三谷幸喜の最新舞台『大地』に出演中の竜星涼、演劇への想いを語る
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竜星涼
PARCO劇場のオープニングシリーズとして2020年7月1日(水)に開幕し、ただいま絶賛上演中の三谷幸喜の最新舞台『大地(Social Distancing version)』。三谷ならではの脚本・演出が話題となっている注目作だ。
物語の舞台となるのは、架空のとある全体主義国家。そこでは俳優たちが反政府主義者として収容され、強制労働させられていた。厳しい監視下で暮らす中、演じることを禁止された彼らを待つ運命とは……?
同じ施設で生活を共にすることになる8人の俳優たちに扮するのは、大泉洋、山本耕史、竜星涼、藤井隆、濱田龍臣、相島一之、浅野和之、辻(しんにょうの点はひとつ)萬長という、格別に個性の強い面々だ。中でも、女形役者として複雑な立場に立たされることになる、ツベルチェク役を演じる竜星は劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』以来2年ぶりの舞台出演で、しかも三谷作品にはこれが初参加となる。上演中の劇場を訪ね、終演直後の竜星に今作への想いを語ってもらった。
ーー『大地』は、このご時世に合わせた“Social Distancing Version”としての上演とのことですが。最初の台本とは、だいぶ変わったのでしょうか?
基本的に脚本は同じです。役者同士が接触する場面の動きや、空間自体の使い方を変更していて、演出が、いわゆるディスタンスを配慮したものになっているんです。だから僕が感情的になってつかみかかりにいくところなど、役者同士が気持ち的に、普通だったらここで近寄るよねというシーンでも、そこであえてソーシャルディスタンスを一回考えてから動きましょう、みたいなことです。
竜星涼
ーー常に俳優さんは、誰かが近寄ってくると反対側に逃げていくような印象でした。
そうですね。舞台装置が作る空間も、そういう動きが自然になるように作られているので、そこは面白いなと思いながらやっています。ただ、役者たちとしてはみんな「なぜそういう動きをしなければいけないのか」という理由を埋めなければいけないので、その点では、やることが多いというか。その理由付けを自分なりに考えるのも、このソーシャルディスタンシングの醍醐味だったかもしれないです。
ーー演じる上で、その動きを自分の中で落とし込むためには理由が必要になるから。
そうです。こじつけでも、考えなくてはならないんです(笑)。
ーーまた、あの各自用のスペースとして区切られた舞台装置が、ディスタンスを保つためにかなり役立っているようにも見えました。
基本的に、そこに自分のベッドとテリトリーがあるわけで。うまく出来ていますよね。観る側からも観やすいのではないかと思います。収容所の中の生活感も伝わりそうですし。
ーーそれぞれのキャラクターも立ってきますし。
その中で、今回はとにかく非常に個性豊かな方たちばかりなので、自分としてはなかなか大変な部分もありました(笑)。
ーー稽古場は、どんな雰囲気でしたか?
すごく面白かったです。もちろん演出は三谷さんがされるんですけれど、役者自身がそれぞれ持ってきたものを合わせて作っていくという感じだったので。みなさんが自分のキャラクターに合わせて考えてきたものを持参して稽古場に入るみたいな状況で、それはすごく勉強になりました。何もないところから、自分の演じる役にはこれが必要だから、こうしたいのでお願いしますという感覚で作っていくんです。これは今までに経験したドラマや映画の現場ともまた違う、舞台ならではの体験でした。本当に先輩たちのイマジネーション力が強いから、日々勉強だなと思いましたね。
ーーものすごいメンバーが揃っていますしね(笑)。
浅野さんのあのパントマイムも、パントマイムが本業ではないのにあのマイムを使うシチュエーションの場面では、浅野さんがご自身で考えていらっしゃるんです。本当にすごいし、役者として一番大事なものはイマジネーション、想像力なんだなとしみじみ思いました。これは、舞台上で出てくるセリフでもありますけど。毎日、さまざまなことを学びながら演じさせてもらっています。
竜星涼
ーー竜星さんは、三谷作品には今回が初参加となりますが。
