日本最大級のTOKYO CALLING SPICEライブレポート3日目【渋谷】SHE’S、感覚ピエロ~嘘とカメレオン、打首獄門同好会まで

レポート
音楽
2018.10.2

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日本最大級のライブサーキット【TOKYO CALLING 2018】 9.17 渋谷エリア

いよいよ、TOKYO CALLING2018も最終日。ここ渋谷では13会場にて、131のアーティストが己の歌や音を放ち合った。

 

ENTH

ENTH Photo by 白石達也

ENTH Photo by 白石達也

「マジ、俺たち今日はみんなと同じで暴れに来たから。遊べる人は元気よく遊びましょう。知ってる人も知らない人もとにかく感覚で楽しんで欲しい」(Vo.&B. daipon)と自論でもある<好きに楽しんでくれ!!>的なライブを終始展開したO-EASTでのENTH

「俺たち名古屋のENTHです!!」と、自己紹介的ナンバー「"TH"」に入ると、のっけからフロアも大爆発。ドライブ感と疾走感のある同曲が早くも会場に無数のピットやクラウドサーフを巻き起こしていく。Naokiのギターリフからドリンク酩酊ソング「HANGOVER」へ。彼らの真骨頂のめまぐるしい展開が炸裂していくが、その展開にお客さんもしっかりとよくついていく。

ENTH Photo by 白石達也

ENTH Photo by 白石達也

「好きに遊んでくれ、それが俺たちのライブ。こうしなさい等教えてあげるほど、俺たちは親切なバンドじゃない」(daipon)と、高速ナンバー「Let it die(t)~まこっつ走れ~」にイン。無数のピットが生れていく。そのピットを大きな一つのものにまとめ上げたのが「Gentleman Kill」であった。同曲のスカのビートが軽やかさを場内に呼び込んでいく。

中盤はブチアゲ曲の応酬だった。「今やんなきゃいつやんだよ!!」と放たれた「Get Started Together」を経て、切ないメロディを交えた「Bong! Cafe' au lait! Acoustic guitar!」では、間にはドゥームさも交え、また、これでもかと飛ばした「STARTLINE」、ラストは彼らの決意や覚悟を歌に込めて放たれた「ムーンレイカー」で締め。会場も全身でそれを受け止め、最高の美しい盛り上がりの名場面を見ることが出来た。
 

嘘とカメレオン

嘘とカメレオン Photo by kaochi

嘘とカメレオン Photo by kaochi

WWW Xに移動。嘘とカメレオンを観る。

まずは渡辺壮亮(G.&cho)が一人でステージに登場。用意したポエムを読み上げる。その後、メンバーも登場。渡辺が高揚気味に、「端から端まで踊ろうぜ。この時間どこよりも声を出していこう!!」とアジテート。その高テンションのまま、躍動感と疾走感溢れる「N氏について」が会場に放たれる。喜んで喰らいつくフロア。間奏部では、早くも嘘カメ名物「チャム(.△)(Vo)の腕組みヘッドバンキング」も飛び出す。ノンストップで躍動感と怒涛性が入り混じった「JOHN DOE」にインすると、がぜんチャム(.△)の歌声に艶と妖艶さ、そしてキュートさが加わっていく。

9月12日にアルバム『ヲトシアナ』でメジャーデビューした彼ら。奇しくもこの日は、その作品発売後、初の東京ライヴでもあった。そのぶん気合充実で挑んだ5人。開演前から入場規制がかかったことを受け、「来年はもっとでっかいところでやる!!」(渡辺)と力強く宣言してくれた。

嘘とカメレオン Photo by kaochi

嘘とカメレオン Photo by kaochi

中盤でもファンキーなリズムで会場中をジャンプさせた「Lapis」、性急さ溢れる「百鬼夜行」では楽曲に宿した魑魅魍魎感が会場に放たれていく。そして代表曲「されど奇術師は賽を振る」が、楽曲で歌われる桃源郷まで、踊ろぜ騒ごうぜと腕を引っ張り場内を引き連れていけば、ラストの「フェイトンに告ぐ」でも持ち前の和なテイストを染み渡らせていった。
 

