ACIDMANは自身6度目の武道館で何を感じたのか、映像作品リリースを受けあらためて振り返る

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2018.11.28
ACIDMAN 撮影=西槇太一

ACIDMAN 撮影=西槇太一

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あの素晴らしいライブをもう一度。最高傑作『Λ』の世界を再現するツアーのファイナル、7月13日の日本武道館公演を完全収録した映像作品『ACIDMA LIVE TOUR“Λ”in日本武道館』(Blu-ray/DVD)が完成した。闇から光へ、無から有へ、死から生へと展開するコンセプトと美しい照明、そして何より気迫みなぎる演奏と歌に圧倒される、ACIDMAN史上最高にエモーショナルで重量感のあるライブ作品。その舞台裏について、さらに2019年の展望について、3人に語ってもらおう。

――映像を観て感動を新たにしました。これはいいライブです。本当に。

大木伸夫(Vo/Gt):ありがとうございます。

――最初に確認ですけど。これは8月にWOWOWで放送したものと違うんですか。

大木:WOWOWバージョンはいわゆるライブっぽい感じで、今回の作品に関してはACIDMANならではの、全然違う編集をしてます。映像監督のアキさん(小田切明広)とはかなりの信頼関係ができているので、いつも向こうから仕掛けてくれるんですけど、今回のDVDでは「お客さんをたくさん映したい」ということで、ライブが進むにつれてお客さんが感動を高めていく様を映すことで、ドキュメントを見ている感覚になって、ファン一人ひとりの人生が見えてくるようなものになってます。

――ああー。なるほど。

大木:めちゃくちゃ感動してくれてるこの子は、名前も出身も知らないけれど、「いろんな人生を経てきたんだろうな」というのが、何かわかるような気がする。そういう作品になりましたね。

――確かに、お客さんの顔がたくさん映るんですよ。

大木:それはアキさんのアイディアで、秀逸だったと思います。

――実際にステージに立った感動とはまた違う、映像を観るときの感動ってありますか。

浦山一悟(Dr):あります。オフラインをチェックしたときに、もう全員号泣ですよ。本当に良かった。

佐藤雅俊(Ba):最高の映像作品ですね。大木の作り上げた世界観を客観的に見て、そこに感動したし、泣いたし、来てくれたお客さんの顔も見えて、すごく感謝したいと思ったし。ここまで大木についてきたからこそ、6回目の武道館ができたので、感謝の気持ちでいっぱいです。

――1曲目の「白い文明」、大木さんのピアノから始まるじゃないですか。あの静けさと荘厳な音の感覚が本当に素晴らしくて。

大木:あれは実は、ツアーではウーリッツァーという古いエレクトリック・ピアノを持ち回っていたんですよ。でも武道館当日のリハーサルで、電源の関係でノイズが起きてしまって、急遽スタジオに置いてある普通のエレピにしたから、心の中では寂しかったんです。せっかく武道館のために、けっこう高いものを頑張って買ったのに――。というせつなさが、あの曲には乗ってます(笑)。

――せつなさの理由がそれだった(笑)。

大木:でもあのシーンはやっぱり緊張しましたね。慣れない楽器で、そんなに弾けるわけじゃないので、久々に“発表会の緊張”みたいなものがありました。

――セットリストも良かったですね。『Λ』の世界観を中心に据えて、過去の曲を入れて、全体として大きな流れを作っていく。個人的に最高だと思ったのは、「彩‐SAI-」の前編と後編から「Λ‐CDM」へ繋がる流れで、あそこは本当に凄かった。鳥肌立ちました。

大木:「Λ-CDM」は、ライブの肝だったので。いかにこの曲に焦点を当てるかはアルバムのコンセプトでもあったし、そこから「世界が終わる夜」に繋がっていく。ここはよくできたなと思います。「Λ-CDM」は僕のエゴが強かったと思うんです。二人にもそう言って、この曲だけは自分の世界どっぷりなことをやらせてもらいたいと。他人の目を気にせず作った楽曲だったので、まさに肝でしたね。

