磯貝サイモン 配信ライブの可能性と課題とは? 配信拠点のプライベートスタジオから特別企画を敢行
シンガーソングライター・磯貝サイモンによるオンラインツアー『welcome to my SUMMER PARTY!!2020』が8月30日、全7公演の最終日を迎えた。新型コロナの影響でステージでのライブが自由にできなくなった今、ソーシャルディスタンスを意識しなければいけない今、配信スタッフをあえて入れず、すべて一人で行うオンライン配信でのライブにこだわった。オートスイッチングによるカメラワークや、照明プログラミングを駆使し、複合的なオートメーションシステムを構築した。映像上はあたかもスタッフがたくさんいるかのような内容だが、本当にすべて一人でオペレーションし、演奏し、歌う、まさに究極の“一人でライブ”。
SPICEは、配信ライブの未知の可能性にトライし続ける磯貝サイモンをサポートすべく、オンライン配信の本拠地でもある自身のプライベートスタジオ「hitoride studio」を訪ねる特別企画を敢行。オンラインツアーの手ごたえと課題、オンライン配信の現在と未来、そして11月22日のデビュー14周年へ向けての思いと新しいプランについて、思う存分に語ってもらった。
――初めてお邪魔しましたけれども。いいスタジオですね。居心地良さそう。
長時間の作業になっても疲れないように、リゾート感を意識して6年前に作ったプライベートスタジオです。ただ、今では配信機材で埋め尽くされてますけどね(笑)。逆に最近までは、年がら年中ツアーで地方ばっかりで、思うほどスタジオは活用できていませんでした。
――その状況が、コロナで一変しました?
自分のスタジオを持ってて本当に良かったなと、ここに来て強く思いましたね。このスタジオの存在が、今のオンライン生配信の活動に直結してますから。最初に楽天ライブというプラットフォームから声をかけてもらったのは、エンタメ業界が自粛モードになるのがまだそんなに現実味を帯びていなかった頃で。もともとオンライン配信自体に興味はあったんですけど、きっかけがなくて。ツイキャスやインスタライブはたまにやっていたんですけど、簡単に始められるぶん、やれることもシンプルですよね。でも楽天ライブは、ハートマークが飛んだり、ギフトが飛んだり、画面上が騒がしいエンターテインメント感が面白そうだぞと。それが『磯貝サイモンの室内飛行』という、4月に最初に始めた番組です。
――そうですね。今も好評配信中です。
番組を進めるやいなや、僕の凝り性な性格がどんどん出てきまして……。最初は映像に関して全くの無知だったので、はじめだけ配信スタッフが来てくれたんですよ。そのスタッフの仕事を見ていたら、なんだか面白そうだなと。徐々に「カメラは何を使ってるんですか?」とか「パソコンとどうやってつなげるんですか?」とか質問攻めにして(笑)、自分でも調べて勉強しているうちに、どんどん映像に興味が出てきたんです。ところが楽天ライブだと、システム的にスマホ配信しかできないことが分かって。そんな時に耳にした情報が、イープラスの「Streaming+」という新しい動画配信サービスでした。
今後は世の中的にもオンライン配信が飽和してくると思うので、その中でも頭ひとつ突き抜けたことは常に考えていきたいですね。
――Streaming+では最初はどんなプランだったんですか? 何が一番やりたかったのか。
まず、オンライン公開レコーディングをやりたかったんですよ。今、制作中のアルバムも元々はレコーディング風景を最終的にはドキュメンタリーにしたくて少し撮り始めてたんですが、このコロナの状況になって配信も始めてたので、だったら生配信しちゃうか?と思い立って、一度だけ楽天ライブでやってみたんですね。スマホ配信だったけどけっこう面白くて。まさにその翌日ぐらいにStreaming+の情報が流れてきたんです。ナイスタイミングなきっかけで始めたのが、現在放送中の『磯貝サイモンのコックピット訪モン』という番組ですね。
――そうやって、どんどんつながっていく。そのあとが、先日のオンラインツアーですか。
いえ、その前に楽天ライブで、4月~6月まで、もともと開催予定だった全国ツアーと同じ日程でやった『DAWN2』というオンラインツアーがありました。スマホ配信だったので映像にこだわれないぶん、その頃は音作りを研究しまくってましたね。ちなみに、その頃はまだ“オンラインツアー”という言葉はおそらくなかったです。今やみんな“オンラインツアー”と言っていますけど、たぶん“オンラインツアー”と最初に言ったのは僕なんじゃないかな。「Ⓡ」を取っておけば良かった(笑)。
――そこで手ごたえを得て、2度目のオンラインツアーへつながっていく。
そうですね。先月終わったオンラインツアー『welcome to my SUMMER PARTY!!』では、今まで得た知識でやれることは一応全部やり切れたかなと……。だからこそ、このオンラインツアーを通じて最近ますます感じているのは……ただカメラを置いて歌を歌っているだけじゃもうダメなんだなと。
――というと?
