『中津川ソーラー』を今年も遊び尽くしたライターの体験記 メディア初潜入の“夜のアレ”も…

レポート
音楽
2019.10.22

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中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2019  2019.9.28-29  中津川公園内特設ステージ

仕事柄、いろんなフェスに出没している。羨ましいとか、楽しそうとか言われることは多々あるが、実際に楽しい。恵まれた仕事をしているなぁとも思っている。ただ、その全てが「プライベートでも絶対参加するぜ」というくらい僕を魅了するかといえば、正直なところ答えはノーだ。それは断じてフェス文化そのものや個々のフェスを否定しているわけではなく、対象年齢とか対象属性、肌に合う/合わないってあるよね、という話。

四十路も視野に入ってきた腰痛持ちからすると、モッシュ&モッシュ&ダイブ!みたいなノリはしんどいし(たまにその渦中にいる諸兄・諸姉には敬服する)、各地のフェスに引っ張りだこの面々を集めました!というような大規模フェスであればあるほど、我々の仕事的には1年に何度も同じような組み合わせのフェスを観ることになるので、ありがたみが薄れてしまう、というケースもある。それに何より、現在のフェス文化で大きなウェイトを占めているであろう、“連帯感や感動を共有する”という楽しみ方が、実のところ得意ではない。思い返せば学生時代から、文化祭とかには前のめりで参加しておいたほうが絶対に女子にモテるのに、内心モテることしか考えていないのに、斜に構えて「めんどくせえ」とか言ってサボっては、バンドとバイトばかりに精を出していたタイプだ、僕は。だから、ロックの概念と連帯感、あるいは青春っぽいノリとがどうしても結びつかない。

天候に恵まれ、今年もシンボルの気球が空を舞った

天候に恵まれ、今年もシンボルの気球が空を舞った

何が言いたいかというと、そういう面倒臭い奴も、もっとシンプルに自分の好きなアーティストを観たいからという人も、とにかく暴れたいんだという人も、一日中キャンピングチェアでダラダラしてやろうという人も、それぞれのスタイルで楽しめるフェス、それが許される雰囲気があるフェスが、一番好きだなぁということ。幸いなことに、僕は毎年そんなフェスに参加できている。で、毎回「どう楽しんだか」だけにフォーカスした謎のレポートを書いている。これはその原稿。『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2019』、今年も行ってきました。

記念に似顔絵を描いてもらったり

記念に似顔絵を描いてもらったり

超デカいお姉さんと撮影したりもできる

超デカいお姉さんと撮影したりもできる

まず、あまりにも奇跡みたいで信じられないんだけれど、でも毎度のことだから当然な気もするし、スタッフたちも半ば呆れた、みたいに「そうなりますよね」みたいな感じだったので先に言っておくと、今年も晴れました。リュックを圧迫していた雨具も長靴も、一度も使いませんでした。数日前までは土日とも降水確率80%とかで、前日になっても雨マークは残っていたのに、2日通して雨粒が落ちてくることはほぼなし。台風シーズン真っ盛りのこの時期に7年連続で無事開催できているのは、単にオーガナイザー・佐藤タイジが晴れ男だとかいう次元では説明がつかない。なにか人知を超えた力に守られているか、タイジがギターソロを弾くときに踏む足元のスイッチが実は気圧をあげる装置か何かか、そのどちらかだろう。(この原稿を書き上げたタイミングで、同プロジェクトの阿波国ソーラーが台風により中止となってしまったが、中津川においては記録継続中なので、記述を残しました)

