『カミワザ!-驚異の立体切り絵展-』鑑賞レポート 気鋭の女性アーティストが生み出す、超絶技巧の輝きを見よ!

レポート
アート
2019.3.14

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『カミワザ!-驚異の立体切り絵展-』が、2019年3月8日(金)に東京都文京区の東京ドームシティ内「Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)」で開幕した。3月31日(日)まで24日間にわたって行われる当展では、立体切り絵作家・SouMa(ソウマ)の作品39点を展示。独学で立体切り絵を学んだ女性作家が1枚の紙の中に生み出す「神技」あるいは「紙技」というべき超絶技巧が見ものだ。開幕前日にはSouMa本人も出席して記者内覧会が開かれた。ここでは作家本人のコメントも交えながら、1mm単位の細かな手仕事によって作られる立体切り絵の世界を見ていこう。

子どもの頃の「遊び」から生まれた唯一無二の世界

「立体切り絵」とは、描線を紙から切り抜いて作る切り絵の概念を越え、立体的で重層的な世界を作り出す芸術だ。島根県で生まれ育ったSouMaは、小学生の頃に折り紙などで立体造形の面白さに目覚め、遊びの中で自然と立体切り絵の世界に行き着いたという。今から6年ほど前から本格的なアーティスト活動を始め、現在は日本のみならず海外でも個展を行なっている。

展示風景

展示風景

SouMaには師匠や先生と呼ぶ存在はおらず、独学でその腕を磨いてきた。下絵を描かず、1枚の紙の中を使ってカッター1本で生み出される作品は、それが紙であることを疑うような美しさ。その繊細さを感じられる最たる部分が髪の毛や羽根などの箇所で、最も細いところは1mmにも満たない。

左/《懐中時計》 右/《懐中時計》部分

左/《懐中時計》 右/《懐中時計》部分

本展では、一つひとつの作品を「3度見」して味わうことを勧めている。まずは作品全体の世界観を楽しみ、次に作品の細部を楽しみ、さらにすべてがつながっていることを感じてほしいという。

子どもの頃の感覚を大切に、本能的にイメージを切り出す

入場してすぐ右手に《記念日》という作品がある。まるでプレゼントの包みを開いたかのような四方の中に都会的な街並みが切り出され、その上に立体的なバラが浮かんでいる。平面で描かれた街並みも、立体的で奥行きを感じられる。

《記念日》

《記念日》

夜景の見える街並みでバラがプレゼントされる様子を表現したというが、こうした作品は何かを見ながら作られるのではなく、頭の中のイメージだけで表現されていくのだという。カッターの刃の運びも、音楽を聴いている時にふと思いつくそう。まさに、本能的というほかない。

《向日葵》

《向日葵》

「記憶の中にある子供の頃の感覚を忘れずに、いい意味での『幼稚さ』や『完成させすぎない未熟さ』を大切にしている」と話すSouMa。例えば、白紙にこだわるのもチラシの裏などを使って一生懸命遊んでいた子供の頃のままだというし、手のブレなど人間らしさが出た方が美しいから直線も定規を使わないと語る。最初に構成を決めずにその日の気分で作風やモチーフの大きさに変化を加えていくことも当たり前のようにあるといい、子供のような遊び心が投影されている。

左/《エッフェル塔》 右/《王冠》

左/《エッフェル塔》 右/《王冠》

《望月(参考作品)》は「剥がし切り」という技法を用いた作品。これも、子どもの頃に刃が欠けたままのカッターを使っていたことから偶然生まれた独自の技法で、目では感じられない紙の厚さを感じながら切り込む深さを調整することで、墨絵のような濃淡を出している。この剥がし切りのほかにも、紙を濡らしたり、火で炙ったり、手で破ってみたりと、紙だからこそできるアイデアを楽しんでいるという。

《望月(参考作品)》

《望月(参考作品)》

《想像の火》は、本展のために作られた最新作。平成からの改元を控えた今、日本の未来に対する希望や期待を込めた作品だという。無数の羽根の中に小さな折り鶴がいくつも表されており、織り込まれた金の和紙が新年号に向けた晴れがましさを感じさせる。羽根は以前の作品よりもさらに繊細さを増し、SouMa自身もそうした技術的な成長を感じてほしいと語っていた。

《想造の火》の解説を行うSouMa

《想造の火》の解説を行うSouMa


《想造の火》部分

《想造の火》部分

「どんな風に作ったのか」完成までのプロセスにも注目してほしい

「アートとして歴史が浅いジャンルなので、見た目の印象だけでなく、どんな風に作ったのか、なぜこういうものを作ろうとしたのかといったところも想像してほしいです」と語るSouMa。会場には、作業工程の様子を伝える写真や制作道具の一部も展示されているので、そうした部分の一端にも思いを重ねてみよう。

制作過程を伝える写真も展示

制作過程を伝える写真も展示

「発想があっても、まだまだ技術が追いつかないこともある」と語っていたSouMa。本展の中でも、創作活動の始まりからこれまでの変化を感じることができるが、唯一無二の世界において、今後どんな成長を見せていくのか楽しみなアーティストだ。

SouMaグッズも販売

SouMaグッズも販売

『カミワザ!-驚異の立体切り絵展-』は、3月31日まで東京都文京区の東京ドームシティ内「Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)」で開催中。気鋭の女性アーティスト・SouMaが生み出す、超絶技巧の輝きを見にいこう。

イベント情報

カミワザ!-驚異の立体切り絵展-
日程:2019年3月8日(金)~31日(日) 【24日間】 ※開催期間中無休
時間:10:00~18:00※最終入館は17:30
場所:Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
料金:当日 大人(高校生以上)800円、前売 大人(高校生以上)600円、当日・前売一律 小人(小・中学生)200円 ※未就学児無料
URL:https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/kamiwaza.html
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