ズーカラデル

ズーカラデル Photo by マサ

ズーカラデル Photo by マサ

隣のWWWに移ると3ピースポップ・ストロング・バンド、ズーカラデルのライヴが始まった。曲尺は短くも物語や秘めた伝えたかったことを、あえてそのまま伝えず、聴き手自身の答えへと導きさせる彼らの楽曲。どこか終わらない夏休み感を残した歌雰囲気と、ジャングリーなギターとタイム感のあるタイトなドラム、躍動的なベースと、音が少ない分、全体的にネイキッドで丸腰に感じられた。

顔を見合わせて準備OKの合図を3人で送り合うと、「誰も知らない」が森の奥に潜んでいるまだ誰も知らないものを探しに行こうと誘う。そして、タイトな8ビートとジャングリー気味のギターも特徴的な「夜に」、更に前進していくように牧歌さとブレイブさが融合した「地獄の底に行こう」と、短い曲がテンポよく次々と繰り出されていく。

ズーカラデル Photo by マサ

ズーカラデル Photo by マサ

ミディアムな甘いラブソング「夢の恋人」を挟み、「みなさんとは友達じゃないけど、いつかは友達になれたらいいなとの気持ちを楽曲に込めた」と吉田崇展 (Vo. G.)が次曲「友達のうた」が生まれた経緯を語る。偶然の居合わせから、いつの日にか繋がり、最後は友達になれるかもしれない…そんな淡い夢を見させてもらった。

情けない日々を笑い飛ばし、それでもいいじゃないかと信じさせてくれた「ビューティ」を経て、ラストは素晴らしくも全然輝いてもいないけど、出会ったものを歌っていく所信表明的な人気曲「アニー」がしっかりと集まった者の希望を信じさせてくれた。


SHE'S

SHE’S Photo by 白石達也

SHE’S Photo by 白石達也

O-EASTに戻る。ピアノロックバンドSHE’Sを観る為だ。観る度に神々しさと至福感が増し、最新リリース曲では海外エレクトロアーテイストへのシンパシーがダイレクトに伝わってくる彼らの音楽性だが、この日も短い時間ながら増々その辺りが顕著に伺えた。

まずは、バンドアンサンブルにエレクトロサウンドを乗せて「歓びの陽」で会場中を包んでいった彼ら。同曲が宿していた崇高さを更に増させ、上昇感も加わえた「Un-science」に入ると、サビで生まれたピーク性にフロアからは合わせて無数の手が自然と挙がった。

SHE’S Photo by 白石達也

SHE’S Photo by 白石達也

「選んでもらって後悔させない」と服部栞汰(G.)、続けて「結構上品にやってるバンドだから、自分たちは」と井上竜馬(Vo.&Syn./G.)が場内を和ませる。

この日は久しぶりに、美しさと激しさを同居させたインディーズ時代の代表曲「Voice」もプレイ。ピアノフレーズを活かした生命力のある音楽性も楽曲の魅力でもあるが、井上の艶かしさと美しい歌声が映えるのも魅力的。まことに彼らの流麗さとブレイブさが活きる楽曲だ。また、実家で飼っている愛犬を思い返しながら作った「C.K.C.S.」では、グルーヴィーなサウンドで会場中を腰で踊らせ、ラストはアッパーなスタックスビートと上昇感もたまらない「Over You」で締められた。


打首獄門同好会

打首獄門同好会 Photo by 白石達也

打首獄門同好会 Photo by 白石達也

突然の豪雨の中、宇田川町やスペイン坂方面の会場もはしごで回り再びO-EASTに。生活密着型ラウドロック・バンド、打首獄門同好会を観る。この日は9月17日。語呂合わせで「くいな」とのネタもあったのだろう。この日は比較的食べ物の歌が中心に連射された。

VJをバックに他のメンバーと共にステージに現れた大澤敦史(Vo.&G.)がギターを掲げ「TOKYO CALLING行くゾ!! 3日間で最もよくわからないロックをやってやる!!」と気合一発。ここからは彼ら持ち前のラウドロックながらポップなメロディとキャッチーな歌、そして身近なテーマの楽曲たちが次々に飛び出した。

まずは「うまい棒」に捧げられた「デリシャスティック」が口火を切る。ラウドロックに乗せられた数々の種類の味がメロディアスに歌われる同曲。合わせてビジョンには様々な種類のうまい棒が映し出され、それに呼応するように、既に会場に配布済みのうまい棒たちがペンライト代わりにフロアにて振られている。続く「島国DNA」では、三三七拍子に乗せて様々な魚料理や魚種、色々な調理方法が歌い上げられ、魚の次は肉だとばかりに飛び出した「ニクタベイコウ!」では、食べたわけでもないのになんだか、肉を食べた後のようなパワーをみなぎらせてくれた。

