LACCO TOWER無観客配信ライブ二日目「黒白歌合戦 ~電波極まる漆黒の変~」をレポート

レポート
音楽
2020.9.8
LACCO TOWER Photo by 三木康史

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「白」と「黒」のコンセプトにわけた楽曲を、それぞれ2日間で演奏するLACCO TOWER恒例の企画ライブ「黒白歌合戦」。2017年に初めて開催してから、今回で3回目となる人気企画が、今年は初となるオンラインによる無観客の生ライブ形式で行なわれた。サブタイトルに「電波極まる真白の変」と冠した1日目は、「薄紅」「遥」、新曲「歩調」などが披露され、225日ぶりに5人が揃ったライブの喜びが溢れたアットホームなものになったが、「電波極まる漆黒の変」と題した2日目は、序盤から激しいパフォーマンスを展開。メンバー5人のテクニカルな演奏と華やかなパフォーマンスが全開放され、やはりLACCO TOWERの真骨頂は「黒」だと痛感させられる唯一無二の世界を築き上げた。

LACCO TOWER Photo by 三木康史

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 キャンドルが灯る薄暗いステージに、ムービングライトの光が走り、メンバーが登場した。昨日は白を基調にしたラフな衣装だったが、一転して、黒を基調にしたフォーマルな衣装に身を包んだ5人。目つきも鋭い。日常との境界線を切り裂くような爆音とともに、いきなり真一ジェット(Key)は鍵盤に足を乗せて立ち上がった。「お待たせいたしました。真っ黒いラッコです」と、松川ケイスケ(Vo)。重さと速さを兼ね備えた重田雅俊(Dr)のドラムが激しく暴れ出し、まずは「林檎」を投下すると、細川大介(Gt)はその場でくるくると回りながら手数の多いフレーズを放つ。初っ端からテンションは最高潮だ。

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「今宵は暗黒、漆黒、真っ黒け。白いところはございません。あなたの心を蝕みやすい曲を用意しております」という松川の言葉から、「仮面」へ。続く「蛹」では、塩﨑啓示(Ba)がパーカッションのようにベースの弦をはじいた。序盤からハイカロリーな楽曲の連発に、早くも上着を脱ぎ捨てた松川。「熱―い!昨日とはレベルが違うね。毎回、我々は最高を更新したいという話をしてますけど、間違いなく今日が最高でございます」と、早くも勝利宣言。昨日の「白の日」が温かな包容力で聴き手に寄り添うライブだとしたら、「黒の日」はロックバンドとしての剥き出しの闘争心を毅然と叩きつける、そういうライブだ。

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 「夏らしい曲を」という紹介から「薄荷飴」へ。細川のエフェクティブなギターと真一のシンセが織りなす雅の和の雰囲気が美しい。寂しげなギターから突入した「桜桃」では、歌詞に込められた痛々しいほどの悲しみをエモーショナルなバンドサウンドがいっそう増幅していく。かつて、この曲について、松川は「白と黒の境界線にあるような曲」と表現していたが、「黒の日」に選ばれる曲は、その感情の曖昧さゆえに胸に迫るものがある。真っ赤な照明が照らすなか、松川がアカペラで歌い出した「杏子」で狂騒的な世界を描き出したあと、「ふだんは会場でしかやらないことを、電波の上でもやってみようと思います!」と言うと、真一はショルキーをスタンバイ。「8歳以下のお子さんに見せないでください。教育によくありません(笑)」と冗談っぽく言いつつ、「傷年傷女」へ突入すると、お客さんが目の前にいるときと変わらない縦横無尽なショーを作り上げていく。

