若手俳優ユニット・SUNPLUSが男子校の寮を舞台に本格的な会話劇に挑む~第1回公演『SUMMER BAZAAR』稽古場レポート
左から 佐奈宏紀、谷水力、井澤巧麻、平野宏周、丸山隼
2019 年10月18日(金)~10月27日(日)新宿村 LIVEにおいて、SUNPLUS 第1回公演『SUMMER BAZAAR~夏の終わり~』が上演される。稽古が始まって1週間経ったある日、都内の稽古場を見学することができた。その模様をレポートする。
SUNPLUSは2015年に結成されたサンミュージックに所属する若手男性俳優で構成されるユニット。これまで個性豊かなメンバーがさまざまな活動をしてきたが、今回初めてメンバー11人だけで作り上げるオリジナル脚本の会話劇に挑む。脚本は映画、テレビ、舞台で数多くの脚本を手掛けてきた宮本武史、演出は黒色綺譚カナリア派を主宰し、演出家、役者として活躍する赤澤ムックが担当している。
本作は海沿いの全寮制男子高校を舞台に、夏休みの4日間が描かれる。入寮生が実家に帰省する中、寮に居残った生徒たちは寮の伝統行事「サマー・バザー」に駆り出されることになる。サマー・バザーの準備を進めながら生徒同士がさまざまなやり取りをする中、それぞれが抱える問題や帰省しない理由が次第に見えてきて……寮の談話室だけで繰り広げられる会話劇の中で、現代社会が抱えるさまざまな問題が浮き彫りになり、少しほろ苦い感覚がありながらも、心温まるストーリーが展開されていく。
ストーリーの軸となるのは、見た目が少し軽い秋吉風太役の井澤巧麻、最初は寮生たちと距離を置きつつも、少しずつ輪に入ってくる脇坂淳之介役の佐伯亮、カッコよく女子にモテる堀尊役の佐奈宏紀、掃除や料理をマメにする小山内正人役の谷水力、自宅が近いのになぜか通いで寮に来るお調子者、宮野優平役の山形匠の5人。そこに、高校の教師と彼らの兄弟や従兄などが絡み合っていく。
左から 佐奈宏紀、佐伯亮、谷水力、井澤巧麻
左から 山形匠、谷水力
この日は冒頭場面から順番に稽古が行われていった。寮の談話室をイメージしたセットが置かれている中、その中で出演者たちがどう動けばいいのか、動線を確認しながら慎重に稽古が進んでいく。談話室のみで繰り広げられる会話劇ということもあり、出演者同士の距離をどのくらい取るか、せりふの言い方や間の取り方、舞台上に登場する時のタイミングなど、赤澤は1場ごとに区切って丁寧に指導していく。
左から 平野宏周、佐伯亮
時には出演者が手にする小道具一つひとつに対して、どこに置くかなどの細かい指示が飛ぶ。取っ組み合いのけんかをするシーンでは、思わず本気の力が入り、出演者が吹っ飛んでしまう場面も。その際セットにぶつかることを避けるために、前のシーンでセットをどう動かすか、入念にチェックをしていた。出演者たちは赤澤の指導を熱心に聞き、時には自身の役作りへの想いを語り、ディスカッションする場面も。初の本格的な芝居に挑む熱い気持ちが稽古場に充満していたように感じる。
手前:水田達貴、奥左から谷水力、井澤巧麻
登場人物それぞれが抱える問題は重いものがある。特に小山内正人と、蒼木陣が演じる兄・小山内渉の関係が描かれるシーンは心にずしんとくるのだが、それでも舞台全体の雰囲気は、いたって明るいと感じた。それはきっと舞台を引っ張っていく5人の会話が、男子高校生の集まりでイメージするような和気あいあいとした雰囲気そのものだからだろう。男子校出身の人ならば「そういうこと、あるある!」と感じる場面も多々あるだろうし、縁のない人でも「きっとそんな感じだよね」と思わず笑ってしまうだろう。秋吉風太のギターで5人が校歌を熱唱する場面は盛り上がるだろうし、「霊にとりつかれやすい」という宮野優平が、霊を降臨させるシーンは爆笑すること間違いなしだ。
左から 蒼木陣、谷水力
今回の稽古場見学でも、「ここはこういう風に変えよう」「こっちのほうがいいね」といろいろなパターンを試すシーンが数多く見られた。10月18日(金)の初日まであと約1週間。さらに熟成された舞台になるだろう。期待は高まるばかりだ。
取材・文:秋乃麻桔 撮影:梁瀬玉実