打首獄門同好会 Photo by 白石達也

打首獄門同好会 Photo by 白石達也

打って変わり新曲ラウドダンスナンバー「はたらきたくない」では、明日からの連休明けの憂鬱さを代弁してくれ、でも現実と立ち向かわなくてはならないことを諭すように、「布団の中から出たくない」が、逆に数日後の次の三連休を楽しみに、が故に乗り越えられるバイタリティを寄与してくれた。

そして、この日は敬老の日。それにちなみ「まごパワー」もプレイされ、孫に対しての無上の愛がラウドロックに乗せて放たれた。最後は今年、色々災害等があったにもかかわらず、それを乗り越え収穫を迎えられた喜びを讃えるかのように「日本の米は世界一」が飾り、最初の公約通り、「全会場で最もおかしなステージ光景を作り出せた」ことへの達成感と充実感と共に彼らはステージを去った。


The Songbards

The Songbards Photo by マサ

The Songbards Photo by マサ

土砂降りにも負けずStarloungeに移動。渡英ライブ帰国後、サーキット初参戦で規制となったThe Songbardsを観る。音の感触や手法はマージ―ビートやブリティッシュビートなサウンドを彷彿とさせながらも、どこか現代ロックの揺らぎやリバーヴ感、UK/USインディーを経たタイム感を感じさせる彼らの音楽性。この日も4人が送り出した各曲は、その曲毎に私をここではないどこか時空を超えた懐かしい場所へと誘ってくれた。彼らの魅力の一つは声質の違う上野皓平(Vo.&G.)と松原有志(G.&Vo.)によるツインボーカル性。それらが合わさった時のハーモニーには何度もグッときた。

深くリバーブの効いたドリーミーな12限ギターっぽい音色と深いエコーのかかったコーラス、季節を春に引き戻してくれた「春の香りに包まれて」を皮切りに、10/10に発売されるUKマスタリングのミニAL「The Places」からは、松原がボーカルをとるロックンロールナンバー「ローズ」、この日のライヴに激しさを加味させた「Time or Money?」が鳴らされる。

The Songbards Photo by マサ

The Songbards Photo by マサ

中盤からは、ツラさを抜けたが故の楽しさが待っていることを歌詞で信じさせてくれた「雨に唄えば」、松原が歌う「ハングオーバー」では、ドラムの岩田栄秀もコーラスハーモニーを加え、メンバー全員でコーラスをとり、そのハーモニーの層の厚さを伝えてくれた。そして、ライブに再び躍動感をもたらせた、♪照らす君を目指して♪と歌われた「太陽の憂鬱」を経て、最後は前身バンドから大切に歌われた「青の旅」が、ケセラセラな気持ちにさせてくれた。


感覚ピエロ

感覚ピエロ Photo by 白石達也

感覚ピエロ Photo by 白石達也

今年のTOKYO CALLINGもいよいよ大詰め。ここO-EASTでは大トリに感覚ピエロが現れた。

「中途半端なことはしねえぜ!!上から下までかかってこいや!!」(Vo.&G. 横山直弘)との気概で臨んだ彼ら。「もう、全部吐き出していくからよ。一つになろうぜ。ついて来い!!」(横山)と「CHALLENGER」を放つ。力強い渾身の4つ打ちに合わせ、会場が合わせてバウンスする。十分にフロアが温まったところで2本のパラレルなギターフレーズも印象的な「ハルカミライ」へ。独特のツヤを持った色気のある横山の歌声が、同曲に合わせ、より映え出す。また、ファンクなグルーヴも特徴的な「無い ナイ 7i 」が会場をもう一度跳ねさせれば、次にリリースするシングル曲「ありあまるフェイク」も一足早く特別披露。スリリングさに疾走感と悲しみを振り払うかのような同曲が、まだ未聴な人の方が断然多いと思しき中、しっかりと一体感を作り出していく。間にはラップ部も交えられ、♪「てめえで考えろボケ」♪のフレーズも強烈で印象的であった。