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 ここで換気と消毒を兼ねた5分ほどの休憩を挟み、「罪之罰」「斜陽」からライブは後半戦へと入った。引き続き、激しい曲調が続き、真一や細川が繰り出す上物の派手さに何度も目を奪われるが、同時に、重田と塩﨑のリズム隊の強靭さも浮き彫りになる。思い通りにならない恋路を切ない三拍子にのせた「恋人」に続き、次々に表情を変えていく真一のピアノソロからなだれ込んだ「閃光」では、LACCO TOWERらしい王道サウンドにのせて、内包する負の感情を上昇するエネルギーへと力強く変えていく。その勢いを殺さないまま、「地獄且天国」へ。全員が一歩も引くことなくプレイヤーとして自己主張しながら、それでも楽曲として調和する総力戦の凄さは、何度ライブで見ても圧巻だ。

LACCO TOWER Photo by 三木康史

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 終盤は、メンバー同士が向き合って行なった今回のライブについて振り返った。まず、塩﨑が「ライブの熱量が真ん中に集まることって、いままでなかったよね」と言うと、「円型に向き合うスタイルはこの5人の五角形だから美しいと思う」と、真一。それに対して、松川が、これまでのメンバー変遷を振り返り、「いろいろな歴史を重ねてきたけど、ようやく完成系に近づいてきたと思うよね」と感慨深そうに言う。さらに「見つめ合ってると、それぞれ持ち場を頑張ってるなと思う(笑)」、「お客さんも含めて5人だけの空間を5人だけの音楽を楽しんでる感じがする」と、重田、細川も言葉を重ねた。メンバーの言葉からは、初の配信ライブがバンドにとって収穫だったことがひしひしと伝わる。

LACCO TOWER Photo by 三木康史

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そして、終盤のハイライトになったのが「霙」だ。音源にはない細川のギターが真一のピアノへとバトンタッチしていき、孤独や痛みを抱えながら、それでも「助けて」と言えない人の悲痛な想いが歌われる。終盤に置くには意外な曲ではあったが、その直後に語った松川のMCを聞いて、その意味がわかった気がした。いまアーティストが直面する状況について赤裸々に伝えたのだ。「俺らの周りのバンドとかライブハウスとかは、みんなが思ってる以上に大変です」「俺らの後輩とか、俺らも大変だったから、いまこうやってがんばってる。でも、本当に困ってる人の声は届かないことが多いです」「難しいことは言えへんけど、みんなの好きなバンドとかアーティストも困ってるから、どうか愛してあげてください」と。それは、自分たちを救ってほしいという意味ではない。彼らの主催イベント「I ROCKS」が象徴するように、LACCO TOWERは、これまで多くのバンドやアーティストと支え合い、切磋琢磨しながら成長してきたバンドだ。だからこそ窮状に立つバンドシーンのために、伝えずにはいられない切実な想いだったのだと思う。

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そんな、しんみりとしたMCを断ち切るように、松川が「最後は笑っていこうよ。みんなの声が聞きたいのよ!」と叫ぶと、最後に渾身のちからで「火花」をぶち上げて、ライブは幕を閉じた。その場で何度もジャンプして魅せるギターを炸裂した細川。どっしりと腰を落として激しく頭を振る塩﨑。上半身を大きくのけぞらせる真一。最後の一打を叩き切り、スティックを頭上に放り投げた重田。まさに全員が完全燃焼。5人がそれぞれの「持ち場」を守り切ることで掴んだ最高のフィナーレだった。

LACCO TOWER Photo by 三木康史

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 なお、今回のライブ会場は2日間ともにバンドの地元・群馬県の伊勢崎市文化会館だったが、1日目はロビーで、2日目はステージに場所を移して行なわれた。ステージ上から客席がまったく映らなかったので、おそらく緞帳は下ろしていたのだろう。来年、LACCO TOWERは、この場所で主催イベント「I ROCKS 20&21」を開催する。今年の中止を受けて、2年分を集約したリベンジの3日間だ。そのときは緞帳があがり、メンバーがお客さんと対峙する光景をぜひ見せてほしい。来年の4月には、今回メンバーが立った伊勢崎市文のステージに「おかえり」の声が響きわたることを願っている。

LACCO TOWER Photo by 三木康史

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