真矢ミキが『正しいオトナたち』で5年ぶりの舞台に挑む 出演を決めた理由、意気込みをきく

インタビュー
舞台
2019.10.17
真矢ミキ

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4年以上にわたって「ビビット」MCを務め、朝の顔としてもおなじみになった真矢ミキが、『正しいオトナたち』で久々舞台に立つ。日本でもその作品がたびたび上演されているフランスの女性劇作家ヤスミナ・レザが手がけた4人芝居で、ロマン・ポランスキー監督の手により映画化もされている(邦題『おとなのけんか』)。本作は子供同士のけんかをきっかけに、二組の夫婦が真実の顔を露わにしていくスリリングなセリフ劇だ。真矢に意気込みを直撃した。

ーー5年ぶりの舞台となります。

朝の情報番組に出演するようになって4年半近く経つんですが、その出演を決めたときに、あ、演劇から離れる、と思ったんです。そして、4年半走らせてもらってきた間に、芝居をやりたいなとますます思うようになったんです。というのも、物事を見るにあたって、正面からだけではなく、裏からだったり、側面からだったり、さまざまな角度から見ることができるようになってきたので。それだからこそ、ストレートプレイをやりたいと思ったんです。もう一回、舞台という場で、しっかり芝居というものを作りあげたいなと。他の方がどうやって作っていらっしゃるかが見えるのも舞台の楽しさだと思うし、そこからまた自分も何かを感じ取って変わっていったりする。今、本当にお芝居が楽しいんです。楽しいとできるはまだ別だったりするんですが(笑)。今回、少人数の芝居というのも魅力的です。

真矢ミキ

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ーー『ART』をはじめ、『大人のけんかが終わるまで』など、ヤスミナ・レザ作品は日本でもたびたび上演されてきています。今回、二組の夫婦が言い争ううちにそれぞれの本性が見えてきたりする、なかなかエグいところもあったりする作品ですが、どんなところに惹かれましたか。

ちょっとシュールだったりしますよね。一番人間が目をふさぎたくなるような部分が如実に描き出されていて、刺激的だなと。全然きれいごとを言わせない感じも好きだなって。冒頭のト書きに、「リアリズムなし。無駄なエレメントなし」と書かれているところも、すごいな、おもしろいなと思いました。

日々、生かされている中で、思ってもみないような一日になってしまうことが多いなってよくよく思うんです。自分ですごく心を整えて、熟睡もでき、食事もいい感じででき、ご機嫌でドアを開けたって、そこに車が通りかかって水ハネが上がったり、いつも挨拶してくれる人が挨拶してくれないとか、負のスパイラルをたぐりよせてしまったのか、というような一日がある。この作品も、悲劇か喜劇か、よくわからない。でも、何だか、人生ってそういうことだよねと思わされるものがあって……。去年母が亡くなったんですが、そのとき、喜劇みたいなことがいっぱい起こったんです。泣いたり笑ったり、激しくて。お通夜なんて思い出話に花が咲いて、途中、何で集まったのか忘れてしまったりとか。でも、そういう時間が、人間らしい、愛おしい時間なんだろうなって思ったり。このお芝居をやりたいなと思ったのは、つかみどころのないところ、そして、人間特有のいやらしさやかわいげや純粋性がぐちゃぐちゃになって浮かんでは消えていく感覚に惹かれたからなんです。

真矢ミキ

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それと、自分自身、「オトナ」という言葉に縛られて、全然現実的に生きていないなということもすごく感じているし(笑)。何だか虚構のようなものをしっかり作っている自分がいるんですよね。昔は家に帰ったら表にいるときとの差ってもっとあったんですけど、最近は家でも虚構を生きているような感覚というか。いったいどこが「自分」なのか、どこまでが「自分」なのか、それがわからない、そこがおもしろいなと感じていたりして……。

ーーご自分をどこか常に演じているということですか?

いえ、こうありたいと思う自分にだんだん近づいてきたんでしょうね。でも、それが本音かと言ったら、どうでしょうという。このお芝居のように、その本音のフタがポコっと外れたとき、自分でも驚くような自分が生まれたり、自己嫌悪に陥るような、封印していた自分が現れたりするのかなって。「ビビット」をやらせてもらっていて、自分の欠落したところにすごく気づいたりもしたんです。同じ物事を見ていても、それぞれの考え方が違う、毎朝毎コーナー、すべてについてそれが起こっていくので、番組の二時間ずっと自問自答しているんですよ。このお芝居でも、大人だから、自分を隠すことも上手で、そこを利点に見せる話術もついていたりして、でもそれが悪い方向に行ってしまったときにこうなってしまうという、その様が滑稽だったりする。登場人物のそういうところが非常に自分に似ていたりするから、いざ舞台で演じたときに、それを心地いいと思うのか、あまりにも自分過ぎて嫌になってしまうのか、わからないんですが(笑)。

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ーー今回演じるヴェロニックという役柄についてはいかがですか。

