シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム第四十沼(だいよんじゅっしょう) 『ログり沼!』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第四十沼(だい40しょう)『ログり沼!』
こんなニュースを覚えているだろうか。
ある少女が病気のせいで幼くして亡くなり、死後に親へあてた手紙が部屋中の至るところから見つかったという感動的な話が話題となった。
「ママ、愛しているよ」「パパだいすきだよ」と幼い少女が一生懸命に書いた手紙が
本棚の本の中、キッチンの戸棚などから次々に発見されたのだ。
まさに涙腺崩壊。
我が家では、現在も元気な母親・齋藤ローズ(81歳)が破壊的な単語をマジックで部屋のあらゆるところに直書きし、われわれの腹筋を崩壊し続けている。
そんな数々の直書き物件を紹介しよう。
壁物件
「洗面」「風呂」「トイレ」と書かれたスイッチ群。
わかっている。わかっているのに・・・なぜ書く?
そんなのすぐ慣れて覚えるだろ?
もう何十年も前にかかれたまま残っている。
しかもよく見たまえ、「風呂」じゃなく「呂風」(ローフー)
と書いて有るでは無いか!
いくら業界がながいからといって、これはズルい。
これじゃ子どもたちが小学生になって、漢字テストで出た時、
風呂と書かずに「呂風」と書いてしまうに違いない。
あまりにも家中のスイッチに何か書いてあるので、私がリペイントして直しまくっている。
しかしカエルの子はカエルだ。
英語で同じくどこのスイッチかを書いている。
妻に「わかってるから」と突っ込まれて気が付いた。
日付物件
ある日風呂掃除の時にスノコをもちあげてみたらこの通り。
最初は何があったんだろう。
電話中にメモ帳がなくて、目の前のスノコに何か番号でもメモしておいたか?と思った。
本人に聞いてみるとなんて事ない「2012年11月17日にこのスノコ購入」という意味らしい。
これだけでは無い、
そしてこの孫の手はなんだ?特別どこか旅行で買ってきたわけでも無い。
近所で買ってきただけの孫の手だ。
あまりにも不可解な行動に、思い切ってローズ本人に取材してみたところ。
「ものに買った日付を書くと、その時の情景を思い出したり、記念にもなるから」
だそうだ。
赤ちゃんのヘソの緒でもあるまいし・・・。
本当にその意味がよくわからない。
いや、待てよ。
これが数億年後に発掘された時には立派な遺跡になるのではないか?
いや、ならない。
お庭物件
「シャワロ」
なんだ「しゃわろ」って。
シャワー口の事か?
しかも、ローズはこの物体の事を「ホース」と呼んでいる。
矛盾が多い。
間違い系
またローズは、独自の抽象的表現を度々見せる。
「コストコ」→「トコスコ」
「ロイヤル」→「ローヤル」
「デニーズ」→「デズニー」
などなど、さすが真の芸術家は言う事が違う。
最後に、もっとも破壊力のある物件を紹介しよう。
我々が住んでいる千葉県の名物の入ったタッパーにかかれた文字だ。
「ぴ~~~なつ」
ちなみに、ローズは「忘れ物」の事を「わしれもの」という事を付け加えて
本章を終わりとする。