中村鶴松&中村梅丸が語る、平成最後の「新春浅草歌舞伎」の見どころは?
中村鶴松と中村梅丸(左から)
お正月の風物詩として広く愛されている「新春浅草歌舞伎」が、今年2019年も1月2日から浅草公会堂で上演されている。今回もお年玉年始ご挨拶から始まり、第1部(午前11時開演)で『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』、『源平布引滝 義賢最期(げんぺいぬのびきのたき よしかたさいご)』、『芋掘長者(いもほりちょうじゃ)』、第2部(午後3時開演)では『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』、『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』、『乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)』が上演されている。
出演する中村鶴松と中村梅丸に意気込みや魅力を語ってもらった(二人は『義賢最期』『乗合船惠方萬歳』で共演もしている)。
鶴松と梅丸の共演は2015年以来
−−さて、平成最後の「新春浅草歌舞伎」です。
鶴松 そうですね。僕は3年ぶりの新春浅草歌舞伎です。お兄さんたち(※勘九郎、七之助)が若い時に必死に頑張っている姿を、この浅草歌舞伎で見てきたので、そこに僕も加われるというのはとても嬉しいです。
梅丸 僕は今回で7回目だと思います。
鶴松 え、そこからずっと?
梅丸 うん。
鶴松 丸ちゃん(梅丸)ばっかりで、僕を全然出してくれない……(笑)。
梅丸 いやいや、他にいろいろ出してもらっているじゃない(笑)。
鶴松 今回も「出して下さい」と、直接皆さんにお願いしに行ったんですよ。
中村鶴松
鶴松 あまりこの2人は共演することがないんです。
梅丸 そうですね。4年前の新春浅草歌舞伎(※2015年)が初めての共演だったのでは……。
鶴松 2016年もお互い「新春浅草歌舞伎」には出演していましたが、2015年以来共演はしていないです。
梅丸 その前もなかったです。
梅丸「勉強するチャンス。今後を考えても意味があること」
−−それぞれのお役の見所などを教えてください。
鶴松 どのお役もそれぞれ大切なのですが、『義賢最期』は義太夫狂言ですし、歌舞伎俳優としてしっかり勉強していかなければいけないと思っています。僕は歌舞伎俳優でありながら、あまり義太夫の経験がないので、このような機会は有難いです。いつも世話物や、コクーン歌舞伎や赤坂大歌舞伎など新作歌舞伎に出ることが多くて。古典をしっかりと勉強する機会が限られているので。
梅丸 そうですね。みなさん、王道の義太夫狂言を若いうちに勉強されてきた。自分も今その勉強するチャンスをいただけているということが、今後のことを考えても、すごく意味があることだという気がしています。
中村梅丸
−−堂々と先輩方に教えてもらう機会があるのは「新春浅草歌舞伎」ならではですよね。
梅丸 そうですよね。いくら教えていただきたくてもお役をさせていただかないと、教わることはないですものね。今回のように大きなお役をいただき、先生方も毎月の舞台や稽古で大変な中で時間を割いて教えてくださる。この機会を有難く思っております。
鶴松 普段はお兄さんたち(※勘九郎、七之助)がやってきたお役をやらせていただくことが多いので、正しくはあるのですが、どうしてもお兄さん2人のどちらかに教わることがほとんどなんです。今回のような公演の場合、他の人に教わる機会ができますので、いろいろな人に教わって、視野を広く持てたらいいなと思っていますね。
−−他のお役についてはどうですか?
鶴松:『芋掘長者』は以前も出させていただいたのですが、楽しい舞踊です。腰元だから下品にならないように上手に勤めたいと思っておりますし、『番町皿屋敷』も丸ちゃんがやっていたお役(※腰元お仙)で……こういうのも難しいよね。
梅丸 新歌舞伎ですからね。
鶴松 役どころも様々やらせていただいている。それぞれ色が違うので、細かいところでも、そのお役の違いを出せたらなと思っております。
梅丸 『戻駕色相肩』は歌舞伎舞踊といわれる作品ですので、芝居の要素が高い古風な舞踊です。どこが面白いのか、どこに山場を持って行くか、作品を良く理解して踊らないとお客様に分かっていただけないと思いますので、しっかりと勉強して踊らせて頂きます。各々の見せ場をどうするのか、まとまった時にどうなるのか、自分ではまだまだ見極めがつかず、古風だからこそ難しい踊りだと思います。どなたが演じてもすることは同じなのですが、座組みによって舞台にのった時に違ってくるのが、古典歌舞伎の面白いところであり、また、難しいところだと思いますね。
鶴松 新しい役柄を勉強できるのは嬉しいですね。まさか葵御前(※『義賢最期』)を演らせてもらえるとは思っていなかった。
梅丸 だよね。こんなに年が近い人たちと……今までないんじゃないかな?