彼女はアフリカの歴史に興味を持っている……人類の起源はアフリカにあるので、ということは、それは人間の始まりが知りたいわけですよね。それなのに、自分自身がわからないという人(笑)。順番をはき違えているのに本人そうは思っていないところが愛おしいなと思います。知性や知識が自分の未来につながる階段になると考えている人なんじゃないかなと。でも、その知識が現実に活かされていなかったら、あなたっていったい何者なの? という感じで、そこが愛おしいというか。完璧主義というか、正しく生きたいと思っている人ほど、剥き出しの現実を見つめることが苦手で、知識とかいろいろなものを引用してすりかえてしまうところがある。台本を読んでいると、自分として落ち込んでくるんですよ(笑)。自分でも、本や新聞を読んでいると落ち着くところがある。でも、その内容をどれだけ咀嚼できているのかというと、う~んという。この作品のテーマとしているところが、自分の人生と割と似ているなと思うんです。「正しいって何?」という。若いころなんかはあえて正しくない方に行きたい、個性的に生きたいと思って、常に模索して生きてきたので。自分の不器用な生き方って愛おしいな、納得できていないところが謙虚でかわいいじゃないかって思っていたりもする。でも、謙虚という言葉にも両面があって、立場によっては、謙虚よりも自信で統率してほしいというところもあるだろうし。この人ってここを守りたくてこう生きてきたんだというところが、シーンごとに浮かぶといいなと思いますよね。

ーー二組の夫婦が言い合ううち、それぞれの夫婦関係が垣間見えてくるのもおもしろいところです。

二組、全然違う形の夫婦なんですが、お互いまったく他人様なんだなと思いますよね(笑)。剥き出しの心もみんなそれぞれまったく違った個性があって、その心のまま生きられたら本当はいいのに、でも、共存しにくいんだろうなとか。ヴェロニックとミシェルの夫婦は、クラシックというか、過去から学ぶのが好きなタイプ。そこに、全然違うタイプの夫婦がやってくる。とにかく難しい芝居だと思うんです。でも、四人で作り上げていって、目指すべき方向性が見えてきたとき、想像を超えるような舞台ができあがってくるんじゃないかなと思いますね。

真矢ミキ

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ーー今回、岡本健一さん、中嶋朋子さん、近藤芳正さんが出演、演出は上村聡史さんが手がけられます。

楽しみでわくわくします。自分でも、舞台を観に行こうと思ったとき、この方々のお名前があったら絶対行くという方々ですから。お三方それぞれの舞台を観たことがありますし、上村さんの舞台も、表現しすぎないところが想像力をかきたてられて、いいなって。

ーー真矢さんというと、本番の舞台に非常に強いイメージがありますが、生の情報番組を長らく務められてきて、そのあたり、ますます磨きがかかったり?

番組を続けてきて、瞬発力はつきました。でも、瞬発力があっても、ある程度の土台、自信がないことについては、如実にわかってしまいますし。私、割と自信をもちにくいタイプなんですけど、究極に追いつめられたときの腹のくくり方ってめちゃめちゃいいんですよ。そういうとき、意外な力を発揮したりするから、今回もそこに至ることができたらいいなと思っています。そのためには、あるがままの自分を認めるというか、自分に足りない部分にいかに気づけるかということでしょうね。それと、台本をどれだけ読み込めるか。

ーーお稽古に入る前に、すでに台本がボロボロですね。

読んでいるとおもしろくて。ヴェロニックの人格を作っているものがこのセリフに入っているよねというところを見つけられたとき、自分でもすごくうれしいんです。もちろん、台本を読む力の上に、形にする力、人の前で演じる上での爆発力が要りますけれども。他のお三方がすばらしい方々なので、ちょっと自分ひるむなというところはあるんですが(笑)、これまで、役者として、いっぱい恥はかいてきましたから。

真矢ミキ

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ワンピース ¥36,600(税抜)
TCN / TCNジャパン 03-6427-9010

取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=荒川 潤

公演情報

『正しいオトナたち』
 
■作:ヤスミナ・レザ
■翻訳:岩切正一郎
■演出:上村聡史
 
■キャスト
ヴェロニック:真矢ミキ
アラン:岡本健一
アネット:中嶋朋子
ミシェル:近藤芳正

■公演日程・会場
<東京先行公演>
2019年11月28日(木)・29日(金)IMAホール
料金:9,000円 ※全席指定・税込・未就学児童入場不可
主催:テレビ朝日、インプレッション
お問い合わせ:Mitt 03-6265-3201(平日12:00-17:00)

<名古屋公演>
2019年12月4日(水)日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
料金:9,800円 ※全席指定・税込・未就学児童入場不可
主催:メ~テレ、メ~テレ事業
お問い合わせ:メ~テレ事業 052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
 
<兵庫公演>
2019年12月7日(土)・8日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
料金:8,500円 ※全席指定・税込・未就学児童入場不可
主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
お問い合わせ:芸術文化センターオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00月曜休/祝日の場合翌日)

<東京公演>
2019年12月13日(金)~24日(火)東京グローブ座
料金:S席:9,500円 A席:7,500円 ※全席指定・税込・未就学児童入場不可
主催:テレビ朝日、インプレッション
お問い合わせ:Mitt 03-6265-3201(平日12:00-17:00)
 
<e+半館貸切公演>【手数料0円】
日程:2019年12月14日(土) 開演 17:30~ (開場 17:00~)
会場:東京グローブ座 (東京都)
申し込みは【こちら
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