――「世界が終わる夜」。泣きましたね、大木さん。

大木:泣いちゃいました。この曲はダメですね。過去に武道館で泣いてるから、絶対泣かないでおこうと思ってたんだけど、油断しました。「Λ-CDM」で自分の感情をうまく出せたから、良かったと思ってホッとしたところで、「世界が終わる夜」に気持ちが持っていかれちゃった。自分で感動しちゃいましたね。そのナルシズムはあんまり良くないんだけど、プロとして冷静に歌わなきゃいけないんだけど、やっぱり出ちゃいますね。

――佐藤さんは、感極まるシーンとかは。

佐藤:俺も同じで、「世界が終わる夜」ですね。大木の歌に持っていかれて、泣きました。

大木:ライブ中に? 嘘でしょ?

佐藤:確か泣いたと思う。ちょっと覚えてないんだけど。

浦山:「確か」というのが怪しいな(笑)。

――そこからまさかの、「こんばんはー。一悟でーす」という、ライトすぎるMCタイムが始まるという。ビックリしましたよ。

浦山:あれは本当にしゃべりづらかった(笑)。「世界が終わる夜」で感極まってる空気を感じてる中、しゃべっていいのか?と思いましたけど。結果、早すぎましたね。もっと間をおけばよかった。

――MCも全部入るんでしたっけ。

大木:全部入ります。

――あの「間違えちゃった」という発言も入る? 「彩‐SAI-(前編)」のイントロの。

大木:もちろん。そこはアキさんと俺のあうんの呼吸で、絶対入れてくれと。

――あんなの、普通はカットするでしょう(笑)。

大木:むしろ、ああいうのは入れてほしいんですよ。ハイライトです(笑)。あれは、ギターが一音ずれてるんですよ。MCをしゃべる前から、一音ずれたままでセッティングしていて、「あれ?ここじゃねえな」って思ったのに、そのままやっちゃった。そういうところも面白いと思ったので。

ACIDMAN・大木伸夫 撮影=西槇太一

ACIDMAN・大木伸夫 撮影=西槇太一

――前半がアップテンポ、中盤にインストやアコースティックな曲を入れて、後半は壮大なバラードを連ねて圧倒する。「光に成るまで」も凄かった。ライブで再確認しました。

大木:作っておいて何だけど、本当に疲れる曲で。1曲だけだったら普通に歌い切れるんですけど、セットリストの最後のほうだから、めちゃくちゃ苦しくて、ツアー中にちゃんと歌えないこともありました。別に荒々しい曲じゃないんだけど、メンタル的に持っていかれちゃうんですよね。根性で歌うしかないんだけど、それすら残っていないときもあって。体力の問題じゃないんですよね。

――ああー、わかる。

大木:武道館はギリギリ、なんとか歌いきりましたけど、自分の中では20点。カットしたいと思いましたよ。MCよりも。

――何を言ってるんですか。凄い歌ですよこれは。

大木:いや、30点かな。まあでも、なんとか赤点じゃないレベルには行けたかなと。

浦山:伝わるものとしては、100点ですよ。

佐藤:毎回ライブのたびに、この曲はギリギリだって大木から聞いてるから。いつもガンバレ!って思いながら見てます。

大木:本当に? 怪しいな。

――なぜ佐藤さんの言葉をいつも疑う(笑)。そして本編ラスト、「愛を両手に」の神々しさ。すべてが白い光に包まれて、一つになっていく演出も素晴らしかった。

大木:「愛を両手に」はコンセプチュアルな曲だったし、仕掛けも含めて、ライブで一番よく表現できたと思います。“真っ白に染まれ”という歌詞の通りにしたくて、スモークやレーザーを使って、上空というか、死後の世界というか、一つ上の世界に行ったような感覚を出しました。で、最後に僕が一人で歌うというのは、佐藤くんのアイディアです。二人がはけて僕だけ残るというのは。

――あ、そうなんだ。素晴らしい。

大木:たぶん彼の唯一のアイディアですけどね。

――それは言わなくていい(笑)。

大木:いや、本当に(笑)。でもすごくいいと思って。孤独も表現できるし、ストーリーとしてもすごく美しいので。

――やりましたね佐藤さん。

佐藤:まさにその通りのことを思いついたんですよ。寂しい感じが出るし、大木が最後を締めるのが感動的だろうなと思ってアイディアを出したら、二人が「いいね」と言ってくれたので。曲が呼んだことなので、俺が考えたというわけでもないですけど。

