JENNI インタビュー 「自分が感じ取ったものをちゃんと出せた」"ありのままのJENNI"が詰まったミニアルバム『BUZZLE』が完成するまで
JENNI
6月6日にミニアルバム『BUZZLE』をリリースするJENNI。
「今回は自分が感じ取ったものをちゃんと出せたんですよ。それが嬉しい」と語る今作は、いかにして完成したのか――活動休止がキッカケでうまれた曲、レコーディング中悔し泣きをした曲、SNSのシリアスな面を描いた曲。今の彼女だからこそ完成させることができたミニアルバムができるまでを訊いた。
──6月6日にミニアルバム『BUZZLE』をリリースされますが、完成させた感想としてはどんなものがありますか?
今までは元気な曲や楽しくなる曲を作っていこうという気持ちが強かったので、そういう楽曲ばかりだったんですね。でも、ありがたいことにいろいろ経験させていただけたことで、思うことがいろいろ増えて。それを言葉にできましたし、楽曲も今までできなかったことができているので、なんか、いい感じで歳を取ったなって思いました(笑)。
──(笑)。というと?
今回「切なくて」という曲があるんですけど、私は今までラブソングは歌わないようにしてきたつもりでして。それは、10代の子が歌う恋愛ソングと、20代の人が歌う恋愛ソングって深みが違うじゃないですか。なにかとろけるようなことを10代の子が歌うと「お、おお……」みたいな(笑)。
──「まだ若いくせに……」って思う人もいるでしょうね。
そこが可愛かったりもするんですけどね。でも、深みとか共感があるものにしたかったので、ずっと封じていたんです。自分もまだそこまで恋愛経験があるわけじゃないけど(苦笑)。でも、私もやっとこういうことが言えるようになったんだなとは思いました。
JENNI
──今作は全曲の歌詞とメロディーをJENNIさんが手がけているわけですけど、制作するにあたって考えていたものはありましたか?
最初はそういうことを考えていなくて、思ったことからどんどんやっていったんです。今回はほとんどの曲をメロディー先行で作らせてもらったんですが、とにかくかっこいいなと思うもの、自分がいいなと思うものを歌ってみて、メモ帳を見返しながらこういう歌詞にしようかなって。それを「こういう雰囲気にしたいんです」って、たとえば参考のCDと一緒に(アレンジャーに)お渡しするっていう。そうやって、そのときの気持ちや気分で作っていったんです。
──となると、日記的に作った感じなんでしょうか。
そうですね。いつも何か思ったときにメモるようにしていますし、あとは実際に日記も書いているので、それと照らし合わせたりとか。あとは先に歌詞があったものもあるし、トラック先行で作ったものもありますね。
──思いついたものを形にしていく工程なのもあって、JENNIさんの好きな音楽が表れているのかなと思ったんですが、そもそもどういう音楽が好きだったんですか?
元々ミディアム系が好きでしたね。悲しい曲とか。あとはピアノ曲がすごく好きで。よくよく聴くと今回の6曲中、ほとんどがピアノ曲なんですよね。
JENNI
JENNI
──そうですよね。あと、ミディアムな曲も多いです。
ちょっとやらかしちゃったんですよね(苦笑)。バリエーション!って反省してるんですけど。でも、やっぱり好きだからそういうところが出ているんだと思います。
──なるほど。収録曲についてお聞きしていこうと思うんですが、1曲目はタイトル曲でもある「BUZZLE」。いいタイトルですよね。
(ガッツポーズをしながら)イエス!
──あはははは(笑)。どういうところから出てきたんですか?
どうしようかなと思ってキーワードを出していたら「PUZZLE」が出てきたんですよね。じゃあ、ひとつひとつの曲が自分のピースということにしようと。でも、「PUZZLE」だけだとパンチがないなと思って考えていたら、「バズる」が出てきて。それで、この曲たちがいろんな人に広がりますようにっていう願いを込めて、このタイトルにしました。
──曲としてはどういうところから作り始めたんですか?