そうなんです。舞台が最初になったので、映像では一体どういう感じなんだろう? と、今すごく気になります(笑)。天海(祐希)さんと仕事でご一緒した時に「今度、三谷さんの舞台に初めて出させていただくんです」というお話をしたら「大丈夫だよ、すごくいい人だから」って教えてくださって。そうおっしゃっていた理由が今、すごくわかります。役者の方々から信頼されている部分が、一緒に舞台を作っていると自然と見えてくるんです。
ーー新しい経験が、ここでまた出来たという感じですか。
そうですね。でも、きっと今回はそういう経験をするんだろうなとは思っていました。それと自分の中では今回の外出自粛期間もあって、役者として生きていく上でのことを改めて考えたり、自問自答したりしていたので、そこで見えてきたものを思い切りぶつけられる場所でもありました。さらに、先輩たちから受け取るものもたくさんあって。この後もまだまだ上演は続くんですが(笑)、この作品に出られたことは自分にとってものすごく大きな一歩になったんじゃないかなと感じています。
ーー演じることを禁じられた俳優たちの物語でもありますし、このタイミングでこの内容だと、ご自分の中に響くものがたくさんありそうですよね。
最初に台本をいただいた時、これは三谷さんの中の俳優論なのかなと思いましたし、他のキャストの方々のセリフを聞いていても感じることが多々ありました。僕自身も、やっぱり役者は想像力が一番大事だよなと思っていた時期でもあったので、演劇というものを突き詰めて考えるいいきっかけにもなりました。
ーーそんな中で竜星さんが演じているツベルチェクは、どんな役で、どんなことを意識して演じられているんでしょうか。
ちょっと、かわいそうな位置にいるキャラクターというか役どころではあって。どちらかというとみんながふざけて楽しんでいる場面でも、僕だけはあまり一緒になってはしゃいだり笑ったりはできませんから。特に一幕はどんなにみなさんが面白いことをやっていても、笑えないジレンマみたいなものが結構あります。でも、この役としては、芸として“女形”というものに向き合っているから、ああいう扱いを受けることに憤りみたいなものがやっぱりあるだろうし。僕の中で、それを想像して考えて作っていくというのが最初の作業になりました。わかりやすく言ってしまえば、男っぽい雰囲気から一転して、女形を演じる瞬間には女っぽくふるまう、という方法もあったんですけど、でもこの役はそっちじゃないんじゃないかと。普段から、立ち姿だったり仕草だったりが妖艶というか美しく見えなければいけないと思うんです。所作指導で入られている篠井(英介)さんのお力も借りつつ、研究させていただきました。
竜星涼
ーー篠井さんからは、どんなことを言われましたか。
篠井さんには、普通にしている時からきれいだからそのままでいいと言っていただいて。逆に、それって難しいなと思いました(笑)。やっぱりどうしても、特に二幕では自分としては女形をやっていますよ、とお客さんに提示しなければいけないのかなという気持ちがあったので。でもそこまであざとくやらなくていい、ニュアンス的にちょっと笑顔を作ったりすることはあっても、でも基本的には表情的にあまり変えないほうが、何を考えているのかわからなくて妖艶に見えると言われて。そこが、一番難しかったですね。
ーーでも篠井さんにそういう風に言っていただけたというのは。
そのままで大丈夫、という言葉は確かに自分にとって自信になりました。初日も観ていただいて、とても美しかったと言っていただけて。本当に、うれしかったです。
ーーそして今回の舞台は、配信という形で劇場に来られない方にも観ていただけるわけですが。
臨場感に関してはナマモノだから、劇場でないと味わえないかもしれないですが。でも配信のいいところは、役者の顔に寄って、アップで撮れますから、それぞれの表情とか、客席からではわからない細かい部分が観られるというのが大きいかもしれないです。ということは、演じる側としてはちょっと大変ではあるんですが(笑)。でもそうやって、観に来られない方たちが観られるコンテンツというのは、それがあれば演劇というものがもっと広がる機会にも繋がりそうですし。演劇をやっている以上、より多くの方に知ってもらいたいので、ひとつの空間でこういう形で上演しているんだ、映像とはまた違って面白いな、じゃあ、次は自分も劇場に行ってみようとか、そんな風に思っていただけたら嬉しいです。また社会的にも、日常の変化みたいなものを僕らからお客さんに伝えていくこともできるんだという使命感のようなものも感じています。
ーーそういう意味では今回は、さまざまなメッセージを伝える媒介にするのにはちょうどいい演目とも言えそうです。
