齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第八十七沼 『合法的に人を抹消沼!』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第八十七沼 『合法的に人を抹消沼!』
あけましておめでとう!本年も「welcome to THE沼!」をよろしくたのんだぜ!
さて、正月早々、、、人を消してしまった、、、。
しかも見知らぬオバちゃんと、軽バンを運転しているおっさんを2人..................。
更に消したモノは数知れず。罪深き思いを一生背負って生きていかざるをえなくなった。
まずはオバチャンとオッサンを抹消した現場が映った映像を見て欲しい。
(機材テロ傾向なので自己責任で読んでくれ。知らないからな!責任取れないからな!)
この映像は2021年1月1日0時0分に公開した私のプロデュースするgalcidのミュージックビデオだ。
snow flakes by galcid
この映像はわたくし齋藤久師(52)が初めて映像作品に挑戦した作品だ。
「オバチャンもおっさんも映ってないじゃん?」と思っただろ?まあ焦らず最後まで読んでほしい。
まず私はカメラの事を全くわかっていない、そして映像編集に関しても全くわかっていない。
そんな状態でよくも映像作品を作ろうなどと思ったものだ。
実は映像の世界には音楽を始めると同時に興味を抱いていた。小学生のころからだ。
しかし、1人で完結出来る電子音楽とは違い、映像作品を作るためには多くのスタッフ、そして莫大な資金、さらには技術が必要であるため、はなっから見て見ぬふりを突き通してきた。
ところが、昨年のコロナ禍を受け、やむをえず自宅スタジオからのライブ配信を余儀なくされ、多くの映像機器を買い込んだ。
ドミューンならぬ小ミューン! 小さな放送局の出来上がりだ。
そこで「映像の世界」を無視し続けてきた目の上のたんこぶにぶちあたったのだ。
まずは配信用に購入した一眼レフカメラを手に取って見た。
「軽い.............」
第一印象はまずこうだった。
いわゆるミラーレスカメラなので、内部構造的に鏡がついていないぶん激しく軽い。
カメラなど全く触った事が無かったので、私は練習がてら、その軽いミラーレス一眼を常に持ち歩き、カメラの構造を独自に研究した。
「ISO?」「シャッタースピード?」「ホワイトバランス?」「露出?」「絞り?」
音楽しかやってこなかった者としては、なんのことやら全く理解できない。
しかし、わたしはアレだから説明書など一切見ずに(読んでもわからないので)いきなり全てをいきなりマニュアルモードで撮影するという無謀なチャレンジに打って出た。
「ぼけみマジック」
この言葉は皆よく聞くだろう。人間を被写体にした場合、背景や、人物の手前にあるもののピントがボケ、被写体をより強調させるテクニックだ。
まずボケ味をつけるには、「撒き餌レンズ」というものが最適だとプロのカメラマンから聞き出し、早速購入。
このレンズを付けた瞬間、狙ったフォーカス以外の場所が全てボケるという素晴らしい効果を得た。
中心にフォーカスをあてて、前後のものをボカす。これがボケ味だ。
次に大好きな広角レンズ。
狭い部屋が広く映り迫力が増す。この広角レンズも2つ買った。
そして、更に質感の違うレンズも買ってみた。
広角レンズをボケ味マシマシで撮影。欲しくなっただろ?奥さんに怒られても知らないからな!
そして私はレンズ沼、、、。いやレンズの底無し沼に突入していくのであった。
もちろん、可変式のNDフィルターも。
ある写真家が私に言った。
「カメラは消耗品、レンズは一生モノ」
カメラを持ち歩き2週間ほどすると、カメラの構造を全て理解した。
説明書の読解力があれば1日で済んだかもしれない。しかし、私はアレだから遠回りして物事を覚えるのが通例だ。
これは悪い事ではなく、「体現」することにより、失敗も経験する。
そう、経験しながら覚えれば、リアルに自分のものになるのだ。
デジタル一眼レフカメラは「動画」を撮影する事もできる。
「好きな事ならすぐやる課 部長/齋藤久師」はカメラを完全に覚えたその日、ジンバル(走って撮影しても映像がブレないスタビライザー)を買いに走り、カチンコ、チョーク、メガフォン、照明、大道具、小道具を調達。
ポチっと通販より早いので、現場に買いにいく。せっかちにも程がある。
素晴らしきスタビライザー DJI Ronin RS2
私はいち早く頭の中に描いた映像をザックリとコンテに起こし、galcidに撮影の依頼をした。
galcid レナは「ポカーン」としていたのは言うまでもない。
更にこんな時に釣りが役立つとは思いもよらなかったが、ロケハンせずにロケ地が決定。
次の日、現場に到着し、自分の姿に驚いた。
なにしろ監督、撮影、カチンコ、照明、音出し、音効、タイムキープ、進行、ケータリング、ご機嫌取り等を全て私1人で行う事に撮影寸前まで気がついていなかった。アレだからな。
初撮影で全てをこなすジャイアン齋藤。足腰ガクブル、川に落水寸前。
冒頭の撮影はgalcidが車から降りてきて歩いてくる。そのため私は上図のような形で後退しながらカメラを回した。
幸い、ジンバルに搭載された「自動追尾システム機能」を活かし、多少カメラが被写体から外れても、カメラが被写体を勝手に追って角度を変えてくれる優れものだ。
しかし、ロケ地は川沿い。けっこう激流。
後ろを見る事が出来ない上、川ギリギリのショットを取りたいと言う事で落水覚悟で命懸けの撮影を試みた。
しかし、ズッコケたのはレナの方だった。
サクっと手に取る演出のハンマーが重すぎて見事に落とした。
まさかのハンマー取り損ね。レナさんもアレかもしれない。いや、完全にアレだよ。
当日はテレビドラマのように、マルチカメラを回すのではなく、古典的な映画撮影のようにカメラ一台でレンズを交換しながら多方向から回した。
撮影日、朝に子供を送り出し、お迎えの時間までには帰らなくてはいけない。
ロケ地までは1時間。つまり往復2時間。
限られた時間の中、かなりのスピード撮影だった。
無事撮影を終え、子供のお迎えも間に合ったところで撮影した映像をプレビューしてみた。
すると.......................................。
何か映ってる!映り込んでる!
