海老蔵長女の麗禾、日本舞踊市川流四代目ぼたんへ『市川會 三代襲名披露』製作発表会レポート

レポート
舞台
2019.5.13
日本舞踊市川流三代襲名公演『市川會』制作発表会見。左から、市川ぼたん、堀越麗禾、市川海老蔵、市川紅梅。

日本舞踊市川流三代襲名公演『市川會』制作発表会見。左から、市川ぼたん、堀越麗禾、市川海老蔵、市川紅梅。

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市川海老蔵が家元の日本舞踊市川流が、令和元年8月3日(土)~12日(月・休)Bunkamuraシアターコクーンにおいて、『市川會』を開催する。それに先立ち5月12日に開催された会見で、日本舞踊市川流二代目市川紅梅が初代市川壽紅を、三代目市川ぼたんが四代目市川翠扇(すいせん)を、堀越麗禾が四代目市川ぼたんを襲名することが発表された。

日本舞踊の襲名披露公演が10日間連続で行われるのは異例のこと。同公演には、海老蔵や海老蔵の長男の堀越勸玄も出演する。

紅梅は壽紅へ、ぼたんは翠扇へ

十二世團十郎の娘であり、海老蔵の叔母にあたる紅梅は「初代壽紅(じゅこう)を、名のらせていただくことになりました」と挨拶をした。三代目市川ぼたんは、十二世團十郎の娘で海老蔵の妹。「兄のすすめと、長年市川流を支えてまいりました叔母のゆるしを頂戴し、市川翠扇の名を四代目として襲名させていただくこととなりました。至らないところも多いとは思いますが、一生懸命やってまいりますのでよろしくお願いいたします」と意気込みを語った。

市川紅梅

市川紅梅

三代目市川ぼたん

三代目市川ぼたん

日本舞踊市川流とは

日本舞踊市川流は、歌舞伎舞踊の流派の1つ。江戸時代末期に活躍した七代目市川團十郎が考え、九代目團十郎が成立した。海老蔵は、今回の襲名披露の経緯を次のように説明する。

「市川流は、市川宗家の当代團十郎が背負うものではありますが、基本的には翠扇(すいせん)の名跡のものが、総代としてやっていくものです。十二代目團十郎が他界してしまい、現在は叔母(紅梅)が総代をつとめ、ぼたんが補佐をしております」

さらに海老蔵は、「市川流は大きな舞踊の流派ではございませんが、様々な方のお力添えを賜り、このたびBunkamuraシアターコクーンという立派な会場で、10日間12回も舞踊の襲名披露公演をさせていただきます。父をはじめ先祖に感謝をしなくてはいけません。これが、市川流を知っていただく第一歩となれば」と感想を述べた。

市川海老蔵

市川海老蔵

『娘道成寺』で、ぼたんと海老蔵が共演

ぼたんが襲名する「翠扇」という名跡について、海老蔵は「日本舞踊市川流にとって、とても重い名跡」であるとし、過去に「紅梅に四代目翠扇を」という話もたびたび出ていたことも明かす。

「しかし、叔母は『私はまだ…』と遠慮され、非常に謙虚な形をとられこられました。叔母に了解していただかない限り、妹も襲名はできません。先ほど妹が『叔母さんの了解をえて』と申しましたのには、そのような経緯がございます」

ぼたんは、披露公演で『京鹿子娘道成寺』を踊る。この演目を選んだ理由を問われ、次のように答えた。

「道成寺は、日本舞踊の中で一番の大曲です。兄より『それを勤めきるという責務を負ってみてはどうだろうか』という話をいただきました。最後に出てくるのですが、兄を相手にするのは、正直なところ、なかなか重みがあるのですが(笑)、それを受けるということをしなくてはいけないと考え、道成寺を踊らせていただくことにいたしました」

この演目では、3日~7日に西川箕乃助、花柳寿楽、8日~12日に藤間勘十郎と尾上菊之丞の特別出演も予定している。

市川ぼたん

市川ぼたん

麗禾、練習は「楽しいです」

現在小学2年生の堀越麗禾は、四代目として市川ぼたんを襲名する。

「みなさまこんにちは。本日はお忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。このたび私堀越麗禾は、市川ぼたんの名跡を四代目として相続いたします。どうぞよろしくお願いいたします。」