中村梅丸(左)と中村鶴松
鶴松「もっともっと頑張らなきゃといい刺激になっている」
−−2018年が終わるにあたり(※取材時は2018年12月末)、何かやり残したことは?
梅丸 えー、なんだろうな……家の掃除!
鶴松 一人暮らしなんですよね、丸ちゃんは。一人暮らし、よくできるよね……。
梅丸 旅に行って帰ってきて、また旅に行って帰ってきてなので……掃除が……。
鶴松 そう、全然家に入れてくれないんですよ(笑)。
梅丸 そう簡単には入れませんよ(笑)。
鶴松 やり残したことかぁ……欅坂のDVDを見ることとか……?
梅丸 それはこれから見たらいいじゃない!(笑)
−−2019年の抱負をお願いします。
鶴松 2018年は学生を卒業した最初の1年でした。お休みもなく毎月出させていただくのも有難かったですし、本当に芝居漬けになってきています。2019年もそうありたいです。休みなく働いて、日々勉強したいと思いますね。
梅丸 僕も2019年3月で一応、学生ではなくなります。2018年は新しいことにチャレンジさせていただきましたし、こういう若手の皆さんと一緒に古典を勉強する機会をいただいたり、それから大先輩たちのお芝居に出していただいたり。師匠と離れて出させていただく機会が多かった1年だったので、2019年はどういうスケジュールになるか分かりませんけれども、2018年に身につけたものを少しでも舞台で出していけるようになれたらいいなと思っています。
鶴松 僕たち、よく話しているんですけど、丸ちゃんはいろいろなところに出ていて、いろいろな先輩のもとで演じて、勉強している。それはとても羨ましいです。
梅丸 僕が思うのは、鶴松さんは一門の中で確固たるポジションがあって、あんなことやらせてもらっているなぁと。ずっと部屋子の一年上の先輩で、常に前を走っているイメージが小さい頃からありました。今も変わらずそう思います。
鶴松 ちゃんと共演するのは今回が初めて。稽古場で丸ちゃんのことを見ていても、いろんなところで勉強している分、僕が言ったら偉そうですけど、成長しているなぁ、勉強してきているなぁと思います。僕ももっともっと頑張らなきゃいけないなといい刺激になっていますね。
中村鶴松
歌舞伎を好きになる入口となってくれれば
−−最後にメッセージをお願いします!
鶴松 歌舞伎に詳しい方はもちろんですけど、入口として、演目も様々ですし、「新春浅草歌舞伎」はすごくいいと思っています。歌舞伎を好きになる方法って色々あると思うので、この中で好きな俳優を見つけるのもいいですし、歌舞伎を好きになるきっかけとなる公演になってくれればいいなと思っております。
梅丸 「新春浅草歌舞伎」は先輩たちから世代交代しながら受け継いできた公演です。ずっと応援してくださっているお客様がたくさんいらっしゃり、その方たちにこれからも応援していただくのは勿論ですが、僕ら世代の若いお客様に古典歌舞伎は楽しいと思っていただける、その最初の機会となるようにがんばって勤めなくてはと思っております。
中村梅丸
取材・文・撮影=五月女菜穂
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公演情報
■場所:浅草公会堂
■出演: 尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助、中村鶴松、中村梅丸、中村歌女之丞、大谷桂三 / 中村錦之助
【第一部 午前11時開演】
2. 源平布引滝 義賢最期(げんぺいぬのびきのたき よしかたさいご)
3. 芋掘長者(いもほりちょうじゃ)
2. 番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)
3. 乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)