パワーアップしていた、栗きんとん茶屋の横のオブジェ風イートインスペース

パワーアップしていた、栗きんとん茶屋の横のオブジェ風イートインスペース

過去最多と思われる家族連れの多さが印象的

過去最多と思われる家族連れの多さが印象的

ここからは、例によってライブの中身については他サイトに譲り、今年の中津川ソーラーで起きたこと、感じたことを書いていく。僕は昨年に続いて開催された前夜祭から参加した。雨天だった昨年と比べると前乗りで設営されたテントの数も多く、前夜祭のみの参加も¥1,000で可能だったことから、観客の数は目に見えて増えており、ステージにも装飾をあしらった天幕やキャンドルアートの装飾が施されるなど、見た目の雰囲気もグッと良くなった。お客さんも前のめりで楽しもうという意識が強かったようで、始まるやいなやステージ前を埋め尽くすと、そのまま佐藤タイジの開会宣言、金 佑龍から子供SKY WALKER(S)(それぞれのソロも)、TOSHI-LOWのライブというプログラム全体を通して、終始至る所で歓声が上がったり踊っていたり。お酒も良い感じに入って、翌日からの本番へ向けたウォーミングアップと呼ぶにはもったいないくらいの盛り上がりとなった。あと、詳しく書けない方向にTOSHI-LOWが絶口調。めちゃくちゃ良いこと言っていて、個人的には突き刺さったんだけど、決して書けないやつ。あれはこのフェスとその観客への信頼ゆえだなぁ。

パパ・ママ世代には堪らない、宮田和弥が直々に指導する体験コーナーも

パパ・ママ世代には堪らない、宮田和弥が直々に指導する体験コーナーも

多くのキッズを魅了する、ボールを流す遊具。なお、別のところには自身が流れる巨大滑り台もあり。

多くのキッズを魅了する、ボールを流す遊具。なお、別のところには自身が流れる巨大滑り台もあり。

子どもよりむしろお母さん方が熱中していたバランスボールのエクササイズ

子どもよりむしろお母さん方が熱中していたバランスボールのエクササイズ

一夜明けて初日。まずは観たものから。

OAU → シアターブルック → ヤバイTシャツ屋さん → DJ EYE → NakamuraEmi → 和田唱 → HEY-SMITH → フルカワユタカ → Dragon Ash → No Party For Cao Dong → ROCKIN’ QUARTET 中津川 SPECIAL


OAU 撮影=三浦麻旅子

OAU 撮影=三浦麻旅子

最大のRevolutionステージがシアターブルックで始まるというのは去年からのパターンで、このフェスに参加する以上は観ておきたいところだが、朝イチにOAUというのも捨て難い。ということで、半々で観ることに。大地と共鳴するようなパーカッションや涼風のようなバイオリンが空に放たれていく様子を、山際の斜面に据えられたRESPECTステージに腰を下ろして朝から堪能するのはなんとも贅沢。この日のうちに石垣島に移動するという強行スケジュールゆえの朝イチ登場だったが、普段のフェスでは夕方から夜にかけて観ることが多い(それも最高)バンドだけに、レアな体験ができた。そういえば昨夜最後に観たのもTOSHI-LOWだったので、日をまたいでTOSHI-LOWを2連発で観たということにもなる。時間のせいか環境のせいか、前夜よりも発言内容はマイルドだった。

シアターブルック / 金子マリ 撮影=高橋良平

シアターブルック / 金子マリ 撮影=高橋良平

ヤバイTシャツ屋さん 撮影=上山陽介

ヤバイTシャツ屋さん 撮影=上山陽介

シアターブルックに移動した途端に陽光が差してきたRevolutionステージ。ゲストの金子マリ登場などもあって大いに沸き、続くヤバTでは完全に沸騰状態に。どこのフェスでも問答無用で盛り上げ倒してしまう切り込み隊長ぶりはとてつもなく、いわゆるフェスキッズだけでなく家族連れも大人層も多い中津川ソーラーだが、むしろそういう環境で輝きを増しているようにも見えるのだから、彼らの音楽とライブの間口の広さはすごい。その後、しばし場内をウロウロとまわり、過去最高に家族連れで賑わう“こどもソーラーブドウカン”で宮田和弥の音楽教室を見たり、おビールを嗜んだりしているうちに気持ちよくなってきたので、会場の最上部にあるRESILIENCEステージまでDJプレイを観に行った。そうしたら、まだ日の高いうちから僕よりもだいぶ気持ちよくなっていそうな人、ヲタ芸ばりにノリまくっている人、近くのチェアで爆睡している人など、なかなかディープなスポットがそこにはあった。本当、いたるところで各々が勝手に楽しんでるところに、このフェスの魅力が表れている。

「映え」対策も万全

「映え」対策も万全

ところどころでやっている大道芸も盛況!

ところどころでやっている大道芸も盛況!

