展覧会『吉村芳生 超絶技巧を超えて』が、東京ステーションギャラリーで開催 遅咲きの花として快進撃を続けた画家の全貌を辿る

ニュース
アート
2018.9.18
《新聞と自画像2008.10.8 毎日新聞》2008年、個人蔵

《新聞と自画像2008.10.8 毎日新聞》2008年、個人蔵

画像を全て表示(6件)

展覧会『吉村芳生 超絶技巧を超えて』が、2018年11月23日(金・祝)〜2019年1月20日(日)まで、東京ステーションギャラリーで開催される。

2007年、57歳で現代アート・シーンに再登場した奇跡の画家

《ジーンズ》1983年、個人蔵

《ジーンズ》1983年、個人蔵

1950年、山口県に生まれた吉村芳生は、版画のフィールドで内外の美術展に出品を重ね、いくつかの美術館に作品が収蔵されるなど、高い評価を得た。しかし、その評価は一部にとどまっており、決して知名度の高い作家ではなかった。1990年代以降は、山口県展や画廊での個展が中心の地道な活動を続けていた。それが一変したのは、2007年、吉村が57歳の時のことだった。この年、森美術館で開催された『六本木クロッシング2007:未来への脈動』展に出品された作品群が大きな話題を呼んだのだ。その後、各地の美術館で作品が展示され、特に山口県立美術館で開催された個展には多くの観客が押し寄せた。遅咲きの花として快進撃を続けていた吉村だが、2013年に突然亡くなってしまう。

吉村芳生の全貌を紹介する展覧会

《無数の輝く生命に捧ぐ》2011-13年、個人蔵

《無数の輝く生命に捧ぐ》2011-13年、個人蔵

本展では、現代アート界の異色の画家・吉村芳生の全貌を、62件600点以上の作品により、3部構成で紹介する。日常生活の中で目にするありふれた風景をモノトーンのドローイングや版画で表現した初期の作品群、色鉛筆を駆使してさまざまな花を描いた後期の作品群、そして生涯を通じて描き続けた自画像の数々。膨大な時間を費やして制作された吉村の驚くべき作品群は、写実も超絶技巧も超越し、描くこと、表現することの意味を問い直す。本展は、中国・四国地方以外の美術館では初めて開催される吉村芳生の個展となる。

《新聞と自画像2008.10.8 毎日新聞》2008年、個人蔵

《新聞と自画像2008.10.8 毎日新聞》2008年、個人蔵

新聞紙の上に鉛筆で描かれた自画像。よく見ると、じつは新聞紙そのものが、鉛筆で一字一字描かれている。吉村芳生の代名詞ともいうべき「新聞と自画像」シリーズ。花や風景をテーマにした作品でも、吉村の緻密な描写は一貫している。一見すると、徹底的に対象に肉薄する超絶技巧の写実主義かと思えるが、吉村の作品は、単純に対象を熟視して描かれたわけではない。超絶技巧を超える制作の秘密は、ぜひ会場で発見してほしい。

《ドローイング 金網》(部分)1977年、個人蔵

《ドローイング 金網》(部分)1977年、個人蔵

これは絵画と言えるのだろうか? 金網だけを延々と忠実に写し取った作品。特に変化もなく、ただひたすら金網が続く。その長さ、なんと17メートル! なぜ17メートルかというと、この作品を発表した画廊の壁の長さが17メートルだったから。もっと大きな会場だったら、もっと長い作品になっていたかもしれない。意味があるのか、ないのか、よくわからないこの不思議な継続は、吉村作品の大きな魅力でもあるだろう。

《SCENE 85-8》1985年、東京ステーションギャラリー

《SCENE 85-8》1985年、東京ステーションギャラリー

吉村芳生が生み出した作品は、どれも超絶リアルでありながら、見る者の度肝を抜く凄味を感じさせる。ただ上手いだけの絵ではない、描くこと、生きることの意味を問い直す真摯な作品の数々を、ぜひその眼で目撃してほしい。

《バラ》2004年、みぞえ画廊

《バラ》2004年、みぞえ画廊

イベント情報

吉村芳生 超絶技巧を超えて
会期:2018年11月23日(金・祝)-2019年1月20日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
シェア / 保存先を選択