開幕目前! 市村正親と鹿賀丈史のW主演ミュージカル『生きる』稽古場レポート

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2018.9.29
ミュージカル『生きる』の稽古場の様子

ミュージカル『生きる』の稽古場の様子

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ミュージカル『生きる』が、2018年10月8日からTBS・赤坂ACTシアターにていよいよ開幕する。本作品は、1952年に公開された黒澤明監督の代表作『生きる』を、黒澤明没後20年記念でミュージカル化したもので、宮本亜門が演出を務め、市村正親鹿賀丈史がダブルキャストで主演する。本番初日まで2週間を切ったある日、稽古場を見学させてもらった。 

この日は、市村正親が主人公の渡辺勘治役、市原隼人が息子の光男役、小西遼生が小説家役、May'nが小田切とよ役、唯月ふうかが渡辺一枝役、山西惇が助役役での稽古だった。

ミュージカル『生きる』の稽古場の様子

ミュージカル『生きる』の稽古場の様子

物語の舞台は終戦から7年が経った昭和27年。東京近郊の市役所の市民課長である渡辺勘治は、定年を迎える目前、当時不治の病とされていた胃癌になってしまう。渡辺は、自分に残された人生をかけて、市民の公園を作るために奮闘するというあらすじだ。ちなみに、黒澤明監督の作品がミュージカルになるのは、本作品が世界初である。

取材前、資料として渡された台本には、「第十稿」と書かれていた。どうしたら作品がより良くなるのか、キャスト・スタッフ一丸となって、細部まで修正を重ねている様子がそこから既に見て取れた。ラストシーンなど、いくつかのシーンを確認した後、通し稽古が始まった。

原作の映画や、モノクロ写真で構成されたメインビジュアルの様子から、とても静かな作品をイメージしていたのだが、全編を通じて見てみると、意外にもミュージカルらしいポップで明るいシーンが印象に残る。
  
例えば、主人公の渡辺が30年間一度も仕事を休んだことがなく、その真面目さを伝える楽曲(M2「仕事を休んだことはない」)や、主婦たちが役所の中でたらい回しにされる楽曲(M3「たらいまわし」)などは、キャスター付きの舞台セットやアンサンブルを縦横無尽に動かして、目まぐるしいけれどよく計算された構成になっている。映画のようにコロコロと切り替えがあって、見ているだけで楽しい。ダンサー出身である宮本亜門の演出力が存分に生きているし、ジェイソン・ハウランドによる楽曲もオシャレで、どこかブロードウェイミュージカルを彷彿とさせるメロディーラインとテンポの良さが不思議とあう。

主人公の渡辺勘治を演じる市村正親は「さすが」の一言。劇中では、「命短し、恋せよ乙女」という歌詞が特に有名な「ゴンドラの唄」を万感の思いを込めて歌い上げ(他の曲も歌うのでご安心を)、言葉は少なくてもそこに今「生きる」という強さと儚さと希望と尊さを見事に体現した。ラストシーンを見終えた後のこの充実感と感動たるや。「まだオケが付いていない、ピアノ演奏による通し稽古なのに!」と思わず叫びそうになる。

ストーリーテラーの役割も果たす小説家役の小西遼生は、色っぽくて小粋な感じがよく似合い、きちんとした芝居を見せてくれる。通し稽古中、自分が出ないシーンで、市村の演技をじっと見つめる姿が印象的だった。ミュージカル初挑戦の市原隼人は、主人公の渡辺勘治の息子・光男を演じるが、まっすぐな芝居と発声。ソロ曲もあるので、どんな歌声なのか、注目してもらいたい。

また、同じくミュージカル初挑戦のMay'nは、主人公渡辺の人生を変える一つのきっかけとなる重要な人物・小田切とよを演じるが、若々しさに溢れていて、いい意味でまだ伸びしろがありそう。そして、光男の妻・一枝を演じる唯月ふうかは、安定感があり、歌声も美しい。

ミュージカル『生きる』の稽古場の様子

ミュージカル『生きる』の稽古場の様子

……とまぁ、見たままを書いてきたが、ここまで完成度が高いと、当然、鹿賀丈史のチームも気になるわけで。市原隼人と山西惇は共通キャストだが、小説家役は新納慎也、唯月ふうかとMay'nは役が入れ替わる。どんな風になるのだろう。両チームの様子を劇場で早く見比べたい。
 
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取材・文=五月女菜穂

公演情報

黒澤明 没後20年記念作品 ミュージカル『生きる』
■日程:2018年 10月8日(月・祝)~28日(日)
■会場:TBS赤坂ACTシアター

■作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド
■脚本&歌詞:高橋知伽江
■演出:宮本亜門
■出演:
【市村正親出演回】
渡辺勘治:市村正親
渡辺光男:市原隼人
小説家:小西遼生
小田切とよ:May'n
渡辺一枝:唯月ふうか
助役:山西惇

【鹿賀丈史出演回】
渡辺勘治:鹿賀丈史
渡辺光男:市原隼人
小説家:新納慎也
小田切とよ:唯月ふうか
渡辺一枝:May'n
助役:山西惇
 
■公式ホームページ:http://www.ikiru-musical.com/ 
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