夕刻の美しさも『中津川ソーラー』の魅力です

夕刻の美しさも『中津川ソーラー』の魅力です

夕方、再びRevolutionに戻って観た、HEY-SMITH。去年の初登場時には、毒舌な猪狩秀平(Gt/Vo)がこのフェスを素直に褒めちぎっていたが、今年も前半のMCで早くも、老若男女が自由に思い思いに過ごしているこの環境を絶賛。数々のフェスに出演し、自分たちでもフェスを主催するヘイスミだけに、ここに充ちた空気から感じ取ることも多いのだろう。それは、昨年は大トリを務めたDragon Ashも同様。これまでと同様に、Kj(Vo)はこのフェスの意志に賛同する旨を率直に伝え、今年はさらにサポートベーシストのT$UYO$Iとともに、出演の叶わなかったThe BONEZの意志をも刻み付けていった。そして僕がこの日の締めにチョイスしたのは、ROCKIN’ QUARTET 中津川 SPECIAL。縁あって、このシリーズの初回から全て観ており、レポートも書いている身としてはこれは外せない。そして、初回から全て観ているにも関わらず、完璧にヤラれた。日が落ちて涼しくなったRESPECT。地形上、音が飛散にくい環境も天然の演出効果となり、弦楽の響きと普段とは一味違うニュアンスで歌われる名曲たちが、きっと初見の人も多いであろう中で、優美かつ鮮やかな印象を与えてくれた。

HEY-SMITH 撮影=上山陽介

HEY-SMITH 撮影=上山陽介

Dragon Ash 撮影=上山陽介

Dragon Ash 撮影=上山陽介

ROCKIN' QUARTET 中津川 SPECIAL 撮影=古川喜隆

ROCKIN' QUARTET 中津川 SPECIAL 撮影=古川喜隆

その後いろいろあって、翌日。その「いろいろ」の部分こそ今回の肝というか、マニフェストみたいな要素なので、あとで書きますね。

2日目は、

Nothing’s Carved In Stone → go!go!vanillas → THE BACK HORN → Yogee New Waves → ストレイテナー → majiko → 真心ブラザーズ → サンボマスター → GRAPEVINE → ACIDMAN


という流れ。

2日目はもはや快晴

2日目はもはや快晴

まず、武藤昭平 with ウエノコウジ×Friendsによる開会式に間に合うつもりが、前夜のダメージもあって不覚を取った。と思ったら、彼らは朝4:00まで飲んだあとオンステージしたそうで、己の不甲斐なさを知る。まだまだロックが足りない。というわけで1本目のNCIS、もはや常連の彼らは初のRevolutionステージを悠々と乗りこなしていた。硬派な骨っぽさと複雑怪奇なフレーズとグルーヴが、なんだかポップなところに着地するというミラクルがここ最近より顕著で、当然、大盛り上がりに。2年連続のバニラズは、長谷川プリティ敬祐(Ba)が不慮の事故による負傷から復帰目前ということで、3人体制でのラストライブだったが、攻めのセトリで疾走。もし来年3年連続の出演となれば、万全の4ピースがさらなる光景を見せてくれるにちがいない。

Nothing’s Carved In Stone 撮影=上山陽介

Nothing’s Carved In Stone 撮影=上山陽介

go!go!vanillas 撮影=柴田恵理

go!go!vanillas 撮影=柴田恵理

ストレイテナー 撮影=上山陽介

ストレイテナー 撮影=上山陽介

ちょっと違う意味でセトリが攻めていたのはテナー。年間、数多くのフェスに出ている中で、ある程度の骨格は定めつつもそのフェスのカラーや当人たちの気分(?)で色々な楽曲を用意してくれる彼らだが、オーディエンスとの相性もバッチリな中津川仕様か、「Tornado Surfer」「クラッシュ」といったワンマンでも珍しいチョイスをしてくれて、全俺が歓喜した。今年からREASSUREステージと名がついた、フードコーナー奥のステージで観たのはmajiko。自身の歌と木下哲のアコギのみという潔い編成がかえって彼女の歌力を知らしめることとなり、彼女目当ての客だけでなくたまたまご飯を食べに来た人まで根こそぎ魅了していく。アッパーな曲はほとんどないのに皆じっくりと聴き入っているのは、このフェスの多様性と、それを楽しもうとする観客たちによるところも大きい。

