世界を股にかけて活動中のコンポーザー・ピアニスト中村天平に聞く
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5歳からピアノをはじめ、中学の時に阪神大震災で自宅が全壊。喧嘩に明け暮れた高校生活は半年で学校を中退し、解体業に従事しながら生計を立てる日々。ふとしたことがきっかけで音楽専門学校から大阪芸術大学へと進み、完全に離れていたピアノを弾く事を生業とする生活へ。
ピアニストであると共に、コンポーザーとしてのこだわりが強い中村天平も、CDデビューから10周年を迎える。
超絶技巧に溺れることも、ロマンチックなメロディーに流されることもなく、鍛えられた精神と肉体から生まれる天平サウンドは、聴く者を魅了する。
コンサートで全国を飛び回っている間隙を縫って、中村天平に話を聞いた。
ーー 現在「全国行脚コンサートツアー」の真っ最中という事ですが、全国を行脚されているのですか?
はい、日本列島全都道府県を自分の車を運転して廻るツアーです。道中、会った人や見た景色からインスピレーションを得て即興を演奏し、随時コンサートで発表します。地元に縁のあるテーマを題材にした曲を披露すると、皆さん喜んでくださるんです。
ーー それにしてもコンサートの本数、すさまじい数ですね。
そのリーフレットに載っているのは「全国行脚ツアー」だけで、60数本ですね。その他にヨーロッパツアーや、僕のココロのふるさと!「紀伊半島秘境コンサートツアー」の他、ボランティアのコンサートなんかもあります。
ーー なんでもそれらのライブすべてを映像と音で記録していて、編集からYouTubeのアップまでご自身でされるそうですね。
そうですね。便利な時代ですが、逆にアーチストがそこまでしないと難しい時代です。よく言われる芸術には、再現芸術と創作芸術が有ると思うんです。僕がやっているのは創作芸術。自分自身がプロデューサーでありクリエイターです。人に集まってもらわないと飯が食えない。その為には自分自身で何でもやらないといけません。もっとも、僕はアーチストとしては特殊かも知れません。一人でなんでも出来てしまうし、それがさほど苦痛では有りません。まあ、まめなんでしょうね(笑)。
ーー 天平さんはピアノソロで演奏するスタイルが多いようですが、他の楽器とアンサンブルしたり、オーケストラと一緒にやったりといったことに興味はないのですか?
ドラムやヴァイオリン、ボーカルと一緒にやるライブは有りますよ。しかしファンの方は僕のピアノソロをいちばん喜ばれます。だからピアノソロをやっている訳ではありませんが、自分のピアノソロで表現出来ている特別な世界観は、デュオ、カルテットなどアンサンブルを意識する事で純度が薄まるというか……。ファンの皆さまは、中村天平の世界観に浸りに来ているんだと思うのです。
ーー なるほど。天平さんはどういう思いで音楽をやられているのですか。
音楽は大衆、民衆のためにあるものと僕は思っています。
アカデミックでこんな技法、こんな和声、こんな展開をいれてみました。こんな斬新な事が出来てしまう俺、凄いでしょう!みたいな自己満足的に作品をひけらかす人もおられますが、そうではなく、大衆の魂に触れることが出来る音楽、コンサート会場で感動して、それが隣の人にも伝わって“感動の共振”を引き起こす音楽でありたいと常に思っています。
ーー ジャンルで片づける事の出来ない天平さんの音楽。これまでどんな音楽を聴いて来られたのでしょうか。
ジャンルを問わず色々聴きましたよ。ロックバンドのTOTOは好きですね。今でも車の移動中に大音量で鳴らして、一緒に歌っています(笑)。あと映画音楽も好きで、アラン・シルヴェストリーやハンス・ジマーはよく聴きましたね。バックトゥーザフューチャーやフォレスト・ガンプ、パイレーツ・オブ・カリビアン…。恰好良い音楽だと思います。
若い頃はキース・エマーソンが好きだったので、彼の訃報を耳にした時は本当にショックでした。EL&P(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)は僕に音楽の楽しさを教えてくれて、ファンタジーの世界を見せてくれました。そんなキース・エマーソンが自ら死を選んだことは、正直かなり堪えました。
音楽の楽しさを教えてくれたのがキース・エマーソンなら、ピアニストになろう!と思うきっかけになったのがハンガリーのピアニスト、ジョルジュ・シフラですね。超絶技巧に優れているだけでなく、他のピアニストとは違う世界観を持っています。そんなところに魅かれたんだと思います。
ーー 今回のツアーのファイナルとして、東京のHakuju Hallと大阪のフェニックスホールが用意されているようですが、この二つは他のコンサートと違う内容になるのでしょうか。
そうですね、今年は2008年のCDデビューから10年が経つので、集大成的なコンサートになると思います。ここまでリリースしたアルバムの代表曲を弾こうと思っていますし、
ニューアルバム「Visions」の中からも組曲「モネ」をはじめ、何曲かやりたいと思っています。組曲「モネ」は、ニューアルバムの1曲目「モネとカミーユ」から8曲目「日傘の女」までを占める曲です。ある事がきっかけで僕が印象派のクロード・モネの人生に興味を持ち、フランスに渡り、彼の作品を追い掛けて美術館を廻り、ジヴェルニーという田舎町にも何度も足を運び、作った曲です。
芸術家が産み出す作品はもちろんアートなのですが、本物の芸術家は生き方自体もアートだと思います。そういう意味でモネには凄く魅かれました。短編映画のような組曲「モネ」、ぜひお聴きいただきたいですね。
それと、東京・大阪のファイナルコンサートの会場では、ご希望の方全員に、サイン入り写真集をプレゼントさせていただきます。
ーー 最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。
先ず一度YouTubeで僕の演奏をご覧になってください。130本以上アップしていますので、僕の音楽を理解して頂けると思います。その上で興味を持って頂けるようなら、ぜひコンサートにお越しください。生音で聴くピアノ演奏は迫力十分。きっと楽しんで頂けると思います。
皆さまのお越しを、コンサート会場でお待ちしております。
コンサート会場でお待ちしています! (C)H.isojima
取材・文=磯島浩彰
公演情報
Tour Final「「Visions」
■日時:12月8日 18:00開演(17:30開場)
■会場:Hakuju Hall
■出演:中村天平(ピアノ)
■曲目:組曲「モネ」、幻想曲、革命のエチュード、火の鳥、栄光へのファンファーレ、夜行列車 他(予定)
■料金:一般5,000円、学生3,000円
■日時:12月14日 19:00開演(18:30開場)
■会場:ザ・フェニックスホール
■出演:中村天平(ピアノ)
■曲目:組曲「モネ」、幻想曲、革命のエチュード、火の鳥、栄光へのファンファーレ、夜行列車 他(予定)
■料金:一般5,000、学生:3,000
(株)サワダアートプランニング 078-913-3881 / info@sabp.jp
(有) ベス・カンパニー 06-6462-4055 / tempeinfo@bethcompany.com
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