NTLive2019前半ラインナップ発表~『マクベス』『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』『リア王』『英国万歳!』『アントニーとクレオパトラ』
『マクベス』
これを観ているか観ていないかで、いまや“演劇ファン”としての真贋度が鑑定できるといっても過言ではないのが、「ナショナル・シアター・ライブ」(以下、NTLive)である。
そんなNTLiveについて改めて説明しよう。NTLiveとは、英国はロンドンのナショナル・シアターが世界(の映画館)に向けて配信している演劇のライブビューイングのシリーズ企画である。日本では2014年から上映が開始された。ナショナル・シアターや、その他の劇場で上演された話題の舞台作品の映像を、映画館で、日本語字幕付きで、安価で、観ることができる。演出家や作家、俳優らによる解説が含まれることも多い。上映演目は、世界最高峰を誇る英国演劇の厳選された最新舞台だから、権威ある演劇賞を受賞したり、ブロードウェイに進出することも多い。最近では、NTLiveで上映された演目が、後日、日本で日本語上演されるケースも増えているが、どうしても劇場が東京中心で限定的なうえ、演出も変わってしまうし、人気男性アイドルが出演などしようものなら、ファンクラブが殆どのを持って行ってしまうので、一般の演劇ファンには近寄りがたいものとなってしまう。その点、NTLiveなら、日本全国の映画館で、気ままに観ることができるし、カメラワークがうまいので、俳優の細かい表情を味わいつつ、臨場感も遜色ない……と本当に良いことづくめである。なによりも、シェイクスピアをはじめとする英語戯曲は、オリジナル言語の舞台を観てこそ“本物”感が満喫できるというもの。譬えるならば、ビートルズの日本語カバー曲しか聴かない者が「ビートルズ、だーい好き」などと言ったら「おいおい」「本物を聴けよ」とツッコミたくなるはず。ここにきて、ようやく海外の演劇も、技術の進歩のおかげで“本物”に接することのできる時代が到来したのである。これをフル活用しない手はないのである。
さて、前置きが長くなったが、このほどカルチャヴィルはNTLive2019年前半の上映作品5本をTwitter&Facebookで発表した。シェイクスピアも3作品入っている。以下に紹介する。
◆『マクベス』
□原題:Macbeth
□上映日程:2019年2月15日(金)~2月21日(木)
□作:William Shakespeare
□演出:Rufus Norris(現・ナショナルシアター芸術監督)
□出演:Rory Kinnear、Anne-Marie Duff、ほか
□本国NTLiveTrailer:https://youtu.be/f1W_FQsVkfE
『ヤング・マルクス』での好演の記憶も新しいローリー・キニアがマクベスを、アンヌ=マリー・ダフがマクベス夫人を演じる。演出は、現・ナショナルシアター芸術監督ルーファス・ノリス(「三文オペラ」ほか)。
◆『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』
□原題:Who's Afraid of Virginia Woolf?
□上映日程:2019年3月1日(金)~3月7日(木)
□作:Edward Albee
□演出:James Macdonald
□出演:Imelda Staunton、Conleth Hill、Luke Treadaway、Imogen Poots
□本国NTLiveTrailer:https://youtu.be/hQNJIen7duI
数々の舞台や映画で活躍する名女優イメルダ・スタウントンを筆頭に、コンリース・ヒル、ルーク・トレッダウェイ(『夜中に犬に起こった奇妙な事件』)、イモージェン・プーツが出演。ロンドン、ハロルド・ピンター劇場で収録。
『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』
◆『リア王』
□原題:King Lear
□上映日程:2019年4月19日(金)~4月25日(木)
□作:William Shakespeare
□演出:Jonathan Munby
□出演:Ian McKellen、ほか
□本国NTLiveTrailer:https://youtu.be/eSu82KgkIX0
英国の演劇・映画界を代表する名優イアン・マッケランが、破滅に向かう老王を演じる。
◆『英国万歳!』
□原題:The Madness of George III
□上映日程:2019年5月31日(金)~6月6日(木)
□作:Alan Bennett
□演出:Adam Penford
□出演:Mark Gatiss、Adrian Scarborough、ほか
□本国NTLiveTrailer:https://youtu.be/BO76_gVR9nA
18世紀の英国王ジョージ3世のご乱心と周囲の混乱を描いたアラン・ベネット(『ヒストリーボーイズ』ほか)の出世作。初演を演出したニコラス・ハイトナーによって映画化もされている。今回は、コメディー集団「ザ・リーグ・オブ・ジェントルメン」の一員であり、『ドクター・フー』『SHERLOCK』などでもおなじみのマーク・ゲイティス(NTLive『コリオレイナス』ほか)が主演。
◆『アントニーとクレオパトラ』
□原題:Antony & Cleopatra
□上映日程:2019年6月21日(金)~6月27日(木)
□作:William Shakespeare
□演出:Simon Godwin
□出演:Ralph Fiennes、Sophie Okonedoほか
□本国NTLiveTrailer:https://youtu.be/drwahNaoqKs
