Novelbright 期待と想像の上をいく熱狂のステージ、超満員のツアー・東京公演をレポート
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「EN. -アンピリオド-」RELEASE ONEMAN TOUR 2019
2019.10.17 TSUTAYA O-Crest
TSUTAYA O-Crestは出入口の扉が閉まりきらないほどの超満員だった。それこそが、いま急激に知名度を上げているNovelbright(ノーベルブライト)の勢いと期待感を何よりも物語っていたと思う。
今年で結成6年目。大阪から活動をスタートさせたNovelbrightの人気に火が付いたのは、今年7月から8月にかけておこなった『崖っぷちどチクショー路上ライブ TOUR』と題した全国5都市の路上ライブツアーがきっかけだろう。なかでも仙台駅前のライブの動画が大きく注目されると、TwitterやTikTokで爆発的に拡散。そんなバンド史上最大の追い風のなかで開催されたのが、9月にリリースされた2枚目の全国流通盤アルバム『「EN.」』を引っさげたツアー『「EN. -アンピリオド-」RELEASE ONEMAN TOUR 2019』だ。は全5公演ソールドアウト。以下のテキストでは、想像を超える熱狂のなかで開催されたツアーから、3本目となった東京公演の模様をレポートする。
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アルバム『「EN.」』でも1曲目に収録されている「Revive」から始まった。ギター、ベース、ドラムというメンバーの演奏に合わせて、ピアノやストリングスを同期で鳴らす色鮮やかなバンドサウンドにのせて、切実な感情を孕んだ竹中雄大のハイトーンボーカルが力強くフロアに響きわたった。そこにいる全員に歌を届けたい、という想いの表れだろうか。決して目の前のお客さんから目を逸らさず、真っすぐ視線を投げかける雄大のフロントマン然とした堂々とした佇まいが印象的だ。山田海斗(Gt)と沖聡次郎(Gt)が繰り出すツインギターが疾走感を加速させた「Count on me」では、バンドサウンドがブレイクした瞬間、世界大会で二度優勝したという雄大の澄んだ口笛が美しくメロディをなぞった。圭吾(Ba)とねぎ(Dr)が繰り出す骨太なグルーヴで踊らせた「Shall we dance??」から、軽やかなハンドクラップを誘った「We are calling you」へ。序盤からアップナンバーを畳みかけ、フロアが温まってきたところで、雄大は「今日は忘れられない1日を作ってやりましょう!」と意気込みを伝えた。
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MCでは、今回のツアーを全公演ソールドアウトできたことに感謝すると、感極まったような表情を見せながらも、「涙はとっておこう(笑)」と、雄大。それもそのはず、今年の年明けのツアーでは、クレストと同規模のキャパとなる渋谷Milkywayで東京での初ワンマンをおこなったNovelbrightだが、そのときは、残念ながらソールドアウトすることができなかった。それが、いまや文字通り、溢れんばかり満員御礼だ。
中盤からは、デジタルなサウンドとファンキーなグルーヴが交錯する「フォーリン・ヴィーナス」など、最新アルバム『「EN.」』のなかでも、バンドの新機軸となった楽曲たちを織り交ぜてライブが進んだ。めくるめく転調がセンチメンタルを加速させるピアノエモ「the Eternal oath」、ステージがグリーンに染まり、混沌とした森へ足を踏み入れたような効果音とアイリッシュな調べが異国情緒を誘うインスト曲「parade -Я-」から「Rain Dancer」へ。曲のつなぎ方にも趣向を凝らしたSEや光の演出が、音楽への没入感をいっそう高めていく。
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「ここから後半戦、ストレスを吹き飛ばすくらいの歌を、あなたの心臓めがけて歌います!」という雄大の言葉を合図に、壮大でホーリーなサウンドアプローチによって暗闇から救い出すような「ヒカリへ」や、“あなた”と生きる未来の幸せに想いを馳せる「また明日」、結成当時から歌い続けている大切なナンバー「Photo album」など、立て続けに披露したバラードは圧巻だった。内省的な歌からラブソングまで、14曲ごとにまったく異なる世界観の曲たち。それを、表情豊かに歌いこなす雄大と、その歌にしっかりと寄り添うバンドサウンド。それは決して一朝一夕で身に着けたものではないと思う。注目のされ方こそ、「SNSで急激にバズッたバンド」として見られるかもしれないが、そのステージを見れば、彼らが、これまでもライブを主戦場に泥臭い活動を重ねてきたことで、ライブバンドとしての確かな実力を培ってきたことがよくわかる。
終盤のMCでは、ツアーで東京に来たときのエピソードとして、いつもレンタル車でトラブルに見舞われていた、という話で笑いを誘いつつ、「ついに車を買いました!」と報告。会場からは温かい拍手が湧き上がった。そんなお客さんに向けて、「ずっと一緒にいられるように」という願いを込めた全編英語詞の「Heart voice」、さらに、「僕らは死んでもロックバンドなので、ロックして帰ろうと思います!」と力強く宣言した「Morning Light」では、フロントに立つ聡次郎、圭吾、海斗が向き合いながら激しく体を揺り動かし、ライブはクライマックスに向けて熱狂が一気にピークへと達していった。そこで、代表曲「Walking with you」を投下すると、雄大は「東京では何十回ってライブをやってきたけど、今日がダントツで楽しいです!」と喜びを爆発させる。ラスト1曲、「ずっと一緒にやっていこう。高いところを目指して!」と、お客さんとの約束を交わすと、本編の最後は、アルバム『「EN.」』でもラストを飾る「拝啓、親愛なる君へ」だった。包み込むようなメロディにのせて紡がれるのは、“あなた”との出会えた喜びを胸に、歌を届ける意味を噛みしめるような、ライブの終わりにふさわしい曲だった。
さらに、鳴りやまない手拍子に答えて、再び登場したアンコールでは、「理不尽なこともあると思うけど、Novelbrightを聴いてるときは、がんばろうと思ってもらえるように、信じた仲間とやっていきたい」と、バンドのこの先についての決意を伝えると、「今日という日が僕らにとっても、あなたにとっても、何かのはじまりになりますように」と願いを込めて、「スタートライン」で終演。最後の瞬間まで、お客さん一人ひとりに訴えかける姿勢を貫いた誠実なライブだった。
なお、Novelbrightは、このツアーの追加公演として、東名阪クアトロをまわる『「EN.」-アンピリオド- RELEASE ONEMAN TOUR アンコール編』の開催を発表した。ひとまわり大きな会場へとキャパを広げるツアーでも、きっと彼らは、そこにいる誰ひとり置き去りにせず、お客さんの心に寄り添うようなライブを見せてくれるだろう。
文=秦理絵 撮影=堀内れい子
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