スペイン国立バレエ団
『アレント』 ©Maria Alperi
スペイン舞踊の現在と過去を一望
1978年に創設されたスペイン国立バレエ団は、スペイン舞踊最高峰の舞踊団として名高くクラシコ・エスパニョール(古典舞踊)やフラメンコ(アンダルシア地方の民族舞踊)を極めた踊り手が揃う。ホアキン・コルテス、アントニオ・カナーレスら一世を風靡した大スターを生み出し、スペイン国内外で圧倒的人気を誇る。
2011年から芸術監督を務めるアントニオ・ナハーロは、スター・ダンサーとして活躍しながら早くから振付を手がけ受賞歴も数多い。ソルトレイクシティ・オリンピックのアイスダンス部門の金メダル受賞組をはじめとするフィギュアスケーターへの振付提供でも知られる。そんな鬼才ナハーロ率いる同バレエ団の来日公演は現代フラメンコの醍醐味を満喫できる絶好のチャンスだ。
Aプロでは前回(13年)来日時に評判を呼んだ『セビリア組曲』が再び登場する。セビリア出身のギタリスト、ラファエル・リケーニの曲にナハーロが振り付けた作品で、セビリアの風物が目に浮かんでくるような快作だ。フラメンコを基調とした曲にスペイン舞踊のテクニックを織り交ぜて創作したナハーロの手腕が光る。そのほか人気曲『ボレロ』(ラヴェル作曲)、それに『ファルーカ』『ビバ・ナバーラ』という、フラメンコやスペイン舞踊の精髄を堪能できる作品が並ぶ。定番から注目のナハーロ作品まで取り揃えておりカンパニーの名刺代わりといってもいいだろう。
Bプロは今年6月にマドリードで世界初演されたばかりのホットな新作の2本立て。これはナハーロの提案による民族舞踊の伝統とスペイン舞踊のさまざまなスタイルを復活させる試みである。『アレント』はナハーロが振り付けたエネルギッシュなスペイン舞踊だ。作曲家でギタリストのフェルナンド・エゴスクエのリズミカルな音楽にのせた力強いダンスに期待したい。『サグアン〜新フラメンコ組曲〜』はフラメンコ・ギタリスト、ヘスース・トーレスの曲に新世代のメルセデス・ルイス、ラ・ルピとマルコ・フローレスが振り付けた意欲作。ヤイサ・ピニージョスによる伝統的要素と斬新なアイディアが融合した衣裳も見ものだ。
どちらも伝統をしっかり受け継ぎながら今の時代と向きあって創造を続けるカンパニーの特徴を反映した好プログラムであり、スペイン舞踊の過去と現在を一望できるだろう。圧倒的な創作力によってスペイン舞踊の可能性を追求するナハーロと手兵による熱のこもった舞台を体感したい。
文:高橋森彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)
10/31(土)〜11/3(火・祝) 東京文化会館(プログラムA)
11/20(金)〜11/22(日) Bunkamuraオーチャードホール(プログラムB)
問合わせ:スペース03-3234-9999
※全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。会場により演目が異なります。
http://www.ints.co.jp/spain-ballet2015