SNSで心癒されるひとときを 山種美術館『おうちで日本画』【ネット DE アート 第6館】

コラム
アート
2020.6.19
ネット DE アート 第6館:山種美術館『おうちで日本画』

ネット DE アート 第6館:山種美術館『おうちで日本画』

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臨時休館中の美術館や博物館の再開を待つ日々のなかで、オンラインで楽しめるコンテンツが増えはじめています。休館中に閉幕した展覧会をVRミュージアムで鑑賞できたり、動画やSNSを通じて所蔵作品の解説が見られたり。オンライン上でアートと人をつなげる取り組みが盛んになることで、新しい美術鑑賞のスタイルが広まりつつあります。
今回は、日本画の専門美術館である山種美術館が提供するコンテンツ『おうちで日本画』をピックアップ。公式SNSが定時に発信する作品紹介から、誰でも気軽に楽しめる塗り絵まで。日々の生活に癒しをもたらす日本画の魅力をお伝えします。

『おうちで日本画』メインビジュアル

『おうちで日本画』メインビジュアル

140字で綴られるキャプション解説から、日本画に親しもう

山種美術館の公式SNS(Twitter、Facebook、Instagram)では、昼12時と夕方17時に、館長の山崎妙子氏による解説付きで所蔵作品を紹介しています。4月4日から臨時休館中の同館では、会期途中で閉幕となった特別展『桜 さくら SAKURA 2020 ― 美術館でお花見!―』(※7月18日より再開)の出品作や出品作家の代表作を、会場の写真と共にSNSで発信してきました。

140字の世界で綴られる作品解説には、作品に使われた技法や画材についてだけでなく、作家のエピソードなども交えつつ、端的に見どころが押さえられています。筆者の心を掴んだのは、画家の言葉を添えて紹介されていた、奥村土牛による《吉野》。桃源郷のような桜景色に、吉野の地への思い入れが感じられる作家の言葉が引用されることで、より作品に対する興味をかきたてられます。

山種美術館ツイッターより引用 (2020年4月8日12時のツイートより)

山種美術館ツイッターより引用 (2020年4月8日12時のツイートより)

奥村土牛《吉野》 1977(昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館  ※特別展『桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!― 』(会期:7月18日(土)再開~9月13日(日))

奥村土牛《吉野》 1977(昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館  ※特別展『桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!― 』(会期:7月18日(土)再開~9月13日(日))

また、西郷孤月の描いた「桜」(《月・桜・柳》のうち)は、山本館長による見どころ解説がためになりました。筆者は日本画を見ていると、「繊細できれいだなぁ」といったぼんやりした感想を抱きがちなのですが、構図の対比や描写のこだわりなど、画家の創意工夫を知ることで、実際に美術館に足を運んだ際は、より細部まで注目して見てみようと思えます。

山種美術館ツイッターより引用 (2020年5月1日12時のツイートより)

山種美術館ツイッターより引用 (2020年5月1日12時のツイートより)

西郷孤月《月・桜・柳》の「桜」 1901(明治 34)年頃 絹本・彩色 山種美術館  ※特別展『桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!― 』(会期:7月18日(土)再開~9月13日(日))

西郷孤月《月・桜・柳》の「桜」 1901(明治 34)年頃 絹本・彩色 山種美術館  ※特別展『桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!― 』(会期:7月18日(土)再開~9月13日(日))

四季を描いた日本画を通して、日本の自然観や季節感を思い出す

山種美術館では現在、#おうちで日本画、#エア美術館、#自宅でミュージアムなどのハッシュタグと共に、時世に合ったテーマの所蔵作品をピックアップして、SNS上で紹介しています。

「ライブパフォーマンスを皆で一緒に楽しめる日が一日も早く戻ってきますように!」というコメントが添えられた柴田是真の《墨林筆哥(ぼくりんひっか)》は、琵琶を弾く蛙と、それを熱心に聴き入る蛙たちを描いたユーモア溢れる作品。その微笑ましい姿を見ていると、自然と心が和みます。

山種美術館ツイッターより引用 (2020年5月13日12時のツイートより)

山種美術館ツイッターより引用 (2020年5月13日12時のツイートより)

柴田是真《墨林筆哥》 1877-88(明治10-21)年 紙本・漆絵 山種美術館  ※特別展『竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス』(会期:9月19日(土)~11月15日(日))

