アニメ『女子かう生』の主題歌でメジャーデビューを果たす「あにめ系あーてぃすと」あま津うに 「ようやくスタート地点」と壮大な夢を語る
撮影:中田智章
アニメのあらゆる分野での活躍を目指す「あにめ系あーてぃすと」として、2015年12月にSNSでの活動を開始。メジャーデビュー前にも関わらず、10万人を超えるフォロワーを集めた、あま津うに。海外からも絶大な支持を受ける新世代アーティストがアニメ『女子かう生』のオープニング曲『silent days』で、ついにメジャーデビューを果たす。
昨年から、あま津うにによるアニメコラムも連載中のSPICEでは、本人へのインタビューを実施。今回は、アニメではなく、「あま津うに」について、深く語ってもらった。
「ようやくスタート地点に立てた」という気持ちでいっぱい
──メジャーデビュー決定についての今の感想を教えてください。
やっとここまで来たなって感じがします。ずっとメジャーデビューを目指してやってきたので、「ようやくスタート地点に立てた」という気持ちでいっぱいです。
──しかも、メジャーデビュー曲『silent days』は、4月8日から放送されるTVアニメ『女子かう生』のOP主題歌にも決まっています。
『女子かう生』は、元々、大好きな作品だったので、自分の好きな作品に携われることもすごく嬉しいです。
──メジャーデビューと同じく、アニメの主題歌を歌うことも目標の一つだったのですか?
「テレビアニメで声優をやる」ことと、「テレビアニメのオープニングを歌う」ことは、「あにめ系あーてぃすと」としての最低条件だと思ってきました。
撮影:中田智章
──あま津さんは「あにめ系あーてぃすと」として活動されていますが、具体的にどのような存在なのでしょうか?
アニメに関するすべての分野で活躍できるオールマイティな存在のことです。声優をしたり、アニソンを歌ったり、作詞をしたり、アニメのコラムを書いたり。あとは、公式コスプレイヤーをしたり、キャラクターデザインを描いたり……。アニメに関することすべてを征服するという意味です。元々、アニメがすごく好きで、アニメに携わりたいとはずっと思っていましたが、一番の目的はアニメ界で目立つこと(笑)。とにかく目立ちたいから、アニメに関するすべてのところで活躍していきたいので、オールマイティな存在を目指すようになりました。
──アニメに対して、そこまで強い思いを抱くようになった、きっかけはあるのですか?
普通のアニメ好きからオタクになったきっかけは、『けいおん!』という作品です。そこから、キャラクターというものに執着するようになりました。元々、『クレヨンしんちゃん』や『美少女戦士セーラームーン』などのアニメは観ていたのですが、キャラクターの一人一人を「推す」という形で好きになったのは『けいおん!』が初めて。そこからは、キャラクター重視で観ることが多くなって、自分自身がアニメに近い存在になれたら良いなと思うようになりました。
──『けいおん!』という作品やキャラクターのどこに、特に魅力を感じたのでしょうか?
(主人公の)平沢唯ちゃんのキャラ性に心を打たれてしまって、「私も、唯ちゃんみたいになりたい!」と思ったんです。あの世界観で、あの同級生と後輩に囲まれている唯ちゃんにすごく憧れを抱いて、私もこの世界に入りたいって気持ちになりました。でも本当にその世界へ行くためには、どうしたら良いか真剣に考えた時、「唯ちゃんになりたい」とか夢みたいなことを言っても無理だなと思って(笑)。
──一気に冷静になったのですね(笑)。
はい(笑)。それで、実際にどんなことをしていけば良いのか考えるようになりました。
──では、「あにめ系あーてぃすと」として活動を始める時、最初は、どのようなことからスタートしたのでしょうか?
まずはSNSで人気を得て、アニメ業界の大人の方たちに「すごいな」「事務所にも入ってないけど目立っているな」と思ってもらえるようになろうと思いました。その当時、 Twitterは全盛期だったというか、今から新しく始めても、すでにそこにいて人気のある人たちには勝てないと思ったので、最初はInstagramを始めました。当時のInstagramは海外の方が多かったので、アニメ好きの海外の方に向けて発信を始めて。まずは、1ヶ月でフォロワー1000人を突破しようという目標を立てました。
──その目標は達成できたのですか?