堀越麗禾

堀越麗禾

会見の冒頭、しっかりとした口調で挨拶をした。しかし、つめかけた報道陣を前に少し緊張もあったよう。記者からの質問に対し、マイクを手に少し考え込み、見守っていた海老蔵が「恥ずかしいよね」と笑ってフォローする一幕も。麗禾が首をかしげるような仕草と笑顔でうなづくと、会場は和やかな笑いに包まれた。

そのような緊張の中でも、「お稽古はどうですか?」との問いに、麗禾は「楽しいです」と即答。舞台へ強い思いをうかがわせる。「お父さんは?」と聞かれると「優しいです」と答え、海老蔵も嬉しそうな表情。

記者が「れいこちゃんと」と名前を言い間違えたときには、茶目っ気たっぷりの笑顔で「れいかです」と訂正し、一同の笑いを誘った。

記者が「れいこちゃんと」と名前を言い間違えたときには、茶目っ気たっぷりの笑顔で「れいかです」と訂正し、一同の笑いを誘った。

麗禾は現在、ぼたん、紅梅、さら他流の先生からも指導を受けているのだそう。お稽古について、海老蔵は「我々が子供のころは、大変厳しく、ひっぱたかれ、涙ながらにお稽古をする時代でした。近年は、そういう時代ではございません。まだ幼いので、まずは楽しく、いろはにほへと、の基礎を」とコメント。「基本的は彼女は舞踊も歌舞伎も好きでございます。歌舞伎の家に生まれて、日本舞踊ができる環境です。そして彼女自身の可能性を広げていくことは、父としての責務でございます。そういうお手伝いできたらという一心です」と続けた。

海老蔵、團十郎襲名よりうれしい

発表があった5月12日は、母の日。前日の海老蔵は、ブログで次のような気持ちを吐露していた。

明日は母の日、
生きている母に感謝したい、
私は幸せだなぁ
母がいる。
親父はやっぱり母にはなれねーなー

市川海老蔵ブログ:https://ameblo.jp/ebizo-ichikawa/entry-12460630125.html


その投稿について思いを聞かれると、海老蔵は、「そうなんですよね。やはり頑張ってもなかなか難しいですからね。頑張ってやっているので、その辺は分かってくれていると思います」と答えた。海老蔵はカーネーションを用意し、麗禾は「いってきます」と手を合わせてきたのだそう。

2020年には、十三代目市川團十郎白猿襲名を控えている海老蔵。

「父は他界し、私と倅(勸玄)は三代襲名が叶いませんでした。しかしながら女性の方は、叔母と妹と娘が三代で襲名できる。こんなにめでたいことはありません。麗禾に『(襲名)やるか?』と聞いたところ『やりたい。ぼたんになりたい』とハッキリと口にしましたので、この日を迎えられました」

「自分の襲名より、こちらの襲名の方がうれしい気持ちがあります。自分の襲名は重圧がちょっと大きいんです(苦笑)。本日、私は脇役でございますが、公演に参加でき、襲名を見られることは、私にとりましても父にとりましても、また麻央にとりましても、本当にうれしいことではないかと。ここにいられることに感謝します」

日本舞踊市川流の舞踊公演『市川會 三代襲名披露』は、8月3日(土)~12日(月・休)Bunkamuraシアターコクーンにて開催。

公演情報

『市川會』三代襲名披露
 
■出 演:市川海老蔵、初代 市川壽紅、四代目 市川翠扇、四代目 市川ぼたん、堀越勸玄他
■公演日:令和元年 8月3日(土)~8月12日(月・休) 全 13 公演
■会 場:Bunkamura シアターコクーン
 
■演目
曲目・演目
一、 長唄『寿式三番叟』
紅梅改め 市川 壽紅
ぼたん改め 市川 翠扇
市川海老蔵
二、能楽舞囃子『高砂』
特別出演:片山九郎右衛門
特別出演:梅若紀彰
特別出演:観世喜正
特別出演:亀井広忠
他※公演日により、出演者が異なります。
三、『口上』
市川海老蔵
紅梅改め 市川壽紅
ぼたん改め 市川翠扇
麗禾改め 市川ぼたん
四、(上) 清元 『玉兎』
堀越勸玄
(下) 長唄『羽根の禿』
麗禾改め 市川ぼたん
五、長唄『京鹿子娘道成寺』
ぼたん改め 市川翠扇
特別出演:西川箕乃助 ※出演3~7日
特別出演:花柳寿楽 ※出演3~7日
特別出演:藤間勘十郎 ※出演8~12日
特別出演:尾上菊之丞 ※出演8~12日
市川海老蔵
 
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