僕もそう思います。最初は喜劇なのかなと思っていたはずなのに、観ていると悲劇なのかなと思えてくるところも面白いですし。それをご覧になった方がどういう風に受け取ってくださるかは、直接はわからないですけど、劇場でお客さんたちが「演劇を観る機会を待ってました」と言わんばかりの温かいまなざしで、熱い拍手を送ってくださることが嬉しいです。
ーーあれは、きっと伝わりますよね。
はい。客席はひとりおきで座るから人数的には半分なんでしょうけど、そんなことを感じさせないくらいのお客さんの熱量が、毎回すごく伝わってくるんです。だからこそ、がんばってやらなければ! と思います。周りには世の中的にまだまだ思うようにできない役者さんたちも大勢いる中で、こうして発信できることには喜びも感じています。先陣を切ってやれる座組、メンバーの一員として演劇ができる、そこに自分も携われているということは名誉なことですし、とても誇りに思います。
竜星涼
本公演は7月1日(水)~8月8日(土)まで東京・PARCO劇場、8月12日(水)~8月23日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。また、イープラス「Streaming+」でのライブ配信は、7月18日(土)・19日(日)・25日(土)・26日(日)・8月1日(土)・2日(日)に行われる。
取材・文=田中里津子 撮影=鈴木久美子
配信情報
『大地(Social Distancing version)』
出演:大泉洋 山本耕史 竜星涼 栗原英雄 藤井隆 濱田龍臣 小澤雄太 まりゑ 相島一之 浅野和之 辻萬長
※「辻」は“一点しんにょう”となります。
■配信場所:イープラス「Streaming+」
■視聴
7月12日(日)12:00 公演 ⇒販売期間:6/21(日)10:00~7/12(日)12:00
7月18日(土)12:00 公演 ⇒販売期間:7/5(日)10:00~7/18(土)12:00
7月18日(土)17:00 公演 ⇒販売期間:7/5(日)10:00~7/18(土)17:00
7月19日(日)12:00 公演 ⇒販売期間:7/5(日)10:00~7/19(日)12:00
7月25日(土)12:00 公演 ⇒販売期間:7/5(日)10:00~7/25(土)12:00
7月25日(土)17:00 公演 ⇒販売期間:7/5(日)10:00~7/25(土)17:00
7月26日(日)12:00 公演 ⇒販売期間:7/5(日)10:00~7/26(日)12:00
8月1日(土)12:00 公演 ⇒販売期間:7/19(日)10:00~8/1(土)12:00
8月1日(土)17:00 公演 ⇒販売期間:7/19(日)10:00~8/1(土)17:00
8月2日(日)12:00 公演 ⇒販売期間:7/19(日)10:00~8/2(日)12:00
※配信日2日前 AM00:00からはカード決済のみでの販売となります。
■申込 URL https://eplus.jp/mitani2020/
※ご利用にはイープラスへの会員登録が必要となります(入会金・年会費無料)
サービスサイト:https://eplus.jp/streamingplus-serviceguide
ユーザーガイド:https://eplus.jp/streamingplus-userguide
公演情報
『大地(Social Distancing version)』
作・演出:三谷幸喜
出演:大泉洋 山本耕史 竜星涼 栗原英雄 藤井隆 濱田龍臣 小澤雄太 まりゑ 相島一之 浅野和之 辻萬長
※「辻」は“一点しんにょう”となります。
<東京公演>
公演日程・場所:2020年7月1日(水)~8月8日(土)PARCO劇場
・第1クール(公演期間:7月1日(水)~7月12日(日))
・第2クール(公演期間:7月14日(火)~7月26日(日))
・第3クール(公演期間:7月28日(火)~8月8日(土))
一般発売:7/19(日)10:00〜
<大阪公演>
■公演日程・場所:2020年8月12日(水)~8月23日(日)サンケイホールブリーゼ
■
■プレオーダー受付:7月23日(木・祝)12:00~7月27日(月)23:59
■一般発売:8月2日(日)10:00
大阪公演主催:サンライズプロモーション大阪
公式サイト https://stage.parco.jp/program/daichi/9811