はい。最初の目標はクリアできたので、そこからも、どんどんフォロワーさんを増やしていこうと考えました。
──目標やそれを達成するための手段を緻密に考えて、計画的に活動している印象ですが、「あにめ系あーてぃすと」に関する活動以外の場面でも、そういったタイプですか?
私は極端なので、できないことは本当にできません(笑)。でも、自分が好きなことややりたいことに対しては、誰にも負けたくないという気持ちで一番を目指してまっすぐにやっていけるタイプだと思います。Instagramも、最初はフォロワー0人の状態から始めたので不安な気持ちもあったのですが、どんどんフォロワーさんも増えていき、私自身も楽しくなっていきました。
──フォロワーを増やすために、意識したことなどはありますか?
戦略的には、その時放送されているアニメの人気キャラのコスプレをやることから始めて、いろいろな国の言葉でタグを付けたりもしました。例えば、ロシア語やインドネシア語で「可愛い」という意味の言葉や、「日本」という意味の言葉とか。そうすると、日本人ぽい子がアニメのコスプレをしているということで、フォローをしてくれる人がたくさんいたんです。
撮影:中田智章
「けものフレンズ2」のアフレコでは、嬉しくて震えていた
──2018年3月21日には、「BIG ISLAND RECORDS」から、1stオリジナル楽曲『キミゾラ』をリリースしています。そこまでの経緯も教えて下さい。
Instagramのフォロワー数が2万人を越えた頃から、いろいろな会社の方から声をかけていただけるようになりました。その中でも現所属事務所の「BIG ISLAND RECORDS」の方々にお話を聞いたり、作品を聴いたりした時、一番ピンときたんです。この人たちと一緒なら、自分がもっと飛躍できるような音楽を作ることができると思って、お世話になることを決めました。
──ちなみに、歌を歌ったり、楽器を演奏したりすることを学んだりした経験はあったのですか?
クラシックピアノはずっと本格的にやっていました。歌に関しても、日本のアニソンは独学ですが、R&Bやソウルなどは習っていて、自分の原点にもなっています。
──幅広いですね。そういった素養は、アニソンを歌う時にも生かされていると思いますか?
はい。一つのジャンルだけを勉強をしていたら、こうはならないだろうな、という歌い方にはなっていると思います。
──1stシングル『キミゾラ』、2019年1月11日にリリースした2ndシングル『secret star』、そして、メジャーデビュー曲の『silent days』。そのすべてで自ら作詞も担当していますが、以前から、作詞にも興味はあったのでしょうか?
作詞もやってみたいことの一つでした。元々、文章も書くことは好きで。SPICEさんで書かせていただいているアニメコラムのような文章を書いたりしていました。でも、曲が無い状況でただ詩を書いたり、日記を書いたりとかはしていなかったです。
──詞は、どのようなシチュエーションで書いているのですか?
詞はスマホで書いています。歩いている時や、電車に乗っている時に曲を聴いて、その場で浮かんできた詞をスマホのメモに書くんです。
──スマホが大活躍してるわけですね。SPICEのコラムは、単に好きな作品について語る内容ではなく、作品や業界に関する深い考察も加わったコラムだったので驚きました。
表に出る仕事をやる上で、どういう仕組みでキャスティングがされていて、どういう仕組みで新しいアニメの方向性が生まれているのかを把握していないと、 自分も出られないだろうなと思ったので。自然とそういう仕組みのことを考えてしまうようになりました。
──ちなみに、今、放送中の1月クールのアニメで、特に注目している作品は?
今回、『けものフレンズ2』の声優オーディションに参加させていただき、出演できることになったんです。元々、『けものフレンズ』が好きだったので、とても注目していた作品なのですが、自分も出られることになったので、より強く皆さんに観て欲しいと思うようになりました(笑)。『けものフレンズ』は、他のアニメのスピードが「100」だとしたら、「80」くらいのスピード、ちょっとスローに動いている感覚がするアニメ。そういうところも含めて、日々、ストレスが溜まっていたりする現代社会に癒しを与えるような作品だなと思っています。
──出演シーンのアフレコはもう終わっているのですか?