「PUZZLE」は楽曲先行でした。たとえば、アニメ『ユーリ!!! on ICE』のオープニング曲(「History Maker」)みたいな、洋楽っぽい構成の曲をやってみたいなと思ったんです。こういう壮大な感じも今までやっていなかったし、歌い込むというよりは楽曲を聴かせたいっていう気持ちとか、一緒に音楽を楽しみたいっていう思いも混ぜていますね。
JENNI
──ただ、歌詞自体はSNSにおけるシリアスな面が題材になっていますよね。
この歌詞は、まさにネットそのままのことで。ネットって「伸びたものが正解」という節があるじゃないですか。たとえそれが自分の答えとは違っていたとしても、そっちが伸びたらそれが正解っていう。でも、この曲は「私はそれでも自分を曲げないよ」っていう。自分がそのままでいたいなら世界を変えなよ、自分でいなよっていう曲です。
──JENNIさんはYouTuberとして活動されていますけど、それが歌詞の着想になったところもあるんですか?
「BUZZLE」はYouTubeよりもTwitterのイメージですね。YouTubeは「サヨナラの唄」のほうです。この曲は、YouTubeの中にいる自分が、視聴者さんに声をかけているものになっているので。
──確かにそうですね。曲の始まりも、動画と同じく<Hey Guys!!>ですし。この曲はどういうところから?
ライブの最後で歌えるような曲がほしいなと思っていたことと、イベントの後とかに「これでまたしばらく会えなくなるんですね」っていうリプがちょいちょい来たんです。でも、私は動画の中にいるから、「サヨナラ」じゃなくて「またね」だよっていう気持ちを込めました。あと、もうひとつ意味があって。最後だけサビの歌詞を変えているんですけど、これは「もし私がYouTubeをやめてしまったら」っていう、ちょっと悲しいことを書いていて。
──<いつか月日が流れ デジタルの海に消えたって>という。
それでも心に残っていると嬉しいし、大丈夫だよ、明るくいてねっていう。
JENNI
JENNI
──「サヨナラの唄」だけじゃなく、他の歌詞もそういうシリアスな部分が顔を覗かせますよね。
自分が一度活動休止しているんですけど、そのときに「当たり前のものは当たり前じゃないんだ」ってすごく感じたんですよね。会えるのが当たり前だと思ったら、たぶん自分は自分じゃなくなるんだろうなと思っていて。そういうところが出ているんだと思います。
──過去にそういった経験があったからこその歌詞なんですね。
裏にはそういう思いがあったりしますね。表はやっぱり明るくいたほうが楽しいし、みんなもいい気分でいられるかなって思うのは、自分の性格でもあると思います。
──YouTubeでのJENNIさんは「明るい」とか「元気」みたいなイメージが強くて、歌詞の雰囲気とは少し違いますけど、これも自分であると。
YouTubeはいつも楽しくやっているので、シリアスな部分を出すことってめったにないし、出したところでなんかうまく言えないなって(笑)。私は日本語が下手だから歌っているところもあるので。だから普段自分が考えていること、自分の片鱗みたいなものが出せたかなと思いますね。
──それこそ「切なくて」みたいな感情はもちろんあるんだけど、普段はなるべく出さないようにしている。
そうですね。でも、「切なくて」は恋愛映画を観て書いたんですよ。
──なんていう映画ですか?
それが覚えてないんですよ(苦笑)。実は恋愛映画ってちょっと苦手でして。でも、そういう感情も勉強しなきゃいけないなと思って観たんですけど、その映画に、好きな人と離れた女性が泣くシーンがあったんです。「会いたい……会いたい……」ってずっと泣いてて、最初は病んでるのかなって思ったんですけど(苦笑)。でも、そんなに泣けるほど人を愛せることってすごいなと思って、それを自分と重ね合わせて書きました。
──でも、なぜまた恋愛映画が苦手なんです?