浦山:ツアー中から、1曲1曲を大切にするための演出、MCの入り方とか、大木がこうしたいというものがずっとあって、ブラッシュ・アップしていってファイナルを迎えたので。うまくいったと思います。

ACIDMAN・佐藤雅俊 撮影=西槇太一

ACIDMAN・佐藤雅俊 撮影=西槇太一

――「白い文明」の暗闇から、「愛を両手に」の光に至る、美しいストーリーでした。そしてアンコールは「ある証明」と「Your Song」の2曲。

大木:そう。でも僕が誤解を受ける言い方をしてしまって、武道館ではアンコールをやらないと言っていたんですけど、やっぱりやろうというのは、リハーサルの段階で決まったことなんですよ。だから準備してたんだけど、言い方が足りなくて。アンコールでテープを発射したのも、「用意してたんじゃねえか」って、その後の打ち上げで友達全員に突っ込まれた(笑)。

――そこは修正しておきますか。

大木:やらないつもりだったんだけど、ギリギリになって、リハーサルのときに決めたんです。でも2曲目の「Your Song」は、これは裏話になっちゃうんですけど、本当にやらない可能性もあったんですよ。なぜかというと、武道館には退館時間というものがあって、アンコールに入るときに残り10分とかしかなくて。だからMCも早口(笑)。で、「ある証明」が終わってスタッフを見たら、右を見たらバツを出していて、やっぱりダメかと思って左を見たら、マルを出してる人がいて。「よし、やっちゃえ」と思って「Your Song」をやったんですけど。実はマルを出してたのはモニターの人で、全然関係ないポーズだったらしくて。

――あはは。その人はいい仕事しましたよ(笑)。

大木:マルが見えたから「できる!」と思ったんだけど。だから「Your Song」は、本当にドラマチックでした。本当にやれるかどうかギリギリだったので。

――みなさん。その緊迫感をぜひ映像で確かめてください。そんな武道館ライブを含む2018年、振り返ってどんな年だったのか。

大木:去年20周年のお祭りがあって、その感動はずっと続いているんですけど、でも現実の日々は普通にやってくるので。浮わつかず、一歩ずつやっていこうと思っていて、一応ちゃんとできた1年だったと思いますね。シンプルに、やるべきことをしっかりやれたと思うし、未来のことをずっとイメージしながらやれた1年だと思います。

――2019年の予定も、もう発表しました。3月から5月にかけて、ファンからのリクエストをもとにセットリストを決める『ACIDMAN LIVE TOUR“ANTHOLOGY 2”』が、全国で11公演。

大木:“ANTHOLOGY”というタイトルでやるのは二度目なんですけど、気づけば4年あいてしまって。本当は2年に一度ぐらいやりたかったんですが、でもオリンピックみたいでちょうどいいかなと思います。“ANTHOLOGY”を始めたきっかけは、曲をどんどん作れば作るほど、ライブでやれなくなる曲が増えていくので、それは作り手としては健全なことじゃないなと。曲を作りたい欲望はめちゃくちゃあるんですけど、作れば作るほどやらない曲が増えていくのをずっと疑問に思っていて。イベントだと毎回40~50分で、しょっちゅうやる曲と、日の当たらない曲たちのコントラストがどんどん濃くなっていく。これは良くないなと思ったところからの、“ANTHOLOGY”の企画だったので。

ACIDMAN・浦山一悟 撮影=西槇太一

ACIDMAN・浦山一悟 撮影=西槇太一

――はい。なるほど。

大木:ファンのみんなが選んでくれて、僕ら自身も久々にやる曲で、ライブでみんなで感動できる。意味のある企画だなと思いますね。

佐藤:楽しみですね。どんな曲が選ばれるか、どんなライブになるかもわからないし、お客さんがどういう熱気を持って迎えてくれるのかも楽しみです。ワクワクしてます。メンバーも投票してるんですよ、毎月。自分の好みで。

――やりたい曲、あります?

