THE TOMBOYS 「死ぬまでバンドをやめたくない」 世界を駆け巡る4人に訊く”行き先”とは
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
2011年、中学3年生時にバンドを結成し、その後は各自がニュージーランドへ1年間の語学留学。2013年に帰国して日本でしばしバンド活動したのち、2016年3月にイギリス・ロンドンで、何とセックス・ピストルズのオリジナルメンバー、グレン・マトロックをプロデューサーに迎えてレコーディング。その後はヨーロッパツアーに出かけ──と、とにかく忙(せわ)しない! 縦横無尽な4人組バンド、THE TOMBOYS。最新ミニアルバム『Wherever We Want』も、英語詞、日本語詞の曲を織り交ぜ、なにものにもとらわれない自由奔放な音が詰まっているし、それぞれの歌詞を読みこむと、その楽曲の主人公は必ずどこかへ行ったり、何らかの場所や距離間を伺わせたりする。バンド自体も、神戸が拠点ではあるが、ホームグラウンド感は決してなく、良い意味での落ち着きのなさが大きな魅力となっている。ご近所感覚で世界へ飛び出すTHE TOMBOYS。彼女たちは一体どこへ辿り着こうとしているのか。メンバーであるタバタヒナ(Vo.)、和木マドカ(Gt.)、GGワカナ(Ba.)、のん(Dr.)に話を訊いた。
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
──『Wherever We Want』は初めて日本でレコーディングをおこなった作品ですよね。
GG:そうなんです。これまではヨーロッパでレコーディングをしていましたが、今回は日本だったので、今まで以上に濃い作品づくりができました。コーラスワークも練り直すことができたしベースラインに関しても、もっと低音を出したいとか、とても深く考えられました。
和木:今までは「蓋を開けてみたら、こうなった」という感じだったけど、今回は「私たちがこういうものを作りたい」という理想を持って、それに近づけることができました。
タバタ:今までのアルバムは、トータルで見てそれぞれ違うテイストの曲を配置していったのでしが、今回は逆に「すべてメインになるような6曲にしよう」と作っていったけど……出来上がったものはやはりまったく違う、それぞれどの曲も似ていない6曲になりました。結局トムボーイズは何をやっても違う曲ができるんだなということを再確認しましたね。
のん:海外でレコーディングするときは帰国日があるので、焦って録っているところがあって。でも今回は日本だったので帰国日もないし、時間を使ってレコーディングができた。ドラムのチューニングや使用する機材も一曲ずつかなり細かく変える余裕があって、今までにないくらい時間をかけた。いつもは帰国しなきゃいけないから、ミックスに立ち会えずお任せをしているところがあったんです。
タバタ:プロデューサーのグレンが「これでいい!」と言うなら、それを信じようようという感じだよね。
のん:だから、ミックスってこういうことをやっていたんだなって、バンド7年目にして初めて知りました(笑)。
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
──日本、ヨーロッパなど色々と渡り歩いているからこそかも知れませんが、今作の歌詞を見ていると、様々な場所へ行っているし、“何か”との距離間を感じさせる内容になっていますよね。「RING ME」の電話は、距離が離れている相手と自分を繋ぐアイテムでもありますし、「Close Your Eyes」には《目を閉じれば行ける場所》とあり、「DONUT!」はレコードストアへ行っている。
一同:おお、確かに。
──そもそも皆さん、中学時代に日本からニュージーランドへ留学しているし、「同じ場所にとどまらない」「違う場所へ行く」という意識が働いているのかなって。
タバタ:縄張り意識が全然ないんです。いけるならどこへでも行きたい。
のん:「行きたくない」という選択肢がないんです。ヨーロッパツアーとか、「やった、行きます!」という感じ。
タバタ:歌詞を作る上では、ヨーロッパツアーへ出かけたことが本当に大きくて。日本だけではなく、いろんなものを見るという視野の広さが生まれて、出来あがっていきました。
GG:中学のときから4人一緒だったけど、地元で他に親しい友だちが少ないんです。だからこそ今、いろんな人と出会ったり、様々なものを見たりしていきたい。
和木:確かに、人と出会うことは楽しい。旅先で仲良くなった人と別れるのは寂しいですけど、でもすぐに次の場所へ行きたい。特に私は飽き性なので、新しい場所でライブをすることが大好き。
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
──和木さん、飽き性なんですね。
和木:そうなんです。例えばインタビューで、同じ質問をされることって多いじゃないですか。「バンド名の由来は?」とか。ちょっと、飽きちゃうんですよね……(笑)。
──ハハハ(笑)。いや、わかりますよ。「ネットで調べたら出てくるやん」と思いますし!