そんなこと現実にはない!って思っちゃうんですよね(苦笑)。だから観るとしたら海外のものが多いです。日本のだとちょっと少女マンガすぎて、なんかキラキラしてるなあって。確かにキュンとはするけど、実際にはありえないし……もし自分がされたらちょっとイラっとするかも。たぶん、壁ドンされたら腹パンしちゃいます。腹ドンですね(笑)。
──壁ドンからの腹ドン(笑)。JENNIさんって結構リアリストなんですかね。
素直でいたいんですよね。だからときには毒を吐くこともありますし。あまりよろしくないんですけど(苦笑)。
──いや、生きていれば毒はたまりますよ。それはちゃんと出さないと。
(笑)。でも、偽善者でいるのもどうかと思うし、ちょっとワガママではあるのかもしれないけど、嘘はつきたくないなって思いますね。
──「嘘をつきたくない」というのは、今作の軸にあるメッセージというか。それこそパズルを重ねていくと浮かび上がってくる言葉かもしれないですね。
そうですね。「これが私だよ、普段はあまり言わないけど」みたいな。
──「嘘をつきたくない」みたいな強い意志があるという意味では、「lullaby」もそうかなと思いました。子守唄のように優しい言葉を歌いかけるんだけど、実はそれがめちゃくちゃ強いというか。
「lullaby」は、「頑張らなくていいよ」っていう曲なんですけど、この曲には「私」と、その人にとって「大切な人」の2人が出てくるんですね。で、「大切な人」が大変な思いをしてヘコんでいるんだけど、「私」はその人が頑張っているのを知っているから「頑張って」とは言えないし、そういうときって何を言っても届かないじゃないですか。だから、せめていい夢を見てほしいなと思って寝かしつけるっていう。だから結構情けない人の歌ではあるんですよね。
──でも、「頑張らなくていいよ」って言える優しさもありますよね。そういうときに「頑張れ!」って言うのは、言ってしまえば結構ラクというか。
確かに誰でも言える言葉だなと思ったりはしますね。サビの<ah ah ah>は、その人の泣き声のイメージなんです。その人は弱音をそこまで吐かないんだけど、でも「私」はそれを知りたいというか、こういう言葉で励ましたいなって思っているのがサビなんですけど、結局言えなくて、こうすることしかできないんだよねって寝かしつけるのが大サビなんです。説明が結構複雑ではあるんですけど。
──そういったストーリー仕立てになっていると。その次の「マリオネット」も、同じく物語がありますね。
はい。これは私自身の歌です。結構大変だった時期が正直あって。たとえば、「ああしなさい、こうしなさい」って言われていたけど、なぜそうしないといけないのかよくわからなかったんですよね。そうすることが当たり前なのかもしれないけど、自分には理解できなくて。聞いても理解できる答えが返ってくるわけでもなく、自分の体がボロボロになって、活動休止に繋がったんですけど。それがこの歌の1番なんです。
──はい。
でも、活動休止がキッカケになって、YouTubeを始めよう!って気持ちが固まったところがサビで、2番はYouTubeを始めた1年前の頃のことを書いています。自分の好きなことがやれるようになって、音楽も始められるかなと思いきや、自分にはノウハウが何もなかったんですよね。それまでは人にまかせっぱなしで、どうやったら音楽ができるのか最初は全然わからなかった。だから、自由になったからと言って、全部が手に入るわけじゃないんだなって。
──歌詞でいうところの<自由の対価>を知ったと。
だけど、私は自由だし、なんでもできるんだ!って。ここで悔やむことなんてなにもないし、もっと強くなりたい、前向きに生きたいっていう。でも、この歌詞は私自身のことではあるんだけど、他の人にも当てはまることだなと思ったので<そう誰だって>っていう言葉を足して、一緒に頑張りたいねっていう気持ちを込めました。
──自分のストーリーではあるけど、あくまでもみんなの歌になってほしいと。
私だけじゃなくて、誰にでもそういうことってあると思うんです。新しいことを始めたときは何か失敗をするし、先輩の言ってることを理解しようとしてもわからないことっていっぱいあるし。でも、それがわかってくると自分のしたいようにできるようになってくるから、そんなに落ち込まんといて?っていう(笑)。
──作品全体の流れとして、「マリオネット」からポジティブになっていくような印象もありました。それをより盛り上げるのが、次の「dandelion」なのかなと。
でも、この曲もちょっと暗いんですよね(苦笑)。
──まあ、底抜けにポジティブではないですね(笑)。
私、どんだけ暗いんだろう(笑)。
