「劇場の灯を消すな!」サンシャイン劇場編 放送を目前に収録レポートが到着
『劇場の灯を消すな!サンシャイン劇場編 劇団☆新感線40周年!〜勝手に?われら青春のサンシャイン!』勝手な座談会より 撮影:宮川舞子
2020年8月1日(土)WOWOWライブ、WOWOWメンバーズオンデマンドにて放送される『劇場の灯を消すな!サンシャイン劇場編 劇団☆新感線40周年!〜勝手に?われら青春のサンシャイン!』。放送を明日に控え、公式より収録の模様をつづったレポートが到着した。
WOWOW「劇場の灯を消すな!」オフィシャルライターの徳永京子による収録レポート
前日からの雨が止まないまま迎えた7月某日、サンシャイン劇場では朝から収録が進んでいた。私が到着した午前10時には、決して狭くないサンシャイン劇場のロビーが各種機材で埋まり、劇場内では、本格的な公演規模の照明や美術セットの仕込みが始まっていた。
WOWOW「劇場の灯を消すな!」第2弾は、サンシャイン劇場と劇団☆新感線のタッグ。この数年は、赤坂ACTシアターや、こけら落としをロングラン公演で飾ったIHIステージアラウンド東京など、いわゆる“大箱”での上演が目立っていた新感線だが、いのうえ歌舞伎と両輪を成す“ネタもの”はサンシャイン劇場がホーム。番組のサブタイトルに「劇団☆新感線40周年!〜勝手に?われら青春のサンシャイン!」とあるように、あふれる体力とアイデアと技術を笑いに変換し、どこよりもぶつけてきたのがこの劇場。両者の組み合わせは誰もが納得するところだ。
実は10時の時点で粟根まことによる劇場案内は撮影終了していた。三密を避けて同行者を絞っていたため取材できなかったのだが、劇場スタッフも驚くほど隅々まで場所を把握しており、また、解説に独自の視点や公演の裏話などがあって、非常に充実した内容になったという。以前、ある演出家から「粟根さんの記憶力と知識量はすごい」と聞いたことがあるので、それが存分に発揮されていそうで楽しみだ。
粟根まこと 撮影:宮川舞子
そして今回、私自身が関係者にプレゼンした企画が実現した。新感線作品の映像を観ながら、演出家・いのうえひでのりに話を聞くというもので、『髑髏城の七人』から、小栗旬、森山未來、早乙女太一が出演した通称ワカドクロを題材に、キャストとアクションの関係を尋ねた。中井美穂氏に進行してもらいながら、かねてからの持論である「時代劇アクションの男の色気ははだけた着物の裾から見える太もも」を、「いのうえさんも意識しているのではないか」という推測や「美しい殺陣は逆再生しても美しい」を検証させてもらった。
(左から)いのうえひでのり、徳永京子 撮影:宮川舞子
もちろんこの番組に看板俳優が出ないわけがない。サンシャイン劇場のカフェ、シアターテラスで、古田新太と、出演回数の多さから準劇団員といわれる池田成志がホストとなり、新感線とゆかりある松雪泰子、勝地涼を迎えてのトークが展開された。カフェの店長は剣轟天(橋本じゅん)、店員はウマシカ(中谷さとみ)で、自由奔放な店長に全員が振り回されながら、貴重で危ない思い出話が次々と語られた。
トリを飾ったのは、いのうえひでのりが初めて演出に挑んだ朗読劇。これは「劇場の灯を消すな!」シリーズ全体の“お題”で、井上ひさしの短編戯曲集『十二人の手紙』から一本をリーディングに仕立てる企画。いのうえが選んだのは、創作のために山に籠もる画家の夫と、留守を守る年の離れた妻のやりとりを描いた『鍵』。
入江雅人 撮影:宮川舞子
高田聖子 撮影:宮川舞子
(左から)高田聖子、入江雅人 撮影:宮川舞子
夫を入江雅人、妻を高田聖子が演じたが、冒頭に書いた本公演かと見まごう照明と美術セットは、このために用意されたもの。プランナーも新感線にかかせないお馴染みの一流どころが勢揃いし、いのうえの本気度を感じるコーナーとなった。入江も高田も台本を手にしてはいるものの、演じる人物の心の機微に合わせて動き“じっとしていない朗読劇”を短い稽古時間で見事に形にした。特に高田は何度も着替え、かつて芸者だった妻の艶や気っ風を和服の着こなしとともに見せた。終演後、いのうえが「楽しかった!」と手応えを口にしたのもうなずける、大人の新感線が垣間見えた収録だった。