チャリンコに乗ったオバチャンが映り込んでる!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ああ、今日1番のハイライトシーンにチャリンコオバチャン.................。思わず泣いた。
こちらが衝撃のチャリンコおばちゃん映り込みシーンだ!↓
おばちゃ〜〜〜〜ん(涙)
しか〜〜〜〜〜〜し!このチャリンコおばちゃんを消す方法が有るというのだ!!!!!!!!
よく写真の修正をフォトショップで行うが、静止画で余計な物を消せるというのは素人の私でもわかる。
しかし、動いているものを消せるとは、、、。
ちなみに私が使っているのはPremire ProというAdobeの動画編集ソフトだが、これで動画でも要らないものを消す事が出来るのだ!
まあ、全部1人でやっているわけだし、しかも初監督とあって現場でパニクりながら撮影していたのでモニターなぞあまり見ていない(そもそも老眼だから細かいところが見えない)。あるいは私がアレだからかもしれない。
そして、さらに撮影してきた映像を見ていくと、今度は1番クライマックスのシーンで橋の上を通過している軽自動車が映り込んでいるではないか!!!!!!!
軽自動車が橋を渡っている。きっとオッサンが運転しているに違いない。
ハハハハハ!でもこんなの軽く消し去る事ができるぜ!なにしろチャリンコおばちゃんも一瞬にして無かったことにしたオレ様だぜ。
一通り編集が終わり、70インチの大画面で確認したところ、レンズに付着したホコリなどが映り込んでいる。
しかし、オバチャンとオジチャンをサクっと消した私のエディティング技術の自信はマックス!
細かい点をスパスパと消し込んで完了!!!!!!
.........................と思い、レナを呼んで試写をした。
すると。。。。。。。。。。。。
「毛」が「毛」が映像に混入しているではないか!!!!!!!
しかも、冒頭の最重要なキャッチ部分に「毛」が!
毛。タチが悪い。
オバチャンやオッサン、そして小さなゴミをいとも簡単に消し去った私は、毛を消すために早速エディットにとりかかった。
しかし、、、何度やっても、何度やっても、何十回やっても「毛」は消えなかった。
いや、正確に言えば簡単に消えた。
しかし、周りの色味の移動など、消しにくい作用が働き、不自然に消えた状態になる。
消したところが白っぽくなる。つまり、白髪に変身!みたいになる。
しかもこの毛は少しウエーヴィーで縮れているので●毛のようにみえて仕方ない......................。
いや、ちょっとまてよ。
前号の沼で「ピンチはチャンス」とか自分で言ってたよな。
じゃあさ、このまま毛を残そう。キャッチーだしな。そうしよう!それしかない!それが1番!
という事で、伝説の初監督映像作品は毛とともにドロップされたのであった。
失敗は成功の元とよく言う。
これからも1人体制で映像作品をリリースしまくるだろう。
現に、この毛、いやgalcidのsnow flakes MVを発表したと同時に、海外から多くのオファーをいただいた(マジだぜ)。
でもきっと、オファーをくれた会社の人たちは、この毛に気づいてないだろうな。
この失敗で得た事。
・レンズ交換時、毛の混入に気をつけ、ブロアーを常に持ち歩こう。
・撮ったらその場でモニターでチェックしよう。
・周囲の状況に気を配り撮影を行おう。
ちなみに、この曲はgalcidが独自サブスク配信をしているpatreonというサービスで、galcidのパトロンになってくれると聴き放題、DLし放題になる。
毎週1曲づつアップされ、パトロンの元にだけ届く。月5ドルから
月に5ドル払ってもらえばだれでもパトロンになってgalcidの最新(その日出来立て)トラックを毎週聴く事ができるので、是非まだの人はパトロンになって欲しい。あ、一応5ドルからだけど、1億ドルでもいいんだよ。
やり方は簡単!こちらから↓
https://galcid.com/galcidpatreon/
それと、今年は映像作品を連発していくので是非galcidのyoutubeページのチャンネル登録をよろしく!実は、もう3作先までコンテが出来てて、撮影場所の許可を取っているんだよ。
https://www.youtube.com/galcid
お楽しみにね!
追伸:車や足音などの現実音はもちろん現場で同録した。しかし、映画でのサウンドは基本的にアフレコである。
そのため、レナの足音はオッサンであるわたくしの足音にすり替えられている。
その少しのズレ感、フレーム数もあえて24フレームにする事で映画らしい映像と音響効果を付けてみたかったのだ。
なにしろ私の子供の頃の夢は「将来、音効さんかバキュームカーの運転手」だった。
夢が一つ叶った瞬間だ。
しかし、映像の世界って本当にすごいよね。自分が頭で思い描いたものを映像化できる。嫌なものは消せる。空の色も変えられる。ニキビだって消せる。鼻も高くできる。人生も、そんなふうに編集できたらどんなにいいもんかねw
それとね、コロナがきっかけで気づいた事があるんだ。
厳しい音楽業界にあって、いままでは「音楽以外の事もなんでもやらなきゃいけない」って思ってたんだけど、違うんだよ、実は「なんでも出来るようになった」って考えてごらんよ。こんなに自由で楽しい時代ってそうそう無いよ!