はい。収録の時には、足が震えていました(笑)。でも、演技に関しては120%の力を出せたと思います。
──それだけ緊張していたのですね。
一人しか合格しない最終オーディションの後、結果を知らされて、すぐに収録だったので、オーディションの緊張感が残ったままみたいな感覚でした(笑)。それに、テレビアニメへの出演自体が初めての経験だったので、緊張以上に、嬉しくて震えていたような感じもありました。
──取材の時点では、あま津さんの出演する回は放送されていないのですが、放送される時には、どのような気持ちになると思いますか?
ゲームのキャラクターを演じたことはあるのですが、テレビアニメの動くキャラクターに命を吹き込んだのは初めてなので、どんな風になっているのかと楽しみな気持ちでいっぱいです。リアルタイムで観ようと思います。
──メジャーデビュー、TVアニメ声優デビューと嬉しいニュースが続いて、ファンの皆さんも、きっと大喜びしたでしょうね。
あま津 SNSや配信には「泣いた」というコメントがたくさん付きました(笑)。皆さんが喜んでくれて、私もますます嬉しくなりました。
撮影:中田智章
インプットすることの大事さはずっと意識している
──メジャーデビュー曲『silent days』についてのお話に戻りますが、曲の第一印象を教えて下さい。
今回、ずっと私が憧れていた作曲家の渡辺拓也さんに書いていただけたので、聴いた瞬間、「すごい神曲をいただいた」と思って、涙が出そうになりました。
──その神曲に付く詞は、どのようなイメージで書いたのですか?
私はアニメのオープニング曲って、聴いていると「この歌詞のところは、アニメ(本編)の中のこの場所だ」と情景が浮かぶものだと思っているんです。だから、この曲を聴いてくださる方にも、「あ、この詞は『女子かう生』に出てくるこの場所だ」と思ってもらえるような詞になることを心がけました。
──レコーディングの時、特に意識したことなどを教えて下さい。
今回、大切にしたのは青春の切なさなので、あまり元気に歌いすぎず、作品のテーマでもある「かわいい」ところも出せるように意識して歌いました。
──メジャーデビュー曲で、テレビアニメの主題歌で、憧れの作曲家さんの作品でもあるということで、レコーディングの時にはプレッシャーも感じたのでは?
プレッシャーは、今回に限らず常に感じています。私は上に行かなくてはいけない、一番にならなくてはいけない、という意識がすごく強くあるので。
──メジャーデビューや、テレビアニメの声優デビューは、まだスタート地点だという気持ちとのでしたが、今後、ファンの人たちに、どのような姿を見せていきたいですか?
見ていて飽きない存在であり続けたいと思っています。自分の目指す場所は、アニソン歌手ではなく、声優でもなく、自分しかできない「あにめ系あーてぃすと」なので。私にしかできない形で、アニメに関するすべての場所でスター性を見せていきたいです。
──それだけ広く活躍していくとなると、いろいろな流行や情報を含めて、インプットするのも大変ですね。
たしかに、インプットすることの大事さはずっと意識していて。アニメが好きだからといって、アニメのことだけをインプットしていると視野が狭くなってしまうと思うので、別の刺激も受けるようにしています。例えば、ファッションだったら、パリコレとか海外のファッションについてもチェックしてみたり。演出などについては、海外ドラマを見てみたり。人気のYouTuberさんの動画を観たりもします。
──そうなると、ますますやりたいことの種類が増えていったりするのでは?
実際に、そうなってます(笑)。でも、その中でも、今しかできないことは今やる、という風に時期や段階などを考えながら活動しています。例えば、アニメの監督もいつかやりたい夢なのですが、それは今、自分が手を伸ばせることでは無いので。別のポジションで成功をしていくことで、段階を踏みながら、その夢をかなえられる存在になりたいと思っています。
──最後に、このインタビューを読んでくれている皆さんにメッセージをお願いします。
私がメジャーデビューというスタート地点に立てたのは、今まで応援してくれた方々のおかげだと思っています。メジャーデビューをきっかけに、初めて私のことを知って下さった方もいらっしゃると思うのですが、そういった皆さんにも興味を持ってもらえるように全力で、初心を忘れず頑張っていきたいと思っています。ぜひテレビアニメ『女子かう生』のオープニング『silent days』、聴いて下さい。
撮影:中田智章
取材・文=丸本大輔 撮影=中田智章