金属恵比須・高木大地の<青少年のためのプログレ入門> 第17回~「祖母に感謝せずしてプログレを語るなかれ」

コラム
音楽
2019.7.24
金属恵比須 リハーサル風景

金属恵比須 リハーサル風景


小学校5年の終わりごろ、である。図書館で借りたイエスの2枚組ベスト・アルバム『イエスストーリー』を聴いてプログレッシヴ・ロックにめざめた筆者。

YES『イエス・ストーリー』

YES『イエス・ストーリー』

4月、小学校6年に進級する手前の春休みの熱海旅行では、祖母が誕生日プレゼントを買ってくれた。

イエス『危機』。

いまだに伊豆の初島を見ると、鯵のたたきの味と「危機」のオープニングである大自然の効果音を追憶する(CD自体は初島で買ったわけではなく、帰りに阿佐ヶ谷の新星堂で買ってもらったのだが)。

YES『危機』

YES『危機』

味をしめた筆者は、翌月のゴールデンウィーク、再び祖母に会い、CDをせびる。なんという悪徳小学生か。次は「誕生日プレゼント」という手は使えない。なので、祖母にこう言った。
「ワーナーのCDが今、値上げしてるんだ。僕が欲しいCDは3,378円から3,900円に値上げしてしまってる。でも吉祥寺の新星堂にはまだ安い在庫があるんだ。買ってもらっていい?」

これは紛れもない事実だった。帯が青い”Forever young”シリーズから、黒色のものに変更されており、確かに相当な値上げがあった。が、何も知らない祖母は訝しがる。
「大地、そりゃ嘘でしょうが」
といいながらもお金をもらい手に入れたのが2枚組『海洋地経学の物語』。
その後も夏休みには祖母の家に行き、当時骨折していた足を引きずって、哀れんだ祖母につけ込みリック・ウェイクマン『ヘンリー八世の六人の妻』を買ってもらう。当時の実力を今も持っていれば高齢者相手の詐欺業者になっていただろう。

リック・ウェイクマン『ヘンリー8世と6人の妻たち』

リック・ウェイクマン『ヘンリー8世と6人の妻たち』

小学6年生の時はこのようにイエス三昧の日々だった。当然、学校の授業にも影響をモロに受けていた。
例えば図工の授業。「箱の中の世界」という工作の課題で、箱の中に紙粘土でリック・ウェイクマンの人形を作り、銀紙のマントを着せたりした。そこで、背景に”Yessongs”とロジャー・ディーンのマシュマロのような、ふっくらロゴを描こうとした瞬間、図工の先生が、
「高木君、盗作です」
と釘を刺してきた。

YES『YESSONGS』

YES『YESSONGS』

「先生、なぜ? わかるんですか?」
と予想外の怒られ方をして唖然となったが、話をしてみると、先生はただのロジャー・ディーンのファンだったことが発覚。それから画集を借りたりして、さらに図工の作品のパクリに磨きをかけてしまったのはさておき。
国語の授業でも影響大だった。
谷川俊太郎の詩を学んで自らも詩を作る授業。思いつかないから、イエス『海洋地経学の物語』の「神の啓示」と「追憶」の訳詞をかいつまんでつないで提出した。
先生からは、「高木君のいっている意味がわからない」と評された。
それは当然だ。書き写しただけの小6の当人も、意味は全くわかっていないから。

YES『海洋地形学の物語』

YES『海洋地形学の物語』

それから25年以上たつ。脳髄も成熟し、イエスの歌詞の意味がわかったか。否、高校の英語の評価は10段階中の2。英検も3級止まり。英語能力はめっきり成熟していない。
金属恵比須がメキシコで行なわれた世界最大プログレ・フェス「Baja Prog」に出演した時もジェスチャーのみで1週間を過ごした。災い転じてナントやらで、英語圏のファンだろうがスペイン語圏のファンだろうが対等にコミュニケーションできたという僥倖には恵まれたけれども。未だにイエスの鼻歌はこんな感じだ。
「♪あ、死のう、ぐっ、ピーポー、短ラン、さーしーせーそー、サーティーわーなー、お馬、上〜」
小6の時に耳で覚えた音で記憶しており、英語で何をいっているか知らない。ちなみにこの曲は「アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル」である。わからないだろうけれども。

(※I've seen all good people turn their heads each day so satisfied I'm on my way)

YES『サード・アルバム』

YES『サード・アルバム』

そんな筆者が今では“したり顔”で「青少年のためのプログレ入門」なんてタイトルの連載を続けている。だが、そのような動きに対して、遂に警鐘を鳴らす本が刊行された。

『意味も知らずにプログレを語るなかれ』(円堂都司昭著、リットーミュージック、2019年)である。

「意味も知らずにプログレを語るなかれ」円堂 都司昭 (著)

