた新たに青春を作ることができるのは奇跡だと思います。
「奇跡」を起こそうと思って実現できなかった人たちの物語なので、僕らも奇跡を起こそう、と全力で挑まないとならない作品なんだろうなと思うんです。

ーー初めて出演された時から月日は流れましたが、年齢を重ねたことで作品に対する思いや向き合い方は変わりましたか?

藤岡:作品に対する思いは変わらないですね。ずーっとこの作品が好きなんです。出演した後も、一ファンとしてずっと残っていてくれたらいいな、ずっとこの作品を愛し続けていきたいな、と思っていたんです。まさかもう一度出演できるとは思ってもいなかったので、さあ、これから何ができるかなと考えています。
正直な話、この作品を作り上げるのは本当にしんどかったです。でも、そのしんどさがなんて気持ちいいんだろうという瞬間がある「ランナーズハイ」のような作品でしたね。

良知真次、藤岡正明

良知:僕は昨年振付の仕事で宝塚歌劇団の稽古場に実際に入りました。『宝塚BOYS』も宝塚の稽古場に入るところからスタートするから、本物の稽古場に足を踏み入れたときに感慨深いものがありました。「すごいところに来ちゃったな」って。自分たちの舞台でどれだけその時のリアルな想いを伝えることが出来るか、が今回まず勝負だなと思っています。僕は前回の記憶が全くないんです。いい意味で忘れたんだと思います。ひきずっていたらきっとこの作品ばかりやりたくなるから。

藤岡:ああ、その気持ちもすごくわかる!

良知:一度忘れたからこそ、違う作品で成長できたし、一方で今までいろいろな経験を積んだからこそ今回、改めて『宝塚BOYS』に挑めると思うんです。今回自分と共演するメンバーは前回と違うキャストだからこそ、また違うメッセージを伝えることができるはず。新しいメンバーと一緒に新しい『宝塚BOYS』を作っていきたいですね。

藤岡:ちゃんとしたことを言うなあ(笑)。

良知真次、藤岡正明

ーー良知さんが昨年経験した実際の宝塚の稽古場の体験をぜひ聞かせてください。

藤岡:下級生の「おはようございます」って挨拶に、先輩たちが「声が小さい!もう一度!」……とかそういうこと、あった(笑)?

良知:ないない(笑)。でも驚いた事もありました。男役の人たちに振付を付けている時、娘役さんたちが脇の方からその様子を見ようとするので、「男役さんの前から見学してください」って言って、娘役さんたちがずらっと前に並んだら、その瞬間、男役さんたちが一気に「男」の顔になったんです。やはり娘役さん、つまり自分を観る「女性」の目があるとより一層「男」に変化するんだろうなって思いました。男役さんは本物の男よりずっと男らしかったです。

藤岡:実際に宝塚の稽古場に入ったら『宝塚BOYS』の事を思い出した?

藤岡正明

良知:もちろん! また宝塚の振付をさせてほしいって思ったよ。勉強になるし、この世界にBOYSが憧れたのは嘘じゃなかったと実感できたからね。スターさんの話を聞いてトップスターになるのは本当に大変なんだなってこともわかったし。

藤岡:その経験があることで、例えば10年、20年後にまた『宝塚BOYS』をやる時は良知が「池田さん(劇中でBOYSの担当をする宝塚の社員)」の役をやれるんじゃない?

良知:確かに、なくはない話だよね(笑)。

ーーお二人は初出演の時、お互い同じ「竹内役」をやっていたんですよね。今回はどの役になりそうですか?

藤岡:まだ現時点(取材時)、どの役をやるのかが決まっていないんです。実際は台本を読み合わせ、裕美さんと話をして決まるので。僕が現役のダンサー・星野役をやるということもあり得る訳で……それはないか(笑)!

良知真次

良知:うん、ないな(笑)!

藤岡:やっぱり(笑)? でも良知は星野役をやっても不思議じゃないじゃん。踊れるし。

良知:でもうちのチームには強力な人がいるからさー(笑)。

藤岡:だよねー(笑)。

(二人でフライヤーを眺めてニヤニヤ)

藤岡:よっくん(東山義久)の太田川役、見たいよね!

良知:絶対、想像つかない!

藤岡:でも酔っぱらった時は太田川みたいになるよ(笑)。

良知:酔っぱらった時にそんな顔をしているなんて、本人はきっと知らないと思うよ(笑)。

良知真次、藤岡正明

ーーお二人は、ご自分がやりたい役を選べると言われたら、どの役をやりたいと思いますか?

二人:うーん(しばし考える)

藤岡:俺は長谷川役か、自分に合っているという意味では太田川役かな? 竹内役以外だとは思うし、上原役もどこか違うと思う。長谷川役はおもしろいと思うんですよ。

良知:今でも覚えているんですが、自分の初演の時、ダンサーの星野役にという話もあったのですが、僕は星野役以外をやりたいとお話ししました。そして裕美さんとの面談で自分がこれまでどういう人生を歩んできたかを説明した結果、竹内役になったんです。あれから何年も経ち、今回どういう風になるのか、興味ありますね。

ーーその時はどのような心境だったんですか?

良知:言葉では説明しづらいんですが……「踊りを武器にしていない」人の役をやりたかったんです。なんとなくですけどね。

良知真次、藤岡正明

ーー今回の「team SEA」は過去の『宝塚BOYS』経験者が多いチームですが、この顔ぶれでどのようなBOYSを作っていきたいですか?