majiko 撮影=高橋良平

majiko 撮影=高橋良平

サンボマスター 撮影=上山陽介

サンボマスター 撮影=上山陽介

ここ中津川が日本で初の野外フェス『全日本フォークジャンボリー』が開催された聖地であることにも触れながら、熱いどころではない檄を飛ばして満員のRevolutionを揺るがし、魂と涙腺をガンガン揺さぶってくれたのはサンボマスター。そんな彼らに続いて登場し、今年の大トリを務めたのはACIDMANだ。いやいや、このタイムテーブル、完璧じゃないか。大木伸夫(Vo/Gt)は常日頃から、宇宙や死後の世界について語っているが、それはオカルト的なことを伝えたいわけではない。何十億年という時の中で、たまたま現代に生まれせいぜい80年そこそこの人生を送る一人一人が集まって、この2日間、晴天のもと好きな音楽が鳴る中でそれぞれが楽しんだ、その事実が既に奇跡的な瞬間なんだ。すっかり陽が落ちた会場で彼の歌と言葉に触れているとそんな感慨が胸に去来する。「僕らがすごいんじゃない、佐藤タイジがすごいんじゃない、来てくれたみなさんのおかげだと思います」という最大級の賛辞と祝福とともに鳴らされたライブが、今年の中津川ソーラーを締めくくった。

ACIDMAN 撮影=上山陽介

ACIDMAN 撮影=上山陽介

と、例年ならばこれで綺麗にレポートを終えるところだが、昨年の記事を読んだ数名の方(関係者もそうでない方も)から、「結局、行かなかったんか」「ビビったんか」とお叱りを受けた事案があるわけですね、私。初参加の年からその存在が気になり続け、毎回レポートで言及するも、いまだ足を踏み入れていなかった中津川ソーラーの性地……じゃなかった。聖地。深夜にオープンするエリア・Village Of Illusionの奥に鎮座する蠱惑的なスポットの名は、「スナックよしこ」だ。

まずはエナジー注入

まずはエナジー注入

1日目のライブを見終えたあと、そそくさと運営本部へ。無論、道連れもとい同行者を募るためである。過去によしこ入店を断念したのは、常に混んでいるからというのもあるが、単独行だったから、というのは大きい。普段から一人居酒屋も尻込みするタイプの僕である。仕事を終えたスタッフなど“常連”も多く、あまりにもディープな雰囲気を醸し出すその店を一人で順番待ちをして、一人で入店したところできっちり楽しめるわけがない。そんな心情を察してか、同行者まで募ってくれる中津川スタッフのホスピタリティたるや。きっとこういう心遣いは出演アーティストに対しても存分に発揮されていることだろう。愛されるわけである。ということで無事2人のスタッフさんに連れられ、意気揚々とその地へ向かったのだった。

力尽きた人横たわる脇でみな飲んだり踊ったりする魔境

力尽きた人横たわる脇でみな飲んだり踊ったりする魔境

同行いただいたスタッフさん(ご家庭で気まずくなっても困るのでAさん、Bさんとしておく)とまずは“普通の”バーで乾杯し、よしこの様子を見に行くも、満席。しばらく周辺をウロウロしてみると、「ぼったくり温泉」と書いてある店の前でBさんが消えた。しばらくするとなぜかその店のカウンターの内側に現れたBさん、なぜか上半身がガッツリはだけているではないか。これはいけない、すっかり魔境に魅入られてしまっている。まだ正気を保っているAさんとともによしこの前をウロウロし続けていると、店の脇のスペースに椅子を出していただけて、臨時のテラス席が完成。いよいよ“よしこデビュー”することとなった。ちなみに臨時席のすぐ隣のピンク色のお店はHot Catといって、詳細は伏せるが、聞くところによると中から「痛い痛い」などと声がしていたそう。一体なんなんでしょうね、見当もつきませんねえ。