「意味も知らずにプログレを語るなかれ」円堂 都司昭 (著)

プログレの歌詞に焦点を当てた内容であり、「Part 1」では、
・ピンク・フロイド
・キング・クリムゾン
・イエス
・エマーソン、レイク&パーマー
・ジェネシス
のいわゆる“五大バンド”の代表曲3〜5曲が取り上げられている。

「Part 2」では、
・U.K.
・エイジア
・ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター
・ジェスロ・タル
・ムーディー・ブルース
の各1曲ずつが取り上げられており、痒いところに手が届いているチョイスなのが嬉しい。

今更ながら「ああ、この曲はこういうこと歌われてたのか」と納得の嵐。これを読めば、この連載ももうちょっと長くは続けられるだろうか。「意味を知らずにプログレを語るなかれ」――タイトルが実にグサッとくる。自戒しなければならない。

と思っていたら、本書の刊行記念イベントにゲストとしてお招きを受けた。その名も、
「絶対合格! キスエクと学ぶ夏のプログレ強化講座」
という、トーク・イベント。
2019年7月31日(水)19:30より高円寺パンディットで開催される。

ここで筆者はもちろん「受講生」の立場で参加する。さらに金属恵比須の盟友である、プログレアイドルのxoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キスエク)から楠芽瑠(めるたん)と一色萌も参加。萌は予習万端のような気がするが、めるたんには勝てる気がしてきた。かつてのニコ生での共演や、3月23日に行なわれたツーマン・ライヴで見せた驚異的なボケが、ここでも期待できそうだ。

さて、筆者のイエスのCDを買うのに貢献してくれた祖母も100歳を過ぎたところで鬼籍に入った。最後に会ったのは老人ホーム。訪問理由は「金属恵比須ワンマン・ライヴの資金の融資のお願い」だった。せびったわけではない。あくまで「融資」だ。そして返済もした。少しは大人になっただろう。

そしてこの“講習”で筆者は絶対“合格”しなければ、祖母の30年前の投資も報われないだろう。とりあえず『意味も知らずにプログレを語るなかれ』を購入して予習しておくか。おばあちゃん、天から1,600円(+税)、恵んでくれないだろうか。

文=高木大地(金属恵比須)

イベント情報

夏を制するものはプログレを制する!
円堂都司昭『意味も知らずにプログレを語るなかれ』刊行記念
〜絶対合格!キスエクと学ぶ「夏のプログレッシブロック強化講座」〜

 

■日時:2019年7月31日(水)開場:19:00/開演:19:30
■会場:高円寺パンディット​
■料金:前売¥2,000/当日¥2,500(いずれも税込・要1オーダー¥500以上)
■出演:
円堂都司昭(ライター/文芸評論家)
■ゲスト:
楠芽瑠(xoxo(Kiss&Hug) EXTREME)
一色萌(xoxo(Kiss&Hug) EXTREME)
高木大地(金属恵比須)
■進行:
成松哲(フリーライター)
■公式サイト:http://pundit.jp/events/4229/

書籍情報

「意味も知らずにプログレを語るなかれ」
(Guitar magazine) 単行本
著者:円堂都司昭

 
収録予定曲(全24曲)
◎ピンク・フロイド

「Arnold Layne」
「Eclipse」
「Wish You Were Here」
「Another Brick In The Wall Part II)」
◎キング・クリムゾン 
「21st Century Schizoid Man」
「Epitaph」
「The Letters」
「Starless」
「Elephant Talk」
◎イエス
「Roundabout」
「Close To The Edge」
「Soon (from “The Gates of Delirium")」
◎ジェネシス
「The Musical Box」
「Watchers Of The Skies」
「Cuckoo Cocoon」
「Land Of Confusion」
◎エマーソン、レイク&パーマー
「Promenade 2」
「Battlefield」
「Karn Evil 9-First Impression Part 2」
◎U.K.
「In The Dead Of Night」
◎エイジア
「Heat Of The Moment」
◎ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター
「Killer」
◎ジェスロ・タル
「Thick As A Brick」
◎ザ・ムーディー・ブルース
「The Night-Nights In White Satin」

ライブ情報

「スターレス髙嶋presents 金属恵比須 LIVE&TALK」
 

■会場:中目黒楽屋
■日時:2019年8月12日(月・祝)OPEN 17:30 / START 18:30
■料金:前売3,500円/当日4,000円
■チケット発売中 http://rakuya.asia/home.shtml
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