本来のライブって、ステージがあって、でっかいスピーカーがあって、小さい音は小さく、大きい音は大きく、お客さんが音量のダイナミクスやサウンドの迫力を感じながら、歌声、演奏、照明、演出、トークなど、目の前で行われているあらゆることに対してエモーショナルになるわけですよね。客席は真っ暗で、携帯電話も切って、ライブに集中できるわけです。ところがオンライン配信となると、日常生活の中で、画面上で映像を見ることになります。すると当然、ライブ中に電話が鳴ったり、インターホンが鳴ったり、冷蔵庫を開けて何か飲もうとか、ちょっとトイレ行こうとか、なかなか集中しにくい環境ですよね。それでも飽きずに楽しんでもらうためにはどうすればいいか? 一時しのぎ的なオンライン配信であれば、音楽が届けられるだけでとりあえずハッピーとも言えるかもしれませんが、僕は逆にオンライン配信でしかできないこともいろいろあることを知ってしまったので、さらなるその先へ突き進もうとしています(笑)。今後は世の中的にもオンライン配信が飽和してくると思うので、その中でも頭ひとつ突き抜けたことは常に考えていきたいですね。
――なるほど。
僕はミュージシャンなので、音楽という武器を使って、もっとバラエティに富んだものをお届けしていきたいなと。例えば先日終わったオンラインツアーでは、最初に5曲歌ったあと、場所を移動して20分くらいかけてトークコーナーをやるんです。毎公演ダーツを投げて架空の地域を決めて歌うというオンラインツアーだったので、ダーツで当たった都道府県の紹介をしたり、あとは僕は絵がとびきりヘタクソなので(笑)、勝手にご当地ゆるキャラを創作するお絵描きをしたり。それはそれは危ういキャラクターばかりで大人気でした、たぶん(笑)。まだまだ模索中ではありますが、映像だからこそできることもたくさんあるなと思っています。もちろん人によっては歌だけ聴いていたいという人もいると思うし、答えはないんでしょうけどね。
――うーん。確かに。
あとはサウンド面でもオンライン配信には大きな課題があると思っています。先ほどもお話しした通り、ライブ会場でのライブであればでっかいスピーカーで大音量で、全身でサウンドの迫力を感じられますが、オンライン配信だとだいたいスマホのスピーカーか、ヘッドホンやイヤホンか、中には立派なオーディオに接続して聴いてくれる人もいるかもしれませんが、やはり音量のダイナミクスやサウンドの迫力は全身では感じにくいですよね。なので、こちら側の音作りも従来のセオリーから大胆に変えていく必要があるなと思っていて、日々研究しています。
――実際、そういう作りになっていますよね。今やっているオンラインツアーは。
そうですね。9月には僕のバースデーライブの企画があって。3DAYSでオンライン配信のみでやるんですけども、それはテレビ番組みたいにしちゃおうと思っているんですよ。37歳になるので、「磯貝サイモンTOP37 SONGS」を3日間にわたってお届けする予定です。お客さんからのリクエストを事前に集計して。
(※バースデーライブ企画は終了しました)
――それはアリでしょう。面白そう。
あとは有料でも見に来てくれる方って、よっぽど見たいと思ってくれてる方々ってことなので(笑)、逆にある程度振りきったこともできちゃうのが有料配信の醍醐味なのかなと思っています。特に公開レコーディングをしている『磯貝サイモンのコックピット訪モン』は、毎回3時間以上かかるんですよ。ゼロからアレンジを始めて、途中で「うーん」とか言って悩んで作業がどうどう巡りなシーンも全部ノーカット生配信。それも有料放送だからこそできることなのかなと。逆に無料配信の時のほうがより気を使うんですよ、誰が見ているかわからないので(笑)。
――なるほど。無料番組と有料番組と、住み分けができていると。コア度で言うと、無料で一番入りやすいトークと生歌の『室内飛行』、高画質・高音質でハイクオリティなライブが見られる『オンラインライブ』、レコーディング風景をドキュメントするマニアックな『コックピット訪モン』という順番ですかね。チャンネルを三つ持っていて、それぞれに企画を変えて住み分けているというのは、新しい時代の配信のやり方としてすごく面白いと思います。
そのうち二つをStreaming+でやらせてもらっています。9月バースデーライブ3DAYS以降も、毎月何かしら新しい企画でオンラインライブをやっていきたいですね。やはりシンガーソングライターとしては歌っている瞬間が一番幸せなので。この半年で既に3番組の合計放送回数は100回を超えました。しかも全部生放送ってのがいいですね。スリリングで楽しいです。
――すごい。つまり、配信というプラットフォームには可能性を感じている?
