『横山華山』展が東京ステーションギャラリーで開催 天才絵師・曾我蕭白との競演含め、海外からの優品が里帰り

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2018.8.4
横山華山《唐子図屛風》左隻部分 文政9(1826)年 個人蔵

横山華山《唐子図屛風》左隻部分 文政9(1826)年 個人蔵

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『横山華山』展が、2018年9月22日(土)〜11月11日(日)まで、東京ステーションギャラリーで開催される。

横山華山(1781/4~1837)は、江戸時代後期の京都で活躍した人気絵師。諸画派に属さず、画壇の潮流に左右されない、自由な画風と筆遣いで人気を博した。彼は曾我蕭白に傾倒し、岸駒に入門した後、呉春に私淑して絵の幅を広げ、多くの流派の画法を身につけた。江戸の絵師たちにも大きな影響を与え、その名声は当時日本中に広がっていった。また、海外の研究者やコレクターからも評価され、欧米の美術館に優品が所蔵されている。

本展は、華山の多彩な画業を系統立てて紹介する、初めての回顧展。曾我蕭白や弟子たちの作品も含め、会期中あわせて約100点の展示を通して、かつて有名であったにもかかわらず、忘れ去られてしまった画家の全貌を掘り起こし、その魅力に光を当てる。また、ボストン美術館や大英博物館など、海外に渡った作品も里帰りする。

展示の見どころ1:天才は天才を呼ぶ

横山華山《蝦蟇仙人図》個人蔵

横山華山《蝦蟇仙人図》個人蔵

蕭白と華山がそれぞれ描いた《蝦蟇仙人図》。落款や印章を見ることなしに、どちらが蕭白の作品かわかるだろうか。華山は若くして蕭白と比較し得るほどの才能を発揮していた。会場では、2人の天才絵師の貴重な優品を並べて展示する。

曾我蕭白《蝦蟇仙人図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection Photograph (C) Museum of Fine Arts, Boston

曾我蕭白《蝦蟇仙人図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection Photograph (C) Museum of Fine Arts, Boston

展示の見どころ2:海外から優品が里帰り

横山華山《寒山拾得図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection  Photograph (C) Museum of Fine Arts, Boston

横山華山《寒山拾得図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection  Photograph (C) Museum of Fine Arts, Boston

明治時代初期に華山の優品は海を渡り、現在、ボストン美術館に12点、大英博物館に6点が収蔵されている。その背景には、フェノロサやビゲローらによって華山の作品が海外で評価されていたことがあった。ボストン美術館からは、縦3メートル、幅2メートルの蕭白風の大作《寒山拾得図》をはじめ5点、大英博物館からは3点が里帰りする。うち7点が日本初公開となる。

展示の見どころ3:自由さからくる近代性を見よ

横山華山《城州白河之図》文化10(1813)年 個人蔵

横山華山《城州白河之図》文化10(1813)年 個人蔵

同時代の伝統や形式を重んじる諸画派に比べ、自由な表現が華山の魅力だ。たとえば《城州白河之図》は、画面の真ん中に大胆に配置された大きな木に目が奪われる。正面から見た宝船という奇抜な構図の《宝船図》は、亡くなる2カ月前に描いた貴重な作品。《富士山図》は、明治時代以降の作家の作かと見間違うような筆遣いだ。《唐子図屏風》に表現された人物の顔の陰影などは西洋風で近代的な画風を感じさせる。

横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)

横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)

横山華山《富士山図》京都府(京都文化博物館管理)

横山華山《富士山図》京都府(京都文化博物館管理)

横山華山《唐子図屛風》右隻 文政9(1826)年 個人蔵

横山華山《唐子図屛風》右隻 文政9(1826)年 個人蔵

展示の見どころ4:風俗画の細かな描写は華山の真骨頂

横山華山《祇園祭礼図巻》上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

横山華山《祇園祭礼図巻》上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

《祇園祭礼図巻》は、江戸時代後期の祇園祭の全貌を、上下巻約30メートルに渡って克明に描いた華山の集大成ともいえる壮大な絵巻だ。上巻には宵山や山鉾巡行の前祭、下巻には2014年に50年ぶりに復活した後祭や、芸妓が練り歩く「神輿洗練物」が描かれている。神輿洗練物は現在行われていない行事で、絵画史料として詳細に描かれているものは本絵巻しか確認されていない。祇園祭のハイライトである山鉾巡行を描く絵は他に多くあるが、巡行以外の行事や、鉾の懸装品・御神体から曳き手の人々の姿まで事細かに正確に描いた唯一の作品だ。文政9(1826)年以来、200年近く休み山となっている鷹山が、現在、本絵巻を参考にして復興を目指す動きがあるなど、祇園祭の歴史を語るうえでも重要な作品となっている。

横山華山《祇園祭礼図巻》下巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

横山華山《祇園祭礼図巻》下巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

横山華山《紅花屛風》右隻 文政6(1823)年 山形美術館・(山)長谷川コレクション 山形県指定有形文化財【展示期間:9/22~10/14】

横山華山《紅花屛風》右隻 文政6(1823)年 山形美術館・(山)長谷川コレクション 山形県指定有形文化財【展示期間:9/22~10/14】

《紅花屏風》は、東北や北関東の紅花の産地を二度も訪れて取材し、制作された大作で、華山の最高傑作といっても過言ではない。紅花栽培から収穫、加工品への生産過程までを正確に描いている。京都の紅花問屋による依頼品で、祇園祭のへい風祭で飾られて好評を博したという。

横山華山《紅花屛風》左隻 文政8(1825)年 山形美術館・(山)長谷川コレクション 山形県指定有形文化財【展示期間:9/22~10/14】

横山華山《紅花屛風》左隻 文政8(1825)年 山形美術館・(山)長谷川コレクション 山形県指定有形文化財【展示期間:9/22~10/14】

展示の見どころ5:貴重な資料を初公開

横山華山「祇園祭鉾調巻(祇園祭礼図巻下絵)」部分 京都市立芸術大学芸術資料館

横山華山「祇園祭鉾調巻(祇園祭礼図巻下絵)」部分 京都市立芸術大学芸術資料館

蕭白と横山家の深いつながりが窺える「横山家宛書状」や、《祇園祭礼図巻》(上巻)の下絵であることが今回の調査で明らかとなった「祇園祭鉾調巻」など貴重な資料を初公開。同じく初公開となる「斎藤月岑宛書状」は、斎藤月岑が『東都歳事記』の執筆にあたり、餅つきなど年中行事の挿図の校訂を華山に依頼したことに対する華山からの返信の書状で、今後の江戸文化史を語るうえでも必見の史料だ。

イベント情報

横山華山
会期:2018年9月22日(土)〜11月11日(日)
休館日:月曜日[9月24日、10月8日、11月5日は開館]、9月25日(火)、10月9日(火)
開館時間:10:00〜18:00 ※金曜日は20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
入館料:
一般(当日)1,100円 高校・大学生(当日)900円
一般(前売)900円 高校・大学生(前売)700円
※中学生以下無料 ※20名以上の団体は、一般800円、高校・大学生600円
※障がい者手帳等持参の方は当日入館料から100円引き(介添者1名は無料)
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