感覚ピエロ Photo by 白石達也

感覚ピエロ Photo by 白石達也

中盤では彼ららしさが映える曲が並んだ。彼らの特性でもあるAメロBメロを抜けた後の開放感やストレートさが気持ち良い「メリーさん」、「全て出し尽くしてやる!!」(横山)と放出した「疑問疑答」ではスリリングさと鋭角さがフロアの各人に突き刺さっていくのを見た。

そして最後は、「今日以降再びおたがい最高のオンリーワンを目指しましょう。TOKYO CALLINGをこの曲で締めます」と、人気曲「拝啓、いつかの君へ」を始める。いつかの君へと伝えてはいるが、それらはすっかり自身に向けての問いかけだったりもする同曲。今夜も楽しくノリながらも、それらに想いを巡らせる自分が居た。

アンコールにも応えてくれた彼ら。「最後のお祭り騒ぎだ!!」と言わんばかりに、彼らの出世作にして、待ってましたの「O・P・P・A・I 」が飛び出す。会場全体でO・P・P・A・I大コール。3日の最後は爽快な乱痴気騒ぎで幕を閉じた。


 

今年もTOKYO CALLINGは無事に全行程を終了した。個人的には過去最高に大成功のように映った。初回より連続で参加してきて感じたのは、出演アーティストの意識や気概が徐々に変わってきたことだ。

当初は「その決められた時間内で、どれだけ自身を観てもらえ、気に入ってもらえるか?」その当日のみの出演姿勢だったものが、それをキープしつつ、次年度までも視野に入れてライヴに臨んでいるアーティストが増えた印象がある。それを表すように例年以上に各会場、「来年も出たい!」「来年は●●●に立ちたい!!」と、早々にステージ上から「来年のTOKYO CALLING出演」を立候補するアーティストたちも目立った。

それは、フェスのバリューやそこに出るステータスもそうだが、無意識に芽生え出した「渋谷のO-EAST」を頂点にした、各街、会場の規模のヒエラルキー的なものが、逆にアーティストたちの目標やモチベーションになり出してきたからに他ならない。「来年も出演して、可能であれば最終日の渋谷の日に出たい」「今回よりもキャパシティや規模の大きなハコでのライヴをやってやる」…。そんな気概が終演後の各アーティストから漂ってきた。そして、それを目指し、モチベーションとし、彼らはこの1年活動していくのだろう。

来年は、どのアーティストが、どれぐらいステップアップした会場でライヴを演ることが出来るのか?純粋に、それがアーティストの1年間の活動成果や成長、動員アップや話題といった「飛躍」と捉えたい。パフォーマンス以外にも、早くも来年のTOKYO CALLINGへの参加の楽しみが見つかった。

さぁ、あなたが今年観たアーテイストは、来年どの街のどの会場で演るのだろう?それはやはり、あなたの今後の応援にもかかっている。また来年も、このTOKYO CALLINGで会おう!!そして、各アーティストの飛躍を、お互いその目で確かめようじゃないか!!

 

取材・文=池田スカオ

 

セットリスト

ENTH

1."TH"
2.HANGOVER
3.Let it die(t)~まこっつ走れ~
4.Gentleman Kill
5.Get Started Together
6.Bong! Cafe' au lait! Acoustic guitar!
7.STARTLINE
8.ムーンレイカー


嘘とカメレオン

1.N氏について
2.JOHN DOE
3.Lapis
4.百鬼夜行
5.されど奇術師は賽を振る
6.フェイトンに告ぐ


ズーカラデル

1.誰も知らない
2.夜に
3.地獄の底に行こう
4.夢の恋人
5.友達のうた
6.ビューティ
7.アニー

SHE'S

1.歓びの陽
2.Un-science
3.Voice
4.C.K.C.S.
5.Over You

打首獄門同好会

1.デリシャスティック
2.島国DNA
3.ニクタベイコウ!
4.New Gingeration
5.はたらきたくない
6.布団の中から出たくない
7.まごパワー
8.日本の米は世界一

The Songbards

1.春の香りに包まれて
2.ローズ
3.Time or Money?
4.雨に唄えば
5.ハングオーバー
6.太陽の憂鬱
7.青の旅

感覚ピエロ

1.CHALLENGER
2.ハルカミライ
3.無い ナイ 7i
4.ありあまるフェイク
5.メリーさん
6.疑問疑答
7.拝啓、いつかの君へ
En.O・P・P・A・I

 

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