佐藤:「turn around」とか。なかなか上位に入ってこないですけど(笑)。

浦山:俺は「ミレニアム」ですね。最新のシングルというのももちろんあるんですけど、いろんな要素が詰まっていて、ずっとやり続けたいなと思っている曲なので。“ANTHOLOGY 2”でも是非やりたいなと思ってるんですよね。

――なるほど。古い曲では?

浦山:何だったかな。忘れちゃったけど……。

大木:たぶん曲を知らないんだと思いますよ。「ミレニアム」が最新だから憶えてるだけで(笑)。確かに、一悟くんから「この曲やりたい」って聞いたことない。知らないんじゃないかな。

浦山:いやいや、「最後の星」とかさ。

大木:それも最近じゃん(笑)。昔の曲で好きな曲、ないでしょ?

浦山:馬鹿言うなよ? 「アレグロ」でしょ。「造花が笑う」でしょ。

大木:だから、それって代表曲じゃん(笑)。一悟くんがどんな曲が好きなのか、知らないからさ。

浦山:「Bright&Right」とか、すごい好きだよ。「River」とか。「暁を残して」とか。

大木:へえ!  あれが好きなんだ。意外。

浦山:「千年歩行」とか。

大木:それはなんとなくわかる。ああいう曲が好きだろうなと思う。

浦山:でしょ? あと、意外かもしれないけど「UNFOLD」もすごい好き。

大木:絶対嘘。それは違うと思う。

浦山:何でだよ!(笑)

――まあまあ(笑)。では2019年もACIDMANは、地に足をつけて突っ走っていく――という締めくくりで。

大木:そうですね。リリースのことも考えたいですけど、まずはライブ中心にやっていきます。

浦山:いつも大木から言われてるんですが、感謝を忘れずに、愛を持って。それは去年の“SAI”でも、今年のツアーでも、武道館でも感じたことで。武道館で見た景色は素晴らしくて、すごい椅子に座らせてもらってるなと。スーパー椅子に座らせてもらってるなと思います。SPICEだけに。

――うまい。…のかな(笑)。

大木:字にすればわかりやすいかもね。

浦山:スーパー椅子に座らせてもらっている感謝を込めて、目の前の景色がもっと大きくなっていくように、頑張っていきたいと思います。


取材・文=宮本英夫  撮影=西槇太一

ACIDMAN 撮影=西槇太一

ACIDMAN 撮影=西槇太一

リリース情報

New BD & DVD『ACIDMAN LIVE TOUR“Λ”in 日本武道館』
2018年11月28日発売
初回限定盤【Blu-ray】(TYXT-19016/7)6,480円(税込)
初回限定盤【DVD】((TYBT-19025/6)5,400円(税込)
【収録内容】
2018年7月13日「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”」の最終公演となる日本武道館LIVEの模様を完全収録
1.白い文明
2.ミレニアム
3.新世界
4. FREE STAR
5. prana
6. stay on land
7.イコール
8.赤橙
9.ユートピア
10.水の夜に(album version)
11.彩-SAI-(前編)
12.彩-SAI-(後編)
13. Λ-CDM(instrumental)
14.世界が終わる夜
15.最後の星
16. MEMORIES
17.空白の鳥
18.光に成るまで
19.愛を両手に
[ENCORE]
20.ある証明
21. Your Song
全国16公演での彼らのライヴ・ステージ及びOFF SHOTを押さえたドキュメンタリー映像

ライブ情報

ACIDMAN LIVE TOUR “ANTHOLOGY 2”
3月2日(土) 沖縄:桜坂セントラル
3月11日(月) 福島:いわき芸術文化交流館アリオス中劇場
3月15日(金) 大阪:Zepp Osaka Bayside
3月21日(木) 香川:高松オリーブホール
3月23日(土) 宮城:仙台Rensa
4月6日(土) 福岡:Zepp Fukuoka
4月7日(日) 岡山:岡山CRAZYMAMA KINGDOM
4月13日(土) 石川:金沢EIGHT HALL
4月21日(日) 愛知:Zepp Nagoya
5月10日(金) 北海道:サッポロファクトリーホール
5月17日(金) 東京:Zepp Tokyo
5月18日(土) 東京:Zepp Tokyo
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