──でも、暗さというよりは、泥臭さが印象的でした。ダンデライオン(タンポポ)みたいに生きていきたいっていう。
タンポポって、一回咲いたら枯れて種になって、それを飛ばしてまた新しい場所で咲くのを繰り返すじゃないですか。だから、これもちょっと似たような話になってしまうんですけど、頑張ってもうまくいかないことも全然あるじゃないですか。でも、頑張るだけ頑張ったならいいじゃんっていう。だって私はダンデライオンだもん、失敗したって次があるから気にしないでいこうよっていう曲ですね。<強く咲いた花 美しく枯れたら 種を抱いたまま 空に飛ばせ>というのが、この曲で一番言いたいことで。
──その<美しく枯れたら>という言葉がいいなと思いました。
失敗を悪いものだとする風潮ってありますけど、いや、悪くなくね?って自分は思うんです。得るものが多いし、逆に失敗ってわかっただけでもそれはすごいことだし、もし自分が合わないと思ったら今度は合うところに飛べばいいし。だから枯れることはかっこ悪いことじゃないなと思って、あえて<美しく>っていうワード入れました。あと、2番の<コンクリートリバー>というのは、自分が山形から東京に来たっていうイメージも入れてます。自分も場所を移したタンポポなので。
──そういった部分を踏まえても、ものすごくJENNIさんらしい作品になったんですね。
今までは誰かの共感とか、友達の話の元に作ることが多かったんですけど、今回は自分が感じ取ったものをちゃんと出せたんですよ。それが嬉しいし、今まではそういう曲って1、2曲だけだったけど、全部そういうものにできたことが超嬉しいです。
──そして、本作を持って仙台、大阪、東京でのワンマンライブが決まっていますが、どんなものにしたいですか?
自分はライブのほうが感情的に歌う節があるので、今回のメッセージをより伝えられるんだろうなと思っていて。だから、もちろん楽しみつつ、みんながちょっと上向くことができるようなことができればいいなと思います。わりと聴かせるライブになるのかもしれないですね。
──確かに新曲的には聴かせる場面が多そうですね。
けど、「ララバイ」の<ah ah ah>とか、「dandelion」にも<HEY!>って言うところがあって、みんなでひとつの曲を作り上げていきたいなっていう目標もあるので、それも心がけつつやりたいなと思います。
JENNI
──ツアーを経験したことで見えてくるものがいろいろあると思うんですが、今後はどういう活動をしていきたいですか?
ライブの予定が非常に増えてきているんですよ。去年は全然活動できなかったんですけど、いろんなところに行く機会が増えてきたし、もっと輪を広げていきたいと思っているので、ライブを頑張りたいです。繋がりをもっと強くしていきたいというか。
──やっぱりライブは好きですか?
好きです! ライブのほうが素直になれるから、思いっきりやれるんですよね。JENNIに一番なりやすい場所というか。あと、お客さんの表情を見るのが好きで、ひとりひとりの性格がすごく見えてくるんですよ。それがおもしろくて。泣いている子とか見ると、フフフって思っちゃうんです(笑)。歳をとっていくと、感情が豊かになることって少なくなるじゃないですか。
──確かに泣くことって減りますよね。
私は泣くとしたら悔し泣きぐらいですけど。
──悔し泣きとかするんですか?
多々です。レコーディング中もこっそり泣いたりとか。
──今回の曲でも?
「dandelion」はそうでしたね。最初に録ったときは上手に歌えなかったんです。こんな表現をしたいんじゃない!って。それで、誰も気づいていなかったと思うんですけどこっそり泣いて、もう一回やらせていただけないですか?ってお願いして録り直したのがこのテイクなんですよ。そういう意味ではちょっと強くなったかなって。
──まさに歌詞通りですね。
そうやって自分と重なるとちょっとウルっときちゃうんですよね(笑)。でも、泣くのは悪いことじゃないから否定はしてないです。だからライブで泣いている子を見ると、ちゃんと届いたんだな、それぐらい素直になってくれたんだなって。そうなれる場所をもっと作っていきたいですね。
取材・文=山口哲生 撮影=大橋祐希
JENNI
未掲載カット含む撮り下ろし写真は【 コチラ 】
リリース情報
『BUZZLE』
NKR-00015 ¥2500(tax in)
2.切なくて
3.lullaby
4.マリオネット
5.dandelion
6.サヨナラの唄
ライブ情報
6/16(Sat) @宮城・HooK SENDAI
7/29(Sun) @大阪・アメリカ村 DROP
8/25(Sat) @東京・白金高輪 SELENE b2