大塚千弘「とても大切な作品です」――初演から「わたし」を演じるミュージカル・サスペンス『レベッカ』への思いを語る

インタビュー
舞台
2018.11.12
大塚千弘

大塚千弘


1940年にアルフレッド・ヒッチコックが映画化し、アカデミー賞2部門を受賞。ゴシックロマンの金字塔とも言われる女流小説家ダフネ・デュ・モーリアのサスペンス『レベッカ』。2006年にミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)、シルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)のヒットメーカー・コンビによりミュージカル化。登場人物の心理をダイナミックかつ幻想的に描き、数々の名曲で魅了した。日本初演は2008年、シアタークリエのオープニングシリーズのミュージカル公演第1弾として開幕した。この日本初演で大塚千弘が主人公の「わたし」に抜擢され、2010年の帝国劇場での再演では、第36回「菊田一夫演劇賞」受賞という快挙も成し遂げた。そして2018年冬、3度目の日本版公演でも「わたし」を演じる大塚千弘。今回は初のトリプルキャストでもある。

「『レベッカ』はシアタークリエで3カ月間、公演して、2010年には劇場が帝国劇場と梅田芸術劇場と大きくなって、進化をしている作品です。3回目にしてトリプルキャストということで、その変化も楽しみに頑張れたらと思っています。今までは私以外に「わたし」という役を誰もやっていないので、私の解釈でしか演じたことがなかったのですが、平野綾さん、桜井玲香さんの「わたし」に対する解釈も楽しみです」と大塚。トリプルキャストによってこれまでにない新鮮味を感じるのではと期待を寄せ、「逆に私がお二人から何か盗ませていただけたら(笑)」と笑顔を見せる。

レベッカという一人の女性の死に隠された謎に迫る本作。「わたし」は南仏で出会ったマキシム(山口祐一郎)と結婚し、マキシムが所有するマンダレイの屋敷に住むことになる。だが、そこは亡くなった先妻のレベッカの影に支配されていた――。海外の作品でミュージカル・サスペンスという本作を楽しむポイントを聞いた。

「日本人が見ても分かりやすいなと思うのは、「わたし」が嫁ぎ先で家政婦頭のダンヴァース夫人(涼風真世・保坂知寿)にいじめられるという、嫁姑のような関係があるところです(笑)。そんな中、マキシムが持つ秘密も繊細に見せていきます。また、「わたし」は名前がありません。一人称で進んでいくから、お客様が感情移入しやすいと思うので、一緒にハラハラ、ドキドキを楽しんでもらえるのではと思います」

初演から10年。この間、仕事やプライベートにも大きな変化があった。だからこそ、今の年齢や経験も加味して、「わたし」に深みを持たせたいと意気込む。

「10年前は、とにかく必死でした。ただ、21歳という「わたし」はひ弱で、自分に自信がなくてびくびくしているところなどは、私自身と相応な感じでした。10年経った今は、様々な経験をしてどんどん逞しくなっていると思うので、「わたし」にもっと深みを出していきたいと思います。劇中、“女性は強い”という歌詞もあるので、そこも表現したいところです」

「わたし」にとって恐ろしい存在であるダンヴァース夫人を大塚はどう見ているのだろう。

「この作品は、レベッカの強さ、「わたし」の強さ、ダンヴァース夫人の強さと、三者三様で違うのですが、ダンヴァース夫人には、一人の人を思い続ける強さがあります。初演はシルビアさんが演じて、再演はシルビアさんと涼風さんのWキャストになったのですが、演じる人によってこんなにも怖さが違うんだと思いました。いじめ方が全然違うんです(笑)。シルビアさんはゴジラみたいな感じで、涼風さんはウェットな怖さがありました(笑)。今回は涼風さんと保坂さんですが、保坂さんとは普段から親しくさせていただいて、怖いイメージが全然ないので、この怖い役をどう演じられるのか、とても楽しみです」

2010年の再演では、「第36回菊田一夫演劇賞」を受賞した。「人生で一番大事な作品と言っても過言ではないくらい」と力を込める。その思いを改めて聞いた。

「初演、再演で「わたし」を200回以上演じました。これだけの大きな役を一人で演じることがなかったので、プレッシャーもありましたし、体力面でも厳しい部分がありました。でも、オーディションで選んでくださったからには、絶対にやり抜きたいという一心でした。物語の中では「わたし」が主軸で、そこがぶれてしまってはいけないので、初演の時は毎日、毎日、居残りをして、演出の山田和也さんと台詞の1行1行を、「これはどういうことなのかな?」と学校の授業みたいに紐解いていきました。そうやって皆さんに助けてもらいながら作り上げて、それを200回以上演じたことは自信にもなりました。「わたし」で自信をもらえましたね。とても大切な作品です」

ミュージカルファンとしても『レベッカ』が大好きだと話す。「音楽、ストーリー、キャストなどすべてが素晴らしく、豪華な作品だと思います。絶対に観て損はないと思いますので、平成最後の年末にぜひいらしてください!」といざなう。

ミュージカル『レベッカ』は2018年12月1日(土)より東京・シアター1010でプレビュー公演を開始後、愛知、福岡を経て、12月20日(木)~28日(金)、梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、2019年1月5日(土)~2月5日(火)には東京・シアター・クリエで上演される。

で上演する。

取材・文・写真=岩本和子

公演情報

『レベッカ』ツアー公演
2018年12月1日(土)~ 4日(火)東京・シアター1010(プレビュー)
2018年12月8日(土)、9日(日)愛知・刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
2018年12月15日(土)、16日(日)福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2018年12月20日(木)~ 28日(金)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2019年1月5日(土)~2月5日(火)東京・シアタークリエ
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