メニューの中身は不明です

メニューの中身は不明です

ついに解禁! これが「よしこ」の店内だ! ピンクの照明がグッとくる

ついに解禁! これが「よしこ」の店内だ! ピンクの照明がグッとくる

さて、よしこ。ドリンクは最初の一杯がチャージ込みで1000円、以降は700円という価格設定で、外の世界(他の店)と100円位しか違わないので、結構良心的だ。メニューはビール、ハイボール、サワー、焼酎など。メニューにないお酒も存在するという噂だが、そこはあなたの目で確かめてほしい。お店の中を覗くと、客層は本当に老若男女といった感じで、中には全然フェスっぽくない、言っちゃあ悪いが街のスナックからワープしてきたようなオジサマまでいる。Aさんと2人でテラス席で2杯ほど飲んでいると、仕事を終えた地元のボランティアスタッフさんたちが次々と遊びに来たり、賑やかな雰囲気になって、超楽しい。ただ、待ってほしい。あの名物の場末感あるドアを通ったものの、ここは厳密には店の敷地外。見上げれば星空だ。これ、ただ単にワイワイ外飲みしてる状態になっていないか?

どういう経緯で撮ったかおぼろげですが、「載せていい」と言っていたはずなので載せました

どういう経緯で撮ったかおぼろげですが、「載せていい」と言っていたはずなので載せました

メニューはこちらとなっております

メニューはこちらとなっております

と思っていたら、お姉さんが席についてくれることになり、一気にスナック感が増す。話を聞いてみると、よしこのスタッフさんは皆、普段から名古屋や岐阜を中心にお店で働いている方々だそう。つまり、プロである。プロのお姉さんやオネエさんがこの日限り、フェス会場の一角でお店をやってくれているとは、なんと贅沢なことだろう。毎年参加している方も多くて、昼間は好きなライブを観て過ごしたりしているのだそうだ。結局、お店には2時間くらい滞在した。途中、運営の上層部の方や普段から親交のある某バンドのマネージャーに目撃されていたらしく、「風間さんが女の子と飲んでいた」という、字面だけ見るととても不謹慎な感じがする話がまわっていたみたいだが、まぁ楽しかったので仕方ない。れっきとした仕事だし、これ。余談だが、翌日出演した某バンドのフロントマンもVillage Of Illusionを楽しんでおられ、最終的に無事よしこデビューされました。

例年より一週遅れだった今年、木々にはほんのり秋の気配も

例年より一週遅れだった今年、木々にはほんのり秋の気配も

深夜のミッションも無事完遂。2日間ともばっちりライブを楽しんで、打ち上げまで潜り込み、ほんのり二日酔いで「特急しなの」に乗り込んで、僕の『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2019』は終わった。総括、と言うと堅苦しいが、今年見て回ったり人と話したりしていて一番感じたことは、「一人一人の中にそれぞれの『中津川ソーラー』が根付いたんだな」ということだった。オーガナイザーである佐藤タイジや運営スタッフだけじゃない。各出演アーティストやステージ周りのスタッフ、地元スタッフ、アルバイト、出店している人、我々取材陣やカメラマン、そしてもちろんお客さんも。もっと言えばホテルとの往復で乗ったタクシーの運転手さんもそうだったし、街の人もきっとそうだ。

将来有望なモヒカンボーイ(?)

将来有望なモヒカンボーイ(?)

それぞれの生活の中、人生の中に存在するようになった『中津川ソーラー』像。きっとその形や価値は人それぞれ微妙に違っているはずなのだけど、それらが1年に1度だけあの場所に結集して完成するフェス。それゆえのマジックが起こるフェス。そんな存在になってきていると思う。言い換えれば、“みんなのフェス”になった、ということかもしれない。主催側や常連アーティストの意志や思惑はとても大事だし、それが強固だからこそここまで育ってきたのは間違いないが、もはやある意味ではそこを離れ、関わるあらゆる人の中で育まれ始めたのだろうし、それだけの信頼を得たということでもある。“太陽光で音楽を鳴らす”という強烈なメッセージを有しつつも、楽しみ方やノリや思想を強要されることは一切なく、良質な音楽と自然環境、それらを思い思いに謳歌できる空気が保証されている場。昨今、国内でも海の向こうでも考えさせられることが多い、“自由”が、間違いなくここにはある。


取材・文・場内写真撮影=風間“太陽” ライブ写真撮影=各写真のクレジット参照

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