和木:いや、ご質問をしていただくことはありがたいんです! つまり、同じ質問に対して自分が飽きないようにするために、「バンド名の由来は?」と聞かれたら、毎回いろいろアレンジを加えて答えるようにしているんです。
──面白い! のんさんはいかがですか、「場所」に関して。
のん:私は、あまり何も考えてないんです。とりあえず3人について行こうかなって。様々な場所へ行くのは楽しいです。えっと……、いろんなご飯が食べられるので。
タバタ:のんは、グルメレポートとかしよっか(笑)。でも、音楽も食事も全部そうなんですけど、いろんなところへ行ってワクワクしたいんですよね。楽しくないことはしたくない。楽しいと思えないと、何もできないバンドなんです。基本的にポジティブで幸せな4人。歌詞が暗くなることもないんです。
のん:「月ミセ屋」は悩んで作った曲じゃなかったっけ?
タバタ:そうなんだけど、でも最終的には解決に向かう。私自身、悩みが解決しなかったことはないし、音楽を通して苦しいことを伝えたいわけでもない。「私たちが楽しいと思っているから、みんなにも楽しんで欲しい」という気持ちでバンドをやっているから、暗くはならないはず。「月ミセ屋」は、もし悩んでいるならとことん悩んで、必ず考えたら解決するからという内容ですね。
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
──「場所」についてあと一つだけ指摘したいのですが、ミニアルバムのジャケットもC.A(キャビン・アテンダント)のコスチュームですよね。
のん:あ、本当だ。そういえばタイトルも「Wherever We Want」だし、前作も「TO THE DREAM」と“TO”という言葉が入っている。
──やはり何かしらそういう意識が働いているのではないかなと思います。あともう一つ特徴としてサウンド面。非常に生身の音を大事にしていますよね。
和木:当初は作り込みたいという熱があり、精巧に進めていくつもりでした。ただ、一度、かなり細かくミスをチェックして修正作業をやってみたんです。そうすると、なんだかバンドのテンションがどんどん下がってしまって。これは私たちの本来の音ではないな、と。決して電子音が嫌いとか、生音にこだわりたいというものはないのですが、やはり自分たちが演奏した音を大事にしようと思いました。また、レコーディング環境的にも、ミスをしてもやり直す時間がしっかりありましたし。そうしないと、他人の音のように思えたり、愛着がなくなってしまう。
タバタ:そう、「さっき、自分が弾いた曲なのに」ってなるよね。だったら、何度でも演奏し直した方がいい。
GG:コーラスも、修正をしちゃうと「違うな」という気持ちになったよね。
タバタ:そもそも、作り込み過ぎたらそれをライブで演奏が出来ない。ライブで出来ないことは、やりたくないんです。ライブのとき、CDに入っている音が鳴っていないと、違う曲のように感じてしまう。だからそれは、私たちのやり方ではないのだろうと思います。
のん:でも、ドラムに関しては、ミスをしても何とかなるという環境は、ストレスフリーなところもありました。今までは、グレンのプロデュースでは基本的にドラムを直さないので、ノーミスでやらなければいけないプレッシャーの中で録っていたんですけど、今回はそうじゃなくて。安心感の中でやれたので、逆にのびのびとできたし、みんなが話すように納得できるまで演奏ができました。
──のんさんは、何かに縛られるのが苦手なんですね。
のん:そうなんですよ。それは音楽だけではなく、性格的に。宿題も余裕を持ってやりたい。3人は宿題を後にやるタイプで、「この日からこの日までの間に」と期限を決めてやった方がいいタイプだけど、私は時間をゆっくり使ってのんびりやりたい。
──コーラスの部分はどうでしたか。
のん:確かにコーラスは、修正しちゃうと自分の声ではない気がしました。あと、ヒナの言うように私も、音源を聴いてそのバンドのライブに出かけると、「音源は良いのにライブは違うな」とちょっとがっかりすることが何度かあって、それにはなりたくない。あまり訂正しすぎると私たちの個性がなくなるとは思います。
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
──THE TOMBOYSが今後、どういう場所にたどり着くのか楽しみなのですが、理想の着地点などはありますか。
和木:思いつく限りは何でもやりたいですし、その一つとして12月14日に心斎橋BIGCATで無料ワンマンライブ『TOMBOY’s CHIRISTMAS MARKET ~fun for all ages~』も行います。バンドの最終ゴールは設けられないし、おもいしろいことをこのバンドで全部やるつもりです。
GG:知り合いにも「TOMBOYSは何を目指しているのか」と聞かれるんですけど、既存のバンドにないバンドになりたいと言っています。私たちにしか出せないものが必ずあると思うので。
タバタ:バンドを組んだ当初から「長く続くだろうな」と感じていましたし、死ぬまでTOMBOYSをやめたくない。どこにもゴールはないんですけど、ただこの4人でお店はやりたくて。ライブもできて、好きなご飯も食べられて、服、雑貨を置いたり。4人の好きなものを揃えたお店をいつか開きたい。それが一つの目指すところ。一番好きなものを共有できるのが、この4人なんです。
のん:そうだよね。極端な話、バンドじゃなくてもずっと一緒にいたい。友だちだから、4人でずっと一緒に生きていきたい。
THE TOMBOYS 撮影=森好弘
取材・文=田辺ユウキ 撮影=森好弘
イベント情報
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RING ME
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Close Your Eyes
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月ミセ屋
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DONUT!
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It’s All Happening
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フルーツキャンディ