草刈民代×高嶋政宏、スピード感あふれるバトルを見せる会話劇『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』が開幕

レポート
舞台
2019.10.5
『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

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2019年10月4日(金)より東京芸術劇場シアターウエストで、草刈民代と高嶋政宏の二人芝居『プルガトリオ-あなたと私のいる部屋-』が開幕した。ギリシャ悲劇の『王女メディア』と、ジャン=ポール・サルトルの『出口なし』をモチーフとした今作は、『死と乙女』『谷間の女たち』などで世界的に有名なチリの劇作家アリエル・ドーフマンによる戯曲を、映画監督の周防正行が脚色、イギリスのアーツ・カウンシル・ロンドンの総監督を10年務め、さらに英国王立演劇アカデミーの校長を15年務めた英国演劇界の重鎮、ニコラス・バーターが演出を務めている。この舞台の初日に先立ち、囲み取材と公開ゲネプロが行われた。

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』写真左から周防正行、草刈民代、髙嶋政宏

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』写真左から周防正行、草刈民代、髙嶋政宏

囲み取材には、草刈、髙嶋、周防が登壇した。

初日当日となった現在の心境を聞かれると、草刈は「2年くらいかけてこの公演の準備をしてきたので、やっと幕が上がるなという思い。稽古のときから共に真剣に取り組んでくれた髙嶋さんに感謝している」、周防は「2年間彼女が準備している姿を見てきた。まさか『Shall we ダンス?』で一緒に仕事をしてから、二十数年経ってこうして一緒に舞台を創るとは思わなかった」と、この作品と向き合ってきた時間を振り返り、それぞれ感慨深げな表情を浮かべた。

相手役に髙嶋をキャスティングした理由について草刈が「夫・周防の監督作品『舞妓はレディ』で共演して、仕事への取り組み方が素晴らしいと思ったのと、一昨年彼が出演している舞台を見たら素晴らしかったのでぜひ一緒にやりたいと思った」と述べると、髙嶋は「お話しをいただいたときはびっくりしたが、本当に光栄だと思った」と笑顔を見せた。

英語版の戯曲を日本語に翻訳・脚色した今回の上演台本について尋ねられると、周防は「舞台上できちんとした日本語の話し言葉になっているように、とにかくセリフを生きたものにする、というのがテーマだった」、草刈は「私と周防で台本の土台を作ったが、稽古をする中でバーター先生からいろいろと指摘される部分が出て来たので、稽古をしながら言葉を変えていって今日に至る、という感じだった」と答えた。

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』写真左から周防正行、草刈民代、髙嶋政宏

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』写真左から周防正行、草刈民代、髙嶋政宏

今作の見どころを聞かれると、草刈は「スピード感。それと、作家がチリ出身ということでラテン系のパッションがある戯曲なので、2人のバトルが濃密で激しい」、髙嶋は「草刈さんの“王女メディア”感。彼女を阿修羅のような女になるまで追い込んでしまったイアソンの罪を痛烈に感じる」とそれぞれ答えた。

今作のプロデューサーでもある草刈は、プロデューサーとしての仕事と俳優としての仕事ではどちらが大変だったか、という質問に対し「芝居をするのは、やっぱり一番大変。バーター先生が非常にストイックなので、求められるレベルも高かった」とその心情を吐露した。髙嶋も「例えば「もう少し早くセリフを言って」と一言で済むところも、それだと段取りになってしまうから、どうして早くセリフを言うのか、ということをものすごく丁寧に説明された」と演出の様子を明かした。

最後に舞台に向けてのメッセージを求められると、草刈は「スピード感とユーモアと激しさのある作品で、このお芝居を通して、私も髙嶋さんもあまり今まで見せたことのない顔をお見せできると思いますのでぜひご覧ください」、髙嶋は「皆さんには、この作品の日本初演の証人になってもらいたいです。上演時間が1時間半切るので、あなたの一時間半弱をください」、周防は「演劇にはなじみのない方にも、芝居というのはこんなに濃密な空間を作り出すんだ、ということを体験してもらえたらいいな、と思います」とそれぞれ語り、囲み取材は終了した。

続いて、ゲネプロが行われた。

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

簡素な白い部屋を舞台に、白衣の男(髙嶋)が女(草刈)に対して、尋問のようなカウンセリングのような問いかけをしている。時にユーモアを交えながら、しかし女の心を激しく揺さぶる駆け引きから、徐々に女の本音が浮かび上がる……。

場面が変わると、今度は白衣の女(草刈)が男(髙嶋)に問いかける。男と女の立場が入れ替わっているが、先ほどの2人と同一人物なのか? 今度は男が揺さぶられ、追い詰められていく……。

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

内容は確かに濃密だが、草刈と髙嶋のセリフの応酬はテンポよく進み、舞台上に流れる空気はむしろ軽やかだと言えるだろう。「プルガトリオ」とは「煉獄」という意味だが、現代化された煉獄で出会う2人からも、どこか現代的なドライさが感じられる。

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

しかし、物語が後半に進むにつれ、その軽やかさやドライさもすべて計算された演出であることが見えてくる。この作品に強い現代性を加味することで、2人の登場人物は観客にとってそう遠くない人間、ともすれば自分自身だと思えるくらいの距離まで近づいてくる。自分とは関係のない、遠い誰かの話ではなく、身近な物語だと感じさせることで、その2人が紡ぐ怒涛のような後半の会話に観客は逃げる間もなく飲み込まれてしまう。すべてはぎ取られ、裸の心情をさらけ出す2人を、草刈と髙嶋がそれぞれ迫真の演技で見せることで見る者の心に肉薄し、ますますその展開から目を離すことができなくなる。

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

『プルガトリオ―あなたと私がいる部屋―』ゲネプロ

2人の男女がたどり着くのはどこなのか。それとも2人はどこにもたどり着けないのか。ラストシーンに何を見るかは、観客一人一人の心の内にかかっているのかもしれない。

取材・文・撮影=久田絢子

公演情報

舞台『プルガトリオーあなたと私がいる部屋ー』

【原作】アリエル・ドーフマン 
【演出】ニコラス・バーター 
【脚色】周防正行
【出演】草刈民代、髙嶋政宏
 
【日程】2019年10月4日(金)~10月14日(月・祝) ※全15回
【会場】東京芸術劇場 シアターウエスト
【チケット】前売・当日 全席指定 \9,000(税込)
一般発売:2019年7月20日(土) 10:00~ 各プレイガイドならびに東京芸術劇場ボックスオフィスにて
 
【主催・製作】スオズ
【協力】オスカープロモーション
【制作】インプレッション
【お問い合わせ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00~18:00)
 
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