上村文乃(チェロ)バッハを起点とした近現代音楽のプリズム

インタビュー
クラシック
2015.12.11
上村文乃(チェロ) ©K.Miura

上村文乃(チェロ) ©K.Miura

バッハを起点とした近現代音楽のプリズム

 高校時代から内外のコンクールで入賞を重ね、現在はスイスのバーゼル音楽院で研鑽中。期待の若手チェリスト・上村文乃が、東京オペラシティの『B→C』に登場する。
「音楽は食べ物と同じ。嫌いと思ったらそこでおしまいなので、これまでは苦手な曲を進んで勉強するようにしてきました。でも今回は特別な舞台なので、大好きな作品ばかりです(笑)」

 前半は3つの無伴奏曲。冒頭を飾るのは、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第6番だ。
「コンクールや小さな演奏会では、J.S. バッハの組曲を全舞曲通して弾ける機会がなかなかありません。今回は準備期間が長いので、あえて難曲の第6番に挑戦します。通常のチェロに高音弦を1本足した5弦用の曲なので、解釈の幅が広いのも魅力ですね」

 続くペンデレツキのディヴェルティメントは、今回の核になる重要曲。
「恩師のアルト・ノラス先生は、ペンデレツキ演奏の第一人者なんです。この曲は55歳で急逝したロシアの名チェリスト、ボリス・ペルガメンシコフに献呈されました。全7曲からなる組曲ですが、初期の1994年当時に出来上がった3曲がディヴェルティメントと呼ばれています。第1曲はゆったりと語りかけるように始まりますが、第2曲は打って変わって激しく技巧的。そして第3曲は子守唄のようにしっとりと結ばれる、緩急の巧みさが素敵です」

 そして前半を締めくくるのはトビアス.PM.シュナイトの無伴奏組曲。この曲は、昨年のミュンヘン国際音楽コンクールの課題曲として書かれた新作だ。
「ドイツ出身の彼は、シューベルト、マーラー、ジャズなどから強い影響を受けているそうです。抒情的な折衷な作風が特徴ですが、フレーズごとに次々と曲想が変わる“一口では言えない独特の魅力”をお楽しみください」

 後半は、武満徹「オリオン」とショスタコーヴィチのソナタを室内楽の若き名手・須関裕子(ピアノ)と共演する。
「日本で師事した堤剛先生と度々共演している須関さんは、私と年齢が近いこともあって、近年ご一緒する機会が多くなっています。彼女はチェロの技巧的な特性をよくご存知なので、今回も安心して本番に臨めます」

 上村が6歳の時に自らの意志でチェロを始めたのは、音色の深さに惹かれたためだった。また、趣味は美術鑑賞だそうで、彼女の持ち味である感情豊かな表現力はこうした多様な経験の賜物なのだろう。その最初の集大成とも言える、J.S.バッハを起点とした近現代音楽のプリズム。まもなく美しい翼を広げて私たちの前に象(かたち)を表そうとしている。

取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

B→C 上村文乃チェロリサイタル
12/15(火)19:00
東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
http://www.operacity.jp

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