藤岡:このチームだと、百名(ヒロキ)くんと木内(健人)くんがBOYS初参加。二人はきっと不安もあると思うんです。だからこそ一緒に力を合わせて作品を作っていきたいですね。確かに僕らは経験者ですが、だからこそ0から積み上げていきたいです。経験があるとどうしても演じていて昔の事を思い出して記憶をなぞりたくなってしまう事もあると思うけれど、新しい二人がそこにいることで新しいBOYSを作っていける気がします。

良知:キャストが変われば自分も変わる。僕らはさらに変わっていかないといけないとも思います。日によって、シーンによって、公演によっても、どんどん進化していくのがナマモノである舞台の醍醐味だと思いますしね。

藤岡:一言ではまとめられないんですけど、『宝塚BOYS』はまさかこんなに野太く根が張られているとは、と思う程、とてもよく出来た作品なんです。以前、裕美さんが話をされていたんですが「この話はそんなにいろんなことが起きる訳じゃない、むしろ地味な内容である。ならば、この物語では何を見せるか……」と。それは【人を見せる】その人がどう生きて、どう感じて、どう変わっていくか、それを明確に示していくんだと。そのためには役者一人ひとりが輝かないとならないんだと仰っていたんです。僕は『宝塚BOYS』に出演した後、演劇ユニットを立ち上げたんですが、その時、役者がすごく輝く作品を作りたいと思ったんです。まさに『宝塚BOYS』ですね。

良知:僕は、ハッピーエンドではない『宝塚BOYS』がこんなに長く上演されるのは何故なんだろうって考えています。ハッピーエンドのほうが本当は長く続くと思うんですよ。宝塚の舞台に出ることに命を賭けていたのに、夢破れるんです。作る側も演じる側も、もともと夢を叶えようとしてそこに集まったのにそれが叶わなかった。劇場に集まるお客様が彼らを受け入れなかった、宝塚のお客様が彼らを「要らない」といった、そんな残酷なことってないと思うんです。でもだからこそ、今の宝塚の輝きがある、そこが皆の心に強く残る理由なんでしょうね。

良知真次、藤岡正明

取材・文・撮影=こむらさき

公演情報

『宝塚BOYS』
 
【あらすじ】
昭和20年秋…第二次世界大戦が終わったばかりの激動の時代。幼い頃から宝塚の舞台に憧れていた若者・上原金蔵。彼は一枚の召集令状で青春を失い、今度は自らの書いた一枚の手紙で、人生を変えようとしていた。手紙の宛先は宝塚歌劇団創始者・小林一三。内容は宝塚歌劇団への男性登用を訴えるものだった。折よく小林一三も、いずれは男子も含めた本格的な“国民劇”を、と考えていたのだ。
そうして集まったメンバーは、上原をはじめ、電気屋の竹内重雄、宝塚のオーケストラメンバーだった太田川剛、旅芸人の息子・長谷川好弥、闇市の愚連隊だった山田浩二、現役のダンサー・星野丈治、と個性豊かな面々だった。宝塚歌劇男子部第一期生として集められた彼らではあるが、劇団内、観客などの大半が男子部に反対。前途多難が予想される彼らの担当者として歌劇団から、池田和也が派遣されていた。
池田は彼らに厳しく言い放つ。
「“清く正しく美しく”の歌劇団内では女子生徒といっさい口をきいてはならない」
「訓練期間は2年。その間、実力を認められるものは2年を待たずに仕事を与える」
男子部のメンバーはいつか大劇場の舞台に立てることを信じ、声楽・バレエ…と慣れないレッスン明け暮れる日々が始まった。報われぬ稽古の日々が一年近く続く中、やっと与えられた役は……馬の足……。そして男子部の存在を否定するかのような事件が起こり、彼らの心中は激しく揺れ動く。
そんな中、新人・竹田幹夫が入って来る。
月日は流れて行く。やり切れない想いをかかえながらも、相変わらず日々のレッスンに励む男子部の面々。しかし、彼らの出番は相変わらずの馬の足と陰コーラス。プログラムに名前すら載らない。それどころか、男子部反対の声はますます高まり、孤立無援の状況。そんな彼らをいつも温かく見守ってくれるのは、寮でまかないの世話をしてくれる君原佳枝だけだ。そんなある日、彼らの元に宝塚男女合同公演の計画が持ち上がった。喜びにわく彼らだったが……。 

■日程・会場:
【東京公演】2018年8月4日(土)~19日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【名古屋公演】2018年8月22日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【久留米公演】2018年8月25日(土)~26日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【大阪公演】2018年8月31日(金)~9月2日(日) サンケイホールブリーゼ
料金:全席指定 ¥8,800
 
■原案:辻則彦 <「男たちの宝塚」(神戸新聞総合出版センター刊)>
■脚本:中島淳彦
■演出:鈴木裕美
■協力:宝塚歌劇団
■企画・製作:キューブ
 
■出演:
☆team SEA
良知真次、藤岡正明、上山竜治、木内健人、百名ヒロキ、石井一彰、東山義久、愛華みれ、山西 惇
☆team SKY
永田崇人、溝口琢矢、塩田康平、富田健太郎、山口大地、川原一馬、中塚皓平、愛華みれ、山西 惇
 
■公式サイト:http://www.cubeinc.co.jp/stage/info/takarazukaboys_2018.html
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