柴田是真《墨林筆哥》 1877-88(明治10-21)年 紙本・漆絵 山種美術館  ※特別展『竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス』(会期:9月19日(土)~11月15日(日))

ほかにも、折り紙をしたり歌を詠んだり“おうち時間”を楽しむ女性たちを描いた作品が取り上げられるなか、筆者がとくに気に入ったのは、小林古径による《闘草(とうそう)》。闘草は、文字通り「子どもたちが採集した草の種類や形状で優劣を競う遊び」とのことですが、「そんな遊びが存在したのか!」という驚きもありつつ、心に余裕がない時こそ、かつての生活文化から、ゆとりのある時間の過ごし方を教わった気がします。

山種美術館ツイッターより引用 (2020年5月22日12時のツイートより)

山種美術館ツイッターより引用 (2020年5月22日12時のツイートより)

小林古径《闘草》 1907(明治 40)年頃 絹本・彩色 山種美術館

小林古径《闘草》 1907(明治 40)年頃 絹本・彩色 山種美術館

公式SNS上では、四季の花々を描いた作品も多数紹介中。シャクナゲや牡丹、ツツジにカキツバタといった5月の花々や、初夏に花を咲かせる泰山木(タイサンボク)など。速水御舟による《青梅》を見ていると、「今年もそろそろ梅を漬けようかな」なんて気分にも。

山種美術館ツイッターより引用 (2020年6月2日17時のツイートより)

山種美術館ツイッターより引用 (2020年6月2日17時のツイートより)

速水御舟《青梅》 1929(昭和4)年 紙本金地・彩色 山種美術館

速水御舟《青梅》 1929(昭和4)年 紙本金地・彩色 山種美術館

季節感を大切にしてきた日本画には、自然の草花が瑞々しく描かれています。四季を愛でる日本人の美意識が反映された絵画に触れることで、心が癒されることもあるのではないでしょうか。

所蔵作品の塗り絵やPC用の壁紙も無料配布中!

山種美術館の公式サイトでは、田能村直入(たのむらちょくにゅう)による100種類の四季の草花を描いた図鑑《百花》(部分)の塗り絵を無料配布しています。サイト上では、塗り絵と共に原画の画像や全図も見られるので、彩色の参考にできそうです。

左:田能村直入《百花》(部分) 山種美術館蔵、右:塗り絵 サンプル

左:田能村直入《百花》(部分) 山種美術館蔵、右:塗り絵 サンプル

さらに、PCデスクトップ用の壁紙も無料で配信中。現在は、山種美術館の所蔵品のうち人気の4作品、速水御舟《名樹散椿》(重要文化財)(部分)、川端龍子《鳴門》(部分)、川合玉堂《山雨一過》(部分)、鈴木其一《四季花鳥図》がダウンロード可能となっています。

PCデスクトップ用の壁紙  川端龍子《鳴門(部分)》 山種美術館蔵

PCデスクトップ用の壁紙  川端龍子《鳴門(部分)》 山種美術館蔵

また、各SNSにて、ハッシュタグ#山種美術館の和菓子をつけてシェアされている投稿写真を眺めるのもオススメ。同館内に併設するCafé椿では、展覧会や季節にちなんだオリジナルの和菓子を提供しています。再び美術館が開館した際には、作品鑑賞と併せて、ぜひアートを味わう時間も楽しんでくださいね。
 

文=田中未来、画像=山種美術館提供、各種サイト引用

サイト情報

山種美術館「おうちで日本画」
http://www.yamatane-museum.jp/nihongaathome.html
 
山種美術館
東京都渋谷区広尾3丁目12-36
※新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、4月4日(土)より臨時休館しております。
 
特別展『桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!―』の再開について
本展は、2020年3月14日(土)から5月10日(日)までの開催を予定しておりましたが、美術館の休館に伴い、4月4日(土)より開催を中止しております。7月18日(土)より感染拡大防止策を実施したうえで、会期を9月13日(日)まで延長し再開いたします。
※ 本展の招待券については、変更後の会期中ご利用いただけます。
※ 本展の前売券については、再開後より2020年12月27日(日)まで開催される展覧会でご利用いただけます。
 

【ネット DE アート】コラム連載中

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「インターネットで体験できるアートプログラム」を紹介する【ネット DE アート】。
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