感じているからこそ、「まだまだだな自分」と思うことがたくさんあって、それがさっき言ったようなことにつながるんですけども。とにかく楽しいこと、新しいことをどんどんトライしていきたいです。あと、僕のオンライン配信のもうひとつのコンセプトは“すべてを一人でやる”ということで。コロナ自粛がきっかけだったし、ソーシャルディスタンスも取らないといけなかったし、だったら全部一人でやり切ってみようと。複数台のカメラを1人で演奏しながらスイッチングするためにオートスイッチングの機材を揃えたり、曲に合わせた照明をプログラミングできる機材を揃えたり、ハンディカメラの質感に少しでも近づけたくて電動スライダーを導入したり。映像は完全に素人からのスタートでしたが、ひとつひとつレベルアップしていくのが今は単純にとても楽しいです。
とにかくどんどん知恵を絞って面白いことやっていきたいなというのが、今一番強く思っていることですね。
――そして11月22日はデビュー14周年記念日ですね。
この日、遂にコロナ後初のリアルステージでのライブを、渋谷イープラスリビングルームカフェで開催することになりました。お客さんの安全を第一に考えながら、だけどどうしても来れない人もたくさんいると思うので、大切な記念日をみんなでハッピーに迎えるために、なるべく多くの方が納得できる形にできたらと思い、オンライン生中継も同時開催します。当日は、動員は半分以下、規制項目もたくさんあって、まだまだ大復活祭とは到底いきませんが、サブタイトルにもあるように、一歩ずつ前に進んでいきたいと思っています。でも復活したからといって、オンライン活動をやめるってことはないでしょうね。先程も話したように、オンラインでしか出来ないこと、もうたくさん知ってしまったので(笑)。逆にそのノウハウを今後リアルなライブに生かしていくことも大いにありえそうです。
――ネタがいっぱいありますね。
ゆくゆくはリアルとオンラインを行き来しながら、何か企画ができるかもとか、映像や照明以外にも様々な要素を取り入れていくことによって、新しい何かができそうな予感がしています。とにかくどんどん知恵を絞って面白いことやっていきたいなというのが、今一番強く思っていることですね。
――では最後に、お客さんにメッセージを。たぶん受け取る側も、オンライン配信の楽しみ方にまだ慣れていない部分もあると思うんですよ。“こういうふうに楽しんでほしい”というものがあれば、ぜひ。
もちろんステージでのライブは早くやりたいですが、この状況はもうしばらく続いていくことでしょうし、一度一緒に開き直ってみませんか(笑)。逆にこの状況だからこそ楽しめる方法を一緒にみんなで探しませんか? あとは、せっかくなら良い音で楽しめる環境を作ってみませんか? ちょっといいイヤホンやヘッドホンを用意してみたり。小さいものでもいいのでスピーカーで流してみたり。個人的にお勧めのイヤホンとかは番組内でも勝手に紹介していて、オーディオメーカーの回し者みたいになってます(笑)。
――今の状況を一緒に楽しもう。そして、より良い音で聴こう。ということですね。
そうですね。僕もそこに焦点を当てて番組作りをこれからも続けていくので、良かったら付いてきてね、という感じですね。
取材・文=宮本英夫 撮影=鈴木 恵
ライブ情報
2020年11月22日(日)
[会場] 渋谷eplus living room cafe & dining
[時間] OPEN 17:30 / START 18:30
[問い合わせ] イープラス・ライブ・ワークス (TEL:03-6452-5650) ※平日11:00-18:00
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〇リアルステージ
S席¥9,800 (税込) ※1ドリンク別途
A席¥7,800 (税込) ※1ドリンク別途
視聴券¥3,500 (税込)
操縦サポート価格設定アリ (500/1000/2000)
ご賛同いただける場合には、今後の磯貝サイモンの活動資金とさせていただきます。
なお各に配信内容の優劣はございません。
※11/28(土) 23:59までアーカイブ放送もお楽しみ頂けます。
<券売日程>
磯会1次先行(抽選):2020/10/06(火) 12:00 ~ 2020/10/08 (木) 23:00
http://eplus.jp/isokai-fc/
磯会2次先行(抽選):2020/10/17 (土) 12:00 ~ 2020/10/18 (日) 23:00
http://eplus.jp/isokai-fc/
一般発売(先着):2020/10/31 (土) 12:00~
http://eplus.jp/simon1122/
オンライン生中継 視聴券:2020/10/31 (火) 12:00~
https://eplus.jp/simon1122_st/
※URL先は発売日以降に表示されます。
動画情報
■磯貝サイモンのスタジオ訪問 Lesson2 ~音響編~
■磯貝サイモンのスタジオ訪問 Lesson3 ~○○編~
>>>coming soon