シェイクスピア史劇を、かつてNTLive『人と超人』を演出し、2019年には日本で『ハムレット』(主演:岡田将生)も手掛ける、サイモン・ゴドウィンが演出。アントニー役に『人と超人』での好演の記憶も新しい、名優レイフ・ファインズ。クレオパトラ役にはトニー賞をはじめ数々の演劇賞受賞歴を誇るソフィー・オコネドー(本作品でも「イブニング・スタンダード」演劇賞・最優秀女優賞を受賞)。
なお、この続きは、年明け後に発表されるとのこと。
また、2018年12月29日現在、シネ・リーブル池袋では「年越しだよ!豪華NTLiveアンコール祭り」 を上映中だ。見逃した作品などあれば、この機会に逃さず見ておこう。
◆『ハムレット』
□原題:Hamlet
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2018/12/15(土)〜12/21(金)、2019/1/5(土)〜1/11(金)
□尺:3時間27分(休憩含む)
□作:ウィリアム・シェイクスピア
□演出:リンゼイ・ターナー
□主演:ベネディクト・カンバーバッチ
Hamlet
◆『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
□原題:The Curious Incident of the Dog in The Night-Time
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2019/1/5(土)〜1/11(金)
□尺:約2時間51分(休憩含む)
□原作:マーク・ハッドン(ガーディアン賞受賞)
□脚色:サイモン・ステファンズ
□演出:マリアンヌ・エリオット
□主演:ルーク・トレッダウェイ
The Curious Incident of the Dog in The Night-Time
◆『フランケンシュタイン』(カンバーバッチ博士版)
□原題:Frankenstein
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2018/12/15(土)〜12/29(土)、2019/1/2(水)
□尺:2時間15分
□作:メアリー・シェリー
□演出:ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』)
□出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ジョニー・リー・ミラー
◆『フランケンシュタイン』(カンバーバッチ怪物版)
□原題:Frankenstein
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2018/12/15(土)〜12/28(金)、2018/12/31(月)、2019/1/4(金)
□尺2時間30分
□作:メアリー・シェリー
□演出:ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』)
□出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ジョニー・リー・ミラー
◆『イェルマ』
□原題:Yerma
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2019/1/5(土)〜1/11(金)
□尺:1時間49分(休憩なし)
□作:フェデリコ・ガルシア・ロルカ
□演出: サイモン・ストーン
□出演:ビリー・パイパー(2017年オリヴィエ賞最優秀主演女優賞 受賞)
□上演劇場:ヤング・ヴィック劇場
Billie Piper (Her) in Yerma at the Young Vic. (Photo by Johan Persson)
◆『アマデウス』
□原題:Amadeus
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2018/12/22(土)〜2019/1/4(金)*1/1元旦は休館日にて上映なし
□尺:3時間15分(休憩20分含む)
□作:ピーター・シェーファー
□演出: マイケル・ロングハースト
□出演:ルシアン・ムサマティ、アダム・ギレン
□上演劇場:ナショナル・シアター オリヴィエ劇場
A scene from Amadeus, centre Lucian Msamati - Antonio Salieri (Image by Marc Brenner)
◆『ハングメン』
□原題:Hangmen
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2018/12/30(日)及び2019/1/3(木)のみ
□尺:約165分
□作:マーティン・マクドナー(ローレンス・オリヴィエ賞受賞演出家)
□演出:マシュー・ダンスター(『1984』翻案・演出)
□出演:デヴィッド・モリッシー(「ウォーキング・デッド」)、アンディ・ナイマン(『アサシンズ』)、ジョニー・フリン(「ブルックリンの恋人たち」)
The Hangmen company (Photo by Tristram Kenton)
◆『一人の男と二人の主人』
□原題:One Man, Two Guvnor
□上映会場:シネ・リーブル池袋 https://ttcg.jp/cinelibre_ikebukuro/
□日程:2018/12/29(土)、12/30(日)、2019/1/2(水)〜1/4(金)
□尺:3時間9分(休憩含む)
□作:リチャード・ビーン(『グレイト・ブリテン』)
□演出:ニコラス・ハイトナー(『ミス・サイゴン』)
□出演:ジェイムズ・コーデン、トム・エデン
One Man, Two Guvnor